来世は天使級美少女にしてとお願いしたら戦場の天使になった件   作:ケーニヒスチーハー

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逃亡してすみませんでした!


唐突なNTRに脳が破壊されました!

 俺、斎藤某は多少雄々しいこと以外は至って普通の会社員である。平凡な成績で学問を修めごく普通の会社勤めに励み恋人と平和な日常を享受していた。

 

 しかしその幸せな日常は今、目の前で音を立てて崩れ去った。

 

 今日も仕事を片付けクタクタになるほどの疲労感と共に帰宅した俺を待ち構えていたのは、最愛の女性が見知らぬ美女と絡み合っている光景だった。

 世界から色が抜け落ち時が止まった気がした。目の前の状況を理解できない、したくない。頭をハンマーで殴られたかのような衝撃が襲い口からはヒュっと息が漏れる。

 

 そんなあまりにもあんまりな状況に声も出せない俺を尻目に素早くシーツで身体を隠した彼女が叫んだ。

 

「あなたが悪いのよ…あなたが、とっても漢臭いから!」

「どういうこと?!」

 

 その言葉に彼女の隣にいた美女が続けた。

 

「はははは!この子は君みたいな筋肉ダルマより私みたいな美人が良いんだってことさ!」

「は⁈はあ⁉」

 

 人の恋人を奪っておいてなんだその言い草はと思うがそれよりも最愛の人に裏切られたショックが大き過ぎて俺は口をパクパクと動かすことしか出来なかった。

 頭にだんだんと血が昇っていくのを感じる。

 血圧が急上昇し抑えきれなくなった衝動が叫び声となって口から飛び出す。

 

「そんな…俺が悪いのか?俺が……可愛くないのがいけないのかぁッッ!」

 

 情けない咆哮と共に頭の中で何かが切れた音がした。

 視界が暗くぼやけ全身から力が抜けていき俺はその場に立っていられなくなった。身体は勢いよく後ろに倒れ始め、そして。

 ゴンッ!という後頭部から響いた鈍い音と共に俺は意識を手放した。

 

 

 

 

 

__________

 

 

『俺が可愛くないのがいけないのかぁッッ』

「ぷっははは!なっさけない断末魔だこと!百合NTRで物理的に脳破壊されて死亡とか初めての死に方だよ。いやー笑いすぎてお腹痛い」

 

 目を覚ますと俺はよく整えられた部屋の中で古代ローマ風の格好をした不審者に事の顛末を笑われていた。

 

「あの、ここは一体?」

「死後の世界だよ。平たく言えば輪廻を司る役場」

「はあ…つまり俺は」

「死んじゃったね」

 

 どうやらこの不審者は天国で働く公務員だったらしい。

 驚くほどすんなりと自分が死んだことを飲み込んだ俺を尻目に輪廻の神様はどこからか取り出した書類にペンを走らせる。

 

「じゃ、後がつっかえてるからさっさと終わらせるねー」

「え、ちょ」

「似た世界の方が良いでしょ。じゃあ並行世界の同じような国に送るね。えと未練は可愛くないことだからめちゃくちゃ可愛い天使級美少女にしちゃうよ。サービスサービス」

「えぇ?」

 

 そんなこと望んでいないと言おうとした時にふと俺は自分の身体が薄く透けていっていることに気がついた。

 

「俺、消えて」

「ほい手続き終わり次の人生頑張って〜」

「待っていきなり過ぎてまだ心の準備が…!」

 

 言い終わる前に俺の身体は完全に消失する。同時に俺の意識もまた霧散した。

 

 

 

 こうして僕は斎藤某改め土方晶として第二の人生を送ることになった。

 

 とはいえ。

 

 生まれ変わったといっても性格や生き方が劇的に変わるわけもなく。

 一般的な夫婦の一人娘として生まれた僕は特に波乱もなく順調に成長し気付けば高校卒業も見えてきた歳になっていた。

 

 そんなある日のこと。

 

