ダンジョン中毒から抜け出したい【書籍化&コミカライズ決定】   作:1パチより4パチ派

106 / 113
玉取物語

 

「」←泡吹き溢しグロッキー篠夜

 

「この光景前にも見たな」

 

「作者が天丼大好きの出涸らしですからね。てんどんマンです」

 

「えっと……取り敢えず、もう大丈夫なんですよね?」

 

「まぁ暴れてた奴がこのザマなんで……」

 

「よ、良かったー……」

 

 ペタンと地面に座り込む加奈子さん。力が抜けたのか、立つ気配が無い。服は俺の血で真っ赤だ。罪悪感がやばい。

 

「……加藤さん、大丈夫ですか?」

 

「え? あぁ、全然問題無いですよ? さっきセラフィナがポーションかけてくれたんで……」

 

「そうですか? でもあんなに怪我したし……あまり無茶しないで欲しいです」

 

 どうやら相当心配をかけていたらしい。優しい加奈子さんの事だ。庇ったのをまだ申し訳なく思ってるのかもしれない。

 

「分かりました。次から気を付け──「お い !」って何だよセラフィナ」

 

「テメェを助けたの誰だ? ん? ん???」

 

「お前だけど」

 

「じゃあ言うことあるよな!? な!?」

 

「サンキュー。でもポーション不味過ぎたから今度から味付けしといてくれ」

 

「なぁんで加奈子には笑顔でアタシには真顔なんだテメェはぁ! おかしいだろ! 微笑みかけろ! アタシに! 見てろ! アタシだけを!」

 

「さて、そろそろオピス起こしてゲルダリア解凍するか」

 

「無視すんなぁぁぁ!!!」

 

「はいはいチョワヨチョワヨ」

 

 怒り狂うセラフィナを適当に流しながらオピスを起こす。怪我は既に治っている為、割とすんなり起きてくれた。

 

「うぅ……も、もしかして終わった……?」

 

「終わったぞ」

 

「篠ちゃんは?」

 

「元に戻ったよ」

 

「僕何も役に立ってないね……」

 

「普段もっと役に立たないもん量産してるんだし良いだろ別に」

 

「超理論が過ぎないかい?」

 

「ゲルダリアー。無事かー」

 

「さ、寒過ぎてサムスになるぅ……」

 

 反応からして2人とも大丈夫そうだ。良かった。まぁゲルダリアの心配はそんなにしてないけど。

 

「さーて……どうすっかな。これ」

 

「酷い有様ですね。復旧にどれだけ掛かるやら。時間も金も」

 

 そう。遠慮無しに戦いまくっていた影響で裁判所は半壊していた。それどころか周りの建物も半壊もしくは全壊しているので、まるでゴジラが通ったみたいな状態だ。

 

「すまぬな……元を辿ればわっちが元凶じゃ」

 

「あーいいからそう言うの。今俺はどうやって言い訳するか考えてるから」

 

「い、言い訳って……。無理ですよこんなんじゃ。隠し様がありません」

 

「直すったってどっから直せば良いんだよこれ。道路か? 電柱か? 瓦礫撤去か? なんなら半壊してるのだって修復できねぇだろ。いっそぶっ壊した方早くねぇか」

 

「否定出来ない……。どうせ基礎から組み直しだろうし……」

 

 不味い。このままだと間違いなく俺らまで共犯にされる。いくら離れてたとて戦いの目撃者は居るだろう。避難していた人たちが見かけててもおかしく無い。アイツらがやったと言われればそれで終わり。本当に不味い。

 

「どうすっかな……ん?」

 

 悩んでいると、とんでもない速さでこちらに接近してくる気配を感じる。しかも複数。

 

「加藤様! 加勢いたします!」

 

「終わったよ(酒場の親父)」

 

「…………申し訳ありませぇぇぇん! 避難を最優先と思い、解放された後はもっと安全な場所に誘導していたのが裏目に、裏目にぃ! 不覚!」

 

「だから言ったでしょリファル。多分もう終わってるって。そもそも貴女もだいぶしんどいんだから無理したらダメよ」

 

