ようこそ格闘女王のいる教室へ   作:デュラ様

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第5話

 

 

 

 

 

 4月2週目。

 

 この日のDクラスは朝からかなり賑わっていた。

 

 三馬鹿の池と山内が、自らを不良品であると証明するような恥さらしっぷりでバカ騒ぎしていたからだ。

 

 

 

「おはよう山内!」

 

「おはよう池!」

 

「いやぁ、授業が楽しみ過ぎて目が冴えちゃってさー」

 

「なはは。この学校は最高だよな。まさかこの時期から水泳があるなんて!」

 

「水泳と言えば、女の子!」

 

「女の子と言えば!」

 

「「スク水だよな!!」」

 

 

 

 見ての通りだ。

 

 今日から始まる水泳の授業に浮かれて、コイツらは朝から清々しいほどにクズだった。

 

 ずっと楽しみにしてたんだろうな。

 

 まあ、女子の水着姿を妄想してテンションが上がる気持ちはオレでも分かる。

 

 その気持ちを仲のいい男同士で共有するのもまだ分かる。

 

 だが普通それを女子の目の前でやるか?

 

 きっとお前らには周りでドン引きしているアイツらの姿が見えてないんだろうな。

 

 みんなすごい目してるぞ。

 

 まるでゴミを見るような目だ。

 

 いや、もしかしたら実際にゴミを見ているのかもな。

 

 なにしろ池と山内に外村を加えた新たな三馬鹿は、水泳の授業を利用して女子の胸の大きさランキングとやらを作るつもりだったからだ。

 

 多分それもバレていたのかもしれない。

 

 おかげで女子はみんな授業を見学すると言い出し、そこで流石に待ったがかかった。

 

 平田が仲裁に入り、春麗が三馬鹿を目で殺す。

 

 関係ない須藤も巻き添えだ。

 

 女王の御前でセクハラなんて披露すれば当たり前に想像できた結果だが、まあ……どんまいだな。

 

 お前らはさすがに目立ちすぎた。

 

 オレは一足早く逃げさせてもらう。

 

 

 

「「「どうも。ずびばぜんでした」」」

 

 

 

 最終的にやつらは女子全員の前で土下座までさせられていた。

 

 

 

 

 

 ◆ ◇ ◆

 

 

 

 

 

 午後になり、お楽しみの水泳の時間がやってきた。

 

 この学校のプールの設備はかなり豪華で、着替え終わった生徒たちがその充実ぶりに驚いていた。

 

 確かに広さも学校のプールとは思えないほど広い……凄いな。

 

 クラス全員に阻止されて胸の大きさランキングは作れなくなったようだが、おかげで女子の見学者はゼロ。みんな競泳水着を着てしっかり授業に参加している。

 

 やはり女王効果は凄まじいようだ。恐らくアイツがいなければ、ほとんどの女子は見学になっていただろう。

 

 それは喜ぶべき事なんだが、ただでさえ顔面偏差値の高い女子たちの水着姿はかなり刺激的で、それを目の当たりにした男子のアレはみんなビンビンだ。

 

 そのせいで女子よりも男子の方がずっと恥ずかしがっていた。

 

 ちなみに体育教師もビンビンだ。

 

 みんな胸が大きくスタイルがいいから無理もない。

 

 中でも佐倉がとにかく大きい。

 

 下手したらスイカくらいあるんじゃないか?

 

 ……凄いな。

 

 当然だが、春麗の脚も凄い。

 

 水着姿になると、その異常な筋肉の密度がより際立って見える。腰よりも脚の方が太いんじゃないかというレベルだ。

 

 他の女子の脚とは明らかに違う。まるで別の生き物のようだ。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 ……強烈だな。

 

 オレか? もちろんオレもビンビンだが?

 

 オレも男だ。

 

 さすがに生理現象まではごまかせない。

 

 だがこのままでは授業になりそうにないので、オレは分析モードに入って脳内で胸の大きさランキングを作ることにした。

 

 

 

―胸の大きさランキング(当社比)―

 

 1位:佐倉愛里(Fカップ)

 

 2位:長谷部波瑠加(Eカップ)

 

 3位:春麗(Dカップ)

 

 4位:櫛田桔梗(Dカップ)

 

 5位:松下千秋(Cカップ)

 

 6位:井の頭心(Cカップ)

 

 7位:王美雨(Cカップ)

 

 8位:軽井沢恵(Cカップ)

 

 9位:小野寺かや乃(Cカップ)

 

 10位:佐藤麻耶 (Cカップ)

 

 11位:森寧々(Cカップ)

 

 12位:高円寺六助(Bカップ)

 

 以下省略

 

 番外編:茶柱佐枝(Fカップ)

 

 

 

 他意はない。

 

 授業に集中するために仕方なくやっただけだからな。

 

 それ以外にやったことなんて、授業後に頭の中のデータをチャットに移して転送しただけだ。

 

 だから女子の前ではなにもしていない。

 

 別にお礼なんていらないぞ三馬鹿。

 

 

 

 

 

 ◆ ◇ ◆

 

 

 

 

 

 最高だった水泳も終わってしまい、あっという間に放課後になってしまった。

 

 なんで楽しい時間ってあんなに早く過ぎてくんだろうな。

 

 オレの中の永遠の謎だ。

 

 まあそんな謎はおいおい紐解いていくとして、オレと春麗は放課後にチェス部の部室に立ち寄っていた。

 

