ようこそ格闘女王のいる教室へ   作:デュラ様

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第22話

 

 

 

 

 

 船上特別試験最終日終了後。

 

 現在時刻は22時00分。

 

 場所は船内の大規模ホール。

 

 オレ達はそこで試験前と同じように全生徒を集めて集会を催していた。

 

 場所も同じ。時間も同じ。集められた生徒も同じ。

 

 華やかな照明が煌めく中、160人の高校生が再び一堂に会している。

 

 ただし前回ステージ上にいたはずの女王2人の姿はない。

 

 今回の司会を務めるのは櫛田桔梗。アシスタントに軽井沢恵。

 

 クラス茶柱のカーストトップ2人によるオンステージだ。

 

 

 

「じゃあみんなちゃんと送信できたかな?」

 

 

 

 櫛田が得意の萌え声で会場全体に呼びかける。

 

 それに一斉に答える生徒達。

 

 「できたー!」「問題なし!」という声があちこちから上がる。

 

 これで試験は問題なさそうだな。

 

 一体みんなで何をしていたかというと、もちろん優待者の指名解答だ。

 

 今日の21時30分~22時00分がその指名解答の時間で、ついさっきまでみんなでミスがないか確認しながらメールの送信を行っていた。

 

 そして今それの完了確認をして一安心というわけだ。

 

 だが今回のショーのメインはそこじゃない。指名解答はあくまで前座で、ここからが本番。

 

 本番はオレ達が秘かに進めようとしている計画を共有する事。

 

 みんなには今後の学園生活について話したい事があるとだけ伝えてある。

 

 ちなみに櫛田が司会で軽井沢がアシスタントなのはコイツらの序列をはっきりさせるためだ。

 

 今まではお互いにクラスカーストトップで同列のような扱いだったが、櫛田をクラスで1番の人気者にすると約束したからな。

 

 だから軽井沢に頼んで、櫛田のサポート役になってもらった。

 

 これで更に櫛田の承認欲求は満たされていき、アイツはすでに絶頂寸前だ。

 

 まあそれはどうでもいいんだが、とにかくこの2人によってショーは進められていく。

 

 

 

「うんうん。じゃあ早速本題に入るね。軽井沢さん、お願い」

 

「オッケー」

 

 

 

 櫛田の指示に従ってスマホの操作を始める軽井沢。

 

 スマホ操作はアイツの得意技だが、それにしても動きが速い。あっという間に終わったな。

 

 軽井沢が動きを止めた直後に鳴り響く着信音。着信音はこの会場に集まっている全生徒のスマホから鳴り響いている。

 

 160台のスマホが一斉に鳴り響く様は壮観だ。

 

 みんなのスマホに送られてきたのは1通のメール。そのメールには、今後行われると予想される特別試験やクラス移動について等の情報が長文に渡って記載されている。

 

 軽井沢がやった事は、あらかじめ用意されていた長文メールを全生徒に転送しただけ。

 

 そしてそのメールを確認するように櫛田が促していく。

 

 

 

「な、なんだよコレ!」

 

 

 

 どこからか驚きの声が聞こえる。

 

 人が多すぎて男子生徒であることくらいしか分からないけどな。

 

 その声は男子も女子も関係なく徐々に増えていき、会場はパニックに包まれていく。

 

 ざわめきが波のように広がり、あちこちで「嘘だろ」「マジかよ」という声が飛び交う。

 

 別に驚かせるつもりはなかったが、これが必要な工程だったんだから仕方ない。

 

 そう、オレ達はオレ達が入学から集めてきた学校の情報を全てみんなに公開していた。

 

 それが今回の集会のメインディッシュであり、オレ達が秘かに計画していたものの一部だ。

 

 公開した方がこの後の話を進めやすいからな。

 

 

 

「これは私たちが勝手に集めた情報だから、先生には絶対にバラしちゃだめだよ!」

 

 

 

 落ち着いたタイミングを見計らって櫛田が注意を促す。

 

 生徒同士で共有するのはいいが、学校側にバレるわけにはいかない。

 

 これは学校を相手取った極秘計画なんだからな。

 

 その全貌が櫛田の口から語られていく。

 

 

 