「何だ、緊急だって言うから全力で来たが終わってたか! 付き添いしてりゃ良かったぜ……悪いな!」

 

「……にしても酷い。暴れ過ぎ」

 

「一先ず怪我人の方は居ますか!? 治療致します!」

 

「あ、海岡さん! 海岡さん怪我してるので治してあげて下さい!」

 

「おい俺は後で良い「【治癒】!」って……もう治ってるんだが。なんだったら前より体の調子良いんだが」

 

「やっぱ高木より【治癒】の練度高いなぁセーリスさん」

 

「当たり前だろ? そもそも俺専門じゃねーし」

 

「回復なら負けるつもりはありません!」

 

 【勇者の集い】の面々もやってきてどうするかと言う話になる。どうやら警察やらに連絡は既にしているらしい。つまり残された時間はあまり無い。

 

「なんか心配する必要あんのか? あった事そのまんま言えば良いだろ?」

 

「ゴランド、加藤様達が心配しているのは篠目様の事です」

 

「そうなんですよ。篠目とこのバカ兄貴が【合成】でくっついてた時の見た目は篠目にかなり似ていた。だから目撃者が居たとすれば、この惨状を生んだのは篠目って思われるんです」

 

「……それも言えば良いと思う」

 

「そうしたいのは山々なんだがなぁ。【篠家】って国が作った家系なんだわ。生まれた経緯的に国としては黒歴史も良い所だろ。この戦争してない時代に非人道的過ぎる事をずっとやってましたーなんて口が裂けても言えないね」

 

「要は真実を言っても揉み消されるって事か?」

 

「そう言うこった。まぁ限度はあるだろうな。ただ【合成】関連は絶対揉み消されるぜ? 単純にやべぇってこの魔法。何せ対象の意識さえ奪っちまえば無理矢理自分にぶち込めちまうんだぜ? 使える奴が篠家の家系に限定されてるとは言え、こんなもん存在すら許されねぇわ。やってる事ほぼセルだからな?」

 

「それに変に事実が広まれば篠目さんが危険視されてしまいます。事実として殺戮兵器として作られ、強さを持っているのですから。となると国から何か言われるのは良くは無いですね。最悪この件が全て篠目さんのせいになってしまいます。いくら国の息が掛かってるとは言え、トカゲの尻尾切りで切り捨てられる可能性がありますから」

 

「じゃあ……どうするんですか?」

 

「よし、高木。なんか案出せ」

 

「お前すぐにそればっか! 俺の頭脳を四次元ポケットだと思ってないか?」

 

「どくさいスイッチしか入ってねぇだろお前のポケット。良いから何とかしろよ、こう言う時に頭働かせないと腐った卵言われんぞ」

 

「つってもなぁ……そんな都合良く高木に電流は走りませんよ? 走るのは悪寒だけだ。ギックリ腰の呪いがいつ来るかって言う」

 

「今週のノルマ来てないのか。今来ないかな、ショックで何か思いつくかもしれないだろ。……」

 

「このタイミングで来るとかもう神がカンニングしてるとしか思えねぇよ。……」

 

「「ん?」」

 

 高木と話していたら、ふと考えが過ぎる。反応から見るに高木も同じ事を思いついたのかもしれない。

 

「加藤さん? 高木さん?」

 

「篠目、見た目、兄貴、目撃者……」

 

「篠家、事実、呪い……」

 

「あ、あの? お二人とも? どうかなされたのですか?」

 

「高木、お前俺の考えてること分かるか?」

 

「分かる。俺の考えは?」

 

「分かる」

 

「じゃあ」

 

「つまり」

 

「「そう言う事だよな???」」

 

「……ね、ねぇ……どうして私を見るの? ねぇ!」

 

 やはりいつもいざという時に助けてくれるのは──エネロマ先生だ。

 

◇ ◇ ◇

 

 暗い水底から意識が浮かび上がる。ゆっくりと目を開くとそこには──。

 

「篠……目……」

 

「起きたか。一応【治癒】はかけて貰ったが……まだしんどいか?」

 

