ヒカマーズバトルロワイヤル続編   作:開發 雅人

16 / 20
第40.5章 駆けつける星屑たち

日本の首都、ネオタカシマダイラ。その湾岸部。午前の陽光を受けて輝く水面に浮かぶのは、流線型のフォルムを晒す飛行艇。

その上に立つのは、3人の男。

 

「いよいよ出発だね。準備はできてる?」

 

弓矢とリュックサックを背負った青年、吉田キンは、隣に立つ←たこ_maniaと死蚊マニを見た。

 

「ああ、できてるさ。てか、これ本当に良かったのか?お前の親が乗り回してたやつなんだろ?」

 

←たこ_maniaはショットガンの手入れをしつつ問う。

 

「問題ナイよ。所有権は僕が継承したんだ」

「それにしてもスゴイな二人とも。ショットガンに飛行艇だなんて。←たこ_maniaはそれをどこで手に入れたんだ?」

 

ダガーナイフを持つ死蚊マニは銃器に興味を向ける。

 

「実はこの前狩猟免許を取ったんだよ」

「まじかよ。羨ましい」

 

談笑を続ける二人の横で、吉田キンは水平線の向こうに目を向ける。

この3人が集まった目的は一つ。数日前に開催された『ヒカマーズオフ会』の100人近い参加者が揃いも揃って行方不明になったというニュースをSNSのオープンチャットで見た吉田キンが捜索計画を主導。協力を申し出た2人と共にみんなを探すことにしたのだ。

 

「まず僕らが知っている手がかりをおさらいしよう。情報屋から聞いたところ、ヒカマーズオフ会が渋谷のロフトで開催されている途中に、黒塗りの輸送車が会場の周囲に集まるのを目撃した人が多数居るらしい。そしてその中から出てきた黒服の集団が、人が入れそうな大きさのカバンを沢山持ってロフトに入っていって、しばらくすると出てきたらしい。パンパンに膨れたカバンを大量に、複数人で協力して輸送車に詰め込んでいたらしいよ」

 

吉田キンはスマホを見つつ話す。

 

「つまり、その黒服集団がみんなを誘拐したってこと?100人近いヒカマー全員を?」

 

←たこ_maniaの目に疑念の色。

 

「これには続きがある。大量のカバンを載せた輸送車は港に到着し、中のカバンは軍用艦艇みたいな船に詰め込まれたらしい。そしてその船が向かった方向が、あっちだとさ」

 

吉田キンは遥か海の向こう、ヒカ島のある方向を指差す。

 

「凄いな……そこまで把握できる情報屋もだけど、何よりそんな情報屋とコネクションがあるお前が凄い」

 

死蚊マニは感心の目を吉田キンに向ける。

 

「オプチャに長く潜ってると色々と知れるんだよ。さて、続きは空の上で話そう」

 

吉田キンは操縦席に乗り込み、二人も続く。

 

機体上部に取り付けられたターボプロップエンジンが起動。唸りを上げながらプロペラが回ってゆく。

輝く水面を滑走し、飛行艇は空へと飛び立つ。

雲を切り裂きつつ真っ直ぐ南へ向かって空を駆け、飛行艇はついにヒカ島が目視できる空域まで到達した。吉田キンは操縦席のモニターに表示される電子地図と眼下の景色を照合する。

「よし、ようやく到着だ」

「あそこが、皆が攫われた島!?」

 

死蚊マニは窓から下を見て眉を顰める。目の前に広がるのは、そこそこの広さを持つ島。緑が茂るジャングルに、森林伐採と焼畑農業によってできた草原や湿原、廃墟が、木々の緑を侵食するようにまばらに散らばっている。それは、どう見ても無人島だった。

 

「なんだこの危険生物が沢山居そうなジャングル。こんな過酷そうな無人島にニコチンTV達が攫われたのか……? だとしたら一体誰が……? やばい……俺、過去と未来の狭間になって怖くなってきちまった」

 

←たこ_maniaは食糧などを詰めたカバンを掻き抱く。

対照的に死蚊マニは、決意を込めてダガーナイフを握る。

 

