勇者と龍 〜孤独な古龍は仲間と共に魔王討伐の旅に出る〜   作:仮面執事

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Sランク冒険者サリサの実力とは?

ヴァン…どうなる!?


第四話 Sランク冒険者と古龍と調査

 

サリサが言った言葉に周囲は驚く。なぜサリサがその事を知っているのか…どこで知ったのか…それは今はどうでもいい…

 

「俺に決闘を挑むのはいいけどさ…俺にメリットはあるの?」

 

「んー…スタンピードを止めるのに協力してあげるよ!あたしとしてもスタンピードでこの街がやられちゃうのは嫌だからね!」

 

「それは…まぁ、それでいいか…それで俺の正体をどこで知った?」

 

「あたしには嘘は効かないからね〜それだけだよ?」

 

(嘘が効かない…俺の魔力操作は完璧だ…見破れるものじゃない…となると彼女の能力かな?)

 

俺は少しサリサの事を観察する。双剣を使うスピードアタッカー的なものかな…そして…あの眼は…サリサって人殺したことあるよね?多分…

 

「早速決闘しようよ!場所は…試験会場でいいよね!!さっ行こ!!」

 

サリサはそう言うと俺の腕を引っ張る。なんちゅう馬鹿力だ!!俺、龍だけど!?この世界の女の子は力が強いのが多いね!!4人は俺に向かってFIGHT!みたいな感じで腕をぐってしてるし…はぁ…

 

 

―試験会場―

 

 

俺とサリサは互いに向き合うような感じで立っていた。サリサは準備運動でジャンプを繰り返し行っていた。そんなサリサに俺は最終確認をする。

 

「ルールは相手が降参、気絶したら勝ち…でよかったよね?殺しはなしだよ」

 

「わかってるよ…あたしもむやみに殺したくないしね?」

 

殺しそうな眼をしておいてよく言うよ。さて、審判はガントレットさんに任せよう。もしもの時に"元"Sランク冒険者がいるのは心強いしね。それにしても…

 

観客(ギャラリー)が多いように見えるけど…なんでかな?」

 

「さぁ?あたし達の決闘を見たいって冒険者が多いんじゃない?それはいいからさ…早く殺ろうよ!!」

 

殺るという言葉の意味が違う気がするけど…まぁ…いいとするか。ガントレットさん!お願いします!!

 

「それでは…決闘を始める!!」

 

ガントレットがそう言った瞬間…サリサは一直線に攻めてきた。それも物凄いスピードで…今の4人ではまずこのスピードにはついていけないだろう。4人(・・)では…ね?

 

「なっ!?」

 

サリサは驚いていた。自身の初撃を容易く躱されたのだから…俺はサリサの初撃を躱すと無手でサリサの背中に一発入れる。それをサリサは躱しきれずに喰らい、身体を地面にめり込ませが、そこはSランク冒険者…すぐさま体勢を立て直し俺に向かい合う。

 

「強いね…あたし、強い人は好きだよ!あたしも本気でやれるから…さ!!」

 

サリサは2本の短剣を抜き、俺に向かって直進する。バカの一つ覚えかなと思ったが、サリサは2本の短剣のうち1本を俺に投げ飛ばし、その短剣が俺の身体に接触した瞬間…もう1本の短剣でその短剣を押し出す。勿論、推進力が乗ってるからその威力も絶大だけど…()である俺には関係ない。

 

「まぁ…結構やれる方だとは思うけど…まだまだだね」

 

「面白い!!キャハッ♪」

 

その後もサリサは何度も俺に攻撃を繰り返すが俺には一切の攻撃が効かず、30分ほどが経過していた。時間の無駄かと思い、サリサに止めるように言おうとしたが、サリサの方から口を開く。

 

「ねぇ…ヴァン君、そんなに強いのにあの4人といる必要ある?あたし的にはないと思うんだけど…なんならあたしの所属するパーティーに入らない?そっちのほうが強い奴多いし楽しいよ?」

 

「……何言ってんの?」

 

「まぁ…つまり、今のヴァン君の眼が楽しそう(・・・・)じゃないからさ。ほら!あの4人だってヴァン君がいなくてもやっていけるからさ?あたしのとこのパーティーに来ようよ!」

