ダンジョン中毒から抜け出したい【書籍化&コミカライズ決定】   作:1パチより4パチ派

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ダンジョン中毒から抜け出したい

 ダンジョンは麻薬だ。

少なくとも俺はそう思っている。人族と魔族が争いを終えた時に、魔族の王から友好の証として送られた物、それがダンジョン。小さな入り口でも入れば何層にもなる迷宮が広がるそれは、様々なモンスター、そして見たことも無いような財宝やアイテムが生まれてくる。まさに無限の資源を得られる夢のような存在だ。ここだけ見ればの話だが。

 

「(巨大なミミックのような物だけどな)」

 

 魔族の王がミミックを改造してダンジョンを作っているというのは割と最近の話だ。入る者が持っている魔力を得る為に、アイテムを生み出して己の中に侵入させる。入った者にモンスターを仕向けて魔力を放出させて、それを糧とする。単純な仕組みではあるが、これが余りにも人族達には毒だった。

 

 頑張れば頑張る程、目に見える形で報われるダンジョン探索は瞬く間に普及した。ダンジョン内では怪我を負っても、それこそ死んでも元通りになるのも災いした。魔族の王がセーフティーとしてダンジョンそのものに回復魔法や蘇生魔法を覚えさせていたのが悪い方向に出てしまったのだ。

 

 あっという間にダンジョンの虜になった人族達は、迷宮探索者と言う新しい職業を作り出して迷宮に潜り続けた。その結果、人族達の国は凄まじい勢いで発展していき、今ではスマートフォンやらロボットなんて言う物すら作り出すまでになった。魔族の術中にハマってるような気もするが……魔族側もダンジョンにどハマりしているので、考え過ぎなのかもしれない。

 

「加藤さーん、おはようございます」

 

「おはようございます、今日はよろしくお願いします」

 

「はい、今日の予定は二層までになってます、終わったら電話で連絡して頂ければ」

 

「分かりました、では早速始めます」

 

「はい、ダンジョン清掃お願いします!」

 

 そんなダンジョンの清掃員を、俺は生業としている。ダンジョンで生まれる魔物の死体や人族の流した血、荒れた床や壁などはほっといても直るものじゃない。誰かが綺麗にしなければならないのだ。ダンジョンは巨大なミミック、つまり生きている以上ちゃんとケアをしてやらないと死んでしまう。今こうして俺ら人族や魔族の生活を支えてくれてるダンジョンの為に、俺は今日もダンジョンを掃除するのだ。

 

「今日はそんなに酷くないな」

 

 どうも今日入った迷宮探索者達はお行儀が良かったようだ。モンスターの死体や血などはあれど、壁や床は問題ない。これなら片付けと拭き掃除だけで済みそうだ。探索者達全員がこんな感じで綺麗に使ってくれれば、俺も大助かりなのだが……荒事である以上、マナーが悪い連中の割合の方が多い。この前なんてそこら辺でトイレして行きやがった馬鹿野郎が居た。簡易トイレを忘れたのだろうが、だったら探索中断しろと言う話だ。

 

「モンスターの死体はダンジョンの処理口に持ってってと……」

 

 モンスターはダンジョンが魔力で財宝やアイテムを生み出した際に、副産物として生まれる生物のようなもの。こいつら自体は魔力で構成されている為、血を流すような事は無い。ダンジョンの決められた場所に持って行けば、ダンジョンが魔力に変換して吸収してくれる。こいつらが財宝やアイテムをドロップするから、探索者は必死こいてモンスターを狩るのだ。

 

「今回の探索者は優秀だな、大してダメージを負ってないじゃないか」

 

 血は固まると取るのが大変なのだ。量は少ない方が有り難い。中性洗剤をかけてモップで綺麗に掃除する。ポイ捨ても無かったので、今日は当たりの日だ。

 

 大体一層につき3時間だろうか、人がもっと居れば早く済むが清掃員はあまり人気が無い仕事。募集しても誰も来なかったらしいので早々と諦めた。二層目の掃除が終わった頃には既に夕方は過ぎて夜。いつもよりは早い時間だ。

 

「もしもし、作業終了しました」

 

『そうですか、お疲れ様です。また明日もよろしくお願いします』

 

「はい、了解です」

 

 このダンジョンの運営とは1ヶ月間の契約をしてもらっている。毎日掃除はしんどいが、これも自分の人生の為。社会復帰の足掛かりとして頑張らないといけない。

 

