ようこそ格闘女王のいる教室へ   作:デュラ様

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 ――選抜種目試験終了時点CP――

 葛城クラス:1570(2年Cに7-0で勝利)

 クラス茶柱:1160(3年Bに4-3で勝利)

一之瀬クラス:1080(3年Dに6-1で勝利)

 龍園クラス:840(2年Dに4-3で勝利)

 ※1年生総所持PP約1億



 ???「司令塔としてクラスを勝利に導いた私の人気は絶頂寸前!」
 
【挿絵表示】



第42話

 

 

 

 

 

 

 

 月城理事長代理の決定通り、傷害事件の審議は最終特別試験後に延期されていた。

 

 最終特別試験において1年Aクラスは司令塔である坂柳の見事な采配により、対戦相手の2年Cクラスから完全勝利をもぎ取ることに成功。

 

 おかげでCPを310もプラスさせることが出来て、クラスメイトはみな喜んでいる。

 

 葛城康平こと俺ももちろんそのうちの一人である。

 

 クラスのリーダーは俺に任されてはいるが、その役割はほとんど意味のないものだ。

 

 実際はクラス茶柱からの指示通りに俺も坂柳も動いているだけなのだから、Aクラスは実質クラス茶柱と言っても過言ではない…いや、さすがに過言だな。

 

 いずれにしろそれで問題ない。

 

 AクラスはAクラスで卒業することが約束されていて、それに不満を抱くクラスメイトなどいるはずもないのだから。

 

 おかげで無駄な派閥争いもなくなり、俺も坂柳と争っていた頃よりはるかに楽しい生活が送れている。

 

 そんな中で年度末を間近に控えたある日の放課後に俺は生徒会室にいた。

 

 これから傷害事件の審議を行うためだ。

 

 生徒会室の中央には長いテーブルが置かれ、その向かい合う席には傷害事件の関係者たちが座っている。

 

 被害者である1年Dクラスの龍園とクラスメイト数名。

 

 加害者である2年Aクラスの殿河先輩と南雲会長。

 

 そしてそれぞれのクラスの担任である坂上先生と高遠先生。

 

 審議を主導するのは副生徒会長の桐山先輩で、生徒会役員である俺はその進行役として同席している。

 

 ちなみに生徒会には体育祭の後に在籍することになったが、詳しくは割愛させてもらう。

 

 副生徒会長である桐山先輩の表情は硬く、彼の表情がこの事件の重さを物語っている。

 

 加害者側に南雲生徒会長がいるのだから当然の話だ。

 

 桐山先輩は南雲会長のやり方に不満を抱いている生徒のうちの1人だからな。

 

 個人的な因縁もありそうだし、1年生には分からない複雑な思いがあるのだろう。

 

 対する南雲会長は事件の加害者としてこの場に同席していた。

 

 相変わらずの自信に満ちた表情だが、目には僅かな苛立ちが宿っているのが見て取れる。

 

 恐らく選抜種目試験で堀北先輩に惨敗したのが響いているのだろう。

 

 そして龍園は相変わらず挑発的な笑みを浮かべ、獲物を待ち構える蛇のように静かに座っていた。

 

 ちなみにこの審議に行うにあたって、俺は進行役と共に()()()も担っている。

 

 

 

「ではこれより1年Dクラス龍園が訴え出た、2年Aクラス殿河による傷害事件についての審議を始める」

 

 

 

 桐山先輩の言葉を合図に、審議は始まっていく。

 

 俺は進行役として、冷静に事実を整理するように言葉を繋いだ。

 

 

 

「まず、龍園。お前が訴え出た事案について改めて確認させてもらおう。発端はお前たち1年Dクラスが2年Aクラスに対して行った度重なる挑発行為で間違いないか?」

 

「ああ、そうだ。俺たちが挑発したのが始まりだ」

 

 

 

 そんな俺とは裏腹に、龍園はいつもの獰猛な笑みを浮かべながら、自分が事件の原因である事をあっさりと認めた。

 

 何を考えてるのか知らんが、いつもの往生際の悪さを見せるつもりはないらしい。

 

 

 