「このままじゃだめだ!」

 

 僕はそんな決心と共に人生を変える決意をした。

 平凡な生まれ、ごく普通の生活。性別こそ違えどこれでは前の人生とほぼ同じだった。すなわちこのまま前世の人生をなぞる生き方を続けていたら運命か何かによってまたあの最悪な最期を迎えるかもしれないという可能性も無きにしもあらず。

 考えすぎかもしれないけれど死後の世界なんて出鱈目な事象を知っている身からすれば世界線の収束的な現象も否定できない。

 

 何か、これまでの人生を一変させる何かが必要だ。

 

 そう考えた僕はネットや本で色々と調べて回りやがて一つの選択肢に辿り着いた。

 

 日常とは隔絶された世界、一般社会にいたらまず出来ない特殊な経験。友情、努力、勝利。

 

 ホームページに書かれた謳い文句に電撃が走った僕は卒業と同時に"自衛隊地方協力本部"の門戸を叩いたのであった。

 

 万年人手不足だったことも幸いしたのか特に面接やらで弾かれることもなく(身長はかなりギリギリだったが)僕は陸上自衛隊の自衛官候補生として頑張ることになった。

 

 3ヶ月間みっちり走りに走り、這いずり回り、土に塗れて掘りまくり歩兵のイロハを体に教え込まれて晴れて僕は普通科の二等陸士の階級を頂戴した。

 

 さて僕が配属された普通科、いわゆる歩兵と言っても役職は色々ある。スナイパーだったり対戦車ミサイル射手だったり偵察だったりだ。

 数多ある職種の中で選んだのは衛生。よく映画で『メディーック』って叫ばれているアレだ。

 

 別に高尚な動機があるわけではない。最前線で小銃担いでドンパチするより後方で怪我人を診る方が幾分か楽かもと甘い見通しで志望しただけだ。

 

 ただ、その楽かもなんて甘々すぎる見立ては見当違いも甚だしかったのだけど。

 

 幸か不幸か試験に合格し希望が通り教育課程が始まってすぐ僕は自分の判断を後悔した。

 

 

「土方ー!バテるなよー。お前がへばったら誰が負傷者診るんだ!」

「は、はひぃ」

 

「ほらダッシュダッシュダーッシュ!1分1秒に生き死に掛かってんだぞ!」

「はいぃ!」

 

 キツいのだ。体力的にも精神的にも。衛生員になれば歩兵戦闘の訓練は減るかなと思っていたけどそんなことは無い。

 怪我人が出ない内は僕たちも普通の普通科隊員として戦うから小銃で撃ち合ったりする訓練は普通にする。プラスして衛生科としての訓練や教育が上乗せされるのでトータルの訓練量は倍、いや二乗でも効かないと思う。

 

 生憎僕は要領が良かったらしい。猛勉強の末に教育課程中に准看護師と救急救命士の資格を躓くことなく取れた僕は自衛隊病院で1年間の研修を経て都内の駐屯地に配属された。

 

 研修、辛かった…。生の傷病者を診るのは初めのうちは刺激が強く、大きめの裂傷や開放骨折を見た日の夜には夢に出てきた。それも研修の最後辺りには慣れたけど。

 

 閑話休題。

 

 駐屯地でも僕のやることはあまり変わらなかった。

 訓練、訓練、また訓練。

 

 今日も今日とで駐屯地内に設けられたグラウンドで応急処置と後送の手順を反復していた。

 グラウンドの芝生に横たわったやたらと傷口がリアルな等身大マネキン、山田くんに姿勢を低くしながら駆け寄り声を掛ける。

 

「山田ー大丈夫か。しっかりしろ」

「服切るぞー土方銃頼む」

「はい!」

 

 指導と補助のため一緒に来た先輩がハサミで服を切る間に山田くんが持っていた銃の安全装置を掛けゴム手袋を嵌めた僕は山田くんの胴体や手足を直接触り出血の有無を確かめる。