「何を……している……」

 

「妹の膝の上は嫌か?」

 

「それは……嬉しい……」

 

「正直だなコイツ」

 

 俺は仰向けで倒れていた。篠目の膝の上に頭を置きながら。俺を囲むように【自我中心】共が俺を見下ろしている。【勇者の集い】共も居る辺り、俺は完全に詰んでいた。

 

「話は聞いた。わっちと共に死ぬ気だったと」

 

「……」

 

「思えば子供の頃、わっちが引き継ぎをさせられた時に泣きながら必死に止めようとしてくれたな。すっかり忘れていたが……さっき思い出したぞ」

 

「……何にも、出来なかったがな……」

 

「何故わっちと心中する気だったか……教えてくれんか?」

 

 言うか迷う。だがこの状況で隠す意味も無い。この後どうなろうと、あまり興味も無い。なら、ぶちまけても良いだろう。

 

「俺は……お前が生まれてくれて嬉しかった」

 

「……」

 

「初めて、唯一の妹が出来て、本当に嬉しかった……。父からも母からも、才能が大した事無いと言われて放置され続けていた……表向きのお飾り当主としての期待しか、俺にはされてなかった。だが、お前が赤ん坊の時、お前は──俺の腕を掴んだ」

 

 両親の目を盗んで篠目がいる部屋に俺は入った。どんな妹なのかすら、俺には教えて貰えなかったから。

 

「赤ん坊とは思えないくらい強い力だった。だが小さかった。驚く程に小さい手だった。そんな手が、俺の腕を掴んで離さなかった」

 

「誰にも期待されていない、使用人からも同情される程、戦いの才の無い俺を、必要としてくれた気がしたんだ」

 

「だから俺は……お前の居場所になろうと思った。殆どがおまえを人として見ない。だからせめて俺だけは絶対に、お前を見ていようと。そう思った。……思って、いたのに」

 

 最初は憐れみと自分を満たす為に。次第に篠目の何かになりたいが為に。事ある事に篠目に近付いた。俺を満たしてくれる存在が居なくなるのが怖くて。

 

「お前がそいつらの元が居場所だと言った時、全てが否定された気がした」

 

「腹が立った。頭に来た。自分の存在価値が分からなくなった。そして──お前が憎くなった。でも、憎くても、お前の唯一の居場所になりたいのは変わらなかった。だから俺が居場所になった後、死ねば永遠にそのままだと思ったんだ……」

 

「ならばさっきも言ったが、わっちを木偶にしなかったのは何故じゃ。過去に継承されてきた先代達のように、廃人にすれば良かっただろう。変に意思を残していればこうなるリスクが分からぬ程、愚昧ではあるまい」

 

 何故。何故か。何故だろう。実際直前まではそのつもりだった。人形のようにしてから【合成】すればこうはならなかったかもしれない。……そうしないで、意識を奪うに留めたのは──。

 

「俺は……兄で……居たかった。最後まで、死ぬ直前まで、何も考えることの出来ない人形の兄じゃなくて、お前の兄で居たかったんだ……」

 

「……」

 

「それがこのザマだ……お前の力を奪っておいて、コイツらに負ける始末。どうやら俺は本当に戦いの才が無いらしい……」

 

「そりゃそうじゃろう。わっちはタイマンなら全員に勝てるが複数で来られたら必敗じゃからな。出会った時もそうだった。わっちの仲間は集団リンチが得意なのじゃ」

 

「おい人聞き悪過ぎるだろ。チームプレイって言え」

 

 加藤がこちらに近付きながら口を挟んでくる。見下ろしてくる奴の目からは何の感情も見えてこない。

 

「そんでお前はどうすんだ?」

 

「どう……する……?」

 

「やけっぱちの心中は失敗した。こっからどうすんのかって聞いてんだ」

 

「今の俺に何かを選択する権利があると思っているのか……?」

 

「思うだけならタダだろ」

 

「……」

 

 確かに。思うだけ、願うだけなら……。

 

「篠目……」

 

「何じゃ」

 

「俺は……まだ……お前の……兄でいたい……」

 