「では、その挑発が原因で特別棟の廊下で殿河先輩から暴行を受けたと。また、その場にいた南雲生徒会長から証拠を隠滅するよう強要されたと。これも事実に相違はないな?」

 

「間違いねえ。暴行を受けたのは俺だ。これを見ろ」

 

 

 

 龍園は立ち上がり、顔の痣の跡を指さす。

 

 ほぼ消えかかっているが確かに暴行を受けた跡が存在していて、保険医でもある星之宮先生から診断書も提出されているので間違いない。

 

 

 

「俺は南雲の権力の濫用と殿河の暴行を訴えている。生徒会長という地位に奢って下級生への暴力を揉み消そうなんて、この学校の生徒としてあるまじき行為だ」

 

 

 

 どの口が言っているのか知らないが、龍園らしいいつも通りの主張だ。

 

 対して南雲会長は、落ち着いた口調で反論した。

 

 

 

「葛城、コイツは嘘をついてる。これは悪意のある訴訟であり、俺の信用を失墜させる行為であると考える」

 

 

 

 殿河先輩も南雲会長の言葉に同調し、憤慨した様子で口を開いた。

 

 

 

「確かに俺たちはあの場にはいたが、それは執拗な挑発を続ける1年生に注意するためだった。俺は龍園に暴力なんか振るっていないし、顔面のケガもどうせ自分で作ったものだろ。俺たちはコイツに嵌められたんだ」

 

「オイオイ、冗談はよせよ。目撃者だってこっちにはたくさんいるんだぜ?そうだろ石崎」

 

「はい。俺は龍園さんが殿河先輩に殴られた瞬間をこの目で見ました。他にも何人か目撃者がいます」

 

 

 

 だが龍園はその訴えを鼻で笑っている。

 

 この事件が事実かどうかは分からないが、いかにもコイツらしい態度だな。

 

 龍園という男はこういう男だ。

 

 とにかく相手を騙して脅して利用する。

 

 1学期にも一之瀬のクラスに同様の事をしていたが、まさか南雲先輩に対して同じことをするとは。

 

 

 

「そんなもの意味ないんだよ龍園。お前のクラスメイトはお前に味方するに決まってるだろ。何の証拠にもならねえ」

 

 

 

 だが南雲会長の意見もその通りで、両者の主張は平行線を辿っているな。

 

 南雲会長は龍園の訴えは単なる嫌がらせだと主張する。

 

 一方、龍園は暴行と生徒会長の権力濫用を盾にした脅しに対して正式な処罰を求めている。

 

 どうしたものかな。

 

 とりあえずこのままでは埒があかないので、違った角度から話を展開するしかあるまい。

 

 だがそう思って俺が口を開こうとした時、桐山先輩が重々しい声で告げた。

 

 

 

「待て。龍園が主張している暴行、及び証拠隠滅の強要の件だが、これを裏付ける客観的な証拠が提出されている」

 

 

 

 桐山先輩はそう言い、手に持っていた一枚の写真をテーブルの上に置いた。

 

 それは殿河先輩が龍園の顔面に拳を叩き込んでいる瞬間を捉えた、鮮明な写真。

 

 写真を見た瞬間、南雲会長の顔から一瞬にして余裕の表情が消え失せた。

 

 

 

「なんだ、これは……」

 

「南雲。お前は現場で龍園たちから証拠の画像を全て取り上げさせたと聞いている。だがこの写真は、事件の現場にいた第三者によって撮影されて現像されたものだ。なにか言い分はあるか?」

 

「オイオイ、俺は脅しなんかしちゃいねえよ。まさかこれもお前がでっち上げたのか龍園」

 

「クク、酷い演技だな。お前は話を聞いてなかったのか?これはどうやら第三者が撮影したものらしいぜ。つまりあの場には俺たち以外にも他のクラスの生徒がいたってことなんだろうなぁ」

 

「いや、それはあり得ないだろ。だって特別棟だぞ?あんなとこに俺たち以外の人間がいたわけがねえ」

 

「俺は知らねえよ。だが事実として証拠画像があるってことはそういう事なんだろ。そうだろ副会長さんよぉ」

 

「その通りだ。そしてこの写真を提供してくれた生徒を今からここに呼び出す」

 

 

