ダンジョン中毒から抜け出したい【書籍化&コミカライズ決定】   作:1パチより4パチ派

10 / 85
元気発狂オロナミンK

「まさか、まさかまさかお戻りになっているとは! やはり人々を支える為、再び剣を取る事を選択なされたのですね!」

 

「??????????」

 

「今日まで仲間と共に尽力し続けましたが……私達だけではやはり、アイテムの供給は賄いきれませんでした……力及ばず、恥ずかしい限りです。ですが! 今は勇者様が居ます! 貴方が居れば! この難局を乗り切れる事でしょう! 私も微力ながら共に戦わせて下さい!」

 

 お前は何を言っているんだ。

マジでこれ以外の感想が出てこない。

そもそも誰? 勇者? 厨二病か?

見た感じ20超えてるだろこの人、いくら寿命クソ長いと言っても流石に卒業しろよ。

てかこの人いつまで俺の手握ってんだろ、そろそろ──。

 

「おい」

 

 まるで地獄から来たかのような声が聞こえる。

決して大声では無い、だが聞こえる、ハッキリと。

その声は勿論、隣に居たセラフィナ。

 

「お前、その手離せ。早く」

 

 目が血走っている。凄まじい殺意だ。

俺に向けられてないのに怖すぎて漏らしそう。

 

「? ……ああ! 失礼しました! つい感極まって……」

 

 だがハイエルフの方はまるで意に介していない。

と言うかそもそもセラフィナがキレているのに気付いていない。

嘘だろ、今のセラフィナは視線で人殺せそうなんだぞ。

気付けよそこは。

 

「貴方様は……勇者様のお仲間ですね! ご一緒に復帰なされたのですか! 喜ばしい事です!」

 

「お前さっきから何言ってんだ? あ? 頭おかしいのか? てか離れろ、近いんだよ殺すぞ」

 

「おいセラフィナ、流石に殺すぞは……」

 

「何だって?」

 

「僕のお口はミッフィーちゃん」

 

 こっちに怒りが飛んできたら怖いので黙っておく事にした。

ハイエルフは満面の笑顔。

最早こいつのが怖いかもしれない。

 

「お2人はこれからダンジョンに?」

 

「え? あぁ……まぁ……そっすね」

 

「ですがお2人だと少々苦戦するかと……ここのダンジョンはご存知の通り、それなりの難易度。最低でも3人は居るべきです」

 

「お前に関係ないだろ、失せろ」

 

「私を心配してくださるのですね……お心遣い、感謝します。ですが私もあの頃から強くなりました。きっとお2人のお力になれるかと!」

 

「やべーよこの人、俺らの言葉を全部都合よく変換してるんだけど。エキサイト翻訳のがマシな変換するぞ」

 

「マジでいい加減にしろよ。もう1度だけ言う、失せろ」

 

「ご安心を! 私の武器は槍ですが、魔法を多く使えます! 支援はお任せください!」

 

「…………」

 

 やばい、セラフィナが限界だ。

顔に血管浮き出てるもん、このままだと爆発する。

何とか、何とか宥めないと──。

 

「ちょっとリファル!? 急に走ってどうしたの!」

 

「……うわ出た。気狂い」

 

「おー、復帰したんだなお前ら! まーた騒がしくなるな! ガッハッハ!」

 

 恐らくハイエルフの仲間であろう集団が近づいて来た。

精霊族、オーガ、人間……あの厚着してるのは何だ? ぱっと見人間だけど心音聞こえないから違うな。アンデッド?

 

「皆! 勇者様が帰還なされました!」

 

「えぇ? ……あー、そう言う事。ごめんなさい、この子ちょっと憧れと勘違いが暴走してるの。大目に見て欲しいわ」

 

「ああ良かった、会話が通じる……」

 

「会話すら成立してなかったのね……」

 

 仲間の方はマトモなようだ。

流石に仲間からの言葉なら変な変換もしないだろう。

 

「……あ、もう入る時間だ。すいません俺達これからダンジョン潜るんでそれでは……」

 

「分かりました! 後ろは任せてください!」

 

「ちょっとリファル!? まさかこの人達に付いてく気!? 貴方ってか私達さっき探索終わったところよ!?」

 

「皆は先に解散しててください!」

 

