ダンジョン中毒から抜け出したい【書籍化&コミカライズ決定】 作:1パチより4パチ派
「ただいまから飲食店複数損害事件を開廷致します。まず当事者の確認をします。原告、名前をどうぞ」
「篠家現当主、篠夜」
「被告、お名前を」
「篠目じゃ」
「それでは原告代理人。訴状の内容を陳述してください」
「えー被告篠目は過去数年間に及び複数の店舗内で突然自傷し、店内を自身の血液塗れにして多大な損害を起こしました。最早迷惑行為を逸脱しています。それら全ての賠償を篠夜氏が行ったと言う事でして……」
「初手嘘じゃろうが! 払う物は払ったし全額自腹じゃぞ!?」
「被告、落ち着いて下さい」
まさかいきなりでっち上げをかまして来るとは思わなかった。まぁあの時の血塗れトッピングのせいで本来来るはずの客が来なかったと言われればそれまでだが……ウン百万は払ってた記憶がある。流石にそれを貰ってないは通らないだろう。
「そして何やかんや器物損壊なので保護観察処分を求めます」
「では被告は内容を認めますか?」
「絶対にNOォ!!!」
「分かりました。……では始めましょう【精霊裁判】を!!!」
裁判長はいきなり立ち上がって何処からか取り出したマイクを握る。
「皆さんお待ちかね! いよいよ始まります精霊裁判! それは馬鹿対阿呆の壮絶な言い争い! 碌でも無い連中のマウント合戦のゴングが今鳴り響きます! 【精霊裁判】!!! レディィィ! ゴォォォ!!!」
「どうやったらこのふざけた裁判破壊出来ますか?」
「加奈子さんは大将だからまだですよ?」
「最後に全てを破壊しろと!?」
◇ ◇ ◇
【先鋒 『勇者の集いリーダー、リファル』VS『ステルス狂犬のマズル』】
「さぁ始まりました日本初の精霊裁判。実況は私、ジョン・カルビ(ミノタウロス)がお送り致します。解説の騎馬澤さん(ケンタウロス)よろしくお願いします」
「よろしくお願いします」
「さて初戦。両チーム小手調べと言った形でしょうか」
「小手調べにしてはリファル選手は豪華過ぎますね〜。ビッグネームですよ」
「まさかのコネがあった【自我中心】! 夢のドリームチームで仲間の窮地を救えるか、見ものですねぇ騎馬澤さん」
「どっちも頑張って欲しいですけどね〜」
「(なんか隣の奴らいきなり実況し始めたんだけど。怖……)」
傍聴席の場所取り完全にミスった。最前列一択だろ! と思った過去の俺、今すぐ後ろにしてくれ頼むから。
『そもそも! 篠目様は何故! この様な濡れ衣を着せられなければならないのですか!』
『濡れ衣ぅ? 何処が濡れ衣だって言うんだぁ? バリバリ真実だろうがよぉ!』
「おっとまずはリファル選手が仕掛ける!」
「しかしマズル選手も引いてないですねぇ。口調も他人を馬鹿にしたような感じです。恐らく鍵垢で管を巻いていた結果あの様な喋り方しか出来なくなったんでしょうねぇ」
「成程、環境によって人は変わってしまうと言うことですね」
「彼は馬の獣人ですが私も半分が馬なので分かりますよ。やっぱり食べる牧草によって体調変わりますよ。沢山生えてるとこ良いですよね〜」
「(何処シンパシー感じてんだよ)」
何でも剣道や空手の様に順番に言い合う裁判らしい。何とも舐め腐った裁判だが実際精霊族は気まぐれな連中が多いのでこうなるのも必然。エネロマさんが異常なくらい真面目なだけだ。確か……裁判長がレスバの勝敗を決めるとか言ってたな。
『濡れ衣です! 最早カタが付いた話を蒸し返す様な真似はおやめください!』
『それってそちらの感想だろ? 事実こうして代表出して訴えてるじゃん! アホかな?』
『むむむ……!』
なんかもう負けそう。今思えばリファルさんって探索者会合の時も言い返せてなかったし、レスバ弱いんじゃないか? そう思っていると加藤が突然ジェスチャーを始める。
『(リファルさん! 打ち合わせ通りに! 乗らないで!)』
多分こう言ってる。当然加藤達も馬鹿じゃない。いや加藤は馬鹿だけど他は馬鹿じゃないから対策しているのだろう。そしてそのジェスチャーを受けたリファルさんは──。
『──! ……仕方ありませんね』
『は? 何が?』
『語らねばなりません! 篠目様が所属し、加藤様が率いている【自我中心】の素晴らしさをあなた達にも教えましょう!』
『はい!?』
「おっとこれはぁぁぁ!?」
「明らかに仕掛けに言ってますね。逸らしに行っています!」
成程。真っ当にやり合っても勝てないから無関係の話でゴリ押しする気か! この【精霊裁判】は真実なんざどうだって良い。なんか言い勝ってるんじゃないか? と言う雰囲気を作る事が最優先! 凄いより凄そうと言う雰囲気が幅を効かせるこの場に置いて、話題ずらしは有効的だ! ホントか?
