勇者と龍 〜孤独な古龍は仲間と共に魔王討伐の旅に出る〜 作:仮面執事
今回は3話です。前回は冒険者として登録ができましたね。今回は初の依頼のようです。上手くいくのでしょうか?お楽しみに!
「所でヴァン…お前が龍っていうのは分かったが、人前でその事言うなよ?」
「えっ?どうして?」
ガントレットさんが不意にそんな事を聞いてくる。別に隠したくて隠してるわけじゃないからよくないかな?なんかいけない理由でもあるのだろうか。
「ヴァンさん、龍で人語を喋れるというのは魔族に値するということなんですよ。魔族は人類の敵、だから龍族のヴァンさんは本来なら討伐される側なんです」
ルシアがおもむろにそう言ってくる。えぇ…俺って討伐対象だったの?……あっ、そうだわ、昔にもそんな事があったような気がする。
「ヴァンはまだ、友好的だから信頼できる…私達を強くしてくれたから…」
「そうだぜ?ギルマス、あんたの忠告は確かだが、ヴァンが俺等とパーティー組んでいる以上、他の冒険者がヴァンを狙うとは思えねぇ」
「そうね、そんなことしようものなら私達でボコボコにするわよ」
みんな…俺の事ちゃんと仲間って思ってたのか、なんだが心が暖かくなるね
「しかし…万が一、ヴァンの正体がバレれば…現役のSランク冒険者が黙って見過ごすわけがねぇ」
現役のSランク…まだこの世界の情報を知らないから聞いてみようかな。ガントレットさんは詳しそうだしね!
「そのSランク冒険者って具体的に言えばどんな奴がいるの?」
「そうだな…有名どころで言えば"狂乱のサリサ"って奴と現Sランク最強の男、"ラインハルト"だな。特にラインハルトは気を付けたほうがいい。魔族を何体も葬ってる凄腕の冒険者で、魔族を嫌っている。根は心優しくていい奴なんだがな」
"ラインハルト"…強そうな名前をしているね。いつか戦ってみたいな……みんな、俺をじっと見てどうしたー?
「ヴァンさん…
「そんな事ないじゃん!俺もそこまで戦闘狂じゃないよ!」
なんでみんなは俺の事を戦闘狂とばかり思っているのだろう…不思議だ。
「ヴァンだけ闘いたいとかズルいだろ!!俺もラインハルトと闘ってみてぇ…いいよな!」
「良くないでしょ…私も入れなさいよ!」
「あなた達!!何影響受けてるんですか!!」
ルシアがアリシアとジェイドの頭を叩く。2人ともめちゃくちゃ痛そうにしている。ルシアはまぁ…俺が体術仕込んだだけあるけど、力って体術仕込むだけで強くなるものだっけ?
「まぁまぁ、落ち着けよ、それで…お前達はどの依頼を受けるんだ?っても冒険者に成り立てのペーペーだろ?なら、"薬草採取"の依頼なんてどうだ?冒険者の王道だろ?」
そう言ってガントレットは"薬草採取"の依頼書を机の上に置く。アリシア、ジェイドを除いて目を輝かせる。なんてったって初の依頼だからね。俺も皆とやるなら"薬草採取"からって決めてたから丁度いい。
「ギルマスも打ってつけのやつ持ってくるじゃん。まぁ定番かな」
「ふふっ、私も最初は"薬草採取"からやろうと思っていました。アリシアとジェイドは別ですけどね?」
「"薬草採取"は…王道!!」
「私は魔物退治とかがよかっ!?」
アリシアが何か言いかけるがルシアの圧に負け肩を落として渋々了承した。ジェイドはどうだろうか?
「俺はこの街の"ダンジョン"に行ってみたかったぜ…ギルマス、"ダンジョン"はどうやって行くんだ?」
「"ダンジョン"か…すまねぇが、今ここの街の"ダンジョン"は封鎖してんだ。"ダンジョン"内で強盗殺人が起こってな…"アルセシオン王国"の騎士団が来るまで封鎖するんだ」
"ダンジョン"内での強盗殺人か…確かにそんな事件があったら迂闊にダンジョンには入れないね。ジェイド…泣きそうな顔を浮かべて落ち込んでるね。
「クソっ!!殺した奴が許せねぇ…そいつのせいで俺の"ダンジョン"が!!」
いやいや、いつ君のダンジョンになったの!?怖いよ。……なんかルシアがゴゴゴって鳴りそうなほどの怒りをジェイドに向けて示してる。これは…ジェイド、ご愁傷さま。
「ジェイド…後でじっくり話しましょうか…」
「ッッ!!はい…」
「はぁ…"薬草採取"で決まりだな?お前達は薬草の見分け方とかは知ってるか?知らないならギルド職員の奴を1人、当てさせる」
ガントレットさんがそう言い、俺達は互いに目を合わせ、首を横に振る。どうやら皆、薬草の見分け方を知らないようだ。俺もだけどね?