 

「接合部首良し、胴体、良し。右腕、左腕。…あ、左下肢大腿部出血!」

 

 山田くんの足から血の代わりの色水が流れていることに気づき僕は背嚢から止血帯とエマージェンシーバンテージ、止血剤入りガーゼを取り出し準備する。

 

「止血して」

「はい!」

 

 止血帯で脚を締め上げた後、包帯で直接圧迫し止血する。元々の出血が緩やかだったためこれでも効果が有り止血帯を緩めても再度出血することはなかった。

 だけどまだ気は抜けない。

 

「右脛骨骨折。固定します」

 

 右足を触った時に嫌な手触りがあった。添え木を当てこれ以上傷が悪化しないようにして他に傷がないか目を光らす。

 

「骨盤骨折は、否定的。他の外傷無し。胸の上がり、良し脈有り。生食(生理食塩水)500ml入れます。1分測ってください」

「用意良し」

「1分始め」

 

 山田くんの右腕に針を刺し先輩に時間を測って貰いながら点滴の流量を調整する。

 点滴や山田くんの容体と睨めっこすること10分弱、担架を携えた後送役の隊員が駆けつけ後を任せることで状況は終了した。

 

「ふい〜疲れた」

 

 なんて言ってられないのが衛生科隊員だ。僕はもう訓練だけをしていれば良い候補生じゃない。駐屯地の中で任せられた業務がある。

 訓練の後片付けを終わらせて少し休憩したら今度は医務室で業務中に怪我をしたりした隊員の診療だ。

 たとえば今僕の前に座り腫れた手首に氷嚢を当て弾性包帯を巻かれている同期の隊員はランニング中に転倒し咄嗟に前に突き出した右手を痛めてしまったらしい。

 弱すぎずキツ過ぎずの力加減を意識しながら8の字を描くように包帯を巻いていく。

 

「指先痺れたりしてない?きつかったら緩めるけど」

「ぅぁ手小っちゃい…」

「?」

 

 手の具合について聞きたかったんだけど彼は頬を紅潮させて包帯を巻かれた自分の手を見つめている。

 

「日村君?」

「⁉はっ」

「えと手の圧迫はそれぐらいで良いかなって?」

「ああうんだいぶ楽になった気がする」

「はいじゃあ手当て終わり。軽い捻挫でよかったね。でもこういう怪我はクセになっちゃうから無理しちゃダメだよ?」

「はい!ありがとうございました!」

「うん元気でよろしい。お大事にね」

 

 患部の冷却と固定を済ませて一言付け加えると手当てしてもらった隊員は勢いよく礼を言って自分の持ち場に帰っていく。

 ところで処置している最中ちらちら顔を見られてたんだけどゴミか何か付いてたかな。訓練終わったあとタオルできちんと拭いたんだけど。

 

「初恋ハンター…」

「何か言いましたか?」

「いやなんも」

 

 先輩がぼそっと何か言っていた気がするんだけどなんだろ。まあ、いっか。

 

「平和ですねぇ」

 

 巷では夏休み真っ只中でニュースを見れば海や山でキャッキャウフフと遊び回っている人たちが映されていた。

 駐屯地の隊員の中にも纏まった休暇を取って家族と過ごす人もちらほらいる。

 

「すんません格闘訓練中に肩外れちゃって、アイタタタタ」

「土方お願い」

「はーい。わかりました」

 

 もうすぐお盆か、久しぶりに実家に帰ろうかな。

 そんなふうに思いつつ僕は呼ばれた方へ向かうのだった。

 

 結論から言うと、今年はお盆どうこうの騒ぎではなくなっちゃったんだけど。




精神的に不安定になってリセット症候群的衝動で垢消す→鬱状態が回復してきて猛烈に後悔→とりあえず読者数的に1番迷惑かけちゃっただろう本作をやり直したい(なお下書きも全消去されてる)→記憶を頼りに加筆して何話かストック書く←イマココ
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