どうにかクリスマス前に投稿できました。
これからは暇になるのでちょくちょく投稿できると思います。
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SIDE真司
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「さてと、」
今はだいたい五時半ぐらいか。
ほむらと会うにはまだ時間があるな。先に恭介の見舞いに行くか。
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「と、言うわけで見舞いに来たぞ。恭介」
「……どういう訳なのかさっぱりわからないんですけど」
「なんだ、なら一から説明しようか?」
「いや、それもちょっと…」
「なら別にどうでもいいだろう」
「……なんだかすっごく納得いかないんですけれど」
「それより恭介、事故での怪我の調子はどうだ?」
「随分露骨な話の逸らし方を…。まあ、足の方はすぐに治るらしいんですけど、手の方は…………」
「……そうか。恭介は確かバイオリンを習っていたんだよな?」
「…………ええ」
「それじゃあ、もしもの話だが、これからもう二度とバイオリンが弾けなくなったらどうする?」
「……考えたくも無いことですけど……そうですね、もしそんなことになったら、もう、駄目かもしれませんね」
「どうして? と訊いておこうか」
「僕はいままでずっとバイオリンありきの人生を歩んできてましたから…もし僕からバイオリンが無くなったら僕自身、何も無くなっちゃうんじゃないか、って思っちゃうんです」
「随分とバイオリンに執心してるみたいだな」
「まあ、いままでそれが当たり前だったんですから」
「何かにそこまで執着できるっていうのは確かに良いことだがな……。案外、今回の件はお前にとってプラスかもしれないな」
「……?」
「バイオリンが無くなったからといってお前が無くなる訳がないだろうが。少しバイオリンから離れて俯瞰的に物事を見ろ。そして、自分に何が残されてるか、しっかりとその目で確認しろ」
そう言って俺は病室を出て行き、
今まさにそこに入ろうとしているさやか、まどか、ほむら、杏子、マミとすれ違った。
「あれ? 高祖先生?」
「ああ、お前等も見舞いに来たのか?」
「まあ、はい、そうです」
「杏子とほむらはまだ分かるが、マミはどうして来たんだ? 学年も違うだろ?」
「いえ、あの、みんなとはついさっき知り合って、それから、私の両親と同じところに入院している後輩がいると聞いたので…」
「え? あれ? マミさんの両親って事故で亡くなったんじゃ…」
「失礼ね。美樹さん。確かに事故にあったとは言ったけれど、死んだなんて一言も言ってないわよ」
「あちゃー、すみません。すっかり勘違いしてました」
「まあ、あの時高祖先生が来てくれなかったら、危なかったとは思うけれどね」
「…また先生が絡んでるんですか」
「また、とは随分な言いぐさだな」
「いや、だってですね…」
「おい、さやか。ここで雑談に興じるのはいいが、奥の恭介が微妙な顔になってるぞ。早く見舞ってやったらどうだ?」
「あっ、ゴメンゴメン恭介。お見舞いに来たよー」
(じゃあほむら、あとでお前の家に行くからな)
(…ええ、分かったわ)
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現在時刻、五時五十五分。暁美ほむら宅にて
「……さて、そろそろ六時になるわけだが」
「なんであなたの方が先に私の家に辿り着いているのよ…、高祖真司」
「教師をいきなり呼び捨てにするのはあんまり感心しないんだが…。まあいいか。それじゃあほむら、何から聞きたい?」
「……そうね。まずはこれからかしら」
そういってほむらはびっしりと何かが書かれたルーズリーフをとりだす。
よくみると、それには折り目が付いていた。
そしてその折り目はおそらく誰もが一度は見たことがあるはずだ。
紙飛行機。
ほむらが今手に持っているのはそれを拡げた物に相違なかった。
「これは、あなたがさっき私に投げて寄越したものよ」
「……どうやらそうみたいだな。それで?」
「とぼけないで」
そういってほむらは紙をずいと突き出す。
そこには、ほむらが今日一日どうすべきかが書いてあった。
学校を出てからどこに向かうべきか。そこで誰と出会うべきか。そこで何が起こるか。それにどう対処すべきか。