 

サリサがそう言った瞬間…この会場にいた全員の背筋が凍る。その視線はすべて、会場の真ん中に立っている1人の少年に向けられていた。

 

「君に何が分かんの?」

 

ヴァンが一言そう言うとサリサの手から2本の短剣が消えていた(・・・・・)。サリサは驚き困惑する。こんな事は今までの人生においても初めてだったからだ。サリサはヴァンの方を見る。そこにはサリサの短剣を持ったヴァンがいた。

 

「この短剣って神器だよね…まぁ…俺には関係ないからいいけどさ…戦況を有利に運ぶ方法って…まずは敵の無力化からなんだよね」

 

ヴァンはその短剣を会場の外へと投げ飛ばし、サリサの目の前に一瞬で移動する。ヴァンのそのスピードには誰も反応できず、サリサすらも反応できなかった…次の瞬間、ヴァンの無手による連撃がサリサの全身を痛みつける。決闘を見に来た者たちはヴァンの事が恐ろしく見えたのだろう…なんせ、Sランク冒険者を簡単に痛みつけれる奴なんてそうそういないから…

 

「っ!?ガハッ!?うっ!」

 

「どうした?Sランク冒険者っていうのはその程度なの?」

 

「ヴァン!!ギルドマスター命令だ!!今すぐやめろ!!」

 

ガントレットさんが何か言っているみたいだけど、俺の仲間を悪く言う奴は許さない…誰も…俺にとっては初めてできた居心地のいい場所だから…誰にも奪わせない…

 

次の瞬間、俺の身体を後ろから誰かが止める。俺は手を動かすのをやめ、後ろを見ると、アリシア、ジェイド、シルビア、ルシアがいた。

 

「ヴァン!勝負はついてる。だからやめよ?ギルマスも言ってたし」

 

「そうだぜ!これ以上はその…その女が可哀想だ…」

 

「そう…可哀想!!」

 

「今回は…あちらにも非があるので許します。次はないですよ?」

 

「…ありがと…止めてくれて…サリサに嫌なこと言われたからさムカッとしちゃったんだよね。サリサの傷は俺が治すから待ってて」

 

俺がそう言うと皆の拘束していた腕が解かれる。俺はサリサに近づいて回復魔法を掛けると数秒もしないうちにサリサの意識が戻る。サリサは意識を取り戻すと小さな声で俺にこう言う。

 

「ごめんね…」

 

「勝者…ヴァン!!」

 

ガントレットさんがそう言うと会場は大いに盛り上がった…サリサの方は少し落ち込んでいたから後で何かお詫びしようかな…まぁ…今は勝利の余韻に浸りますか…

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

程なくしてギルドマスターの部屋へと呼ばれる。さっきの件も含めて色々言われるんだろうな…いやさ、誰だってあんな事言われたらムカッとするでしょ!という所でノックをし、中からガントレットさんの返事が聞こえたので全員で入るとガントレットさんと隣にはサリサが座っていた。

 

「すまねぇな休む暇も与えんで…さっきの決闘の事だが、サリサから事情は聞いた。うちの姪が迷惑かけたな?」

 

「いや、別にいいよ。本人からは謝罪は貰っ…今なんて言った?」

 

気のせいだろうか…ガントレットさんから()という言葉が出たんだけど…気のせいだよね!

 

「ん?あぁ…サリサはうちの兄貴の一人娘で俺の姪っ子だ。そういえば言ってなかった…」

 

「「「「「えぇぇぇぇぇぇ!?」」」」」

 

その瞬間、全員が大きな声を出して驚く。それはそうだ、サリサの見た目からはガントレットさんの姪っ子って分からないんだもん!

