翌日。
高専にて…。普段は空気が緩い場所だが、この日は違った。
いつもの喧騒が嘘みたいに静まり返り、空気がぴんと張りつめている。
「今日は模擬戦を行う。悟と消太、前へ出ろ」
夜蛾せんせーの声が響いた瞬間、空気が震えた。
「おいおい、いきなり俺かよ」
面倒くさそうに立ち上がりながらも、俺、五条悟の口角は勝手に上がっていた。
横で消太が一歩、前に出る。
無言。無駄な動きもない。
まるで全身が一本の線になってるような、そんな“無音の構え”。
昨日のあの出会いから一晩しか経ってないのに、もうあいつの空気が変わっていた。
「消太…準備は?」
「問題ない」
相変わらず淡々としてる。
そんなこと考えてたら夜蛾せんせーに注意された。
「お互い、絶対に殺すなよ?やりすぎんなよ?」
「まっかせてくださいよ、せんせー。命取るわけねぇって」
「……信用できんな」
傑がニヤニヤ笑い、硝子は「相澤、がんばれー」と手をひらひら。
完全に見世物状態だ。あとで傑はシメてやる…!
「よし、始め!」
合図と同時に、俺は地を蹴った。
呪力を練り上げ、“無下限”を展開する。
空気が揺らぐ。距離が歪む。
だが…その歪みが、一瞬で消えた。
「……っ」
まるで見えないハサミで、空間が“切られた”ような違和感。
俺の術式が、強制的に断ち切られた。
(抹消……!)
初動から封じられるなんて、初めてだった。これだいぶ不味くないか?
「はぇ〜……マジで止めやがった」
俺は笑う。
「反則だろ、それ」
相澤は微動だにせず、ただ目を細めた。
「見たものを止めるってだけだ」
「シンプルが一番ってか?でも、それが一番厄介なんだよな〜」
俺は軽口を叩きながらも、全神経を集中させていた。
あの目が向けば、術式が“死ぬ”。
なら、視線を切らせばいい。
「来いよ、消太!」
消太が一歩踏み込む。
灰色の捕縛布が地面を裂き、風を切る音が耳を刺す。
地を叩いた反動で、そのまま宙へ。
壁に布を絡め、反動で方向を変える。
上、右、背後。
三方向から来るような錯覚。
速い。結構速い!目の動きも、呼吸の間も、完璧に整ってる…
(重心ブレねぇな……)
俺でも、完全には捉えきれない動き。
物理法則ギリギリの立体軌道。人外かよ?
「おらっ!」
消太が布を地面に叩きつけ、粉塵を巻き上げる。
その隙に低く滑り込み、俺の懐に飛び込んでくる。
「くっそ……!」
反射的に無下限を展開するも…止まる。
視線が、もう俺を捉えていた。
「“止まる”ってのはな、こういうことか……」
捕縛布がうねる。
まるで生き物のように、俺の腕に絡みつこうとする。
「はぇ〜……面白ぇ!」
俺は呪力を腕に集中させ、布を弾き飛ばす。
その瞬間、無下限を再展開…が、また止まる。抹消…めんどくさ!
「マジで無理だなそれ!」
笑いながらも、頭はフル回転していた。
(視界から外れる時間を作る……!)
俺は目の前に瓦礫を蹴り上げた。
粉塵が一瞬、視界を遮る。
同時に地面を強く蹴り、側面の壁を駆け上がる。
消太はわずかに目を細め…
「そこか」
(もうバレてんのかよ!?)
布が壁に突き刺さり、俺の動線を先読みして巻きつこうとする。
反射的に無下限を展開…やはり止まる。
「見えてる限り、発動できねぇってのか……!」
捕縛布が再び地を打ち、消太の体が後方へ跳ぶ。
中距離を保ち、息を整えながら目を光らせている。
「……どうした、天才。動きが鈍いぞ?」
「はっ、煽るねぇ」
とりあえず傑と硝子が爆笑してるのを無視して俺は手を広げ、呪力を圧縮。
空間が青く染まり、地面が沈む。
「…術式順転」「蒼」
その瞬間、周囲の空気が吸い込まれた。
重力が反転し、空間が“吸い寄せられる”。
消太の身体が引かれ…。
「……抹消」
青の渦が、消える。
跡形もなく。
「なんっ……だと!?」
「見たものは止めるってだけだ」
さっきもそれ聞いたな…と思いつつ、淡々と繰り返すその声に、背筋がぞくっとした。
理屈じゃない。
だが、弱点はある。
(見えなきゃ止められねぇんだろ?)
俺は口角を上げ、術式を封じたまま地面を蹴る。
反動で一気に背後へ回り込む。
視界の外へ…!