それらの事が書かれていた。
「何でこんなものを書いたのかも訊きたいけれど、一番に訊きたいことはこれね」
そういってほむらはルーズリーフに書かれた一文を指さす。
【今日はインキュベーターに接触しないこと】
「……これはどういうことなのかしら?」
「その様子だとちゃんと指示に従ってくれたようだな」
「……ええ。それで、何でなのかしら?」
「必要がないからだよ」
「…………?」
「つまり、だ。お前が心配しているのはこういうことだろう? 〈あいつを放っておけば、まどかに契約を迫るかもしれない〉」
「……ええ」
「だが、今現在それはありえない」
「どういうことかしら?」
「少し話が長くなるんだがいいか?」
「ええ」
「大分前、俺はインキュベーターに勝負を挑んでるんだよ。で、その勝負の内容は、〈ワルプルギスの夜との戦闘に決着が付く前に、1000人に魔法少女の契約が出来れば向こうの勝ち。そうでなければこちらの勝ち〉ってものだ」
「…今、気になる単語が出て来たのだけれど。まあ、いいわ。それで、今何人目なの?」
「今現在998人だ」
「……ぎりぎりね」
「ああ、ぎりぎりだ。だからこそ、あいつの動きを止められるんだよ」
「……どういうこと?」
「つまり、だ。あいつはまどかと契約がしたい。それは絶対的な事実だ。ここまではいいな?」
「ええ」
「だから、まどかとの契約はさっき言った1000人目以内に収めておきたいんだよ」
「何故? べつに1001人目でも問題は…」
「あるんだよ。あいつらは俺が勝負に負けて自棄になって、まどかを殺したり攫ったりするような事が起きたりするような可能性を排除したいのさ」
その言葉にほむらの目つきが鋭くなる。
「…あらかじめ断っておくが、俺にそんなつもりはさらさらない。でも、あいつらはそれくらい不慮の事故って奴を避けたいんだよ」
「そして、そんな訳だから999人目がまどかに危害を加える様な奴だってことも、まずありえない」
「まどかが999人目だっていう可能性は?」
「……一応、あるにはあるんだが、その可能性は低いと考えている」
「……何故?」
「あいつらは、まどかが契約をしようと自発的に思うように仕向けてくるはずだ。しかし、魔法少女というものがどういうものなのか正確に把握していない今の状態じゃあ、彼女の性格からして踏み切れない。だから、999人目はまどかに一線を越えさせるための人柱になるはずだ」
「じゃあ、その999人目は誰だか見当が付いているの?」
「ああ。と、いうかこれはお前の経験で充分に分かると思うんだが…。まあ、説明するが、基本的にまどかは優しい性格だ。これはわかるな?」
「当然ね」
「だから、まどかを契約させるには、そこに働きかけるのが一番効果的だ。これも分かるな?」
「ええ」
「そして、彼女の傍にはいるじゃないか。何事においても彼女より先走り気味で、その性格上、魔法少女になる事がほとんど魔女になる事を意味する存在が。彼女の親友として、彼女の傍らにいるだろう?」
「……美樹さやか、かしら?」
「ああ。そのとおりだ。だから、あいつはしばらく、さやかとの契約に躍起になることだろう。そして、それはこっちでどうにかする。だから、しばらくインキュベーター潰しは自重しろ」
「……分かったわ。じゃあ、次の質問に移るけれどいいかしら?」
「ああ」
「高祖真司。あなたの正体を教えて」
「……残念ながら、それには答えられない。まあ、もうしばらくしたら答えてやるよ。“時間逆行者”暁美ほむら」
「ッ! ……あなたは一体どこまで知っているの?」
「大方全部、だ。流石に全知全能とはいかないが、自分の学校の生徒の素性くらいは知ってる」
「……そう。それじゃあ、あなたの目的だけでも教えて頂戴」
「基本的にお前の考えてることと変わらないな。まあ、お前はまどかだけ助けられればそれでいいようだが、俺はもう少し対象が広いっていう違いはあるが」
「……分かったわ」
「じゃあ、これで満足したか?」
「……一応ね」
「そうか。それじゃあな。ほむら」
「ええ。さようなら。高祖先生」
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……この調子なら、ほむらとはなんとかやっていけそうだな。
さて、このままだと間に合わないな。少し早めるか。
クリスマス番外編みたいなのをやりたいなあ……