「ここまで来てしまったからには仕方ないよ。居なくなったみんなの為にも、腹をくくって全力で探さ」

 

金属音。3人は不審に思うが、周囲の空には雲しかない。←たこ_maniaは望遠鏡を取り出し、遥か下方に目を凝らす。ヒカ島周辺の海域を拡大して目に入ったのは、黒い群影。良く見れば、それは軍用ホバークラフトに、高速戦闘艇、浮かび上がった潜水艇。様々な艦艇に備えられた機関砲の砲口は、全て吉田キン達が乗る飛行艇の方を向いていた。

 

「狙われてるぞ!逃げろ!」

「ええっ、嘘だろ嘘だろ!!?」

 

←たこ_maniaの叫びで恐怖に駆られた吉田キンは飛行艇を加速。しかし、着弾を意味する金属音は鳴り止まない。

 

「フラップが穴だらけになってるぞ!」

死蚊マニは主翼の惨状を見て悲鳴を上げる。

 

「一体どうなってんだよ!?」

「下で軍艦が機関砲で撃ってきてるんだ!ジグザグに飛べば当たりにくいはず!」

 

←たこ_maniaのアドバイスを聞き、吉田キンは回避機動を始める。

 

「軍艦なら陸には上がれないだろう。みんな、このまま着陸するよ!」

 

吉田キンはヒカ島の草原に狙いを定め、一気に高度を下げる。急激な加速度の変化に耐える3人。島の沿岸部の一部が半透明の光の壁で囲まれているのが見えたが、気にしている暇が無い。

島の地表に近づいた所で、吉田キンは速度を落とし、フラップを展開して着陸に備える。しかしフラップは損傷しているため機体が不安定に揺れる。

 

「みんな掴まれ!!」

 

激しい揺れとともに、草の生えた凸凹の地面に胴体が接する。吉田キンはスポイラーを展開し、同時にプロペラピッチを変化させて逆推力を発生。揺れながら着陸滑走する機体を止めようとする。

 

「やばい!ぶつかる!」

 

目の前にジャングルの木々が迫り、死蚊マニは悲鳴。しかし、飛行艇は徐々に速度を落とし、木にぶつかるギリギリで停止。吉田キンの素早い機体操作と、速度を削ぎやすい凸凹の地面が、3人の命を救ったのだ。

 

「やった……着陸成功だ!」

「助かった……吉田キン、お前はヒーローだ!」

「はぁ……はぁ……どういたしまして」

 

3人はお互いに労い合うと、荷物を持って飛行艇から降りる。

「それにしても、地面に着陸する羽目になるなんて……これは飛行艇だから水面で離着するものであって陸に直接降りられるようにはできて無かったのに……」

 

死蚊マニは吉田キンの残念そうな顔を見る。

 

「まあ、生きてるだけマ」

 

閃光。そして爆発。3人は紙のように吹き飛ぶ。

地面に叩きつけられた3人は目の前を見て息を呑む。飛行艇が、バラバラになって炎上していた。

 

「嘘だろ……」

 

親から受け継いだ翼の無惨な亡骸を見て絶句する吉田キン。

 

「やばい!逃げるぞ!」

 

上空を見上げて不自然な光点を見た死蚊マニは、二人の手を引いて後方に跳ぶ。一瞬前に3人が居た場所に光線が着弾、地面が爆ぜる!

3人は死に物狂いでジャングルの中へと逃げ込む。光線の照射は止んだ。

 

「ハァ……ハァ……今のは一体何なんだ!?」

 

死蚊マニは疑問と怒りが入り混じった表情。

 

「雷……?」

「いや、雷のはずが無い。晴れていたのに、いきなり雷が連続して俺達の元へ落ちてくるなんて、確率論的にあり得ない」

 

←たこ_maniaはジャングルの外を見る。煙を上げて赤く燃える吉田キンの宝に対し、廃屋がまばらに立ち並ぶ草原の緑は、嘲るような緑を見せていた。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。