「ざけんな! テメェの体をバラバラに解散させてやろうかぁ!?」

 

「やめろ落ち着けここで殺し合い始めるな! やるならせめてダンジョンでやれ! 死んでも生き返るから!」

 

 セラフィナを何とか抑えようと羽交締めにするがパワー負けしてるせいで抑えきれない。

強くなったからって俺より馬鹿力になるとは思わないじゃんね。

 

「……あの人ってあれよね、【凶戦士】の加藤よね? なんか雰囲気全然違うんだけど」

 

「……前はもっと表情がイカれてた。でも割とマトモに見える。謎」

 

「お、お前らもそう思うか! そうだよな! アイツもっと気狂い丸出しだったよな! よくダンジョン前で叫びながら入って行ってるの見たからな!」

 

「あのすいません、話してないで自分のとこのメンバーちょっと黙らせてくれませんかね!? このままだとウチの火力役の矛先アンタらに向くぞ!?」

 

「メンバーじゃなくてリーダーですよ! 訂正してください!」

 

「尚更止めろや!」

 

 その後、数分掛けて何とかセラフィナを抑える事に成功した。

相手のリーダーエルフも仲間に言われたのが流石に効いたのか、落ち着きを取り戻したようだ。

 

「で? 結局誰なのか教えてもらって良いすか」

 

「え、私達一応探索者の中でもトップチームなんだけど……」

 

「いや……探索者時代まじで他人に興味なさすぎて同業者の事何にも知らん……」

 

「……普通はあり得ないけど、あの狂い様を見た事ある以上信じざるを得ない」

 

「なら自己紹介させて頂きます! 私達は【勇者の集い】! リーダーを務めています、リファルと申します! こうしてお会いできて光栄です!」

 

「ねぇ何が光栄なの? 自分で言うのも何だけど過去の俺なんて碌な人間じゃなかったと思うんだけど」

 

「ご謙遜を! ……まさか無意識に人々を支えていたのですか!?」

 

「すいません俺なんかやっちゃいました? 割とマジで。過去の俺なら気付かずにやらかしててもおかしくない」

 

 限界を迎えた俺が出来るのは、彼女の仲間に事情を尋ねることだけだった。

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

「つまり加藤が世間の為にダンジョン潜ってアイテム掘ってたって思ってんのか、この勘違いエルフ」

 

「……まぁ、そうなる。何度も違うと言っているけど……」

 

「『そんな事ありません!』で跳ね除けられちゃうのよねぇ……」

 

「じゃあ本人の俺が言えば納得するんだな! よし、リファルさん! 俺は別に人々の為にダンジョン潜ってた訳じゃ無いんですよ! 120%自分の欲を満たす為だけに潜ってたんです!」

 

「ひ、人々を救う事が貴方の欲だと言うのですか!?」

 

「ねぇ、この人本当にアンタらのリーダー? 人の話聞かない人をトップに添えたらダメでしょ」

 

「過去のお前さんも似た様なもんじゃ無かったか?」

 

「……….」

 

「負けんなよ馬鹿」

 

 事情は分かったがそれでも理解し難い。

話が通じないと言うのが1番の理由だけど。

 

「何回言わせんだよお前、近いって言ってんだろ! そいつはアタシのモノだぞ!」

 

「勝手に所有権主張するな!」

 

「勇者様を物扱いしてはいけません! 彼は世の中の人々、全てに平等に輝く光なのですから!」

 

「こっちもこっちでイカれてやがる!」

 

 言ってる事あのクソ詐欺神父と変わんねぇ!

この地獄の様な状況を打破出来る方法はあるのだろうか。

そんな時、エルフの仲間が近付いてきて耳打ちをしてきた。

 

「ねぇ……ちょっといい?」

 

「私に良い考えがあるって言ってくれ!」

 

「えぇ!? わ、私に良い考えがあるわ!」

 

「フラグ乙」

 

「喧嘩売ってるの!?」

 

 しまった。錯乱し過ぎて訳分からん事言ってしまった。

コンボイ司令官の作戦は成功する確率のが高いのだ。

今回は大丈夫、きっとたぶんメイビー。

 

「すいません取り乱しました、何ですか?」

 