 

 

「改めまして…サリサ=ルルーシャスって言うよ♪よろしくねぇ〜。叔父さんからはお小遣いと近々起こるであろうスタンピードを止める手伝いに来たんだよ♪」

 

「すごい姪っ子だね…ガントレットさん、鼻が高いんじゃない?」

 

「俺としてはもう少しおしとやかでもいいんだがなぁ…そうじゃなきゃ貰い手が…ふぐっ!?」

 

ガントレットさんが余計なことを言いかけるが、サリサがボディーブローを咬ます。これ、悪いのはどっちなんだろ…

 

「ギルマスね」

 

「ギルマスだな」

 

「ギルマス…敵!!」

 

「ガントレットさんが悪いですね」

 

「皆の言うとおりだよ!!あたしはあたしより強い人と結ばれたいわけで…お見合いとかしたくないわけ」

 

盤上一致でガントレットさんが悪いという方向に話が向かった。てか、お見合いってどこの貴族だよ…貴族?

 

「あのさ…ルルーシャスってもしかしてすごいとこの貴族?」

 

「そうだよ♪ルルーシャス公爵家っていう名家なんだよ。あたしはそこの長女ってわけ♪」

 

「てことは…」

 

 

最高階級の貴族の娘→決闘→ボコボコにする→死刑

 

 

「俺は死刑ってこと?マジで?」

 

「いや…今回はあたしに非があったからいいよ。それに今は冒険者だしね」

 

「よかったね!ヴァン!」

 

「よかったな!」

 

「よかった…」

 

「はぁ…皆さん、気が軽すぎないですか?というか、調査の話が諸々流されていますが…そこはどうなんでしょうか、ガントレットさん?」

 

「あーそれなんだが…グリード!!あいつ呼べるか?」

 

ガントレットさんがそう言うとグリード君がすぐに部屋に入ってくる。グリード君…絶対、待機してたじゃん…

 

「あの人ですね、分かりました。すぐにお呼びします」

 

グリード君はすぐに部屋から出ていき、1分もしないうちに例のあの人と一緒に来る。その人は気だるげそうな顔で自己紹介を始める。

 

「レルノっす!!最近、冒険者になったひよっこです!!よろ…」

 

レルノと呼ばれた男と目が合う。彼は青ざめた顔をし、ガントレットさんの耳元で呟く。ガントレットさんは頷きながら話を聞き、俺にこう言う。

 

「ヴァン…レルノ、ボコったってマジな話か?」

 

「知らないけど?」

 

「嘘つけ!!俺の盗賊団壊滅させただろ!!ほら、あの盗賊の長だよ!!」

 

「・・・?」

 

「うーん…思い出せない…」

 

「俺も…記憶にないな…」

 

「私も…記憶…ない!!」

 

「すいませんがどなたかと間違われているのでは?」

 

「間違ってねぇよ!!俺の盗賊団壊滅させただろ!!俺達ってそんな影が薄かったのかよ!!」

 

レルノは膝からガクッと崩れ落ち、頭を抑えながらそう叫ぶ。知らないものは知らない。4人はなんか知ってそうだけど、あえて関わらないようにしているみたいだね。

 

「まっまぁ、"元"盗賊だが、今では立派な冒険者なんだ。レルノの評判はこの街に来てからいいほうなんだぜ?俺もレルノのことは評価してる。こいつも一応、お前たちと同じDランクだから、認知はしておけよ」

 

「叔父さん、レルノさんってさ普通だったらAランク位あるよね?でも…あっ、ランク制度…か…」

 

「そう、サリサの言うとおりランク制度でDランクなんだ。この5人組パーティーも本来ならAランクの実力を持っているんだが、如何せんランク制度のせいでDランクになってんだ」

 

「ヴァン君は別物でしょ?叔父さん!」

 

「うぐっ!?そうだな…ヴァンは…その…特別だな…」

 

おいおい…なんでちょっと規格外の存在みたいな扱いされてるのさ!おかしくない?

 

「それで?レルノをパーティーに組み込んで調査しろってことね…了解」

 

「えっ!?」

 

「はあ!?」

 

「?」

 

「嘘ですよね?」

 

なんで皆そんな否定的なのさ。レルノの方を見ろ!彼のライフはもうゼロよ!!