『リーダーである加藤様はある日を堺にダンジョンで手に入れたアイテムを相場より安い額で下ろし始めました。彼らの活躍により多くの人々は落ち着いた相場でダンジョン産のポーションを買え、一命を取り留めたのです! それからも加藤様はお仲間達と共に更なる強さと正しい道を極めようとなさいました。1人、2人、3人…加藤様の周りには仲間が募っていく……。─────ですが彼らは強烈過ぎました。加藤様のお仲間は次々と問題を起こし、その名声を落とし続けてしまいました。リーダーの加藤様までもその影響で評判を落としました……。しかし!!! 多くの方を結果的に救ったのは変わりようがありません!』
台パンしながらキメ顔のリファルさん。腹パンされたような死に顔の加藤。どうしてこんなに差がついたのだろうか。ホントに打ち合わせしたんかお前ら。
『篠目様も加藤様のお仲間の1人! 間接的とは言え多くの人々を救いました! ならば! この様な罪で無理やり行動を縛るのは間違っているとは思いませんか!!!』
『そ、それは……それはぁぁぁぁぁ!!!』
「おっと! 論破ゲージは無反応だぁぁぁぁぁ!!!」
「全く動いてませんねー。これは厳しい」
『な、何故ですかぁぁぁ!!!』
『そりゃそうですよ……』
加奈子さんの半ば諦めのツッコミが聞こえる。と言うかこれ、論点ずらしの時点で論破不可能じゃないか? クソ戦法なんじゃないか? 弱い(確信)
『……て言うかそれ被害受けた奴らからしたら、知ったこっちゃないだろ』
『さっきから意味わかんねぇよ!!! 何言ってんだお前!?』
『ぐ、ぐわぁぁぁぁぁ!!!』
『リファルさぁぁぁぁぁん!!!』
「あーっと! リファルくんふっとばされた!」
「これは厳しいですねー。勝負は決したようです」
『何で言い負けただけで吹っ飛ぶんですかぁぁぁ!!!』
吹き飛ばされたリファルさんを加藤達が駆け寄って助け出す。勝敗は決まったらしい。
【先鋒勝者・・・ステルス狂犬のマズル】
「まずは裁バトラー
「まぁそもそもレスバにすらなってませんでしたからねぇ。正直捨て試合と言っても過言じゃ無いです」
「騎馬澤さんとしては裁バトラー側は勝つ気が無かったという事でしょうか?」
「どちらかと言うと『この人絶対負けるから後半に響かない程度にやらせよう』と言う意志を感じましたね」
『『ギクッ』』
『お主ら本当にわっちの事助ける気ある!?』
図星のようだ。加藤とエネロマさんがバツが悪そうな顔をしている。まぁ半ば無理矢理参加した人だしなリファルさん。やる気も満々で手を焼いたんだろうな。
「ングッングッングッ……ハー……」
水筒に入れてきた焼酎を飲みながらも俺は自分のニヤケを抑えられなかった。
「いやー……見てる分には最高だわ」
どう転ぶかは分からないが、何にせよ面白ければそれで良い。酒の匂いを消臭魔法で消しながら俺は酒を飲み続ける。……もう少し持ってくれば良かったな。
◇ ◇ ◇
「申し訳ありません……負けてしまいました……」
「どんまいっす! 良い勝負でしたよ! 打ち合わせとは違ったけど! だからそんな落ち込まないでください!」
「そうよ! 頑張ったわ! ナイスファイ!」
「いや勝負にすらなってませんでしたよね? 相手側の発言量少なすぎましたよね? それで完敗って根本的に間違ってますよね?」
「加奈子さん、戦いと言うのは時の運。ジャイアントキリングなんて物はザラです。あまり責めるのはよろしくないかと」
「じゃあせめて戦って下さいよ! 虚空に向かってファイティングポーズ構えてもダメでしょ!」
「この世界そのものに戦いを挑む勇者……それがきっと先程のリファルさんだったのです」
「誤魔化すな!!!」
さっきから傍聴席でやかましい実況共の言う通り、リファルさんが勝つのは難しいとは思っていた。何度か練習はしたがリファルさん全敗だったし。
「大丈夫です。後は俺達が何とかします」
