ダンジョン中毒から抜け出したい【書籍化&コミカライズ決定】   作:1パチより4パチ派

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今なら何と! お気持ち円!

 

「鶴岡さんって個人的には不安要素凄まじい人なんですけど大丈夫なんでしょうか……?」

 

「大丈夫です。仲間内じゃ基本的にアイツに言いくるめられる前にしばいて黙らせるのが定番。逆を言えばほっとくとあっという間に相手を掌握するのが鶴岡です」

 

「物理的に口封じしてるじゃないですか! よくそれで仲間名乗れますね!?」

 

「でもアイツ『自我中心』のメンバーにも当たり前のように詐欺仕掛けてきますよ」

 

「もう本人も癖になってませんか? それ」

 

「手癖で人騙すのビビるんだけど。彼どうして捕まってないのかしら」

 

「詐欺られた側が詐欺だと認識出来ないからじゃないですかね」

 

 鶴岡が資産家から投資や募金を名目に巻き上げた金は全て孤児院などに使われている。アイツが運営している孤児院は外国にもあるので定期的に収穫しないと足りないと言っていた。つまりアイツは同じ相手から何度も金をせしめていると言う事。

 

「資産家を破産しない程度に搾り取るアイツの話術なら次鋒戦は余裕ですよ!」

 

「ある意味あの人が平等ジャンキーで良かったかも。これで私利私欲の為に使ってたらどうなってたか……」

 

「日本の国旗が真っ赤になってたかもしれませんね」

 

「資本家の血でしょそれ」

 

 そんなヤバい男の鶴岡はニッコニコ笑顔で次鋒戦の開始を待っている。余裕綽々、自信に満ち溢れている。

 

「この次鋒戦……俺たちの勝利だ!」

 

「あの、さっきから何でそんなにフラグ建てるんですか?」

 

「建て過ぎる事で逆に粗製濫造で勝手に折れるのを狙ってます」

 

「フラグ一級建築士の資格返上しといてくださいね」

 

 

◇ ◇ ◇

 

【次鋒 インフルエンサーのアサネ 対 メアリス教トップの鶴岡】

 

『さぁ始まりました次鋒戦。このマッチングどう見ますか騎馬澤さん』

 

『そうですねー。正直な話、アサネ選手が不利と言わざるを得ません。何せ鶴岡選手はあのメアリス教を率いていますからねぇ』

 

『メアリス教にあまり明るく無いのですが、一体どういった団体なのでしょうか』

 

『比較的最近作られた新興宗教ですね。メアリスーと言う女神様を信じればあらゆる格差は是正され、幸せが平等に訪れると言う物です』

 

『話を聞く限りだとかなり危ない物に聞こえますが……あまり悪い話を聞かないのは何故でしょうか』

 

『活動の殆どが慈善活動ですからね。教えが比較的穏当なのもあって一般市民からの印象はいい方です。彼らを好ましく思っている人も居ますからねー』

 

『ではあまり警戒しなくても良いと?』

 

『いやいや。たかが数年でメアリス教は日本以外の国にも規模を広げています。その驚異的な速度は国などの体勢側からしたら相当厄介でしょう。信者の殆どが教祖である鶴岡選手を心酔しているのも恐ろしい所。人の良い笑顔に釣られてしまえばその話術で丸め込まれるか、引き摺り込まれるかのどちらかです』

 

『成程。気を付けねばならない団体と言うわけですね?』

 

『そうですねー。このメアリスー様フィギュアに釣られてほいほい教えを聴きに行ってしまってはいけないと言う事ですねー』

 

『騎馬澤さんは既に手遅れなのは置いといて。早速次鋒戦が始まります』

 

 さっきから高木の横でずっと喋くってるアイツらは何なんだろうか。裁判に実況解説とか聞いた事ないけど。

 

「鶴岡です。宜しくお願いします」

 

「ご丁寧ー! まぁだからってどうと言うことは無いんだけどさ! だって見てよこれ!」

 

 そう言ってアサネとか言う女が出したのは書類の束。殆どの書類に写真が付いている。

 

「こちらは?」

 