「ーーっ!」
相澤が気づいた瞬間にはもう遅い。
俺の右手が光を帯び、空間がねじれる。
「術式順転…」「蒼ッ!」
轟音。
空間が爆ぜ、衝撃波が広がる。
消太の身体が吹き飛び、地面に叩きつけられた。
土煙の中から、ゆっくりと立ち上がる。
制服は破け、目の周りには赤い血の筋。
それでも、目の光は消えていなかった。
「……見えなかった。速いな」
「見えないってだけで、随分可愛げあるじゃん」
「まだだ」
再び布を構える。
呪力がこもる。
建物にひっかけ、反動で上空へ。
そのまま真上から俺を狙い撃ち。
布の軌跡が、まるで罠のように空を描く。
まっすぐ落ちてくる俺の動線を完全に塞いでいた。
「……なるほど、立体制圧ってやつ?」
俺は笑って両手を広げ、無下限を再展開。
だが…また止まる。
「はぁ!?まだ目ぇ見えてんのかよ!」
「……残念だな」
消太が、最後の一閃を放つ。
布の端が俺の足首を絡め取り、重心を崩す。
地面に倒れかけたその瞬間…
俺は再び蒼を展開。
衝突。
青の光と灰色の布がぶつかり、空気が爆ぜた。
視界が真っ白になる。
やがて光が収まったとき、俺と消太は地面の中央に立っていた。
消太は膝をつき、息を荒げている。
俺も、珍しく汗が滲んでいた。
「……ふぅ、いい勝負だったな」
「降参だ」
「え?」
消太は肩で息をしながら、目元を押さえて叫んだ。
「……あまり術式使わせないでくれ…俺はドライアイなんだ!」
…え?ドライアイ…?
沈黙。
「……ぷっ」
「ふ、ふははははっ!」
俺は腹を抱えて笑った。
「真面目な顔してそれ言うなよ! マジで反則!」
傑が笑いを堪えきれず「悟、押されてたね」…傑アイツまじであとでシメてやる…
そして消太はゆっくり立ち上がった
「夜蛾先生、保健室行ってきます」
…硝子ここにいるから行かなくて良くね?あ、反転術式使えるって知らないのか?
「消太、硝子は反転術式使えるぞ?」
「マジで!?」
消太は結構驚いてる。まあそっか、反転術式を他人に使えるのなんて硝子ぐらいしかいないもんな…
硝子はのんびり立ち上がって、「はいよー、反転術式で治すねー」と近づく。
青い光が相澤の目元を包み、じんわり癒やす。
「……しみる」
「お前さ、術式つえーのにもったいねぇ!目薬持ち歩けよ!」
「検討しておく」
短く返すその口調が、どこか照れくさそうで。
俺は少しだけ笑みを緩めた。
この日、初めて理解したんだ
見たものを止める男と俺。
真逆の能力を持つ二人が、同じ場所に立った瞬間。
高専という場所が、少しだけ“広がった”。
「またやろうぜ、消太」
「……そのときは、目薬忘れんな」
っと…まだ自己紹介してなかったな…
「俺は五条悟!悟って呼んでくれ!」
傑も便乗する。「私は夏油傑。同じく傑って呼んでくれ」
「…おう。今日からよろしく悟、傑」
消太はなんか困惑してるっぽい?人付き合いが苦手なのかな?
「私は家入硝子。こいつらは硝子って呼んでるからそれでいいよ」
あ、硝子の存在忘れてた!
「…よろしく硝子」消太はぶっきらぼうだけど人嫌いってわけじゃなさそうだな!「じゃあ今日夜みんなでマリカすっぞ!傑、覚悟しとけ」
傑は割と乗り気だな。「なんで私?まあ負けないよ」
なんでって!お前が爆笑してたからだろ!
「マリカか…久しぶりだな」消太はやったことはあるっぽい。
硝子は意外と乗り気っぽい?「今日は五条のバカ話でするかー」
…はぁ!?
「それはそれで楽しいかもな」っておいおい何言ってんだよ消太!?
「じゃあ決まりだね。悟の部屋集合でいいかい?」
「ふざけんなそこは傑の部屋だろ!」
…高専に現れたもう一人の術師。
その存在は、俺の世界を確かに揺らした。
戦闘シーン、どうだったでしょう?こうしてほしいとかあったらお伝えください!誤字があったら教えてください!次回は多分マリカ編です。全力でふざけます。
今の相澤の心境、超簡単に
五条→こいつ抹消なかったらヤバかったな…。仲良くなれそう。
家入→おもしれー女。反転術式人に使えるのかよ…。仲良くなれそう。
夏油→強そう。呪霊操術ってどんだけ強いんだ…?良さそうだし仲良くなれそうだけどなんか胡散臭いような…?