チャンバラヒーロー“ザンテツ”   作:きりきりまい

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この小説では、尾白くんにはBクラスに行ってもらい、Bクラスの黒色くんは士傑へと行ってもらっています

タグをごちゃごちゃさせるのは好きではないので、この場でご説明とさせていただきます













 時は流れて、四月。

 雄英高校の入学式が開かれる今日は、真新しい制服に身を包んだまだまだあどけない新入生たちが新天地へと向けて歩を進めていた。

 

「…………ん?」

「ん」

 

 信号待ちをしていた山吹丈瑠は、不意に隣へと現れた気配に目を向けた。

 見れば、見覚えのある女子。身に纏うのは、揃いの制服だ。

 

「あの時の……足は大丈夫だろうか?」

「ん」

「そうか。素人診断だったが、後遺症が無くて何よりだ」

 

 丈瑠が頷き、同時に信号が変わり二人は並んで歩き出す。

 

「そう言えば、名乗っていなかったな。俺は、山吹。山吹丈瑠だ」

「ん」

 

 名乗った丈瑠に対して、少女は頷くと徐にスマホを取り出してその画面を操作。そして、その光る画面を丈瑠へと向けてくる。

 

「ん?小大唯、で良いのか?」

「ん」

「よろしく頼む、小大」

「ん」

 

 頷く少女、小大唯は頷きながら不思議にも思う。

 彼女は無口だ。それは、自他共に認める所だろう。真面に会話する事もほぼほぼ無い。単語をぽろぽろと喋る位か。

 そんな彼女が、今回態々接触した少年は少々変わり者だったりする。

 

「…………」

 

 特に何かを話しかけてくることはない。しかしその一方で、頭一つ分は違う身長差がありながら小大は歩行の辛さを感じることが無いのだ。

 チラリと小大が足元を見れば、丈瑠の足の長さに反してそのコンパスは少々狭め。それこそ、()()()()()()()()()()()

 試しに、少しだけ歩調を乱してみる。すると、隣の少年は特に小大の方を見る事無くその歩調を完璧に合わせてみせた。

 速めてみたり、遅くなったり。走るまではいかずとも緩急をつけたその歩みに、しかしまるで影法師が追従するように少年は合わせてくる。

 

「…………どうした?」

「んーん」

 

 ブンブン、と首を振る小大。

 もっと聞く事があるだろうに、少年は少女の奇行を咎めるような事は無かった。

 そもそも、丈瑠自身は合わせる心づもりがあって歩幅を合わせていた訳ではない。

 癖の様なものだ。彼が技を学んで体を鍛えた道場で、文字通りその身に刻んで体得した技術。コレはそのオマケの様なものだ。

 そのままぽつりぽつりと言葉を交わしていれば、校門前へと辿り着く。

 

「俺は……A組か」

「B」

「そうか。隣のクラスだが、仲良くしてくれると嬉しい」

「ん」

 

 ソレはお互い様。そんな気持ちを込めて小大は頷いた。彼女とて、新天地で一から繋がりを築いていかねばならないのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 個性というものが広がってから、人々の見た目は文字通り多種多様な見た目を有していた。

 特に顕著なのは、異形型と呼称される文字通り人間という雛型から大きく逸脱した見た目を有する者たちだろうか。

 手足の数が多いなどは序の口。

 性差などは関係がない。それほどまでに見た目は千差万別だった。

 故に、ユニバーサルデザインなども超常黎明期以前等と比べても大きくその中身を変えている。

 

「……大きな扉だな」

 

 小大と分かれて、教室の扉の前に立った丈瑠は上の梁を見上げて言葉を零す。

 扉に手を掛ければ、思いの外軽い感触で開かれた。

 始業時間にはまだ早いが、既に数人の生徒が登校していたからか席は疎らに埋まっている。

 席は、名前順。一クラスは、二十名のAB合わせて四十名がヒーロー科という狭き門を突破した精鋭たちという事になる。

 丈瑠の席は、窓際最後尾。

 机の間を縫って席へと向かい、荷物を置いた丈瑠は一つ息を吐き出した。

 瞬間、背後に気配。

 

「やっほー!お隣さん?」

「ん?」

 

 騒がしい声に振り返れば、そこにあるのは女子制服。より正確には、女子制服が一式空中に浮いており両腕をパタパタと動かしているではないか。

 

「ああ、そうだな。これからよろしく頼む」

「うんうん、よろしくねー!それにしても、凄いね!」

「凄い?」

「うん!私と目線がちゃんとあってるもん!()()()()()()()?」

「まあ、そうだな」

 

 丈瑠は頷いた。

 彼に声を掛けてきたのは、透明人間の少女であったからだ。それこそ、制服を着ていなければ気付く事も無いかもしれない。

 とはいえ、丈瑠としても特段何かしら特別な事をしている訳ではない。

 

「ねね、どうやって分かったの?」

「ふむ……特別な事はないぞ。制服の高さから、ある程度の身長は把握できる。制服に特殊な改造は見受けられないから異形系の個性でもないと仮定。声の出所から口の位置は割り出せる。そこから辿ってある程度の目の位置も割り出した」

 

