砂漠と闇夜が支配する荒涼たる原野を巨大な影達が葬列のように練り歩いている。
それらは一様に全身を覆い隠すような黒い布を頭から被りその顔部分には鼻の尖った骸骨めいた白い仮面を付けていた。
その胸部には黒衣のみならずその内部の肉体さえ貫く大穴が開いており寒々しくその内部を晒している。
彼らの足取りからは意志を感じることもない。時折苦しげに呻いたかと思うと共食いをして数を減らしまたどこからともなく別の群れと合流したかと思えば当てもない放浪を続けている。
彼らの名は
最下級の名の通りこの原野において(大虚にすら至らない有象無象の
そんな彼らの目の前にまた一体の最下級大虚が近づいていた。
平時であれば単に群れに組み込まれいずれ共食いし合う仲になるだけなのだがその個体はどうも様子がおかしい。
その仮面の造形は無個性に統一された他の最下級大虚達とは異なり虫の頭部のような造形をしていた、即ち鋏のような顎と額から伸びる二本の触角である。
その色合いは身に纏う黒衣と同じ黒に染まっており先に述べた造形と相まって蟻の貌のように見えた。
黒面の大虚の足取りはその他の群れ達とは異なり明確な意志が感じ取れる──即ち敵意である。
黒面が群れと接触して真っ先に行ったのは先頭の個体に対しての噛みつきである。
噛みつかれた大虚はいっそ哀れに思えるような絶叫を上げたかと思うと数秒後には音を発するための喉笛を食いちぎられて物言わぬ骸に成り下がった。
大虚達はそれで即座に察した。目の前のそれが自分たちと同じようなものに見えてその実圧倒的に捕食者側の存在であるということを。
この時ばかりは意志の薄い最下級達でも生存本能に任せて逃げ惑う。
だがそれを許しては黒面も捕食者などやってはいられない。鋏のような顎の間に何か光のようなものが収束したかと思えば逃げる彼らの足元を次々と撃ち抜く。
そして踵を壊され無様に転げ回る餌食達に無慈悲に噛み付きその命を絶った。
群れの全てを骸に変えてその身を貪ること数刻、やがて黒面の体に変化が起こる。
身に纏う黒衣が徐々に硬質化し内部の肉体に張り付くようにして縮んでゆく。
元々全身を黒衣に包まれる姿をしていたが故に硬質化したそれに全身を閉じ込められ圧縮されるようにそのまま縮んでいかざるを得ない。虫の面も合わせてその姿は蛹にも似ている。
やがて二回り超えて三回り以上も縮んだと思えばそれっきり動きを止めてしまう。
無防備である。
その姿を更なる捕食者が見ていた。