 

 そう言い放った桐山先輩の視線が、生徒会室のドアに向けられている。

 

 どうやら待機してもらっていたらしいな。

 

 

 

「入ってください」

 

 

 

 そして扉が開かれた先に現れたのは、元生徒会役員である3年Aクラスの橘茜先輩だった。

 

 橘先輩は堀北元生徒会長の右腕として活動していた優秀で誠実な人物だ。

 

 そんな先輩は入口で深々と頭を下げてから入室し、俺たちの前に立って早速証言を始める。

 

 

 

「桐山副会長、そして葛城君。この画像は私がたまたま現場に居合わせたときに撮影したものです。本当はその場で騒ぎを止めたかったのですが、なにぶん1人だったのでとりあえず証拠の画像だけ収めておきました」

 

 

 

 橘先輩は淀みなく証言を続けていくが、もしそれが本当ならこの写真は決定的な証拠になりえるだろう。

 

 彼女は過去の実績から信頼度は高く、証拠を捏造したりするような人物には見えない。

 

 立場としてもこの場においては中立と言えるからだ。

 

 だから彼女の言葉が真実ならば、この事件の真相を決定づけるものになる。

 

 南雲会長は龍園を脅して証拠を消し去ったと信じていたのか分からないが、とにかく龍園の訴えと一致する証拠が提出されてしまった。

 

 

 

「ちょっと待ってくださいよ橘先輩。まさか先輩も俺に嫌がらせですか?いくら混合合宿で被害に遭ったからってそりゃないッスよ」

 

 

 

 南雲先輩はしらを切り通そうとしているが、橘先輩は毅然とした態度を崩さない。

 

 

 

「混合合宿の事は関係ありませんよ南雲君。それ以前に暴力は決して許される行為ではありません。特に生徒会長であるあなたがその場を支配し、証拠の隠滅を図ったのであればそれは権力の濫用です。私は元生徒会役員としてこの学校の公平な運営のために、真実を提出する義務があると考えました」

 

 

 

 その言葉を聞き、俺は思考を巡らせた。

 

 確かに橘先輩は信頼のおける人物だが、なにかひっかかる。

 

 先輩の証言はもっともそうに聞こえるが、やはり人気のない特別棟に彼女がたまたま居合わせていたとは考えにくいな。

 

 龍園がわざと殿河先輩に殴らせ、その現場をクラスメイト以外の誰かに撮影させていた可能性もある。

 

 というかあの男のやり口からするとその可能性が高い。

 

 となるとこれも龍園の策略か。

 

 龍園は南雲会長が油断するように、敢えて南雲会長の前で自分のクラスメイトに証拠を取り消させ、示談を受け入れたフリをした。

 

 そして南雲会長が完全に安心したところで、別ルートから決定的な証拠を学校に突きつけたとみた方が自然だ。

 

 画像を撮影したのが誰かは分からないが、俺の勘では橘先輩ではない気がする。

 

 おそらく南雲先輩の権威に不満を持つものだったのだろう。

 

 その人物と龍園が結託してこの事件を作り上げた。

 

 では橘先輩はいったいなんなのかという話にもなるが、現状ではなにも分かるまい。

 

 いずれにしろ龍園は南雲先輩の威圧的な支配体制が生み出す亀裂を利用したということか。

 

 やはりコイツは侮れない男だ。

 

 

 

「……龍園。お前、まさか……」

 

 

 

 南雲先輩もそれに気づいたのであろう。

 

 初めて龍園の底知れぬ悪意を理解し、顔を歪ませている。

 

 それに対して龍園は愉快そうに笑いながらテーブルを叩いた。

 

 

 

「クククッ、生徒会長さんよぉ。俺がわざわざ示談で終わらせるようなタマに見えたか? 誰もがテメェの猿真似生徒会長の威光を恐れてると思ったら大間違いだぜ。現にテメェを快く思わない人間なんてこの学校にはごまんといるんだよ」

 

 

 

 コイツの態度はどうかと思うが、決定的な証拠が出たなら迷う必要もない。

 

 そもそもこの審議は建前でしかなく、最初から答えは出ていたのだろう。

 

 明らかに流れが決まっているような感じだ。

 