「メールに載ってると思うけど、この学校には2000万PPで自由にクラス移動できるっていう権利が与えられてるんだよね」

 

 

 

 固唾をのんで聞き入る生徒達。

 

 なにやらただ事ではないと察したんだろうな。

 

 会場は一気に緊張感で満たされていく。

 

 さっきまでのざわめきが嘘のように静まり返った。

 

 

 

「私たちはね、それをみんなが使えるようになればいいなって考えてるんだ」

 

 

 

 そして明かされる衝撃の内容。

 

 思わず葛城が反応してしまう。

 

 

 

「お前は一体何を言っているのだ! 正気か?」

 

「もちろん正気だよ。冗談で全生徒にこんなこと言うわけないよね?」

 

「それはそうかもしれないが……だが全く理解できん。クラス移動できるのは分かったが1人2000万PPだぞ。みんなでなど出来るわけがない」

 

「うんうん! 葛城君の言いたいことも分かるけど、まずはちゃんと説明させてほしいな」

 

 

 

 櫛田の反論に葛城が渋々押し黙る。

 

 だが次は龍園が獰猛な笑みを浮かべながら立ち上がった。

 

 コイツはもちろんクラス移動の事などとっくに知ってるが、反応せずにはいられなかったんだろうな。

 

 それだけ意味不明なことを櫛田に言わせてる自覚もある。

 

 

 

「クク、ク……クハハハハ! 面白え! だが櫛田。こんなイカれた計画をまさかお前が立てたなんて言わねえよな?」

 

 

 

 だが龍園の笑みは櫛田ではなく、オレ達と同じように客席に座っている春麗へと向けられている。

 

 それに気づいた春麗だが、アイツは龍園の視線に応えない。

 

 黙って話を聞けと目で訴えている。

 

 女王の威厳は健在だ。

 

 

 

「ハッ、そうかよ。まあいい、続けろ」

 

「うん! じゃあそうするね」

 

 

 

 邪魔が入ったが問題ない。

 

 今日は時間制限があるわけでもないからな。

 

 だから櫛田はゆっくりと丁寧にオレ達の計画を説明していく。

 

 みんなはそれを聞きながら、様々な反応を示しだす。

 

 最初はただただ混乱するだけだったが、それは次第に驚きに変わり。

 

 笑いに変わり。

 

 安心に変わり。

 

 反応は人それぞれだが、基本的に負の感情は存在しない。それはこの計画が生徒の誰かに不利益をもたらすようなものではないからだ。

 

 もし不利益を被るものがいるとするならば、それは学校だけ。

 

 

 

「なんでこんな事を言うのかっていうと、今回の試験で気づいちゃったからなんだよね。みんなでAクラスとして卒業するのが、決して不可能な話じゃないって事にさ」

 

 

 

 全て櫛田の言う通り。

 

 実際にはオレ達が言わせてるだけなんだが、事を運ぶに至ったきっかけを与えたのが今回の試験であることは間違いない。

 

 オレ達の計画はこうだ。

 

 2000万PP支払えば誰でも自由にクラス移動できるという権利。

 

 これを初めて知った時にまず思ったのは、Aクラス以外の120人分を卒業までに購入して、卒業前の適切なタイミングで行使すればいいのでは? だった。

 

 なぜならAクラスで卒業する事さえ出来れば、みんな希望する道に進むことが出来るんだからな。

 

 そうすればクラス間競争なんてくだらないものに付き合う必要もない。

 

 だが、それが不可能であることもすぐに分かった。

 

 基本的に生徒に支払われる毎月の報酬は10万PP前後で、単純計算したとしても1人2000万PP貯めるには最低でも16年かかる。

 

 だから基本的に不可能な考えなんだが、今回の船上試験の報酬がその考えを一変させた。

 

 今回の試験は全グループ結果1で終えることが出来れば8600万PPを獲得することが出来るからな。

 

 それだけでクラス移動の権利を4人分確保できる。

 

 つまりあと29回同じような試験があれば、秘かな計画が夢物語で終わらない可能性も出てきたわけだ。

 

 それでも現実的でないことに変わりはないが、3年間もクラス間で足の引っ張り合いをするよりは全然いい。

 

 どうせ足を引っ張り合ったとしても3/4の生徒は勝利を勝ち取ることが出来ないんだから。

 