「で、ですが……私の力不足のせいで……」
「安心してください。次は勝ち確なんで。そうだよな? 鶴岡」
「お任せあれ」
いつも通りの笑顔で快諾した鶴岡はゆっくりと前に出る。
「何か勝てる秘策でもあるんですか?」
「いえ? そんな物は用意していませんね」
「え。じゃ、じゃあ素で行くんですか!? 勝てるんです!?」
「勝てますよ。だってここに居るのは何年もでっち上げ宗教を運営してるのに全然捕まらない超級の詐欺師です。コイツがどれだけ資産家騙して金毟ってる事か!」
「毟ってません。寄付を頂いてるだけですよ、ええ」
「ほら、言い訳の熟練度カンストしてるでしょ?」
「う、うーん……大丈夫かな……」
「私のお相手はお若いインフルエンサーという事で。きっと自分が人を引っ張る側だと、先頭に立つ側だと思っているのでしょう。….で す が」
俺の前を通り過ぎる時、鶴岡はいつも通りの笑顔を崩す。いや、ぱっと見はいつも通りだ。だがその目は──。
「残念ながらこの世は平等が真理。神なぞ居ない。人の上に立つ者も本来であれば存在しない。良き世の為に、思い上がった若造の鼻をへし折っておきましょう」
薄っすら開けた瞳は恐ろしいまでに純粋だった。
「でもお前人の事言えないよな」
「真の平等を成した時に私は全ての立場を捨て去る予定ですので」
「やってる事ゼロレクイエムと大差無ぇよ」
何だかんだで100話目です。ここまで続けれてるのは読んでくれる皆さんのおかげです。と言うか書籍化もコミカライズも全部皆さんのお陰です。ありがとうございます。100人に駄々滑りしても1人を笑わせたら俺の勝ち理論でこれからもやっていきたいと思います。お礼と言っては差し出がましいですが、100話記念のSSを置いときます。地の文がない会話だけの単発話ですが、楽しんでもらえれば幸いです。
100話記念
「ねぇねぇ加藤くん。これ見てよこれ!」
「お前も高木もゲルダリアもだけど何で人が仕事の昼休憩入ってる時に来る訳?」
「でも僕は働いてないから……」
「人の休憩時間奪うなって言ってんだよ! 誰がお前がプー太郎なのを聞いたんだ!?」
「プー太郎って人聞き悪いなぁ。ちゃんと探索者登録している以上、職業探索者だよ。お金に困ってもないし」
「そりゃ良かったなぁ。じゃあ帰れ。人の社会復帰努力を邪魔するな」
「自分で努力とか言っちゃう時点でもうダメじゃない?」
「お前ホントぶっ飛ばすぞ!?!?」
「加藤さん落ち着いて……」
「そうそう。加奈子さんの言うとおり! じゃあ早速これを見てほしいな!」
「どうせお前お手製のスクラップorジャンクだろ? 良いってもう。使い道が不法投棄くらいしか無い物見せられて俺にどうしろって言うんだ」
「残念過ぎるけど違うんだって。この前皆んなでダンジョン潜ったじゃん? その時のドロップ品の整理、僕担当だったでしょ?」
「……そういやそうだったな」
「結構数あったからボチボチ整理してたんだけど、殆どがどうでもいい(世間的にはどうでも良く無い)アイテムだったんだけど、その中でコレがあったんだよ! ジャーン!」
「……何ですか? このSF漫画に出てきそうな光線銃……」
「これは【キネンコウセン100】! 撃った相手や物を一時的に100倍にするスーパーアイテムだよ!」
「名前めちゃくちゃだろ! ホントにそれ宝箱から出てたか!?」
「胡散臭すぎますよ! 騙されてません!?」
「まぁまぁ気にしないで。それでここに来る前に使ってみたんだけど効果は確かだったよ! 鶴岡くんに使ったら信者が100倍に増えたしー」
【ふ、ふはは! ふははは! とうとうこの時が! さぁ皆さん! 真の平等の為! メアリスー様の教えの元! 今こそ世界を変える時です!】
「篠ちゃんに使ったら切腹時の出血が100倍になったんだ。凄くない?」
【ぐおおおお! これがホントの血い河ァァァァァ!!!】