 だから桐山先輩はなんの躊躇もなく審判を下そうとしている。

 

 

 

「橘先輩から提出された画像は暴行の事実を明確に示している。そして龍園の顔の怪我もその証拠と一致する。この証拠は客観的であり、信頼性に足るものだろう。よって2年Aクラスに処罰を与える――」

 

 

 

 だが、その時だった。

 

 南雲会長が桐山先輩の言葉を断って、珍しく声を張り上げた。

 

 

 

「待て!挑発が原因だ!それを考慮しないのか!?」

 

「挑発行為も別途で審議の対象とするが、暴力行為は如何なる理由があろうとも許されない。特に生徒会役員がその場に居合わせながら暴行を容認し、さらに証拠の隠滅を図った行為は、生徒会長という地位を利用した権力の濫用とみなす」

 

 

 

 桐山先輩の言葉は、冷たく、そして絶対的な重みを持っていた。

 

 桐山先輩は南雲会長と殿河先輩に目を向け、最終的な処罰を言い渡そうとする。

 

 だが南雲会長は依然としてそれを許そうとしない。

 

 

 

「コイツらは挑発の常習犯だぞ!これで2度目だ!まずはそこについてしっかりと議論すべきだろ!」

 

「しつこいぞ南雲。それは別途で審議すると言ったはずだ。その前にまずはお前たちに処罰を下す」

 

 

 

 そしてそのやり取りが何度も繰り返されて、一向に審判が下されないまま時間だけが過ぎていく。

 

 もう議論は充分として終わらせようとしている桐山先輩とそれを阻止する南雲会長。

 

 担任の先生方がそれに口を挟む様子もない。

 

 やはり生徒の実力だけでなんとかしろという事なのだろう。

 

 おかげでほとんど蚊帳の外状態になってしまった龍園を見てみると、奴は意外にもイラつくことなくこの状況を楽しんでいるようだ。

 

 という事はこれも計算のうちなのだろう。

 

 俺はもう進行役としての役目を終えているので構わないが、これは長くなりそうだな。

 

 だが永遠に続くのかと思われたこの状況も、南雲会長の諦めによって終止符が打たれる。

 

 2年Aクラスへの処罰ではなく、取引という形で。

 

 

 

「龍園、お前に追加で100万ppくれてやるから、この件は無かったことにしないか?」

 

 

 

 その提案に対して龍園は笑っている。

 

 なるほど。これがお前の狙いか。

 

 

 

「いいぜ。だが今度はしっかり契約書に残すんだな、じゃないと俺は何度でも訴えを起こすだろうよ」

 

「おい、龍園!お前もいい加減にしないと処罰を課すぞ!」

 

「ククッ、分かってるよ副会長様。じゃあ契約の立会人はアンタに任せるが、会長もそれでいいか?」

 

「いいだろう。桐山、書面の作成を至急頼む」

 

「なんで俺がそんな事をしなきゃいけないんだ。ふざけるなよ」

 

「まあいいじゃねえか。今度お前の言う事を何でも聞いてやるから頼むよ」

 

「はあ…分かった。すぐに用意する」

 

 

 

 桐山先輩の態度がいささか不自然ではあるが、こうして契約は完了し、前回と同様に傷害事件はなかったものとされた。

 

 もちろん契約により、両クラスはこの事件に関して口外禁止。

 

 それをしっかりと確認した南雲会長と殿河先輩は高遠先生に促され、足早に生徒会室を後にする。

 

 龍園たちも満足げな表情を浮かべながら、同様に坂上先生と共に立ち去っていく。

 

 そうして当事者たちがいなくなった生徒会室で、俺は机の下に潜ませていたスマートフォンの録音ボタンを停止させながら、桐山先輩にさきほどの事を尋ねていた。

 

 

 

「なぜ南雲会長の提案を許したのですか?生徒会にあってはならない対処の仕方だと思うのですが」

 

「お前の言いたいことはわかる。だがこの審議自体がそもそも仕組まれたものだから別にいいんだよ」

 

「仕組まれたもの…それは一体どういう意味でしょうか」

 

「そのままの意味だよ。そうですよね橘先輩」

 

 

 

