やらなくてはならないこと
そして月日が流れ、俺は今、群馬県滝見原にいる。
ちなみに、今の俺の外見はだいたい18歳ぐらいにしてある。
顔?…は、まあ、悪くはないだろうな。っと、まあ、それよりも、
「……原作が始まるまであと5年といったところかな」
ここまでくるのに随分待ったな。
さて、これから俺がやらなくてはならない事の確認をしようか。
その一「鹿目まどかの契約の阻止」
これだけは絶対にやらなくてはならない。
なにせ、これを怠ればこの宇宙が終わってしまうのだから。
その二「原作の魔法少女全員の死亡の阻止」
これもやらなくてはならない事だろう。
巴マミから始まる魔法少女の死の連鎖は鹿目まどかに大きな影響を与えた。
ならば、それらを全て無かったことにしてしまえば彼女も契約する気は起こしにくくなるはずだ。
その三「原作の魔法少女達と面識を持つこと」
これは出来ればの話だ。
原作が始まってからいきなり登場すれば、彼女らに警戒されるのは必至だ。
ならば、そうなる前になんとか接触を図りたい。
……まあ、鹿目まどか、美樹さやか、暁美ほむら、巴マミの四人については当てがあるんだが、佐倉杏子についてはどうすればいいのか未だにいい案が浮かばないんだよなあ。
とりあえず、彼女のいる教会へと向かう事にした。
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「……ここか」
目の前には寂れていながらも、まだ本来の姿を留めた教会があった。
「…どうやら、まだ杏子の家族は死んではいないようだな」
その証拠に、目の前の教会には少ないながらも何人かの人が出入りしていた。
……おそらくこれが一番手っ取り早い彼女との接触方法だろうな。
そう考えた俺は、教会に入っていった。
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「───────────」
教会の中では、杏子の父親による説教がなされていた。
……確かに聖書には載って無いことばかりだな。
だけど、あからさまにおかしい事を言っている訳でも無いんだよな。
外国ならともかく、どうして日本でこんなに信者が減ったのやら。
まあ、ここで教えている事がキリスト教なのかどうかは少し怪しいんだが、そんなことはどうでもいいな。
さて、これからどうやって佐倉杏子と接触しようか。
「───────────。」
おっと、もう終わりか。
まだこちらは考えがまとまっていないんだよなあ。どうしようか。
そんなことを考えていたら不意に声を掛けられた。
「おい、アンタ」
……佐倉杏子。まさかそちらから話しかけてくるなんてな。
まあ、これで接触はできた訳だ。
「おい、聞いてんのか?」
「ああ、ごめんごめん。何?」
「いや、アンタ、ここに来るの初めてだろ?」
「……そうだけど、それがどうかしたのか?」
「いや、えっと、あの、さ、親父の話聞いて、どうだった?」
「親父…って、あそこの牧師さんのことか?」
「そうだよ。で、どうだったんだ?」
「……実を言うと、俺は一定の宗教を信じていなくてね。詳しいことは分からなかったんだが、そうだな、…良いなって思ったかな」
「…どういうことだ?」
「つまりさ、ここでは聖書とかに載ってないことを説いてるだろ?」
「……ああ」
「他の所にいくとさ、宗教であろうとそうでなかろうと誰かの受け売りばっかりなんだよ。」
「だけど、ここの牧師さんはそうじゃない。真剣に誰かのためを思って、自分だけの言葉で喋ってる。だから、良いなって思ったんだ」
「……そっか。ありがとな。親父の話をちゃんと聞いてくれて」
「うん、じゃあ明日もまた来るよ」
「…ところでさ、アンタ、一定の宗教は信じてないんだろ?ならなんで教会(ここ)に来たんだ?」
「信じてないから、だな。自分の信じたい事だけを信じるためには、食わず嫌いじゃいけないんだよ」
「……ふ~ん。まあ、いいや。そういやアンタ、名前はなんていうんだ?」
「高祖真司(たかすしんじ)だ。そういうそっちは?」
「あたしは佐倉杏子ってんだ。これからもここに来るんだろ?よろしくな、高祖」
「ああ、よろしくな、佐倉ちゃん」
「“ちゃん”づけはやめろよ。普通に“杏子”でいいよ」
「なら、俺のことも“真司”って呼んでくれ。杏子」
「ああ。またな。真司」
「じゃあな。杏子」
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それから俺は毎日教会に通い続けた。
最初のほうはまだ他に来ている人がいたのだが、しだいにそれも減ってゆき、何年か経つと教会に来るのは俺だけになってしまった。
「……なあ、真司」
「何だ?杏子」
「…なんで、誰も親父の話を真面目に聞いてくれないんだ?」
そう訊いてきた杏子の声はひどく弱々しかった。
「親父の言ってることは何も間違っちゃいないんだ…なのに、なんでなんだ?」
「……さあな。…多分、聞こうとする人がいないんだろう」
「え……?」
「キリスト教徒の人は、教義と違うことを言っているって言って受け付けない。他の宗教の信者はそもそも来ない。宗教を信仰してない人は、宗教だからと近づかない。だから、ここに来ようとする人が最初からいないんだよ」
「そんな……」
「仮に来たとしても、それは俺みたいな物好きか、冷やかしのどちらかだろうな」
「…………」
…きつく言い過ぎたか。
そう思っていると、杏子が不意に口を開いた。
「……“聞こうとする人がいない”だけなんだな?」
「え?」
「皆が聞こうとしてくれればいいんだな?」
「……ああ。そうなるな」
「分かった。ありがとう」
「……何をする気だ?」
……十中八九契約する気だろうな。できることなら止めたいが…。
「…………………なんでもないよ」
……拒絶、か。おそらく今強引に止めても、少ししたらまた契約しようとするだろうな。
だったら、俺にできることは一つか。
杏子が契約しても人生が狂うことがないように調節する。
……もちろん、簡単なことじゃないだろう。
俺と杏子の間だけならともかく、この場合俺は杏子の家族とまで関わらなければならない。
もちろん、毎日の教会通いのおかげで面識だけはあるが正直心許ない。
だけど幸い、“まだ数には余裕がある”。今は、次の事に集中したほうがいいだろう。
さて、原作までもう時間がない。少し急ぎ足になるな。
そんなことを考えながら、俺は教会を後にした。
駄文で申し訳ありません。
次回から少し急展開気味になるかもしれません。