 

「まぁまぁ、斥候役は必要だし…ちょうどいい感じかな。よろしくね…レルノ?」

 

「あっあぁ…よろしく…えっと…ヴァンさん」

 

「ヴァンでいいよ。他の皆のことも呼び捨てにしていいからね?」

 

「オッケー、そっちのほうがやりやすいわ」

 

俺とレルノはお互いに握手を交わし、一時的にレルノがパーティーへと加わった。そして、サリサを除く一行はノワール大森林の西にあるダンジョンへと足を踏み進めていく…

 

 

―ノワール大森林 西のダンジョン―

 

 

「サリサ…行きたそうにしてたね…まぁ、Sランク冒険者が街を離れている間にスタンピードが起きる可能性もあるし妥当っちゃ妥当だと思うけどね」

 

ちなみにサリサをめちゃくちゃボコしたから何かお詫びにしようかと尋ねたんだけど…その内容が…ね?

 

『じゃあデートして欲しい。あたしはそれでチャラにするから、それでよろしくね?ヴァン君♪』

 

『じゃあそれでいいね。スタンピードとか諸々片付いたらしようか"デート"』

 

とそんなふうに決めたんだけど…ルシアが頬を膨らませてずっと怒ってんだよね。なんでだろう?

 

「ヴァン!このダンジョン、めっちゃ暗くて怖いんだけど…私…暗いの嫌なんだけど…」

 

「アリシアは昔からそうだもんな…だから、小さい時からルシアと一緒にぃぃぃぃ!?」

 

「うるさい!!そんな昔のことを話すな!ジェイド!!」

 

「てめぇらはもっと危機感を持ってくれや…斥候役の俺が可哀想なんだが…」

 

「何か言いましたか?レルノさん?」

 

「ひゅっ!?なんでも…ないっす…なんでも…」

 

いくらなんでもレルノが可哀想すぎる。いや、確かに盗賊をしてたなら信頼なんてクソほどないのは分かるけど…このままじゃレルノの心が折れちゃうよ…

 

「ねぇ…流石にレルノが可哀想すぎるんだけど…昔は盗賊をしてたけど今、してないならそれでいいんじゃない?俺は昔の事は振り返らずに前に進むけど」

 

「そっそれもそうですね…レルノさん…すいませんでした…」

 

「私も…」

 

「俺も…」

 

「……自分も?」

 

って…なんでシルビアは疑問形なの!?まぁ、謝ったことには変わりないし…いいかな。レルノなんて「謝れるの?」みたいな顔してるし…まぁ、いっか!

 

「まぁ…謝ってくれんなら俺は許すけどな!俺ってば心が広いからな!」

 

レルノは松明の光を灯しながらそう言い、前を歩いていく。よかった…なんとか士気は保てそうだね。てか、ずっとダンジョン内歩いてるけど、魔物と遭遇しないね…何か妙だな…

 

「うーん…引き返してギルマスに報告しに行こうか。どうも魔物と遭遇しなさすぎる」

 

「そうですね。本来ならダンジョン内は魔物が多くいるはずですし、これは異常事態です…ヴァンさんの意見には賛成ですね」

 

「わっ私もそう思ってたの!」

 

「おっ俺もそう思ってたぜ!」

 

………アリシアとジェイドはまだ、やりたがりそうだね…おっと?ルシアさんがお怒りマーク表してる…ご愁傷さま!アリシア!ジェイド!!

 

「ヴァン…眠い…」

 

「シルビア?眠そうにしてるけど我慢できる?ダンジョンからは出るからさ、もう少し我慢しようか?」

 

「無理っ!んっ!」

 

シルビアは俺に向かって両手を広げてきた。おんぶしてほしいのか…17歳とは思えないほどの甘えん坊体質だ…でも、魔物がいない以上は安全だし、おぶるかぁ…

 

「シルビア、俺の背中に乗って」

 

「うん…おやすみ…」

 

「はい、おやすみ」

 

シルビアを背中におぶり、そう言うとシルビアはすぐに寝息を立て始める。全く、天使みたいな寝顔をしてる。シルビアが背中で寝てる以上、俺は戦闘とかは出来ないからルシアに目線をやってお願いする。

 

「!そうですね、万が一魔物に出くわしたらヴァンさんとシルビア以外で迎撃しましょう」

 

「魔物との戦闘…楽しみすぎる!!」

 

「俺も、ワクワクすっぞ!!」

 

「なぁ…お前等っていつもこうなの?」

 