 それに今後に控える特別試験でクラス移動チケットなるものが報酬として用意されてることも知ってる。

 

 こっちは期限付きのものらしいが、別に期限なんてどうでもいいしな。

 

 それも上手に利用して、卒業までに学年全員をAクラスに上げる。

 

 今の話がオレ達の極秘計画の全貌。

 

 櫛田の丁寧な説明により、みんなにもオレ達の伝えたいことは伝わったらしい。

 

 いったん落ち着いたところで質問タイムが始まった。

 

 

 

「頭のイカれた最高に面白そうな計画だがよ。普通の試験はどうするつもりだ? こんな馬鹿みたいな報酬がもらえるのは今回だけかもしれねえぞ」

 

 

 

 龍園の指摘はその通りで、こんなチャンスは1回きりかもしれない。

 

 だが別にそれでも構わない。

 

 たとえ全員は不可能だったとしても、1人でも多くの生徒がAクラスで卒業できるように動けばいいだけなんだからな。

 

 

 

「その時はより多くのPPがもらえるように協力しようよ。基本的にCPよりもPP優先で動けばいいと思うんだけど……どうかな?」

 

「別に構わねえが、俺は好きにやらせてもらうぜ。気が乗らなけりゃ裏切ることもあるだろうな」

 

「うん。もちろん強制はしないよ。ただクラス茶柱はそういう方針で進もうとしてるだけ。たった3年きりの青春なんだから、出来るだけ楽しくやっていきたいなって」

 

「ククク、呑気な連中だな。まあせいぜい楽しんどけよ。俺は俺のやり方でいかせてもらう」

 

 

 

 相変わらず龍園は龍園だな。

 

 だがコイツはもとよりCPよりもPPを重視してる節があるから心配いらない。

 

 実力でAクラスに這い上がれるだけの戦力も龍園クラスにはないからな。

 

 それよりも葛城や一之瀬の方が未知数ではある。

 

 

 

「我々もお前たちの考えを否定はしないが、坂柳がどうするか分からないので協力を約束することは出来ない」

 

「私たちは全面的に協力するよ。元から誰とも争いたくなんてないしね」

 

 

 

 葛城クラスは坂柳次第。

 

 一之瀬クラスは友好的か……悪くないな。

 

 

 

「うん。みんなの考えは分かったよ。とりあえず言いたいことは伝えたから……もうそろそろだね」

 

 

 

 櫛田の意味深な発言と共に、またも生徒全員のスマホが鳴り響く。

 

 現在時刻は23時00分。

 

 それは船上試験の試験結果がメールにて通知される時間でもある。

 

 160台のスマホが再び一斉に鳴り響き、全員が画面を確認する。

 

 子グループから亥グループまで、全12グループ。

 

 その全てが「試験終了後、グループ全員の正解により結果1とする」と記されていた。

 

 この試験でオレ達が獲得したのは8600万PP。

 

 とりあえず今回の試験で受けることが出来る最大報酬を獲得することが出来たな。

 

 上々のスタートだ。

 

 会場が歓声に包まれる。

 

 「やったー!」「50万ゲット!」という喜びの声が溢れ出す。

 

 もちろん集会で満場一致の協力を得るには至らなかった。

 

 120人分のクラス移動権利を獲得することがそもそも不可能であることも否定できない。

 

 だが、挑戦する意義はある。

 

 オレ達の提案に不満を抱いてるやつなんて1人もいない。

 

 生徒の誰にとってもデメリットの存在しない結果がここに生まれ。

 

 生徒の誰にとってもデメリットの存在しない企みが姿を現し。

 

 数百名が収容可能な大規模ホールに生徒達の高笑いが響き渡る。

 

 

 

 

 

 果たしてこの計画がどこまで通用するのか。

 

 オレ達クラス茶柱には()()()()も存在する。

 

 生徒会を支配したっていい。

 

 高度育成高等学校という社会の闇は、どこまでオレ達を楽しませてくれるんだろうな。

 

 華やかな照明の下、160人の高校生が笑っている。

 

 これが、オレ達の革命の始まりだ。

 

 

 

 

 




???「た、たまんねぇ」ビクッ

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