「いや、見て分かる通りウチのリーダーって貴方に強過ぎる憧憬を持ってるのよ。でも貴方ってダンジョン中毒キメてる気狂いじゃない? 実際の姿を見れば、あの子も目が覚めると思うのよ」

 

「今の言葉だけで周りの探索者からも気狂い扱いされてる事が分かったわ。ありがとう、殴って良いか?」

 

「でも評判だったぜ? お前さんらのチームが行ったダンジョンは職員達の目が死んでるって」

 

「……付いたあだ名が『職員殺し』」

 

「誓って殺しはしていません!」

 

 人殺しみたいに言うなんて、果てしなく失礼な連中だ。

寄生マンの志村をダンジョンで殺した事はノーカンなので問題ない。

 

「実際の姿って言われてもな……俺も今までの自分がやばいって事に気付いて治そうと頑張ってるんだよ。だから彼女が見た時のよりは多少抑えられてるぞ」

 

「大丈夫大丈夫、多少程度なら大して変わんないわよ。だって元が底も底だし」

 

「ねぇ、俺になんか恨みあるの?」

 

「……リファルをあんな風にしたから」

 

「俺に責任皆無だろ! 何で勝手に目撃した結果、変になった奴の責任取らなきゃならんのだ!」

 

「世の中生きてると理不尽な目に遭う時がある! それが今さ! ハッハッハ!」

 

「お前らも全員理不尽にぶっ飛ばすぞ!」

 

「ああ、でも恨みってほどでも無いけど貴方のチームがダンジョン占有して周回しまくったせいで、潜りたかったのに潜れないのはザラだったわね」

 

「……大量のモンスターの死体のせいで清掃にバカみたいな時間かかって再開時間もいつも遅かった」

 

「やたら酒癖悪いから色んな店が探索者出禁にしてたな! おかげで探索終わりの一杯に苦労したぜ! ガッハッハ!」

 

「いきててもうしわけありません」

 

「この人、本当に勇者なんですか……?」

 

 全部心当たりがある、普通に嫌われてて当然だった。

そりゃそんな奴にリーダーが憧れてたら辞めさせたくなるわ。

 

「勿論タダとは言わないわよ、仮にも他所のチームに無理やり同行するんだし……何か欲しいものとかあれば融通するわよ?」

 

「ギアススクロールとかあれば嬉しいんだが」

 

「流石にそれは……宝箱から出た事すら無いわよ。もっと他のじゃダメ?」

 

「えー……他、他かぁ」

 

 突然言われてもなかなか思いつかない。

今欲しい物か……そんなのギアススクロール以外だと……。

 

『加藤の迎えか? 連絡忘れてたわすまんすまん! FOOOOO!』

 

 ………………。

 

「なぁ、精霊族って事は呪いに精通してるよな」

 

「え? えぇ、まぁ他の種族よりは得意よ?」

 

「エネロマの呪いは凄まじいぞ! 高レベルモンスターにもバッチリ通るからな!」

 

「……超強力。周りを巻き込まないし、便利」

 

「いつもお世話になってます!」

 

「へぇ……ふぅん……そうなんだ……」

 

 そうかそうか、なら決まりだ。

 

「呪いたい相手がいるんだけど……内容って決めれる?」

 

「ま、まぁ出来るわよ?」

 

「じゃあ──」

 

「……顔が邪悪」

 

◇ ◇ ◇

 

「よーし、じゃあダンジョン潜るぞー」

 

「はい! 全力を尽くします!」

 

「何でコイツを……」

 

「ごめんなさい、今回だけどうか許して頂戴?」

 

 結局俺達はハイエルフ……リファルさんを同行させる事になった。

お目付役として精霊族のエネロマも一緒だ。

 

「じゃあお願いね? 良い感じに現実見せてあげて」

 

「まぁどうせ正気失うから自然に見れると思うぞ」

 

「半ば諦め入ってるわね」

 

 エネロマと小声で交換条件の確認をする。

俺が狂う姿を見せてその代価として例の呪いを貰う。

完璧だ、どこも穴が無い。

 

「……チッ」

 

「セラフィナ、今回だけだから。な?」

 

「……分かったよ」

 

 すげー不満そう、そりゃそうか。

あんなにキレてたんだからな……。

 

「勇者様! そろそろ第一層です!」

 

「あ、はい。じゃあそろそろ飲むか……」

 

「? それは何かしら、薬?」

 

「医者に飲めって言われてるんです、気にしないでください」

 

 懐から液体タイプの薬瓶を取り出す。

以前飲んでた薬より少し弱いが、効き目が凄い新薬だそうだ。

何か色々書いた説明書を渡されたが、長過ぎたので読んでない。

まぁ別に読まなくても大丈夫だろ!