レルノの言い分には俺もそう思う。でも、これが俺達のパーティー"星"(ステラ)なのさ!ふふっ…かっこよく決まったぜ…と言っている間に全員、来た道を戻りながら進んでいく。まぁ…罠とかは全部レルノに解除させるか避けてるし大丈夫でしょ…

 

 

カチッ…

 

 

「ん?カチッ?あっ…」

 

「ヴァンさん…何かカチッと音がしたんですが、何の音ですか?」

 

「ごめん…スイッチ…踏んじゃった!」

 

「「「「えっ?」」」」

 

全員がぽかんとしながらも落とし穴が発動する。そして、その落とし穴に全員が急速落下を始める。

 

「「うわぁぁ!?」」

 

「きゃああ!?」

 

「すぅ…すぅ…」

 

「おいっ!?ヴァン!!どうすんだよ!?」

 

「レルノ落ち着いて…こうするんだよ!!」

 

『"風魔法"風の抱擁(ウィンドクッション)

 

風で地面に空圧を乗せ、落下のダメージをなくす。ひとまずは安心だけど…結構下の階層まで行っちゃったね…上まで戻るには時間が掛かりそうだ。それに、目の前のデカい扉…ボス部屋かな?

 

「このデカい扉…ボス部屋だね」

 

「えっ!?ボスッ!!ヴァン!やってもいいんだよね!!」

 

「アリシア!!俺がボスと戦うんだよ!!いいよな?ヴァン!」

 

「まぁ…いいんじゃない?ここで経験積んでたほうが良さそうだし、ルシアも今回は注意とかはしないように」

 

「うっ、分かりました…今回(・・)は!見逃します」

 

「てめぇらなんでそんな呑気なこと言ってんだよ!?あの部屋の中から漂う気配…あれは!?」

 

「しぃぃ…確かに強そうな感じだけど、勝てない相手じゃない。レルノもここで強くなっておかないと、俺達とは今後とも組むかもしれないからね?」

 

俺はそうレルノに言い、扉を開ける。開けた先にはボスと思われるビックヘビィボアよりも圧倒的に大きなヘビィボアが大量の血を流しながら倒れ、その頭の上には2本の黒い角を生やし、紅色の長い髪を1つに束ねた眼がどす黒く染まり、瞳孔は赤く光っているグラマスな美人さんがいた。

 

「あらぁ…いらっしゃい、ここまで来るのが早かったねぇ…罠でも引っ掛かったのかしらぁ?」

 

「まぁ、そんな所だよ…お姉さん?俺はヴァン=アストリウム、よろしくね」

 

「ちょっ!?ヴァンさん!自己紹介なんてっ!相手は魔族(・・)ですよ!?」

 

「魔族!!初めて見たけど強そうね!!」

 

「たぎってきたぜ!俺の出番だな!!」

 

「チッ!俺はここにいるだけで息が詰まるっていうのによぉ!!呑気にヴァンの背中で寝てるやつもいるしよぉ!!」

 

「ふふっ…面白そうなお客さん達ね?おっと…そっちが名前を言ったんだから、こっちもしなきゃよね?私の名前は"アスモデウス"…魔王様直属の十二天魔将"ソロモン"様の配下よ」

 

「十二天魔将の配下!?ヴァンさん!これは非常に…」

 

「へぇ…十二天魔将、ね…」(アスモデウスの()から見て俺が参加しなくても勝てそうかな…でも彼女って…)

 

「君ってさ…悪魔(・・)だよね?それも高位の…」

 

「おいおい…ヴァン、悪魔ってマジかよ?」

 

「レルノ…マジだよ」

 

「私の事、よく悪魔って見破れたね?そうよ、私は高位の悪魔…それでいっても32位なのだけれど。それよりもヴァン…だったかしらね?貴方は魔族の癖してどうして人間の味方をしているの?貴方の眼って、人間…殺したことある眼でしょ?」

 

アスモデウスはそう言う。確かに、過去にそんな事があったかもしれないけど…今は関係ない。俺は俺の仲間を信じるだけだから…

 

「ヴァンさんを悪く言うのはやめて貰いましょう!!アリシア!お願いします!!」

 