「……それは無理じゃな」

 

 当たり前だ。何故命を奪おうとした奴の願いを聞かなければならない。自分自身でもそう思う。きっと俺の無様を笑いたくて言わせたのだろう。

 

「何せまだやらかしのツケを払っては無いでは無いか」

 

「……何?」

 

「キチンと償うものを償ってから。また初めからじゃ。協力していた精霊族も一緒にな」

 

「やり直しても……良いと言うのか?」

 

「皆は良いか?」

 

 篠目が周りの連中に尋ねる。主に加藤達【自我中心】と加奈子とか言う女だ。

 

「勝手にやってろよ。別に止めるつもりねぇし」

 

「まー俺ら的にはもうケジメは付けたからな!」

 

「アタシに聞くな。知らね」

 

「やり直しの機会と言う物は全ての方に許されるべきだと私は思っています」

 

「僕が口出す事じゃ無いしなー。あ! でも申し訳ないと思う気持ちがあるなら素材アイテムくれない?」

 

「今のアンタなら! 特別に! 許してあげても良いわよ! 今のアンタならね!」

 

「……」

 

 反応としては俺に対して殆ど興味も無いと言った様子だ。何だコイツらは。先程まで殺し合いをしていたと言うのに。

 

「ほれ、やり合った当人達がこんなもんなら別に良いじゃろ」

 

「そう……なのか……?」

 

「何だかんだで、こ奴らは人が良いからな。わっちのような者を仲間にしてくれるくらいには」

 

「いや別に許可してねぇからな? 普通に拒否ったのに次の日から当然のようにお前が着いてきただけだからな?」

 

「三顧の礼と言うやつじゃな」

 

「テメェ三顧どころか常に居ただろうがよ」

 

「そもそも礼も別にして無いね」

 

「最初の頃は【入場料払えないから金くれ!】と仰ってましたね」

 

「ただの乞食だったわよね」

 

「仲間に! して! くれたのじゃ! 心良く!」

 

「改竄乙」

 

「言うな! 空気読めハゲ! ……な? 気の良い奴らじゃろ?」

 

「何処が……?」

 

 仲間と言っていたが本当なのだろうか。……いや、きっと気遣う必要も無いくらい仲が良いと言う事なんだろう。そう思っておこう。

 

「……苦手ではあるが、消えて欲しいとは思ってない。嫌いだから死んで欲しいとは思ってない。出来ることなら、わっちは自分の為に泣いてくれた人を好きになりたい」

 

「篠目……俺は……俺は……!」

 

「今日から、また、よろしく頼む……。姉 様」

 

「……ん?」

 

 聞き間違いだろうか。今姉と言わなかったか? 急に何故──そこで漸く、俺は自分の異変に気づいた。

 

「(……なんか、声高くないか? 俺)」

 

 気が逸れていたから気付くのに遅れたが、どう考えても自分の声が高い。喉が潰れて低くなる事はあるかもしれないが、逆は聞いた事ない。猛烈に嫌な予感がし始めた。ゆっくりと起き上がって直立してみる。

 

「(……なんか、背低くね?)」

 

 一応俺は170cmはあった筈だ。だがどう見ても景色の視点が下がっている。正直半分くらい理解し始めた。

 

「(う、嘘だろ……?)」

 

 自分の胸を触る。柔らかい。自分の腰を触る。やたらくびれている。自分の足を触る。前より明らか細過ぎる。

 

「お、おい……おいこれ……! これぇ……!!!」

 

 声を引き攣らせながらも周りの様子を見る。その時丁度、バジリスクの男が満面の笑みで手鏡をこちらに向けていた。その鏡の中に映っていたのは──。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 篠目にそっくりな、銀髪の長い髪をした女だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「「(タマ)取ったどぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」」

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 加藤と坊主がガッツポーズやハイタッチをしながら全力で自白する。他の連中も笑いを堪えたり鼻で笑ったりドン引きしていたりで碌な反応が無い。

 

「な、な、な、何だこれはぁ!」

 

「何だこれはぁ! と聞かれたら」

 