「なんで初手で1番使ったらダメな奴に使うんだよ!」
「出血100倍ってデメリットでしか無いでしょ! 理性を100倍にしてあげてください!」
「あとゲルダちゃんはゲルダちゃん自身が100倍になったよ」
【可愛い私、増量フェア!!!】
「それはいつもの事だろ」
「それもそっか」
【ちょっとぉ!?】
「と言う訳で良かったら加藤くんと加奈子さんも100べぇ界王拳してあげよっか?」
「要らねぇよ。別に強さなんてこれ以上増えた所で日常生活に困りそうだし」
「流石に……怖いと言うか……碌でも無い事になりそうと言うか……」
「えーそんなー。折角あるのに……。まぁしょうがないか。嫌がる人に撃つのも違うもんね。これは処分する事にするよ」
「なんかやけに聞き分けが良い気もするが……まぁ素直なのは良い事だ。さっさと頼むぞ」
「はーい。あーあ、これがあればきっと『ダンジョンの高レアドロップ率』も『バイト代』も100倍に出来るのになぁ〜。勿体無いな〜」
「「…………ちょっと待て(待ってください)」」
「どうした──おわっ!」
「ド、ドドド、ドロップ率100倍!? ガチか!? ガチで出来るのか!? 落ちまくり開けまくり!?」
「バイト代100倍!? お賃金100倍!? そ、そそそそんなのナイス賃金ですよ!? ナイ賃ゲールですよ!?」
「そりゃ出来るけど……やらないんじゃないの?」
「「今すぐにHarryUP!!!」」
「頭痛が痛い的なサムシングね。りょーかい!」
ビビビビビビビビビビ!!!
「よっしゃぁぁぁ! 今回は例外ですよね! 今回だけは良いですよね! ね! 加奈子さん!」
「そ、そうですね! 今回はね! 記念ですから! ……うわぁぁぁ! ホントに今日たまたま振り込みだったお賃金が100倍だぁぁぁ!」
「うぉぉぉぉぉ! 待ってろダンジョォォォン!!!」
「ナイ賃ゲールさんありがとう! ナイ賃ゲールのナイ賃エール受け取りましたぁぁぁ!!!」
「何言ってるのか分からないけど取り敢えずクリミアの天使には謝った方いいね」
〜ダンジョン内〜
『『『『『グボァァァァァァァ!!!』』』』』
ゴトゴトゴトゴトゴトッ!
「うひょひょひょひょ! 普通に宝箱自体のドロップ率まで100倍だぁぁぁい! 開けるぜぇ……超開けるぜぇぇぇ! オープゥゥゥン!!!……ウッ!?」
〜加奈子の自室〜
「や、やってみたかったDLsiteのまとめ買い! いつもは評価を見てから選んで買ってるけど、これで私も開拓者の1人に──え?」
〜休憩室〜
ダダダダダダダダダダ! バンッ!
「「どう言う事だ(ですか)!?」」
「早かったね」
「宝箱開けた瞬間受付だったんだが!?」
「買った作品のモザイクが半端じゃないんですけど! 全ページ一面規制喰らってるんですけど!? 警察からの指導入りましたこれ!?」
「あー。それはきっと100倍された結果だね。加藤くんは【興奮死確率】が、加奈子さんは【購入品のモザイク規制】が一緒に100倍になったみたいだね」
「お、おい待て。……これ治るよな? 治してくれ!」
「解除方法は時間経過しか無いね」
「ど、どのくらい……ですか……?」
「うーん僕もよく分かってないけどアイテムの名前的に……100日後じゃない?」
「……ひゃくにち……?」
「さんかげつちかくこのまま……?」
「多分」
「「嫌ァァァァァァァァァァァ!!!」」
【結局100時間くらいで元に戻った】
「ギャハハハハハハハァァァ! かぁぁぁとうくぅぅぅぅん! 何処に行こうと言うのかねぇ!? 待ってくれよぉ〜今俺の頭の中にはお前への嫌がらせアイデアが波動球並に溢れてんだわ! 付き合ってくれよなぁぁぁ!!!」
「加藤ォォォォォ!!! 服脱げ! さっきからもう限界なんだよ! 頭の中お前しか出てこねぇ! 逃げんなゴラァァァァァ!!!」
「ちなみにこの2人は【ウザさ】と【性欲】が100倍だよ」
「オレシヌゥゥゥゥゥ!!!」