虚圏の黒蟻   作:LieND

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宰相の宣誓

アーロニーロ・アルルエリ。グリムジョー・ジャガージャック。バンビエッタ・バスターバイン。

BLEACHに登場する名前と言うのはどれも素晴らしいセンスを感じるものばかりである。とてもではない模倣できるものではないと言うのが当時真似しようとして火傷した直撃世代のガキどもの共通認識ではないだろうか。

何故こんなことを考えているのかといえば。

 

「お聞かせ頂きたい……アナタ様のその御名を。」

 

自分の名前として世界観に違和感のない名前を考えないといけなくなったからである。

ただでさえあのセンスに馴染める気がしないのにさらにはそれを自分の名前として名乗らなくてはいけないのはなんの冗談だろうか?

 

「……ミケラ・フォルミカ。私はそう名乗ることにしよう。」

「ミケラ様……良い、良い名であります。」

 

不意に脳裏によぎった名をそのまま口に出せばセンチネルは素直にそれを誉めてくれた。

しかしなんだろうかコイツは、突然態度が変わって少々ばかり気味が悪い。

 

「おお、ミケラ様が不可解なものを見る目でワタシを見つめていらっしゃる。」

「いや、実際不可解だよお前は。一体何が目的で私に傅く?」

「はい、アナタ様には是非王になって頂きたく。」

「王……ねぇ。」

 

虚の王、そう聞いて思い起こされるのは王冠を被った髑髏の顔。今最も相対したくないそれの名をバラガン・ルイゼンバーンという。

原作においては虚唯一の王であり神をも自称する彼は老いの能力を操る事で強力に虚圏を統治していた。

現状の自分では先ず以て相手にすらならないだろう。

 

「王が不満ですか?しかしながらミケラ様は御身がどれほど他と隔絶した存在かが自覚なさるべきかと。」

「隔絶?」

「まずそもそもとして……黒い仮面の虚というモノはワタシこの虚としての生涯において見たことがございませぬ。更には蛹という形態を経るその進化過程も同様で、だからこそ蛹のアナタ様をタダの中級大虚として襲ったのです。」

「それだけではどうにも根拠が薄く感じるが?」

「もちろんそれだけではございませんとも。先の戦闘でアナタ様がお見せした黒い虚閃、加えて現在の御身に備わった青白く輝く霊子の翼!どちらもただならぬ力を感じさせるモノでございました。」

「……うん?」

 

センチネルの語った力には心当たりがある。

黒虚閃(セロ・オスキュラス)─原作において虚と死神の力を兼ね備えた破面(アランカル)、その中でも十刃(エスパーダ)と呼ばれる一団が力を解放した時のみ放てる物がそれのはずだ。

加えて霊子の翼というものにも近いものが知識にある。

滅却師(クインシー)滅却師最終形態(クインシー・レツトシュティール)もしくは滅却師完聖体(クインシー・フォルシュテンディッヒ)に備わる筈のものだ。

私の記憶にある限りは聖隷(スクラヴェライ)と呼ばれる霊子の隷属によって取り込んだ霊子を貯蓄する器官といった印象が強い……尤も私の能力はまだ霊子の収束の域を飛び越えているようには思えない。

先ほどから大気中の霊子が緩やかに収束され自身の身に取り込まれているのは感じるが隷属の域に達した力は周囲の霊的構造物をも分解して霊子に還元、取り込む力だからだ。究極的にはまだ生きている霊体からさえ霊子を簒奪することさえ可能な筈だが私がそこまでいくとは到底思えない。

とはいえ、とはいえだ……虚のこの身に死神と滅却師の力と思しき物が宿っているのは少々以上にきな臭い。

 

「……過ぎた力だな。」

「であればこそ力に見合った立場というものを築くべきかと愚行致しますれば。」

「だが王を目指す過程でどうあっても敵を増やすことになる。」

「しかしながらミケラ様は力のみならずその御姿におきましても目を引くことは間違いないかと……そんなにご不満ですか、王になることが。」

「逆にお前はなぜ私を王にしたい?そこが見えなければ信用などしようもないじゃないか。」

「然り、確かにそれはそうでございます。そうですね……ワタシ生前は宰相、あるいはキングメイカーなどと呼ばれるニンゲンでありまして、まあ趣味ですな。」

「お前の趣味で茨の道を歩まされそうになっているのか?」

「ワタシを無視したところで御身に降りかかる火の粉は減りませぬぞ?ミケラ様、アナタ程の力があれば神さえ目指せます。」

「また大仰なことをいうなお前は。」

「いえいえ、強大無比な力を持った何者かが神を名乗るのもこの虚圏ではまことに自然な話ですとも。」

「……そんなに神がいるのか?」

「まあ?両の手指で足りないくらい……私の足の爪には遠く及ばない程度には。」

 

頭を抱えたくなるのをかろうじて堪え考える。

神々が闊歩する虚圏。それはBLEACHという漫画の物語が始まる遥か以前、護廷十三隊が成立した初期の話であり。

やがて数多の神々を世界ごと焼き払うかの如き暴虐をその最初の総隊長が振るう前の話である。

必然私にとってもそれは他人事ではないのだ。

 

「どの道……どの道か。」

「どの道ですとも。」

「しかしどの道ならば……お前を生かしておく必要もないのではないか?」

「ああ……それはワタシを喰らうと?」

「力を欲するなら取り敢えず喰らわねば、違うか?」

「左様、でありますな。」

「言い残すことはあるか?」

「では一つ命乞いをばさせていただきたく。」

「ほう?」

「ワタシ先ほども言った通りに宰相にしてキングメイカー、生かしておけばアナタ様の道行の杖となりましょう。」

「口だけでならなんとでも言えよう、何を賭ける?それとも何に賭ける?」

「ではアナタ様が王になった時、その時アナタ様が生かして良かったと思えていたならばワタシをそのまま生かして欲しく。」

「気の長い話だな、それまでは待てと?」

「きっと後悔させませぬ。」

 

ここまでやっておいてなんだが実は私はセンチネルを食う気はとっくにない。こんなに会話した相手を食うというのもなかなか抵抗があるのだ。

しかし見逃すにしても共食いが基本の虚がただ見逃すというのはどうも不自然なので体裁を整えようと思ったのである。とはいえこの提案はなかなかに面の皮が厚い。

 

なんにせよこれでセンチネルは正式に私の配下ということになる。

ひとまずの目標はやがてやってくる初代護廷十三隊。彼らをどうにかやり過ごすことである。

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