「答えてやるのが世の情け」

 

「世界の破壊を防ぐ為」

 

「世界の平和を守る為」

 

「愛と真実のカスを貫く!」

 

「ラブリーチャーミーなメイン役」

 

「加藤!」

 

「高木ィ!」

 

「ダンジョン駆ける【自我中心(エゴイスト)】の2人には!」

 

「クレイジーホール、イカれた明日が待ってるぜ」

 

「ニャーんてな!」(人手不足の為加藤兼任)

 

「ソーーナンス!」(上に同じく高木兼任)

 

「答えになってないだろうがぁぁぁ! これは一体どう言う事だ!?」

 

「どう言う事だ!? と聞かれたら」

 

「ループ再生やめろ! 俺に何をした!?」

 

「何って……エネロマ先生の呪いでT.S.Revolutionさせただけだが?」

 

「てぃ、てぃー……えす……?」

 

「まぁ端的に女にしたって事だわな! ギャハ!」

 

「巫山戯るなぁぁぁぁぁ!!! 何の為にこんな事を……」

 

「「な・ん・の・た・め・に〜〜〜? そんなの決まってんだろうが……」」

 

「ひ、ひぃ……」

 

 この世全ての邪悪を三日三晩煮込み続けたような笑みに思わず怯む。凄まじい嗜虐心がコイツらを満たしている。

 

 

ファンファンファンファンファン!

 

「来たな?」

 

「来たねぇ来ましたねぇ」

 

「け、警察……?」

 

 俺を突き出すつもりだろうか。どの道それは避けられないと思っていた。国の干渉がある故、まともに裁かれる事は無さそうだが……。

 

「ここに暴徒が居るとの連絡を受けました! 暴徒は何処ですか!?」

 

 警官達が大勢降りてくる。すぐに加藤と坊主が警官に詰め寄った。

 

「アイツアイツ! アイツがぜーーーんぶやりました!」

 

「裁判所をぶっ壊したのアイツなんですよぉ! 俺らは守る為に頑張ったんですが力及ばず……うぅ!」

 

「泣くな高木! 俺達は精一杯やったんだ! だが突然暴れ出した篠目の姉を止めきれなかった! 畜生! 司法に唾を吐くような真似しやがって!」

 

「何と!? 裁判所が崩壊すると言う大事件の犯人は彼女だと!?」

 

「そうなんです! しかも! 妹のフリして居酒屋で切腹を繰り返したり、その罪を妹に擦りつけようとしたんですぅ!」

 

「いやちょっと待てぇぇぇ! 前半は確かに俺のせいだが後半は俺がやった訳では無いだろ!」

 

「見て下さいあの容姿! 妹に似てるからって、全て妹のせいにするような外道なんですアイツは!」

 

「な、何を──ハッ!?」

 

 ここで俺は漸く理解した。俺を女にした理由、それは篠目と似た容姿にして今回の件を全て俺に押し付ける。ついでに篠目の今までの罪も被せる。国の介入でなぁなぁにならない篠目の過去の罪を押し付ければ良いじゃんと言う事か?

 

「そして俺達は……【自我中心】と言う探索者チームなんですが……」

 

「【自我中心】……確かトップクラスに強いチームであり、トップクラスに碌でも無いカスチームと言う話は聞いた事が……」

 

「俺達【自我中心】の過去のやらかしや問題は! 全て! あの篠夜! 篠目の姉に脅されてやらされていたんですぅぅぅぅぅ!!!」

 

「それは本当に違うだろぉぉぉぉぉ! 何でお前らの不名誉まで被らなきゃならないんだぁぁぁぁぁ!!!」

 

「妹に似てるのを利用して、【仲間の名誉を汚されたいかぁ? 篠目の名前でデビューするぞ? ん?】って言われて! 仲間を大事にしている俺らでは……逆らう事が出来ず……」

 

「どんな脅しだぁぁぁ! 何だデビューって! 何にだ!」

 

「だよなぁお前ら! 脅されたよなぁ!?」

 

「ああ、メッチャ怖かったな。アタシ泣きそうだったわ」←大嘘

 

「あの頃は力が無いばっかりに、従わざるを得ませんでしたね……」←激嘘

 

「でも篠ちゃんの事を思ったら仕方なかったんだよね」←超嘘

 

「だって私達みんな……仲間だもんげ!」←カス仲間なのはホント

 

 違う! コイツら! 篠目の過去の罪じゃ無くて自分達の罪擦り付ける事しか考えていない! 頭おかしいのか! コイツらの何処が気の良い奴らなんだ!?