「知らねぇみてぇだな…おい、グリード!!来い!!」
ガントレットさんが大声てそう言うと廊下の方からドタドタと走ってこちらに来る音が聞こえる。そして、勢いよくドアが開くと黒髪でメガネを掛けた少年が入ってくる。
「ギルドマスター!!どうしたんですか!?」
「お前に頼みたいことがあってな…まずは自己紹介をしろ」
ガントレットさんがそう言うとその少年は身だしなみを整え、俺達に目線を合わせ自己紹介を始める。
「初めまして!僕は"グリード=アルハイゼン"と言います。以後、よろしくお願いします!」
「よろしく〜」
「よろしくお願いします」
「……よろしく……」
「よろしくな!」
「よろしく!!」
皆、元気があって良いね。てか、"アルハイゼン"って…このエクシアの公爵貴族の名前だったと思うけど…まさか…
「あのさ…答えなくてもいいけど、もしかして…アルハイゼン公爵の?」
「えっと…そうですね…僕はアルハイゼン家の三男です。だから、家督を継ぐ権利もないので冒険者ギルドで事務員をしています」
「なるほど…結構自由に行動できるんだね?いやさ、公爵家の息子だから、堅苦しくて自由に遊べないかと思って…不快だったら今の言葉は訂正するよ」
「いえいえ、よく言われることですので気にしてないです。それよりも"薬草採取"の件でしたね…それでしたらエクシアの離れにあるノワール大森林に行きましょう。あそこは薬草が豊富で初心者の方にも打ってつけなんです!」
グリード君はそう言い、地図を取り出して俺達にノワール大森林の位置を指で指して教える。地図で見た限りだとかなり大きい森林のようだ。なら決まりかな?
「ヴァンさん、この場所でいいでしょう。アリシアとジェイドも早く行きたくてウズウズしてますし!」
「そだねー。じゃあ、グリード君は案内よろしくね?」
「はい!喜んで!!」
終始、身体がウズウズしている2人と無言でずっと話を聞いていたシルビアとルシア…案内役のグリード君と共に俺達は初めての依頼、"薬草採取"の為にノワール大森林へと行くのだった。
「おっと…これ、お前達の冒険者カードだ!受け取れ!」
ガントレットさんがそう言うと5人分の冒険者カードを投げ渡される。投げなくてもよかったんだけど…それはともかく…
「「「「「ありがとうございます!」」」」」
―ノワール大森林―
俺達は道中何事もなく無事にノワール大森林へと到着していた。アリシア、ジェイド、ルシアは体力が多く歩き慣れていたけど、シルビアは体力が全然なく、エクシアから出て数分で膝をつき、今は俺の背中で爆睡中だ。正直、ヨダレが垂れて背中がビチョビチョなのでどこかで下ろしたいんだけど…気持ちよく寝ているため、許すことにした。
「とりあえず無事に着いたね。グリード君、ありがとう」
「お役に立てて何よりです。それより、"薬草採取"のコツを教えますね」
「うん!分かった!」
「"薬草採取"で一番重要なのは"薬に使う葉が傷ついていないか"です。葉が傷ついていると十分に回復薬としての機能が付かなくなることが多いんです。うちのギルドでも度々そういった事があるので注意しているのですが…冒険者の中には乱暴な方も多いのでどうしようもなく…」
「分からなくはないですね…冒険者になった人は大抵は"薬草採取"なんてマイナーな依頼は受けず討伐などの依頼を受けることが多いですからね…だからこその初心…"薬草採取"からということですね」
流石はパーティー内最強の母。そこの所も分かっているようで何よりだ!ん?アリシアとジェイドは冷や汗が凄そうだけど…まぁ、いいか。
「シルビア!起きて!!もう着いたから!!」
「う〜ん…ヴァンの背中…気持ちよくて寝る…」
「もう!この子ったら!!ヴァンさんに迷惑が掛かるでしょう!!起きなさい!」
ルシアが俺の背中からシルビアを剥がそうとするが…なぜか離れない。なんでこういう時だけシルビアは力が強くなるのか…はぁ…
「ルシア、いいよ。俺は気にしない…無心…無心を貫くんだ…」
「ヴァンさん…私もヴァンさんに…」
「ん?どうしたんだい?ルシア…」
「なっ何でもありません!!」
ルシアは顔を赤くしながらそう言う。何なんだろうか…まさか!?反抗期?今まではそんな素振りなかったのに…遅めの反抗期なのかな?俺がそう疑問に思っているとアリシアがニヤニヤしながら俺に近づきこう言う。
「隅に置けないね!ヴァン!」
「何言ってんの…」
なんでアリシアがニヤニヤしてるんだ…この子の考えている事は俺には理解できないね…悪いけど…ジェイドもジェイドでこっちをチラチラと見ている。俺の顔になにかついてんの!?