「りょーかい!!」

 

聖なる一撃(シャイニングスラッシュ)!!』

 

「っ!?やってくれたわね!!それに…再生が出来ない!!光属性かっ!?」

 

「油断してるのが悪いのよ!!」

 

アリシアがアスモデウスの隙を突いて、左腕を切断する。アリシアの一撃には光属性が付与されているため、悪魔であるアスモデウスにとっては天敵であった。アリシアの攻撃に警戒してか、アスモデウスは後ろへと後退する。しかし、ジェイドがアスモデウスの後ろへと回り込んで両手斧に闘気を纏わせる。

 

「これでも喰らいやがれ!!」

 

『龍鉄斬!!』

 

「ぐはっ!?」

 

ジェイドはアスモデウスの背中に重い一撃を与え、アスモデウスは深い傷を追う。それに加え、先ほど喰らった光属性の一撃によって、未だに再生が出来ない状態だった。

 

「ならば!!」

 

闇の炎(ヘルフレア)!!』

 

アスモデウスは闇魔法で黒い炎をジェイド目掛けて飛ばすが、ルシアが貼っておいた結界によって弾かれる。アスモデウスはルシアの結界魔法に警戒したのか、ルシアに向かって突き手を放つが…

 

「なっー!?」

 

「ハァァァ!!」

 

「嘘だろぉぉぉ!?」

 

ルシアはアスモデウスの腕を掴み、背負い投げをかます。これにはレルノも眼が飛び出るほど驚いていた。無理もない、後衛支援職の非力そうな女の子がいとも容易く格上であろう相手に体術で勝っているのだから…

 

「ルシアは私達の中じゃ、体術は一番強いのよ!!私は勝ったこともないわ!!」

 

「俺も体術に関してはルシアの方が上だと思ってる!!よっ!怪力ゴッ…ぐへぇ!?」

 

「余計なことを言わないでください!!はぁ…回復職のはずなのに…どうして…」

 

「まぁまぁ、後衛だからこそ敵に狙われやすいんだからさ、その時に守ってくれる奴がいるとは限らないでしょ?その為の護身術だと思えばいいんだよ」

 

「ヴァンさん…フォローありがとうございます」

 

「んー…ヴァン…どういう状況?」

 

嘘でしょ!?今、起きたの!?結構騒がしかったと思うんだけどな…まぁ、よだれ垂れながらの寝起き顔は可愛いから許すか…

 

「シルビア、とりあえず俺から降りて今戦闘中だから」

 

「んっ…分かった…敵はどこにいる?」

 

「あそこで仰向けになってるよ。ルシアが背負い投げしたんだよ」

 

「ルシア…ゴッ…いや…なんでもない…です…」

 

シルビアが余計なことを言いそうになるが、ルシアが圧で黙らせる。流石はうちのパーティーのお姉さん枠だ。所で…あの仰向けになってるよアスモデウス…どうしようか?

 

(私が…人間に負けた?嘘だ…私は高位の悪魔…負けることなんて許されない!!あいつらの中で一番弱そうなの…あいつ!!)

 

アスモデウスは飛び起きると、シルビアの背後に回る。多分…シルビアが一番弱いと思っているのだろう…なんせ…俺と同じように魔力を制限(・・・・・)しているからね。

 

カキンっ!!

 

アスモデウスの攻撃はシルビアが魔法で生成した土の壁によって防がれる。アスモデウスが驚くのも束の間にシルビアの杖の先端に魔力が集まる。あれは…火炎球(ファイアーボール)か…魔力量が多すぎるから火の球も大きいなぁ…

 

火炎球(ファイアーボール)!!』

 

「無詠唱魔法…だとっ!?人間如きにそんな芸当ができる奴がいる…なんて――――!?」

 

シルビアが放った火の球に直撃したアスモデウスは身体を再生できず、ほぼ致命傷の状態だった。アスモデウスは息を切らしながらこう言う。

 

「なんで…ハァハァ…魔力の全くない人間と勇者の卵……聖の力を持つ聖女の資格を持つ女……ハァハァ……そして…私の数倍近くある魔力量を持つ少女…ヴァン…だったわね…とんでもない化け物を育てたわね……ハァハァ……もう…いい、殺してくれ…」