 

「し、篠目! 流石におかしいだろ! これ……は……」

 

「姉様……ちぃとおいたが過ぎたな? わっちだけならまだしも、こ奴らに手を出したのは……一線を越えた」

 

 篠目は笑った。口裂け女のように口角を上げて。下卑た輩の様に目を歪ませて。

 

「お勤め……頑張ってくれ? なぁ?」

 

「────」

 

 開いた口が塞がらない。呆然としている間にいつの間に警官に手錠をかけられた。

 

「器物損壊! 建造物損壊罪! 傷害罪! 詐欺罪! 上げ出せばキリがないが、残りは署で聞こう!」

 

「ま、待て! 俺は【篠家】の当主だ! 国の方に連絡を──」

 

「何を言っている! 【篠家】の当主は男性だ!  お前は女性だろ! そんな訳の分からない事で言い逃れが出来ると思っているのか!」

 

「ハ、ハァ!? 待て! 話を聞け! 俺は男で──」

 

「こんな男が何処にいると言う! どう見ても銀髪和風爆美女じゃないか! おのれ暴徒め! 本官を騙そうとしてもそうはいかないぞ!」

 

「いや違う! 騙されてるのはお前だ! 俺は男で!」

 

「うおおおおお! 暴徒は鎮圧だぁぁぁぁぁ!!!」

 

「ちょま──ごべぇぇぇぇ!? コイツ何でこんなに強いんだぁぁぁ!? もうお前が暴徒だろぉぉぉ!」

 

 警棒にしばかれながら拘束されてパトカーに引きづられていく。魔力はとっくに底を突いている。周囲の魔力を動力として発動する術式も呼水となる自分の魔力がある程度必要だ。されるがまま警棒でボコられるしかない。

 

「じゃあな篠夜! お前は生まれ変わった! 今度会う時は真人間になってる事を願ってるぜ!!!」

 

「頑張れよお兄たまぁ! あ! タマ取ったし女だからお姉様か! ごめんごめん!」

 

「姉様〜! たまに面会行くから元気でな〜!」

 

「うわぁぁぁぁぁ! 濡れ衣嫌ぁぁぁぁぁ!」

 

「お前が始めた物語だよバァァァァカ!!!」

 

「殴ってくんなら殴り返されるのは当たり前だよなぁ!? グフ! グフフフ!」

 

「「ギャーーハッハッハッハッハッ!!!」」

 

 煽りの極限の様な笑顔と高笑いが、俺が連れて行かれる最後に見聞きした物だった。

 

 

◇ ◇ ◇

 

 篠夜が連行されていった後、高木と熱い握手をする。篠夜を女体化させて篠目から罪を逸らす作戦大成功だ。オマケで俺らのやらかしも乗っけておいた。最高だ。今日は何て良い日なんだろう。

 

「やはり俺らは」

 

「【親友(マブダチ)】のようだな……!」

 

「あ、あの……良いんですか、こんな終わりで」

 

「良いんですよ。だって俺殺されかけたし。加奈子さん斬ろうとしたし。実際裁判所こうなったのアイツのせいだし」

 

「いやそうですよ!? そうなんですけど、だとしても関係ない罪まで乗せます!?」

 

「まぁまぁ! このままだと俺達損しただけになっちゃうじゃないですかぁ〜。だったら少しくらいご褒美があっても良いじゃないすか! なぁ加藤!」

 

「これで……これで俺の世間評価は回復する! 『脅されていたなら仕方ないね! 可哀想!』ってな感じで同情して貰える! フェアリルの件で学んでおいて良かったぜ! また俺の社会復帰が近づいたぞ! うっひょぉぉぉ! 今日はパーチーだぜ!」