 右手の指を人差し指から立てつつ、丈瑠は自分の軌跡を説明する。因みに、目を合わせるという部分は彼が武術家として必須技能であったから体得した能力だったりする。

 一方で、淡々と説明された少女はプルプルと震えると勢いよく丈瑠の手を取った。

 

「凄い凄い!カッコイイね!」

「カッコイイのか?」

「カッコイイよ!あ、私 葉隠透!よろしくね!」

「ああ。山吹丈瑠だ」

 

 ぶんぶんと掴んだ右腕を振り回す葉隠の声は、とてもよく弾んでいる。

 振り回される丈瑠も、特に振り払う様子もなくされるがまま。

 その中で、不意に視線を感じてそちらへと視線を向けた。

 

「っ!」

「?」

 

 丈瑠の前の席の女子が、チラチラと騒ぐ葉隠とされるがままの丈瑠に視線を送ってきていた。

 合っていた視線が動いた事に気付いたのか、葉隠もまた件の女子へと視線を向ける。

 

「あ、山吹くんの知り合い?」

「いや。初対面だな」

「そっか――――」

 

 葉隠はその答えに何を思ったのか、丈瑠の手を放すとズンズン件の少女の席へと歩を進めた。

 驚いた表情の彼女に、大袈裟な身振り手振りと共に葉隠が口を開く。

 

「私、葉隠透!よろしくね!」

「へ!?あ、その!や、八百万百と申します!」

「そっか。よろしくね、八百万さん!」

「は、はい!よ、よろしくお願い致します!」

 

 表情は分からないが、それでも言動から快活な様子が伺える葉隠からの自己紹介に緊張に顔をこわばらせていた八百万の肩から力も抜けた。

 女子二人の交友を尻目に、丈瑠は自身の荷物の確認をするべく机に置いたリュックサックを見やる。

 だが、

 

「ほら!山吹くんも!」

「俺もか?」

「勿論!折角友達が出来るチャンスだよ?ガンガン乗って行かなくちゃ!」

「そういうものか?」

 

 葉隠に引っ張られるように、丈瑠は八百万の前へ。

 

「後ろの席の山吹丈瑠だ。よろしく頼む」

「は、はい!よろしくお願いいたします、山吹さん。私は、八百万百と申します」

「ああ」

 

 ぽぽぽ、と頬を赤くする八百万。しかしそれは惚れた腫れたとかそういう事ではなく単純に緊張によるもの。

 ソレを察してか、丈瑠はチラリと葉隠へと視線を送りつつ顎を撫でた。

 

「ふむ……二人とも荒事には慣れていないように見受けられるが……入試はどう乗り切ったんだ?」

「実技だよね?私はロボットにも気付かれないように不意打ちでドーンッ!ってやったよ!」

「成程。確かに、あれらは脆かったからな。ある程度の勢いをつければ、女子の細腕でも行けなくはないか」

「ふふん♪私も、中々の好成績だったんだから!八百万さんはどうだった?」

「あ、その……私は推薦入試を受けましたので。そちらの一般入試は受けていないです」

「へぇ!凄いね!推薦って、一般入試よりも狭き門って言われてるし!」

「八百万は、エリートという事か」

「私など、まだまだです。お二人は一般入試でロボットを破壊するものでしたの?」

「えっとねぇ……あ!試験内容って言って良いのかな?」

「特に口止めなどもされていないならば、構わないだろう。何より、俺達は既に入学を果たしている。来年も同じ試験内容とも限らないだろう?」

「そっか!えっとね、私たちは――――」

 

 そうして、葉隠は主観マシマシの入試の説明を朗々と語った。途中途中で丈瑠の補足が飛び、熱心に聞き手として八百万は頷きを返す。

 それから推薦入試の話となり、今度は二人が聞き手となった。

 丈瑠と八百万だけだったならば、もう少し大人しいやり取りになっていただろう。そこに葉隠が加わる事で実に騒がしい。

 しかし、二人にとっては不快感はない。寧ろ、顔も分からないというのにそれでも全身の動きと声で喜色を伝えてくる彼女の様子を微笑ましいとさえ思っている。

 そんなやり取りの中で、不意に丈瑠は顔を上げた。

 

「葉隠」

「ん?なになに?」

「席に戻ろう。先生が来ている」

「え!?」

 

 彼の言葉を受けて、大袈裟な動きで葉隠は教室の前入り口を見やる。二人のやり取りに目を丸くして前を見た八百万も、同じく教室の入口の方へと視線をやって目を見開いた。

 寝袋が立っていた。オマケにその中から唯一見える肌色である顔の辺りは無精髭だらけで目が充血で血走り、一見すれば浮浪者にも見えた。

 だが、スッと丈瑠は目を細める。同時に、教師であろう男性の視線もバチリと少年へと向けられ二人の視線がぶつかった。

 

「あの人が、先生?」

「そうだろうな。強いぞ、あの人は」

「分かりますの?」

「体幹のブレが無い。何より、気配が強い」

 

 感覚的な部分だが、丈瑠はそう判断を下す。

 とにかく葉隠を席に座らせ、丈瑠も自身の席へ。

 

 そして、最初の試練が訪れる。

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