そんなやべぇ薬な筈無いし!

ダンジョンに入って段々と発作が近付いてる気配があるしな、早めに飲んでおこう。

 

「ほな、いただき卍!」

 

俺は瓶を一気飲みした。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「そう言えば先生、加藤さんに処方した薬って新薬でしたよね?」

 

「うん、中毒者の依存症状を治療する薬だね。最近ようやく通ってくれたんだ」

 

「そんな便利な薬が出来るなんて、医療の発展はすごいですね……」

 

「と言っても飲んでれば良くなる訳じゃ無いんだよね、あれ。中毒者の依存している物に対しての欲求を一時的に跳ね上げて、体に耐性を付けるって言うかなりパワープレイな薬なんだよね。ちゃんと注意書き渡してくれたよね?」

 

「はい! 渡す際必ず読んで下さいと3回は言いました」

 

「なら大丈夫だ、それだけ言われれば読んでくれるね」

 

「まさか読まないで、しかも一瓶丸々飲むなんて事は無いですよ! 本来一滴で良いんですから!」

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「おい加藤、一層目に着いたぞ……加藤?」

 

「あの、勇者様? 大丈夫ですか?」

 

「ちょっと、しっかりしなさいよ! いきなり薬飲んだと思ったら急に黙って……」

 

「螳晉ョア」

 

「「「え」」」

 

「螳晉ョア螳晉ョア螳晉ョア螳晉ョア螳晉ョア」

 

「おい加藤? どうした?」

 

「繝€繝ウ繧ク繝ァ繝ウ繝€繝ウ繧ク繝ァ繝ウ繝€繝ウ繧ク繝ァ繝ウ」

 

「ゆ、勇者様?」

 

「ちょ、ちょっとこれ不味いんじゃ……」

 

「螳晉ョア螳晉ョア螳晉ョア螳晉ョア螳晉ョア螳晉ョア螳晉ョア螳晉ョア螳晉ョア螳晉螳晉ョア螳晉ョア螳晉ョア螳晉ョア螳晉ョア螳晉ョア螳晉ョア螳晉ョア螳晉ョア螳晉ョア。繝€繝ウ繧ク繝ァ繝ウ繝€繝ウ繧ク繝ァ繝ウ繝€繝ウ繧ク繝ァ繝ウ繝€繝ウ繧ク繝ァ繝ウ繝€繝ウ繧ク繝ァ繝ウ繝€繝ウ繧ク繝ァ繝ウ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「♭□×☆※○*&!: ‼︎」

 

◇ ◇ ◇

 

 意味不明な言葉を発した彼の動きは早かった。

 

「ちょっ!?」

 

「ゆ、勇者様!」

 

 私達の横を通り抜けてダンジョン内を駆け抜ける。

当然、中にいるモンスターは一斉に彼に襲いかかる。

ここのダンジョンのレベルは相当高い、いくら強くても彼1人では──。

 

「×☆▲&!○$※□% ‼︎」

 

 目にも止まらない速度で振り切った剣で、細切れになるモンスター達。

あまりにも早く、あまりにも暴力的だった。

 

「あ……」

 

 モンスターの群れの中の1体から宝箱がドロップした。

地面に落ちて、開かれようとする宝箱に──。

 

「♭○&%*$×!■▲ ‼︎」

 

 彼が飛びかかって無理やりこじ開けた。

中からアイテムが飛び出るが、中身には興味無いと言わんばかりにこちらに投げてくる。

 

「ね、ねぇちょっと! やばいわよあれ! 止めないと……聞いてる!?」

 

 彼の仲間である赤髪の子に声掛けて、私は絶句するしか無かった。

何故ならその子の顔は──。

 

「カッケェ……」

 

 恋する乙女のような惚けた顔だったからだ。

 

「置いてくなよ加藤!!!」

 