 俺は桐山先輩に聞いたつもりだったが、何故かこの場に残っていたもう1人の人物に話がフラれる。

 

 

 

「はい。ご苦労様でした桐山君。それに葛城君も」

 

 

 

 そして何故か橘先輩に労われるも、俺は未だに状況を理解していない。

 

 

 

「本当に勘弁してくださいよ。この審議を録音してることが南雲にバレたら面倒なんですから」

 

「それは心配いりません。今までこういった審議で音声を記録したことは1度もありませんから彼が気付くことはないでしょう。その証拠に平然と事件を揉み消す取引をしてましたから」

 

「確かにそうですね」

 

「はい。だから安心してください。それよりしっかり録音できてますよね?」

 

「どうだ葛城。問題ないか?」

 

「はい。自分のスマートフォンに審議の一部始終が記録されています。しかし、何故こんな事を?」

 

「その音声記録が重要だからですよ葛城君」

 

「そうなのですか?ではこれを残すための審議だったという事なのでしょうか」

 

「さすがはAクラスの生徒。鋭いですね」

 

「はぁ、ありがとうございます」

 

 

 

 だがなんとなく狙いはわかった。

 

 さきほどの龍園の態度と今の2人の会話から、おそらくこの審議は南雲会長が事件を揉み消すことを前提として組まれたものだと推測できる。

 

 そしてその証拠を残すために、わざわざ俺が記録係なんてものをやらされたことも。

 

 つまり南雲会長の弱みを握ろうとしてる人間がいるという事か。

 

 だが誰が何のためにこんなものを仕組んだのだ?

 

 この2人か?

 

 いや、しかしそれでは龍園もグルという事になるが、あの男が生徒会の人間と手を組むことなど考えられん。

 

 そもそも橘先輩が証拠の画像を持っていたこともいまいち腑に落ちない。

 

 だから俺はとりあえず気になることを橘先輩に尋ねてみた。

 

 

 

「橘先輩。あの画像を先輩が撮影したというのは本当ですか?俺にはどうにもそこが引っかかって仕方がないのですが」

 

 

 

 それを聞いた橘先輩は可笑しなものでもみるかのように、こちらを見ながら笑っている。

 

 

 

「そんなわけないじゃないですか。用もなく特別棟に行ったりなんてしませんよ」

 

「ではなぜあの画像を先輩が持っていたのですか?」

 

「可愛い後輩からもらったんです。そしてこう頼まれました。混合合宿での仕返しを南雲君にしてみませんかってね」

 

「そうだったのですね。つまり南雲会長の身内に裏切者がいたという事なのでしょうか」

 

「へ?違いますよ。たぶん彼女は南雲君の身内じゃありませんから」

 

 

 

 む、そうなのか。

 

 証拠画像を残したのは龍園クラスではあり得ないだろうから、てっきり南雲会長のクラスメイトの仕業かと思っていたが違うらしい。

 

 

 

「ちょうど最近仲良くなったんです。似たような髪型をしていたから親近感がわいちゃって」

 

「なるほど。そうだったのですね」

 

 

 

 そう言った橘先輩は楽しそうに笑っている。

 

 その後輩とよほど仲が良いのだろう。

 

 しかし似たような髪型か。

 

 似たような髪型……

 

 橘先輩の髪型と言えば彼女のトレードマークでもあるお団子頭ではあるが、そんな髪型の生徒が果たしてこの学園にいただろうか。

 

 お団子頭。

 

 お団子頭…

 

 お団子頭……

 

 ……

 

 ……

 

 ……

 

 ―――!?

 

 頭の中で必死にお団子頭を探していたその時、俺の頭頂部に電流が走った。

 

 

 

 (も、もしや!)

 

 

 

 南雲会長の弱みを握って得する人間。

 

 誰にも気づかれずに暴力現場で証拠を確保できるような人間。

 

 橘先輩に近づけるほど人当たりが良く、フットワークの軽い人間。

 

 そしてお団子頭。

 

 そんな人物はこの学園で1人しか思い浮かばない。

 

 もしやこの審議を仕組んだ人物というのは…

 

 

 

 

 

 春麗のことなのか?

 

 

 

 

 

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