「これはそこの切腹女がやらかした損害の詳細よ! 証拠写真付きでね!」

 

「ふむ……」

 

 有り得ない。今までやらかしたって何年前だと思ってるんだ。当然当時の写真なんか出てくる訳が無い。

 

「ちょっと待て! 何だこれは!」

 

「何だこれはって貴女の悪行でしょ」

 

「いやこれもう店そのものが崩壊してるレベルでは無いか! こんな事実は無いぞ!?」

 

「貴女の血液が建物に触れ、その影響で腐食して崩れてしまったのよ!」

 

「わっちの血にそんな効果は無いわぁ! どんな血鬼術だ! 上弦レベルじゃろこれ!」

 

「現にこうして証拠があるじゃない! これが偽物だと言うの!?」

 

 偽物だろ。フォトショの跡がジジイの皺くらい見えている。どう考えても捏造証拠です。本当にありがとうございました。

 

「裁判長〜? この様に被害は甚大な物です! さっさとこの愚かしいセップ君に断罪を!」

 

「うーん? なんか事前に提出されてた資料より酷い気がするのですが……これは?」

 

「(あの!? 篠夜さん!? リリンスさん!? 聞いてた話と違うんですけど!?)」

 

「(おいリリンス! どういう事だ! ちゃんと同じ証拠にしろと言っただろ!?)」

 

「(盛り癖あるからつい盛っちゃった⭐️ 森鴎外って感じで?)」

 

「(高瀬舟で島流しにしてやろうか!)」

 

 どうやら勝手にやらかしてくれたようだ。これはチャンス。ここを突いて行けばこちらが有利に進められる──!

 

「ほう。これが篠目さんがやった行いだと……そう言う訳ですね?」

 

「え。そ、そうよー! 認めるわね? 認めるわね!?」

 

「ハー……貴女は何も分かっていない」

 

「な、何ですって!?」

 

「良いぞ! 行け鶴岡ぁぁぁ!!!」

 

「篠目さんのこの行い……それは【平等】の為なのです!!!」

 

「ダメだ! 戻れ鶴岡ぁぁぁ!!!」

 

「早過ぎますって! 即堕ち2コマ!?」

 

 俺の願いはアカ神父には届かない。もう止まらんよ、流れ始めたエネルギーと同じだ。

 

「アサネさんと申しましたね。今この世界を見て何かを思いませんか?」

 

「へ? な、何か? 何?」

 

「インフルエンサーとして活動しているなら分かる筈です。ウケると思ったネタが全然ウケなくて、自分よりどう考えてもショボいネタがバカウケしているのを見て! 何かを思いませんでしたか!?」

 

「そ、それは……あるけど……」

 

「その何かの名を教えましょう。【不平等】です!」

 

「不平等……?」

 

「自分は持たないのに他者は持っている! 同じ努力をしたのに! 同じ働きをしたのに! 何故か不当に片方だけ持ち上げられる!」

 

「そ、そう。そうよ。マトモに評価されなくて、何度苦渋を飲んだか……」

 

「貴女は【機会】を他者に簒奪されたのです! 本来であれば平等に見てもらい、評価されるべき! ですがあらゆる資本家は! あらゆる簒奪者はこれを理解しない! 自分達が上手く行けば良いと思っている! 分かりますね? 資本主義はクソなのです!!!」

 

「資本主義は……クソ……?」

 

「ちょっと!? いつの間に主義云々の話にすり替わったんですか!? 証拠写真の話は!?」

 

「こ、これが話のすり替えの真の姿……! きちんと相手を会話に参加させて、相手が分かる様に話しつつ、会話の主導権を握る!」

 

「私が至らぬ事を簡単に……。流石は加藤様のお仲間です!」

 

「こんなのヨイショしてどうするんですか!」

 

「おいアサネ! 何している! さっさと本題に戻れ!」

 

 篠夜がアサネとか言う女に声を掛けるが返答は無い。鶴岡の言葉を聞き逃さない様集中している。ああなったらもうダメだろう。

 

「篠目さんの切腹。普遍的に見れば、器物損壊に当たる様に見えます。ですが冷静になって考えて頂きたい。──この行いはこの歪で不完全な社会に対しての啓蒙活動なのでは、と……」

