朝日が、雨に濡れた木々や廃墟のビル群を照らす。ここは安全地帯の端、原発から少し離れた無人の港町。その湾港に停泊した小型船の中に、4人のヒカマーあり。「よし、出発の時が来た」船舶免許持ちの辛ダブチは意気込み、操舵室へ登る。「本当に大丈夫なのか?海上なら禁止エリア判定にならないという保証はないぞ?」だいはつ_maniaは自身の首輪に触れる。「……ぶっちゃけ断言はできない。でも、やってみなければわからないよ。こんな辺鄙な無人島に閉じ込められて殺し合いなんて、ふざけんなって話だ。何が何でも脱出してやる」そう言って船のエンジンを起動する辛ダブチ。「確かに、僕らには一か八かに賭けるしかないのかもしれない」Gusuryはボウリング球を弄る。そう、辛ダブチが海の上ならば安全地帯の外に出ても首輪が爆発しないのではないかと提唱し、3人はその説を微かな希望として船でヒカ島の外に脱出することにしたのだ。「なぁ、お前は上手くいくと思うか?」海原を前進するタグボートの揺れを感じながら、だいはつ_maniaはじゅぴコミックに小声で問いかける。「俺は辛ダブチに賛成だ。俺には復讐したい奴がいる。だから、必ず生きてこの島を出たい」じゅぴコミックはクルトガシャーペンを強く握りしめる。プロイラストレーターであった彼は、ライバルの女絵師『留理臙亭』に事実無根のデマを流され、犯罪者扱いされて職を失った過去を持つ。「留理臙亭……許せんなぁ……許せんなぁ……!!」心の火にガソリンを注ぐかのように、じゅぴコミックの頭の中であの日の苦い記憶が蘇る。「とりあえず落ち着けよ、無事本土に帰れたら僕も君の復讐に協力してあげるからさ」Gusuryは静かに微笑む。しかし、若者達の会話は、危機を告げる声に掻き消された。「おいみんな、アレを見ろ!」辛ダブチは前方を指差して叫ぶ。4人の視線の先には、静かな海面から突き出た青黒い物体。それは徐々にせり上がり、全貌を現す。「嘘だろ……潜水艇……!?」辛ダブチは青ざめる。それは紛れもなく軍の攻撃潜水艇だった。艦橋からせり出した機銃がタグボートを捉える!「逃げろ!引き返せ!」Gusuryの叫びと同時に辛ダブチは船を旋回させ、エンジン出力を全開にする。潜水艇は機銃を連射しながら追いすがる。「やばいやばい!このままじゃ沈むぞ!」穴だらけになる船体を見てだいはつ_maniaが叫ぶ。潜水艇の艦橋からは、榴弾砲の砲身までもが飛び出していた。「僕が行くしかない!」Gusuryはドアを開けて主甲板に躍り出た。「おいバカ、やめろ!」じゅぴコミックは引き留めようとしたが、できなかった。砲身がGusuryを向いた瞬間、ボウリング球を投擲!発射された榴弾はGusuryのボウリング球に衝突し爆発!「グワーッ!」飛んできた破片によって腹に傷を負うGusury。しかし、船への直撃は免れた。「あいつ……すげぇ……!」だいはつ_maniaが感心した瞬間、上の操舵室で悲鳴!何事かと梯子を駆け上がって確認すると、目に入ったのは辛ダブチの死体!再開された機銃掃射が壁を貫通して彼の心臓を貫いたのだ。「嘘だろ……!!」だいはつ_maniaは慌てて舵を握る。操縦者が居なくなれば全員が死ぬ。銃弾は船の薄い壁を次々と突き破り、床にも多数の風穴を開け始めた。中の三人が撃ち抜かれるのも時間の問題だ。「俺らはここで死ぬのか……!?」じゅぴコミックすら弱腰になったその時!突如、機銃掃射が止んだ。いや、厳密に言えば、上向きに撃ち始めたのだ。「あいつらどこ狙ってんだ!?」室内に戻ったGusuryは窓の外を疑問の目で見つめる。答えは空の上にあった。特殊な形状のヘリコプターがヒカ島に向かってまっすぐ飛んでいる。潜水艇はそのヘリに狙いを切り替えたのだった。「なんだあれ!?物資投下のヘリじゃねぇよな……?」とじゅぴコミック。「二人とも、何が起きたんだ!?」「変なヘリが飛んできて、潜水艇はそいつを狙い始めた!」「ヘリだと!?」「うん!物資投下のヘリとは形が全然違う!」Gusuryは傷の痛みを堪えながらだいはつ_maniaに返答する。「とにかく、狙いが逸れたなら過去と未来の狭間がチャンスだ!二人ともしっかり捕まってろ!」船は全速力でヒカ島へと戻るが、謎のヘリはそれ以上の速度で進む。機銃の射程範囲外にヘリが出ると、潜水艇は再びタグボートを撃ち始めた!「まずい!また狙ってきた!」Gusuryは身を竦ませる。だが、銃口を船に向けたまま、突如射撃が止まった。「止んだ……?きっとリロード中なんだ!」じゅぴコミックの推測は当たっていた。「今度こそチャンスだ!もうすぐ港だから諦めるな!」だいはつ_maniaの言う通り、船はすぐに港に着いた。「急げ!建物の影に隠れろ!」桟橋に降りた3人は全速力で走り、倉庫の裏に隠れようとする。だが、「グワーッ!」倉庫の裏の一歩手前で、最後尾を走っていたGusuryが撃ち抜かれた。「Gusury!!」駆け寄ろうとする2人を、Gusuryは震える手で制止する。「当たるといけない……2人で逃げて……生き延びグワーッ!!」継続的な射撃がGusuryの後頭部を撃ち抜き、今度こそ絶命させた。「仕方ねぇ!急ぐぞ!」潜水艇が放つ機銃や迫撃砲の音が鳴り止まぬ中、じゅぴコミックとだいはつ_maniaは建物の陰を縫うように内陸へとひたすら走る。街の外のジャングルに入った時、やっと銃声が止んだ。木の陰にへたり込んだ二人は肩で息をし、酸素を貪った。「やっぱり海に逃げればいいだなんて……浅慮すぎたんだ……!!」だいはつ_maniaは顔を手で覆った。「ハハハハ!残り20人!大分減ったな!海に逃げようとする奴がいたから教えるが、そんなルール違反は殺されるぞ!あと、この島に侵入者が入った。そいつと組んで変なことをしようとした奴は……どうなるか分かってるよな……?」スピーカーからの冷酷な声が、二人を嘲笑うかのように響いた。