「ヴァンさんって意外と鈍いんですね…僕には分からないですけど…」
「えっ?グリード君!?君まで…」
「さぁ…ヴァンさん!"薬草採取"…始めましょう!分からないことがあれば教えますので…ほかの4人ももうやってますよ!」
「ん?
俺はグリード君が指を差したほうを見る。そこには仲睦まじく"薬草採取"に励んでいる
「シルビア!?いつ起きたんだ…気づかなかった…」
そう…シルビアは既に俺の背中からいなくなり薬草を採っていた。俺の背中がシルビアのよだれでビチョビチョになっているとは露知らず、皆と仲良く…ね。
「はぁ…もういいか…俺も頑張ろ!」
「はい!頑張ってください。僕は見ていますので…」
その後…全員で採った薬草の数は200を超えた…俺達は数的にももういいだろうと思い、グリード君に確認を取るとOKのサインが出る。ひと息ついた所で太陽の位置を確認すると昼過ぎになっていた。
「ヴァン…お腹すいたー。ご飯作ってー」
「俺も早く作ってくれー」
「私も…お腹が空いて…力が…」
「皆さん…ちゃんとしてください!ヴァンさんにばかり頼っていたら碌な大人になりませんよ!!」
「まぁまぁ…皆頑張ってたし…俺は龍だから疲れなんて関係ないからさ。ルシアも休んでてよ…疲れてるでしょ?」
「ヴァンさん…すいません。ありがとうございます!」
「とりあえず…適当な肉でも狩ってくるか…グリード君の分も作るから待っててね」
「ありがとうございます!」
俺はそう言い早速飛んで適当な肉を探しに行こうとする。その時…2人分の足音と大きな足音が遠くから聞こえる。俺は飛ぶのをやめてこの場の全員に教える。
「なにかこっちに来てる!武器を持って!」
この時の全員の反応速度は素晴らしい。俺が言うより先に武器を持って待機していた。そして、足音は徐々に迫ってきて、
「グボォォォォォ!!」
「あれは…巨大な猪?それよりも!!お二人さん!大丈夫?」
「はっはい!大丈夫です」
「ヘビィボアの討伐依頼をしていたら…こんな巨大なヘビィボアが現れるなんて…思ってなくて!!」
「あれはビックヘビィボア…通常のヘビィボアはDランクの下位ぐらいの強さなのですが…ビックヘビィボアはCランク相当の魔物です。皆さん…気を付けて!!」
「ビック…」
「ヘビィ…」
「ボア!!」
おいおいおい…アリシアとジェイドとシルビアが目を輝かせています。ルシアさん!どうにかして…あっ、あきらめてますねこれは…
「ルシア!結界をあの二人組に張って!」
「はい!」
『"結界魔法"
ルシアは結界魔法で二人組を囲うように四角形のシールドを張る。ビックヘビィボアは二人組に突進するが、ルシアの結界によって阻まれ、跳ね返される。
「次!シルビアは拘束魔法で拘束を!!」
「了解!」
『"水魔法"
シルビアは水魔法を使い、ビックヘビィボアを渦巻く水の中へと拘束する。勿論、水の中なので突進攻撃もできない。その隙に…
「ジェイドは脚を…アリシアは首を…斬って終わりだ!」
「よっしゃあ!!行くぜ!!」
「任せて!!」
ジェイドはビックヘビィボアの脚に向かって横に斧を振り、4足の脚は飛ぶ。アリシアの斬撃はビックヘビィボアの分厚い首をいとも容易く斬り、ビックヘビィボアは絶命する。
「よしっ!昼の食材ゲットだね!」
「すっすごいですね…ヴァンさんのパーティーって…」
「そうでしょ?自慢のパーティーなんだ!さっ!昼メシ、昼メシ」
俺はビックヘビィボアの肉を解体していく。頭部の部分は解体せずにそのままギルドで換金しようと思う。そっちのほうが金はうまいからね。
「そこの二人組みも一緒に食べよう!」
「はっはい!」
「ありがとうございます!ありがとうございます!」
俺が焼いたビックヘビィボアの肉はみんなから絶賛されるほど美味しかったらしく、俺が食う分の肉がなくなったのは言うまでもない。まぁ…いいんだけどね?
