そろそろ来る頃だと思ったよ
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SIDE 真司
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ピピピピピピピピp ガチャン
「…うるさい」
まったく、目覚まし時計で起きるのは毎度の事ながら気分が悪い。
ちょうど壊れたことだし今度から違う方法で起きることにしようか。
ピピピ ピピピ ピピピ ピピピ
…おかしいな。目覚ましならさっき壊したはず…ああ、電話か。
「はい、もしもし」
『うう、おはようございます、高祖先生』
「…早乙女先生ですか。何かあったんですか?」
『今日、私は頭が痛くて吐き気がするので学校を休みます。なので替わりを…』
「……振られたから、じゃないんですね?」
『違いますよ…ホントに痛いんですよ……』
「……なんとなく察しはつきますが、まあ、あえて言及しません。それじゃあ、やるのは担任の代理だけでいいんですか?」
『いえ、仕事が溜まっているので出来ればそちらも…』
「…自分から聞いておいてなんですが、ひどいですね」
『…高祖先生ならたかが一人分の仕事が増えたところで問題ないでしょう…? 知ってるんですよ…? 高祖神話』
「……神話は言い過ぎでしょう」
『入学式の飾り付けをたった一人で三十分掛けずに終わらせたり、一晩で五十人分の仕事をこなしたりしておいて何を言っているんですか…?』
「それは新任の頃の話でしょう…?」
『だから何だっていうんですか…?』
……確かに新任の頃は自由に動く時間を増やす為に不自然な程の量の仕事をやってはいたが。
こんなことになるんだったらやるんじゃなかったな。
「はあ、分かりました。でも、この事は秘密ですよ。他の人にまで仕事を押しつけられたら溜まった物じゃないですから」
『分かりました。 …これ以上喋ると頭に響くのでそれでは』
「はい」
『あ、あと転校生来ます』 ブツッ
「え? あの、もしもし?」
ツー、ツー、ツー
「……切られた」
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「と言う訳で、早乙女先生は
「……二日酔いって断定しちゃうんですか」
「する」
「「「「………………」」」」
…なんだかクラスからの視線が痛いな。まあいいか。
「ああ、そう言えば今日は転校生が来るらしいぞ」
その一言でクラス中が沸き立つ。
「先生!転校生は女子ですか!?」「美人ですか!?」「可愛いですか!?」「性格はどんな感じですか!?」
……クラス中っていうかほとんど男子だ。
「分からない。なにせ朝話を聞いただけだからな。案内は他の先生がやってくれたらしいし」
それで少しクラスは落ち着きを取り戻す。
「それじゃあ入って来て貰おうか。転校生さん、入ってきてください」
そして教室に入ってくる女子二人。……ん? 二人?
……おかしいな。今日から原作が始まるはずなんだが、それだったら転校生は暁美ほむら一人だけのはずだ。じゃあ、もう一人は一体誰だ…?
その疑問は僅か2秒で吹き飛んだ。
「よお! 誰かと思ったら真司じゃねーか!」
「……杏子?」
「そうだよ! …あれ? でもここの担任は違う人だって聞いたんだけど…」
「その人が今日は休みになったから俺はその代理だよ。それで、もう一人の方は?」
「……暁美ほむらです。よろしくお願いします」
(真司、さっきあたし、あいつに凄い目線で睨みつけられたんだけど、なんか心当たりある?)
……ああ、そうか。確かに本来ずっと後に会うはずの人間がスタート地点にいたら驚くだろうな。
まあ、ここは適当にごまかしておくか。
(さあな。緊張してたんじゃないのか?)
(……とてもそうには思えないんだけど。まあ、いいか)
「それじゃあ皆、二人とちゃんと仲良くしろよ」
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SIDE ほむら
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また、始まった。
もう何度目になるか分からない光景。
数十回と繰り返してきた自己紹介。
終わりなく浴びせられる質問。
それが始まる
「アンタも転校生かい? これから仲良くしようぜ!」
……佐倉杏子。何で彼女がここに…?
そして、今まで見たことのない
「……ねえ、佐倉さん」
「なんだい?」
「さっき先生と仲良くしていたみたいだけれど、あの人とは知り合いなの?」
今は彼の情報が知りたい。
そう思って聞いた質問だったが、返ってきた答えは予想外のものだった。
「ああ、真司のことかい? あいつとは何年も前から知り合っててさ、今の親父の職もあいつが紹介してくれたんだよな…っとこれは余計だったか」
なんですって……?
おそらくこの言い分だと彼女の両親、少なくとも父親は生きていることになる。
そして、それにはあの男が絡んでいることになる。
ならば、これからの出来事にも関わってくる可能性が高い。
……今の内に敵かどうかだけでも確認しておきたいわね…。
「暁美さん、あとまどか、ちょっとこっちに来い」
そう思っていたら急に呼び出しをくらった。
「な、なんですか高祖先生」
どうやらまどかにとっても突然だったようで、驚きがちに声をあげる。
「いや、大したことじゃない。どうやら暁美さんは身体が弱いらしくてな。だったら保健室の位置を覚えさせておいたほうがいいだろう? まどかは保健委員だから、その付き添いだ」
……保健室に行くようだけれど、まどかに忠告はした方がいいかしら…?
いえ、あの男がいる以上うかつなことは言えないわね。
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廊下に出ると、突然彼はこう言った。
「暁美ほむら。お前、魔法少女だろ?」
「───────ッ!!??」
何故それを!? いや、それよりも近くにまどかがいるのにそれを訊いてきた!?
「え? ほむらちゃんって魔法少女だったの?」
しかし、まどかは魔法少女という単語に対して特に驚きを見せることなく平然と話を続けた。
「知ってるの…?」
「うん。今日転校してきた杏子ちゃんも魔法少女なんだって。仲良くできるといいね」
佐倉杏子のことまで…!?
そう思っていると高祖真司(という名前らしい)が不意に話しかけてきた。
「悪いがほむら、今のまどかには“触りだけ”教えてある状態だ」
「“あれ”は教えてないのね……?」
もちろん“あれ”とは“魔法少女の都合が悪い部分”のことだ。
「当たり前だ。そう簡単に教えられるものじゃない」
……良かった。
まどかが既に魔法少女のことを知っていたのは計算外だったけれど、そこまで深入りされていないのは不幸中の幸いというべきかしら。
「さてと、ほむら。分かってると思うがここが保健室だ。いいな」
「……分かったわ」
「ああ、それとだな」
「……なにかしら?」
「お前、転校したてで勉強の範囲がまだ分かってないだろう?
「……ええ」
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SIDE 真司
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…さて、これでとりあえずほむらとは接触できた訳だ。
このあと彼女を引き込めるかどうかでこの先の展開に大きく関わってくる。
出来ることならどんな手を用いても協力関係を築きたいが…。
「……失礼します。高祖先生はいらっしゃいますか?」
…来たか。
「そろそろ来る頃だと思ったよ。暁美ほむら」
さてと、これからがいろいろと大変だな…