「帰って飯にするか……」

 

 掃除道具を持ってダンジョンから去る。明日もマナーがいい探索者だといいな……。

 

◇ ◇ ◇

 

 翌日、出勤時間になったのでダンジョンの方に向かう。時間的に今日の探索者は既にダンジョンアタックしているだろう。彼らの後ろをついて行く形で掃除になりそうだ。

 

「……ん?」

 

 ダンジョンの受付まで来たが、人が居る。いや、人が居るのは当たり前だが身なりからしてどう見ても探索者だ。武器や鎧は迷宮探索者以外は装備を禁じられている。つまり装備している以上、彼らは探索者と言う事だが……。

 

「(おかしいな、予定時間だととっくに出てる筈なのに……)」

 

 何やら受付で揉めている。探索者達の外見からして大体ギリ20歳くらい、大学生だろうか。金髪の男が受付の人に喚いている。

 

「だからぁ! 少し遅れたくらいでキャンセルはおかしいだろ!」

 

「1時間半遅刻は少しではありません! 他の予約されてる方を優先するのは規約に書いています!」

 

「じゃあその後ろでいいから入らせろよ!」

 

「それだと清掃の時間が遅くなり過ぎます! 清掃員の方の都合も考えて後日また予約してください!」

 

 受付が拒否してもずっと食い下がる探索者。他のメンバーも男と同じ考えなのか、文句をずっと言い続けている。このままだと運営業務に支障が出るだろう。

 

「(仕方ないか……)」

 

 受付に近づくと係員がこちらに気づいた。探索者達に向けていた表情とは一変、申し訳無さそうな顔になる。

 

「すいません加藤さん、清掃時間ですよね。少々お待ちしてもらってもいいでしょうか……」

 

「聞いていましたけど、今日なら遅くなっても問題無いですよ」

 

「ええ!? でもそれは……」

 

「お前もしかして清掃員か?」

 

「はい、そうです」

 

「何だよ気が利くじゃん! ほら、こいつもこう言ってるし早く入れろよ!」

 

「あ、貴方初対面の人に何て口を──!」

 

「いいですよ、自分は大丈夫です」

 

「ほらほら! 早くしろって!」

 

「……分かりました、では入場料をお願いします」

 

 探索者達は入場料を全員分支払う。係員が渋々ダンジョンの入り口を開くや否や、我先にと入って行った。

 

「さぁて稼ぐぞぉ!」

 

「ホントに儲けれるんだろうな?」

 

「当たり前だ! 良い方法があるんだよ!」

 

「(初心者用ダンジョンで稼げる訳無いだろ)」

 

 恐らくど素人だろう。装備も最低ランクの物しか身に付けていないし。まぁそれでもこのダンジョンだったら一層くらいなら踏破出来るかもな。出てくるモンスターもそれ相応に弱いが。

 

「(弱いモンスターからは大した物は出ない、何だったら入場料分すら稼げないなんてザラだ)」

 

 だからこそ、このダンジョンで探索に慣れたら別のダンジョンに行くのが定番。探索者はそれの繰り返しで強くなり、稼いでいくのだ。

 

「(……良いなぁ)」

 

 ──ダメだ、また発作が出た。もう俺は探索者は辞めると決めたんだ。一度身を崩したのにまた同じ沼にハマる必要なんて無い。もうあのドーパミンとは訣別したんだ。

 

「加藤さん、すいません……気を遣ってくれたんですよね……」

 

「逆上して暴れられでもしたら大変ですから」

 

「そうだ、せめて私達の休憩室で待っててください。お茶とかもありますから……」

 

「そうですか、ならお言葉に甘えて──」

 

「あ、あの……」

 

 声がしたので後ろを振り向くと、先程の探索者達の1人がそこに立っていた。茶髪でボブカットの女性は弓を持っている。

 

「何ですか?」

 

「せ、清掃員の方なんですよね? ご、ごめんなさい! 私達のせいで……」

 

 受付の人が「分かってんならやるなよ」と言う顔をしている。俺もそう思うが、この人は先程の連中と違って受付の人に詰めては無かった。

比較的マシなのかもしれない。

 

「……お気になさらず、ご武運を」

 

「ほ、本当にすいません! すいません!」

 

「ちょっと加奈子ちゃーん、遅いって〜」

 