 

「唯の迷惑行為ですよ!!!」

 

「この行いはクソ雑なお通し(戻した乾燥わかめにマヨネーズかけただけの客を舐めくさったやつ)で高い金(1000円)を請求してくる儲けしか考えてない邪悪なぼったくり居酒屋に対しての抗議なのではと!」

 

「作者の体験談やめろ」

 

 俺ら外野が何を言おうとこの流れは変わらない。周りも『確かに……たまに冷凍食品出してくるとこあるよな』とか『地雷な店ほどお通しゴミなの何なんだろうな……』と言う共感の声ばかり。いつからここはYahoo知恵袋になったんだろうか。

 

「じゃ、じゃあこの証拠写真は彼女の強い意志の表れと言う事……!?」

 

「そう言う事です。この様な裁判をする事自体が間違っている程の純粋な思い……。決して暴力には走らず、他者を傷つけてメッセージを表すのではなく、己を賭けてまで抗議するその気高さなのです!」

 

「これだけの数の店で切腹したのは……!」

 

「界隈全体を変えねばならぬ以上、一店だけでは意味がありません。彼女は己が身を犠牲にしたのです! 客側の、そして真っ当に商売する店が受ける筈だった不平等から盾になる為に!」

 

「そうなのですか被告」

 

「え? ……うむ、その通りじゃ。異論は無い!」

 

「こっちはありますけど!?」

 

 そもそもぼったくり店以外でも腹切ってただろ。

 

「そうか……種類は違えど彼女は不平等に立ち向かった人だったのね……。それを私はキチンと評価もせず……」

 

「いえ、良いのです。人も魔族も誰しもが間違える物です。完璧な人なぞ存在しません。故に我らは手を取り合い、助け合わなければなりません。──そ・こ・で」

 

 

ドンッ!

 

「こちら我らが女神メアリスー様の神力が込められた(可能性が無くも無いかもしれない)神聖なる平等聖典!!! これがあれば平等の何たるかが分かる(気がする)! 普段であれば入信した方にしかお譲りしていませんが、今回に限りこの場の皆さんにこのバイブルを買う権利を進呈しましょう!」

 

「神父様! こちらのお値段は!?」

 

「本来であれば32820(サツバツ)円の所を篠目さんを見習って大出血サービス! 10820(テンバツ)円! 1冊10820(テンバツ)円の寄付でお譲りします!」

 

「寄付しまぁぁぁぁぁす!!!」

 

『あーっと! アサネ選手! 入信決定だぁぁぁ!!!』

 

「裁判をしろぉぉぉぉぉ!!! 何で通販番組のノリでインチキ商品売ってるんですかぁ!」

 

「じゃあ鶴岡氏の勝ちで……」

 

「裁判長!? 嘘だろ!? なぁ!?」

 

【次鋒勝者・・・メアリス教トップ鶴岡】

 

 篠夜が文句を言っているのも理解出来るが勝ちゃ良いのである。そもそもそっちが証拠捏造してきてるので何の問題もない。

 

「鶴岡〜感謝感激じゃ〜! わっちは信じておったぞぉ!」

 

「いえいえ。この程度で礼は要りませんよ。逆に私が言いたいくらいです」

 

「カモが手に入ったからか?」

 

「インフルエンサーと言う事はインプレッションで稼いでいるでしょう。最近幾つかの孤児院が手狭になってきたので拡張工事をしなければならないのですよね。少しでも寄付を求めなければ」

 

「お前絶対地獄落ちるぞ」

 

「持たざる者を救うと決めた時から地獄以外に行くつもりありませんから」

 

「覚悟キマり過ぎでしょ!」

 

「あ、すいません。1つ忘れていました」

 

「え? 何が?」

 

【フリーダイヤル0120-929(苦肉)-964(苦しい)。電話ください、い〜ま〜すぐ〜に〜】

 

「ジャパネットに謝れェェェェェ!!!」

 

 加奈子さんのツッコミも、鶴岡には暖簾に腕押しだった。

 

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