 

「えっ?嫌だけど?君には活躍してもらわなきゃね」

 

「――――?どういう意味?私は悪魔よ…契約しているソロモン様の命令以外、命令は受け付けない」

 

「単純な話だよ、契約者を俺に変更すればいい。悪魔はどうせ死んでも生き返るんだからさ俺が君を召喚して、契約を交わせばいい。このダンジョンの魔物を全滅させたのって君じゃん?それによって冒険者の収入って減るんだよね。あとはスタンピードを起こさせようとしてるのも君の所のでしょ?だから…尻拭いをさせるってわけさ。皆もそれでいいでしょ?」

 

「ヴァンがそう言うならそうしたらいいよ。私も戦力は多い方がいいしね」

 

「俺もだな。強い奴といつでも戦えんならそれでいい」

 

「私も…ヴァンの意見に…賛成!!」

 

「ヴァンさんらしい…ですね。私も戦力は多いに越したことはありません。ヴァンさんの好きにしていいですよ」

 

「っと、いうことだから…1回死んでね?」

 

「えぇ…また…」

 

そして俺は一瞬でアスモデウスを塵に帰す。その時にアスモデウスの髪の毛を少しだけ拝借したのは言うまでもない。アスモデウスの消滅をある者が認識しているとは露知らずに…その者は2本の角を生やし、紫に染まった長い髪を垂れ流し眼がどす黒く染まり、瞳孔は赤く光らせていた。それとは反対側の椅子に座り、黒髪をウェーブ状にした少女が眼を紅く光らせながらその者を笑顔で見ていた。

 

 

「アスモデウスが消滅した…契約はこれにて破棄だな…全く、我の配下というのに弱いものよな」

 

「へぇ…アスモちゃんが消滅したんだってね?強いやつかな?」

 

「知らん…我は興味がないのでな。して、主は何用でこちらに来た?」

 

「僕が今、"城塞都市"エクシアを攻めようとしてるのは知ってるでしょ?君にも協力してほしいと思ってさ。アスモちゃんをノワール大森林の西のダンジョンに行かせたのも君でしょ?だからさ、君の部下を何人かこっちに寄越して欲しいってわけ」

 

「ふむ…そうか、丁度いい…アスモデウスを倒した者を探すついでだ何人か我の部下を寄越してやる。お前の方でアスモデウスを倒した者を調べておいてくれ」

 

「りょーかい。じゃあね!ソロモン君!」

 

「ふんっ…貴様の顔などは定例会議で見るだけで充分だ…シャドウ」

 

「そうだね、君はそういうやつだもんね?君もアスモちゃんを倒した奴に勘付かれないようにするんだよ?たとえ、"エクシア"に内通者を紛れ込ませていようとね?」

 

「分かっておる…さっさと去ね」

 

ソロモンがそう言うとシャドウは影の中に入りながら去っていく。ソロモンは内通者から貰い受けた情報に目をやりながらため息をつく。

 

 

「"要注意人物"ヴァン=アストリウム…魔王様に報告しておこう…そして…"勇者の卵"アリシア…か…なかなか珍妙な関係だな…」

 

 

そして、ノワール大森林の西のダンジョン外でアスモデウスは目覚める。そう、ヴァンによって召喚させられたのだ。それから、ヴァンには"定期的に魔力をやる"という契約で主従関係を結ぶのだった…

 

 





次回 スタンピード発生、そして…

今回の話はどうだったでしょうか?

ちなみに小話なのですが…シルビアの魔力量について

シルビアの魔力量はヴァンの魔力量の3割位の魔力量を持っています。人間族の中でも非常に多いですね。ジェイドは魔力は全くありません。アリシアは人間族の中では魔力量は多いですが、本当に人間族の中で多いだけで他種族と比べても少ない方です。逆にルシアの魔力量は精霊族と比べても遜色ないほどの魔力量を持っています。

Sランク冒険者のサリサの魔力量ですが、人間族以上精霊族以下位ですね。

さて…次回はスタンピードがとうとう発生!!"城塞都市"エクシアどうなるっ!?です!お見逃しなく!!
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