 先程の金髪の男が、後ろから女性に肩を組んできた。顔を見るとニヤけ顔が浮かんでいる。狙っているのだろうか、俺には関係ないが。

 

「ご、ごめんなさい。今行きますから……」

 

「良いよ良いよ! ほら早く行こうよ!」

 

 そのまま半強制的に連れていかれる女性。と思ったが、ダンジョンに入る直前に男の肩組みを振り払って──。

 

「せ、清掃のお仕事、毎日お疲れ様です!」

 

 そう言って男とダンジョンに入って行った。

 

「いきなり何なんですかね……よく分からない人」

 

「まぁ……労われて嫌な気持ちにはなりませんね」

 

「そりゃそうかもですけど……あ、休憩室案内します! こちらに!」

 

「ありがとうございます」

 

 予定は狂ってしまったが、まぁ帰る時間が1、2時間遅くなるくらいだ。運が無かったと思って諦めよう。運営の人に案内された休憩室で茶を飲みながら俺は待つことになった。

 

 

◇ ◇ ◇

 

 時間からして一層は終わっただろうか。未だに帰って来ていないのを見ると、更に潜ったのだろう。間違いなく全滅確定だ。このダンジョンは確かに初心者用だが、二層からはモンスターが強くなる。特にデカいアリが強い。あのモンスターは群れで襲ってくるので対処をミスるとそのまま詰みだ。今回初アタックの連中じゃ、囲まれて終わりだろう。

まぁ全滅しても入り口に飛ばされるだけだから問題無いけど。つくづく便利なセーフティー機能だ、魔族の王は優秀だな。そう思ってダンジョン内に入ったのだが──。

 

「何だ……様子がおかしいな……」

 

 ダンジョン内の魔力が不安定だ。本来であれば一定の魔力が漂ってる筈なのに、多かったり少な過ぎたりとバラバラ。異常事態と言って良い。

 

「一体何が……ん?」

 

 一層目を進んでいると、何かが捨てられている。大方探索者達がポイ捨てしたゴミだろうが……。近づいて拾い上げてみる。

 

「……あ、あのクソボケ共……!!!」

 

 急いでスマホでダンジョン運営に連絡する。程なくして受付の人の声が聞こえて来た。

 

『加藤さん? どうしました?』

 

「緊急事態です! あの連中、【霊酒】をダンジョン内に撒いてます!」

 

『【霊酒】……!!! そ、それは本当ですか!?』

 

「はい! 捨てられていた瓶からして間違いない! ダンジョン内の魔力も不安定です、完全にダンジョンが酔っ払ってます!!!」

 

 【霊酒】、肉体を持たない精霊や妖精の嗜好品。いわば酒の代用品だ。魔力によって生まれた存在すら酔わせるそれは、魔力から生まれた生物──魔生物も酔っ払いにする。そしてダンジョンはミミックの亜種、魔生物なのだ。

 

「(何より酔っ払ったダンジョンは……セーフティーが発動しないし本来出てこないモンスターも出してしまう!!!)」

 

 ここは初心者ダンジョンだが、酔っ払っている状態なら何が出て来てもおかしくない。それこそ、国内最高レベルのダンジョンで出るような強力なモンスターが出てくる可能性だってある。

 

「(あの男が言ってた良い方法ってこれかよ!)」

 

 ダンジョンに入るには入場料が必要だ。これは運営に必要な資金によって決定される。規模が大きいレベルの高いダンジョンであればある程、入場料は高くなる。その分、見返りが良くなる可能性はずっと高くなるのだが……。連中はそれが出せない。だから安い初心者用のダンジョンを酔わせて強いモンスターを出し、一攫千金を狙ったのだろう。

だがそれはほぼ自殺行為だった。

 

「(セーフティー機能が発動しない、つまり死ねばそれで終わりだぞ!)」

 

 蘇生魔法は確かに死者を生き返らせるが、それには時間制限がある。

死亡してから5分以内で無ければ、効果が出ないのだ。本来であれば、即蘇生からの入り口に転移で飛ばされるまでワンセット。だが今のダンジョンにそれは出来ない。【霊酒】のせいで、魔族の王に設定された行動が取れないからだ。

 

『い、今すぐに高レベル探索者を呼びます! 加藤さんは早く戻って来て下さい!』

 

