雪の女王のアカデミア 作:スノウホワイト
「お父さん、今度の休み、瀬古杜に来てよ!」
轟燈矢は父に頼んだ。辞めろと、諦めろと言われても諦めきれない夢。No.1ヒーローになって、お父さんに褒められたい。だからこっそりと個性を伸ばして、炎は赤から蒼に色を変えた。きっと、
だから、見てよお父さん。
「出るな………涙なんか! ちくしょう………」
「あれ〜? 君、泣いてるの?」
不意に聞こえた声に振り返ると木の枝に腰掛ける見知らぬ女がいた。張り付けたような笑みを浮かべる黒髪の少女。前髪の左半分が白く、年齢は5歳ほど。大嫌いな弟を思い出し苛立つ燈矢。
「なんだよ、お前! あっちいけ!!」
「や〜ん、怖い〜」
叫ぶ燈矢に女はヘラヘラと笑う。その態度が燈矢をますます苛立たせる。
「俺は泣いてなんか!!」
と、目元から炎が溢れる。
「炎の個性! 蒼いのは初めて見た」
とん、と軽やかに燈矢の元に降りる。
「あったかいね〜」
「なんで近づくんだよ!」
「僕、寒いの苦手なんだ〜」
あはは〜、と笑う少女にますます苛立つ。前髪の一部しか似てないが、弟が笑ってくるようで。
「うるさい! ほら、消したからさっさとどっかに…………あれ」
炎が消えない?
「わぁ!」
全身が青い炎に包まれる。燃え広がる炎は乾いた空気の中広がり木々に燃え移る。
「熱い! 止まらない!? 炎が………」
「……………」
ふっ、と蝋燭に息を吹きかけるように燈矢へ息を吹きかける少女。燈矢を包む炎が消え去り、周囲の燃えた木々が凍りつく。
「個性事故だ。危ないよ、扱いきれない炎を使うのは………あ、でも炎熱系の個性。寒さに弱いね。今氷を………」
「お、お前……何を…………」
「あれ? 君、冷気に耐性があるんだね」
ヘラヘラと女は笑う。自分でも止められない炎を容易く吹き消した氷の個性。父が「俺以上の資質」と褒めてくれた力を一笑に付す力に、怒りが湧く。
「俺の炎を、消すなああああ!!」
「おっと」
燈矢が放った蒼炎が氷を撫で溶かす。夜闇に沈みかけていた山の中が蒼く輝いていく。
「うざったいんだよ、消えろ! 嫌いだ、お前も、焦凍も、お母さんも!!」
「え〜、誰〜?」
再び炎が燃え広がる。乾燥した冬の山。火はあっという間に燃え広がっていく。女が指をくるくる回せば女を守るように雪が現れ女の周りを多い温度を下げていく。
「…………おや?」
だがその雪が解け始めた。
「消せるもんか。消させるもんか! 誰にも、俺の炎は消せない! そうだ、俺が一番なんだ! だから、お父さんだって!!」
「ファザコンかぁ………」
「燃え尽きろぉ!!」
「クス♡」
迫る炎に対して女は嬉しそうに笑う。膨大な冷気が蒼炎と打ち消し合う。
燃え広がる蒼炎。強力な熱は本人の肉体を焼き、炎が涙の如く涙腺から溢れ本来流しているであろう涙は頬を伝う前に蒸発する。
「いいね。あったまって、来た!」
山の景色が一瞬で白い針葉樹林に変わる。それらすべて氷で出来た木々。当然周囲の温度は急激に冷える。
「赫灼! 熱拳!!!」
噴き出す炎の熱量が上がる。周囲の氷が炎に触れる前に溶け始める。迫る炎が女を包む。
「どうだ、俺の炎は! お父さんの炎は、こんなにも…………!」
「すごいねえ」
パチパチと拍手しながら
「
女が生み出した雪が人の形を作り、さらに細かく造形、色付けされ女と瓜二つに姿を変えた。
打撃の為の氷、刺突のための氷を腕に纏い迫りくる。距離を取った女は氷で作った大砲、銃を撃つ。
燈矢の温度が氷に触れる度に下がり始める。
「あああああ!!」
広範囲に広がる炎。女の被っていた帽子が焼け、猫耳が飛び出す。異形系の性質………身体能力の異様な高さは動物由来。
「俺は、なるんだ! お父さんが見とるヒーローに! 誰にも負けない、誰よりも強い!! それが、俺の生まれた意味だ!!」
「執念…………妄執。クスクス………♡ 熱いね、君は。もっと温めて? 寒いの、嫌いだからさ」
全てを焼き尽くさんと燃え上がる炎。全てを凍てつかせようと凍える冷気。
2つの個性がぶつかり合おうとした、その瞬間。
放たれた炎と吹雪の間に割り込む黒い影。
「ガキどもぉぉ。ご近所に、迷惑かけんな!!」
絶対的な力。圧倒的な破壊が2つの個性を吹き飛ばす。
「か、は………」
「きゅう………」
倒れ込む2人のちょうど間に立つ黒髪の男。猫耳と尻尾を持つ青年は苛立ったようにゴキリと首を鳴らした。
「わぁ〜、派手だねえ」
クスクスと、そんな彼に笑いながら現れるのは少女を成長させたかのような美しい女。髪の左半分が白く染まった女の左目は黒い右目と異なり凍りついた湖面のような碧。
「お前にそっくりだよ此奴。お前どんな育て方してんの!?」
「君がよく知ってると思うよ〜?」
「ああそうだな! ………たく、説明が面倒くせえ。後あちい」
「仕方ないなぁ」
女が片腕を振るうと山の半分を覆うほどだった火事が一瞬で凍りつく。
「それと、てめぇはなんだ?」
ギロリと青年が睨みつける方向にいる男。殺気を伴う視線に怯えることなく肩を竦めた。
「いい個性の子供達だね。知り合いになりたかったのさ」
「そうか。死ね」
一瞬で接近し振るわれる爪。男が上空に飛び、岩や木々を切り裂いた。
「君はヒーローじゃないだろう? 喧嘩の仲裁や消化はともなく、それ以上はマズイぜ、傭兵」
「え? マズイ? なんで? 死体がどうやって被害を報告すんの?」
「僕と君が戦ったら君の息子も死んじゃうぜ?」
ビキッと青筋を浮かべる青年は、しかし伸ばした爪を振るうことはなかった。男は黒い靄に包まれていく。
「君と僕は似た個性を持っているんだ。仲良くなれる気がするんだがね」
「失せろ、老害。現代の若者とお前じゃ趣味が合わねえよ」
本作の主人公。父の複合型個性『猫又』の特性を持ち高い身体能力に加え母の個性『雪女』の特性を色濃く受け継いでいる。母に似て将来美人になること間違いなし。だが男だ
成河タタリ
漫画タタリの妖怪と違いあくまで個性を持った人間。血を啜り相手に化けたり個性を模倣したりする。従姪がいるとかいないとか。ブラコン&シスコンで無個性の兄と妹がいる。
成河セツナ
タタリの妻。漫画と違い個性を持った人間。普段は国外で傭兵団スノウホワイトの団長をしている。タタリと息子が大好き。氷叢の分家筋。