すみません
それでは、どうぞ。
次の日から教会には信じられない程人が集まってきた。
杏子の父親は最初は何事かと戸惑っていたが、やがてその場の全員に説教を始めた。
しかし、それも長くは続かなかった。
それから数ヶ月たったある日から、杏子の父親が教会に来なくなったのだ。。
……杏子の契約の事がばれたと見ていいだろうな。
まあ、時期的にはちょうどいいし、多少不謹慎だがありがたいな。
そんな事を考えながら歩いていると、杏子を見かけた。
しかし、その顔は涙でぐしゃぐしゃになっていた。
「杏子、どうした。そんな泣き顔で」
「う…ああ…あ……し…真、司ぃ、親父、がっ…あ、あたしの…こと…をっ」
…これじゃあ話にならないな。
「…いったん落ち着け杏子。そうだな、近くのファミレスにでも寄るか?」
「う…ん」
「そうか、よし、いくぞ」
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そして、ファミレスには来たが、
「………………」
「………………」
どちらも口を開かない。
杏子は先ほど俺が注文したコーンポタージュを黙々と食べているし、俺は黙ってそれを見ているだけだ。
そして、杏子の皿が空になった。
「まだ何かいるか?」
「……いいよ、別に。それより何があったか話すよ。」
話されたことは、原作と大して変わらなかった。
皆が父親の話を聞いてくれるようにキュゥべえと契約したこと。
魔法少女になって張り切っていたこと。
そして、信者が魔法で集められていたことを知った父親に家を追い出されたこと。
「なあ、真司。あたしのやった事って間違ってたのかな。こんなズルしちゃいけなかったのかな」
「それは違うな、杏子」
「え……?」
「いいか、そもそも間違ってない事なんて存在しないんだよ。だから、お前は正しい事をしたと胸を張れ。ただ、お前の父親はそれよりも少しだけ正し過ぎただけだ」
「正し過ぎた……?」
「まあ、それについては後で説明するとして、杏子。お前の家に案内しろ」
「……え?何で?」
「毎日説教ばっかりしてるお前の親父に俺が説教してやるのさ」
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「……ここだよ」
「そうか、よし」
俺は玄関に近づき、インターホンを押した。
……が、反応せず。
「……あれっ?」
「…ごめん、うちのインターホン壊れてるんだ」
「…そうなのか」
じゃあ、改めて。
俺はドアまで近づいてゆき、ドアをノックした。
…返事が無い。
「ただのしかばねのようだ、とでも言えばいいのかな?」
「いや、何言ってんだよ」
「しかし、このままここにいても何の解決にもならないな。…杏子、少し乱暴な手段を取ってもかまわないか?」
「え?ああ、別にいいけど…」
「そうか、それを聞いて安心したよ」
「?」
「つまり、俺がこのドアを壊しても何の問題もないってことだろ?」
そう言うやいなや俺はドアを思いっきり殴りつけ、ドアを吹き飛ばした。
「よし、じゃあいってくる。杏子はここで待ってろ」
「………」アゼン
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そして奥へと入ってゆくと、そこには杏子の父親がいた。
「…何の用ですか、高祖さん」
「…自分の娘を家から追い出したんだってな」
「ええ、当たり前でしょう。あれは人の心を惑わす魔女です。貴方もあれにはもう近づかない方がいい。」
「……なあ、何でそんな事をいうんだ?」
「?」
「確かにあんたの言い分も分かるよ。だけどな、だからといって、杏子は自分の娘だろ?見捨てたりするのはあんまりだろ」
「…何を言うんですか。あれはもう救いようがない。だったら捨てるしかないでしょう」
「…よくそんな考え方で聖職者になれたな、あんた」
「…どういうことですか?」
「そのままの意味だよ。お前が聖職に就いたのは、世の中の人を救いたいと思ったからだろ?だけど、自分の娘も救えないような奴がどうして他人を救えるんだよ」
「……!!」
「あんたは他人を救うために自分の娘を切り捨てたんだ。誰がそんな奴に救われたいと思うんだよ」
「確かに数で考えれば自分の娘はたったの二人。それに対して世の中に救わなきゃいけない人間は大勢いる。だけどな、その大勢の涙を放置してでも自分の家族を笑顔にさせようとするのが父親の役目だろ?」
「あんたがやろうとしたことは正し過ぎるんだよ。そして、人間は正し過ぎたら駄目なんだ」
「…………確かに、そうですね。私は一体何をやっていたのでしょうか。家族を見捨てるなど、あってはならない事だというのに」
「…分かってくれたみたいだな」
「ええ、ですが私は一体これからどうすればいいのでしょうか」
「そういうと思ってな。これを用意しておいたんだ」
そう言って俺は一枚の紙を取り出す。
そこには、こう書いてあった。
ハ○―ワークパンフレット
「…はい?」
「どうせ魔法の効果が切れれば信者は寄りつかなくなるんだ。だったら新しい職に就けよ。」
「い…いや、しかし、ですね…」
「それに、さっきも言ったけれどな。あんたは正し過ぎるんだよ。だから、いったん外で働いて世間って物を知ってこい。それで、またお前が牧師をやりたいというならその時は俺も全力で応援させてもらうよ」
「…分かりました。ありがとうございます。迷惑をお掛けしました」
「ああ、本当だよ。こっちは晴れて祝☆就職って雰囲気だったのに」
「…そうだったのですか。ちなみに、何の職ですか?」
「教師だよ。科目は数学」
「それはそれは。これから頑張ってください」
「あんたもな。よし、せっかくだ。一緒に焼き肉でも食いに行こうか」
「えっ?いや、でも…」
「ああ、金が無いのか。安心しろよ。俺の驕りだ」
「い、いや、それは…」
「いいからぐずぐずするなよ。玄関で杏子を待たせてるんだ。行くぞ」
「いや、その、人の話を」
「黙れよ。せっかくの他人のお祝いムードを壊してくれたんだ。賑やかしに付き合え」
「はあ、分かりましたよ」
「そうそう、それでいいんだよ」
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「な、何ですかこれは!」
「あ、悪い。さっきノックしても返事がなかったからドアぶち壊させてもらった。後で弁償しておくよ」
「……はあ、もういいです」
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…五人いたとはいえ、十万円が一発で消えるとは思わなかった。
これから少し節約しないとな…
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青年と小動物が街を歩いている。
しかし、周りの人にはその小動物は見えない。
そこにはただ独りごとを呟く青年がいるだけだ。
「まったく、今回も邪魔してきたね。高祖真司」
「別にいいだろ、キュゥべえ」
「僕としては、杏子があのまま家族から見放されて魔女化してくれた方が都合が良かったのに」
「そんなことにはならないし、させるつもりもない」
「そうかい、それよりもいいのかい?“もう余裕がない”よ?」
「…それはお前もだろ、インキュベーター」
「…呼び名を統一してくれよ。ややこしいじゃないか」
「知らないな」
「全く、困ったものだね。何であそこまで人間に肩入れするんだい?不公平じゃないか」
「そうだよ。だって俺は」
ただ不平等なだけの人外だぜ?
駄文で本当に申し訳ありません。
次回から少しずつ物語が動いていきます。