「……いや、今から呼んでも恐らく間に合わないです。今の時間帯的にこの辺の高レベル探索者は全員中央のダンジョンにアタックしてます。恐らく終わるのは深夜、それから呼んだとて……」

 

『ど、どうしましょう……! け、警察……いや呼んだところで……!」

 

 まずい、このままだとこのダンジョンが死人を出したとしてニュースになってしまう。そうなれば間違いなくこのダンジョンは閉鎖だ。俺の仕事が──無くなる。そんな事は、させない。

 

「(ようやく社会復帰出来るチャンスなんだよ)」

 

 沼にハマって全てを失いかけた俺の、復帰のチャンス。こんなくだらない事で逃してたまるか。

 

「俺が行きます」

 

『……はい!? 何言ってるんですか加藤さん! 貴方清掃員で──』

 

「慣れてますから大丈夫です、一応警察の方呼んどいてください。それでは」

 

『か、加藤さ──』

 

 通話を切って走り出す。幸い一層目には碌にモンスターが居ない。先に入った連中に集中しているのだろう。あっという間に二層目への階段に辿り着いた。

 

「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 金髪の男の声が聞こえて来た。即座に階段を降りて二層目に入る。

目の前に飛び込んで来たのは、ボロボロの探索者達と巨大なドラゴンだった。

 

「ゴァァァァァァァ!!!」

 

「……ライトドラゴンか」

 

 金色の鱗を持った輝くドラゴンは、周囲の探索者を蹂躙しただけでは飽き足らず、唯一無傷の茶髪ボブの女性にゆっくりと近づいていく。

 

「あぁ……あぁ……!」

 

「ガァァァァ!!!」

 

 このままだと不味いので持っていた掃除用のバケツを放り投げる。綺麗な曲線を描いたバケツはドラゴンの後頭部に直撃した。

 

「!?」

 

「え……」

 

「おい、こっちだ」

 

「……ゴガァァァァァ!!!」

 

 上手くこちらに引きつけられた。怒り狂って俺に突っ込んでくるライトドラゴン。

 

「あ、危ない!!!」

 

 女性が何か言ってるがそれどころでは無い。早く床ぺろしてる連中を救助しないと俺の仕事が無くなるのだ。なので──。

 

「シャァァァァァ!!!」

 

 持っていたモップでライトドラゴンをぶん殴った。グシャア! と言う音を立てながら顔の半分が潰れたライトドラゴンはそのまま悶え苦しむ。

 

「グガァ!? グガァ!!!」

 

「………………え?」

 

「特注のモップだぞ、お前を倒すくらいなら問題無いわ」

 

 以前世話になっていた鍛冶屋に頼んで作ってもらったミスリル製のモップ。武器ランクで言うならBランクはある。中位のドラゴンならこれで余裕だ。

 

「時間無いから終わらせるぞ」

 

 どうせ俺が掃除するのだ、雑に倒しても良いだろう。モップでドラゴンの顔をめった撃ちにする。最初は抵抗しようともがいていたドラゴンだったが、2分ほど殴っていたら動かなくなった。

 

「鈍ってるなぁ……」

 

 前ならもっと早く倒せたろうに。まぁ武器がモップでブランクありなら良くやった方だろう。

 

「大丈夫ですか?」

 

「は、はい……」

 

 女性に声を掛けるとちゃんとした返事が返って来た。他の連中も確認するが、息はあるようだ。

 

「良かった……死者なんて出たらえらい事になってたわ……」

 

 倒れてる連中に回復魔法をかけてやりながら一箇所に集める。転移魔法は俺使えないんだよなぁ……気絶してるし担ぐしか無いか?

 

「あ、あの……凄く強いんですね……」

 

「あー……まぁ昔探索者やってたんで。もう足洗いましたけどね」

 

「ど、どうしてですか? そんなに強いなら探索者した方がずっと……」

 

 そんなのは分かっている。探索者をやってた方が儲かるなんてのは分かりきっているのだ。だからこそ俺は辞めたのだ。あの俺を狂わせたダンジョンの中毒性から逃げる為に──。

 

ゴトン

 

「……嘘だろ?」

 

 後ろを振り向いた。そこにはライトドラゴンの死体がある。そして──先程までは無かった宝箱が、そこにはあった。

 

「あ! 宝箱ですよ!」

 

「あ、あぁ……」

 

「私達、一層目のモンスター倒しても1つも落ちなかったのに……清掃員さん凄いです!」

 

「ああ……やめてくれ……違うんだ……!」

 

「あ、あの清掃員さん? 宝箱が出るなんて凄くラッキーなんですからもっと喜ぶものなんじゃ……」

 

「違う! 俺はもう! やらないと決めたんだ! だから外れてくれ! 頼む頼む頼む頼む頼むぅぅぅぅぅ!!!」

 

 居るかも分からない神にひたすら祈った。どうか、どうかスカでありますように。中身が入っていませんように。ここで当たりでもしたら──俺は、俺は!