その頃…ノワール大森林の外れでは…
「巨大な魔力…強者の匂い…楽しそう!!これは"エクシア"に行くのが楽しくなりそう!!キャハッ♪キャハッハッハッ!」
双剣を手に持ち、ヘビィボアの群れの死体の上でその少女は声高らかに笑うのだった…
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冒険者ギルドまで戻ったら俺達はギルド内のザワザワした雰囲気に違和感を覚える。なにかあったのか気になりちょうど近くにいた冒険者に伺う。
「ねぇ…なにかあったの?」
「ん?あぁ…そうなんだ…実はノワール大森林でビックヘビィボアの目撃情報があったんだ。ビックヘビィボアはヘビィボアの群れから稀に生まれる個体なんだが…今年はその数が異常って事でギルド内で噂になってんだ」
「ビックヘビィボア…さっき一匹だけ狩ったんだけど…見る?」
「へ?」
その男性冒険者がアホみたいな顔をして俺の顔を見る。そんなに俺の事が信用ならんかね…仕方ない…見せてやろう!!
「はい…ビックヘビィボアの頭…これでいいでしょ?」
「なっなっなっ…討伐したのか!?」
「当たり前でしょ…なんならあの二人組に聞いてみたら?ビックヘビィボアに襲われてたから」
俺は二人組に指を差す。男性冒険者も二人組の方を見ると二人組は首を縦に振る。男性冒険者は本当の事だと信じ、俺に向かって謝る。いや、別に俺に謝られても…
「おい…みたか…あの少年…
「空間魔法なんて高度な魔法を使えるなんて…どこの宮廷魔導師なんだか…」
空間魔法程度でなんで噂になってんだろ?そう思い、ふと、ルシアの方を見るとルシアは顔を下に伏せたまま自分は関係ない様に装っていた。他3人も顔を下に伏せルシアと同様に関係ないふりをしていた。そこにグリード君が俺の耳元で囁く。
「空間魔法を使える人物は限られているんです。だから、人前では滅多に使ってはいけません。目立ってしまいますからね?」
あーそういうやつね…了解。所でさっきから2階から圧を感じるのですが…ギルマスからかな?とりあえずビックヘビィボアの頭を換金してと…おっ!銀貨30枚になった!よしよし…いい感じだね!っとギルマスのところに行かなきゃ。
「みんな!ギルマスが呼んでるみたい!いくよ!!」
全員、頭にハテナを浮かべながらギルマスのいる部屋へと向かい、ドアを開けるとギルマスが腕を組みながら座って待っていた。
「ギルマス…何のようかな?」
「"薬草採取"の依頼は達成できたみたいだな…初依頼達成おめでとう。それと最悪な事を伝える…近々、
「スタンピード…聞いたことがあります。魔力の活性化により、魔物が強化され…個体数を増やし、街へと攻めてくる…ですが、"エクシア"は2ヶ月前にもスタンピードが起こっています。こんなに早いスタンピードは通常ならあり得ません」
「ルシアの嬢ちゃんの言うとおりだ。誰かしらが人為的にスタンピードを起こしているかもしれない…その為にヴァン…お前のパーティーで調査をしてくれ。"エクシア"にいるSランクパーティーにも要請をしようと思ったんだが…生憎出払っていて今はいねぇんだ。だから、実力も十分にあるヴァン達に頼みたい!!」
「オッケー、ギルマスの頼みだもん…引き受けないわけにはいかないよね?それに…報酬はちゃんと出してくれるんだろ?」
「当たり前だ…むしろ多くしてもいい」
「よっし…じゃあ決まりだね…」
ヴァンのその顔を全員が一瞬…こう思った。
(金にがめつい!!)
ヴァンがニコニコでどう調査しようか悩んでいるとギルド職員が部屋へと入ってくる。何やら顔を青ざめてすぐにでも死んでしまいそうなほどだ。ギルマスはその職員に「何があった?」と聞くとギルド職員は息を荒くしながらこう答える。
「S…ランク冒険者…サリサが現れました!!多分…もうすぐしたらギルドマスターの所に来るかと!!」
「何っ!?サリサだと!?嘘だろおい!」
「あたしが…どうしたって?」
その瞬間…ギルマスと俺を除く全員の背筋が凍る。それはまるで猫が虎に睨まれているような感覚だった。
(気配が!?)
(勝てねぇ!?)
(この冷たい魔力!?)
(なんて圧!?ガントレットさんとはまた違う!?)
(彼女が"狂乱"のサリサ…現役のSランク冒険者…面白い!!)
「この中で…強そうなのは…君だね!キャハッ♪」
サリサはそう言い、俺を指差す。そして…一瞬で俺の目の前に移動し双剣を振る。俺は無手で受け流し、「何してんの?」と言う。サリサは「うーん…」と言いながらこう答える。
「いいね!あたしの初撃を受け流すなんて!なんて名前だったかな…そう!ヴァン!ヴァン君だったよね?あたしと決闘しようよ!!」
「決闘…嫌だけど…」
「君に拒否権なんてないよ?
彼女の緑色の眼は狂気に満ちていた……
次回 Sランク冒険者と古龍と調査
お楽しみに!!