 跳躍した彼女は一気に彼の隣に距離を詰める。

そのままの流れで周りのモンスターを蹴り飛ばして肉片に変えた。

 

「☆:○%*!♭□$※ ‼︎」

 

「ああ! 分かってるよ! お前の足は引っ張らねぇ!」

 

「何で会話出来てるの!?」

 

「■%○▲♭!$※×☆ ‼︎」

 

「ば、バカ! お前こんな時にそんなこと言うなよ! 恥ずいって!」

 

「いやマジで何の会話をしているの!?」

 

「ゆ、勇者様! 待ってください!」

 

「やば! 置いてかれるんだけど!」

 

 てか何であんな飛ばして息切れ一つ起こしてないの!?

魔族ならまだ分かるけど人間よね彼!?

 

「※☆■%$:!○&× ‼‼︎‼︎」

 

「ハハハハハ! ああ、このまま突っ走ろうぜぇ!!!」

 

「この人達やっぱ狂ってるわよねぇぇぇ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それから3時間後、50階層あるダンジョンを踏破してしまった私達……と言うか彼が殆どやったけど。

本来であれば10時間以上、それよりもっとかかってもおかしく無いのが3時間で終わる。

それも、踏破したからクリアしたのでは無く──。

 

「」

 

「いやぁマジか。今までで1番短かったのに満足感は最高だ! 楽しかったなぁ加藤!」

 

「」

 

「完全に泡吹いてるけど、大丈夫なの彼」

 

「大丈夫だろ、多分」

 

 彼が周回しようと意味不明な叫び声を上げながら入り口に向かった途端ぶっ倒れたのが原因だった。

白目を剥いて、泡を拭きながら痙攣をする彼を見るに、まともでは無かった。

 

「戦闘中、過去1キレがあったし判断力も良かった。このダンジョン最速踏破したんじゃねぇか?」

 

「何であの状態であの動きが出来るのよ! それであの意味不明な言葉の指示を理解できる貴方は何!?」

 

「さぁ? 何と無く分かったんだよ。じゃあアタシらは帰るからな」

 

「え、ちょ、ドロップしたアイテムは──」

 

「加藤がこのザマだし今日はいいや。お前ら持って帰れよ。じゃあな〜」

 

 そう言って彼を担いで、赤髪の子は夜の街に消えていった。

大量のアイテムを放置して。

それを呆然と見送るリファル。

 

「……見たでしょリファル。本人も言ってたけど、彼は勇者じゃ無い。彼の行動がたまたま貴方にそう見えただけなのよ」

 

「……」

 

「ショックを受けるのも分かるわ。ずっと憧れていたんだから……でもね、過剰な期待も憧れも自分を苦しめるし、相手も苦しめる。もう、終わりにするべきなのよ」

 

 流石にあれだけの大暴れをかましてくれたのだから、リファルも目が覚めただろう。

そこに関しては良かった。

頼まれていた物はちゃんと赤髪の子に渡しといたし、後腐れ無しで終われる。

 

「そうか……そうだったんですね」

 

「そうそう、まぁこれからは彼らも活動するみたいだし、市場の方は今よりは良くなる──」

 

「狂人の真似とて大路を走らば即ち狂人なり……そしてそれは、その逆も然り」

 

「え?」

 

「確かに勇者様の本質は、先程の荒々しいものなのでしょう。ですが、それでも彼はアイテムを集めて人々に行き渡るように戦う……今回のように」

 

「いやこれは邪魔だから置いてっただけであって──」

 

「人となりでは無く、何をやったのか、何を為すのか……感服しました。勇者様、貴方は全ての人々が勇者になれると、そう言いたいのですね!」

 

「ねぇリファル──」

 

「これからも私は精進します、全ての人々が誰かに手を差し伸べれるその時まで!」

 

「……」

 

「リファル様ー!」

 

「セーリス、皆、迎えに来てくれたのですね」

 

「おーい! 連絡あったから来たが、もう終わったのか! 早いな!」

 

「……どうだった? 上手く行った?」

 

 リファルとセーリスを除いた2人に問われた私は、2人にこう伝えることしか出来なかった。

 

「もうダメぽ」

 

「……ダメだったみたい」

 

「マジでダメっぽいな!」

 

 精霊だから胃なんて無いのに、キリキリ痛んだ。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。