 

 宝箱が勝手に開いた。眩い光を放ちながら中身のアイテムが外に出てくる。

 

 

デーデデレーデレレーデレレレー!!!

 

 聞きたく無い音楽と共に俺の視界に入って来たアイテムは──。

 

 

 

【光竜の宝玉 ランクSSS】

 

 

 

 激レアも激レア、最大ランクのSSS。1つで小国程度なら買えてしまうレベルの物が出た、出てしまった。

 

 

 

 

「うっひょぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!」

 

 

 

 

 脳内に駆け回るドーパミン。2年ほど我慢していた分、反動で凄まじい勢いでテンションがぶち上がる。ダメだ、もうダメだ。この音楽もだが演出がもうダメ。こんなの射幸心煽りまくりだろ。

 

「あ、あの清掃員さん……」

 

「ファーーーwwwたまんねぇなおい! 最高かよダンジョン! 激レア当たった時の脳味噌が震える感じ!!! あー気が狂うぅぅぅぅぅ!!!」

 

「あ、あの──」

 

「ああダメだ、もっとだ。もっと寄越せ。もっともっともっと! あの宝箱の演出を見せろ! 激レア寄越せ!!! 俺に──ドロップ品をくれぇぇぇぇぇ!!!」

 

 更に奥に突き進む。酔ったダンジョンは俺に反応したのか、本来初心者用ダンジョンで出ないようなモンスターがバンバン出て来た。

 

「落とせよ、落とせよ宝箱。俺にドロップを寄越せぇぇぇ!!!」

 

 手当たり次第モップでモンスターを殲滅する。ダメだ落ちない、次。こいつも落とさない、しけてやがる。もっと出せ、酔ってる内に!強い奴出せよ! その方が確率上がるから!!!

 

「もう1回あの演出見るまで終われねェェェ!!!」

 

 そのままひたすらに突撃していく俺が正気に戻ったのは、ダンジョンの酔いが覚めた夜明けだった。

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

「加藤さん、申し訳ないのですが……」

 

「……はい」

 

「上の方から契約を打ち切りたいと言われまして……」

 

「……理由を聞いても良いでしょうか」

 

「えっと……勿論問題を起こした探索者が1番悪いのはそうなんですけど……怪我人ほっぽいてモンスター狩りまくってたのが流石に怖すぎるという事でして……」

 

「……申し訳ありませんでした」

 

「い、いや加藤さんは悪くないんですよ! 実際ダンジョンの酔いが覚めるまでモンスターを抑えててくれたとも考えれますので! どの道一度発生したモンスターは討伐しなきゃいけませんし! ただ、その、今回は縁が無かったと言う事で……」

 

「そうですか、短い間でしたがありがとうございました」

 

「い、いえいえ! そんなそんな! ……あ、仕事ありますのでこれで……はい……」

 

 一気によそよそしくなった受付の人に頭を下げてそのままダンジョンの事務所を出る。1週間しか清掃させてもらえなかったな……。

 

「……ん? メッセージ来てるな」

 

 これからどうしようと思っていたらスマホに通知が入る。開いて確認してみるとそこには──。

 

 

 

お  か  え  り

 

 

 ダンジョン運営兼探索者の友人がどこからか今回の事件を聞きつけたのか、大量の笑顔のスタンプと共に俺の帰還を喜んでいた。

 

 

「誰か助けてくれぇぇぇぇぇぇぇ!」

 

 

 2年の我慢が水の泡。脳裏に焼き付いた宝箱の演出をかき消そうと俺はひたすら頭を掻きむしりながら助けを求めた。──その助けは雲一つない青空に消えていった。

 




Q.どうして宝箱が開く時に音楽が鳴るんですか?

A.魔族の王(ギャンカス)「その方が楽しいだろ?」
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