 別にこの部活に入りたくて来たわけじゃない。

 

 上級生にここでポイントが稼げると聞かされてやってきただけだ。

 

 そこで行われていたのはチェスを利用した賭け事だった。

 

 どうやらここでは生徒同士でポイントをかけたゲームが行われているらしい。

 

 春麗はルールすら知らないらしいが、オレはそこそこ腕に自信があった。

 

 上級生はオレが1年Dクラスであると告げると喜んで勝負してくれたが、結果はオレの連戦連勝。

 

 しかもオレの事を舐めてかかった上級生が高レートで勝負を受けてくれたため、この日だけで20万以上のポイントを得ることができた。

 

 チョロいもんだ。

 

 だがこれからは警戒されて稼ぎづらくなるかもしれないな。

 

 賭博が行われている場所は他にもあるようだから、暇なときにでもコツコツとポイントを増やしていくとしよう。

 

 そんなことを考えながら、オレ達はチェス部の部室を後にした。

 

 

 

 

 

 ◆ ◇ ◆

 

 

 

 

 

 チェスで荒稼ぎした後の帰り道。

 

 寄り道したため夕焼けに染まりきっていた校庭の隅に、一人の女子生徒が座り込んでいるのを見つけた。

 

 そこは周囲に監視カメラの存在しない目立たない場所。

 

 そんな場所に不自然に座り込んでいる生徒はケガを負っているらしく、苦しそうな表情で背後の校舎にもたれかかるように息をしている。

 

 それを見て何事かと思った春麗がその生徒に近づいて声をかけた。

 

 

 

「あなたどうしたの! 大丈夫!?」

 

「……だいじょう……ぶ」

 

 

 

 女子生徒はそう気張っているがどう見ても大丈夫じゃないな。

 

 顔には(あざ)ができている。

 

 誰かに殴られたのか?

 

 春麗はどう見ても大丈夫じゃない生徒の状態を確認すると、すぐさまオレに指示を出してきた。

 

 

 

「保健室に星之宮先生がいるか確認してきて! もしいなければ職員室に行って呼んできなさい!」

 

 

 

 その口調はいつになく荒い命令口調だったが、オレは何も言わずに従った。

 

 アイツにしては珍しく焦っているな。

 

 オレもこんな春麗を見るのは初めてだが、それほどの緊急事態なのかもしれない。

 

 保健室に星之宮はいなかったので職員室に呼びに行き、その足で春麗を呼びに戻った。

 

 女子生徒はオレが抱きかかえて運んだが、かなり華奢で軽い。

 

 保健室で合流して星之宮が応急処置を始めたが、あまりいい状態とは言えないらしい。

 

 ケガだけでなく熱も出ているようで、女子生徒は既に気を失っていた。

 

 可哀そうに。

 

 せっかくの整った顔立ちが痣で台無しだ。

 

 ショートカットの青髪に、小柄だが引き締まった体つき。どこか気の強そうな印象を受ける少女だった。

 

 

 

「彼女は1年Cクラスの伊吹さんね。状態が悪化する前にいったん病院に連れていくわ」

 

 

 

 星之宮はオレ達にそう告げて帰宅を促した。

 

 念のため今から救急車を呼び、自分も同行するらしい。

 

 オレ達は星之宮の言葉に従い帰路についたが、二人の間の空気は重苦しい。

 

 オレの隣を歩く春麗の表情は怒りに満ちていて、とてもじゃないが声をかけることが出来なかった。

 

 恐らく伊吹という生徒をあんな状態にした相手にキレているんだろう。

 

 かなり気まずいな……

 

 それにしてもこの学校はなんとも物騒だ。

 

 もし伊吹が誰かに暴行されたのであれば立派な犯罪だが、あそこに監視カメラはなかった。

 

 別の場所になんらかの証拠が残っていればいいが……

 

 せっかく今日は最高の一日だったのに今は最低な気分だな。

 

 嫌な気を紛らわすために空を見上げてみたが、特に何も変わる気配はない。

 

 太陽が沈もうとする空は、まるで自分の心を映す鏡のようだ。

 

 楽しい一日が、最後の最後で暗転する。

 

 この学校では、そういうことが起こりうるのだということを、オレ達は思い知らされた。

 

 春麗の沈黙が、その事実の重さを物語っている。

 

 普段なら何か言葉を交わすところだが、今日は違った。

 

 二人とも無言のまま、それぞれの思いを胸に寮へと向かった。

 

 誰が何のために女子高生を暴行したのか。

 

 いじめか、それとも別の何かか……

 

 オレには予想もつかなかったが、ただ一つ確信していることがあった。

 

 この学校で起きる出来事に、偶然なんてものは存在しない。

 

 すべてが誰かの意図の下に動いているはずだ。

 

 そしてそれは、オレ達が想像する以上に複雑で、危険なものなのかもしれない。

 

 寮に向かう道すがら、ふと春麗が口を開いた。

 

 

 

「……絶対に見つけ出すわ」

 

 

 

 その声は低く、静かだった。

 

 だがその中には、鋼のような意志が込められていた。

 

 警察を目指す少女にとって、目の前で起きた暴力事件は看過できるものではないのだろう。

 

 オレは何も言わず、ただ頷いた。

 

 言葉は必要なかった。

 

 この女王が動くなら、オレも付き合うしかない。

 

 それがどんな結末を招こうとも。

 

 

 

 

 

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