王を目指すことは定められた。定められてしまった。ならば最初に確認するべきことがあるだろう。
センチネルと私の間でその認識が一致し即座に簡易的な会議のようなものが開かれる。
といっても参加者二人の一問一答であるのだが。
「それで、私が王になるにはどうすればいい?」
「そうですね、最上級大虚への進化は前提といたしまして……その他三つ必要な物がございます。」
「三つね、それは多いのかい?それとも少ないのかい?」
「標準的、でございます。どんな王であれこの三つは避けて通れませぬ。即ち土地と臣民と
「土地と民というのはわかる…が、王権とはなんだ?」
「国土とそこに住まう民が居たとしてそれを支配せねば王とは言えません。またその支配の正当性を示すことができなければ叛逆の嵐が吹き荒れ侵略の手が湧き続けることとなります。それを防ぐための視覚化された王の証が王権でございます。」
それを聞いて顔を顰める。つまりは選定の剣や玉璽、或いは三種の神器のような物だ。
それの正当な保有者であるということが有無を言わさず王であることを証明する物。
「そもそもそんな物が虚圏に存在しうるのか?」
記憶にある限り虚圏は見渡す限り砂と枯れ木の不毛の世界だ。そこに王者を証明するような神秘的なものが落ちているとは考えにくい。
「ええ、はい。正直なところを言えばミケラ様に就きましては王権の心配はないかと。」
「……なに?」
「虚圏で支配の正当性とは即ち力です。であるならば王権も力を証明するものが望ましい。その点殿下の翼と黒虚閃、そして漆黒の仮面はその力の特異性を存分に示すものです。」
「いや…その3つは駄目だ。」
いずれ藍染惣右介の手で破面が現れ完成された十刃が組織されたならば黒虚閃は使い手が増えてしまうだろう、それこそ今から考えれば遠い未来の話だが知っている以上無視できる話ではない。
黒い仮面も王権とするには不安が残る。いずれ自分が破面となる事を考えた時にはこれを自ら砕くことになる。どの程度その名残が出来るかは不明だが壊す予定のものを王権には出来ない。
では霊子の羽はどうだろうか?これも駄目であろう。今現在中級大虚である自分が最上級大虚に至った時、その進化に伴う変化でこの羽が失われる可能性は無視できない。
要は取り込んだ霊子が貯蓄されて羽に見えているだけなのだ。もしもこれを完全に体内に取り込むような進化を遂げた場合見かけ上は失われたというように捉えられかねない。
「お前には悪いがこの3つは王権に適さない……その理由はいろいろあって説明しづらいが。」
「なるほど、それでは仕方がありませんね。他をあたるとしましょう。」
「何も聞かないのか?」
「聞いたら答えていただけるのでしょうか?そういうことです。」
その後に彼が言うに曰く、余計な詮索はしないに限る─なぜなら余計だからだ。
至言だと思った。
「ともあれ今あるものが使えないならば新たに作るか探すか……いずれにせよ時間はあるのです。」
時間はある、そもそも最上級への進化がなされなければ王を名乗るなど烏滸がましいのだから。
結局この日の話し合いで決まったのは力をつけながら仲間を探すという酷く曖昧な方針のみであった。