 

「聞いてねぇや。ハハッ」

 

「え!? パーティー!? ホント!? じゃあ食べ放題行きましょうよ!」

 

「裁判所放置して良いのかい?」

 

「どの道すぐ直せないしな、現場検証とかあるだろうし。ほっとけほっとけ。ドラツに一言言っとくわ」

 

「人手が必要でしたら私の教団からも出しますよ」

 

「おい待てよ。もう米の予約炊きしちまってんだぞ。いきなり外食とかやめろや」

 

「じゃあ加藤の家でパーティーすれば良いじゃない!」

 

「わっち刺身食べたいからそこんとこよろしく頼む!」

 

「自分で買ってこいよそれは」

 

「え!? あの!? 皆さん!? 嘘でしょ!? ちょ、ちょっとぉぉぉ!」

 

 あ、そうだ。帰る前にちゃんとお礼を言わないと。

 

「エネロマ先生! ありがとうございましたぁ!」

 

「暫く私に話しかけないで」

 

「何で!?」

 

 その日から暫く、街中で出会っても無視される様になった。なんで?

 




「ってな感じで篠目も助けたし俺の名誉も回復したしで万々歳って訳だ!」

「下衆煮込みの煮こごりみたいなカスさ。流石はマスターです。普通に引きます」

「褒めてないよな? それ褒めてないよな? まぁ今日は許してやるよ! 俺の気分はウキウキウォッチンだからな!」

「そうですか。所でマスター、こちらをご覧ください」

「……何これ」

「どうやら裁判所付近の施設に設置してあった監視カメラが生きていた様で。それがテレビ局に提供されて流れたニュースです」

『ご覧下さい! 凄まじい戦闘です! こんなものが街中で発生するなんて……信じられません!【勇者の集い】のメンバーが丁度出会した様で一般人の死傷者は奇跡的にゼロだったらしいですが……どうもこの剣を持った男性と刀を持った女性が主に引き起こした事件の様です』

「……」

「そしてこれがニュースに対してのSNSや動画サイトのコメント欄です」

【うわコイツらやば。もうテロだろこんなん】

【コイツら探索者らしいよ】

【探索者とか8割カスしか居ないし妥当やな】

【にしては強過ぎん? バトル漫画並みに動き回ってるじゃん。探索者って全員こんな感じなの?】

【この大層な剣を持ってる方、探索者の中でもめっちゃ上澄らしい。何でも【勇者の集い】と並ぶくらいの強さのチーム率いてんだって】

【それ知ってるわ。【自我中心】って言うゴミカスウンコチンチンみたいなチームだろ? 評判終わってるぞそいつら】

【なんかこの前も住んでる付近で分身して暴れたらしいよ】

【忍者かよ。汚いなやはり忍者汚い】

【誤解ですわ! この方は確かに荒々しい所はありますが実は国を救った事がある程の凄いし優しい人ですわ!】

【おは【自我中心】。エゴ見えてんぞ】

【こんな見え見えの擁護すぐバレるって分かれよ】

【分かんないんだろ。バカだから】

【バカイストに改名しろよもう】

【社会のゴミ過ぎるから早く消えてくれ】

【ニュースをちゃんとご覧下さい! 主犯は刀を持った女性! それを止めようとしたと報道されてるではありませんの!】

【止める為だからってこんな壊して良い訳】

【ウルトラマンでも火事起こしたら消化すんのに完全放置で帰ったらしいじゃん。【勇者の集い】は残ったのに】

【終わってんなコイツら。何でコイツらが一部とは言え税金免除されてんだよ】

【探索者控除な。あれ悪法だから早く無くした方いいぞ絶対】

【運だけのパチンカスと何も変わらない職業の癖にな】

【リファル達くらい社会貢献してんなら問題無いのになぁ】

【やはり探索者……探索者はゴミ!】

【主語デカすぎ。この【自我中心】ってチームがゴミなだけだろ】

【それはそう】

「…………」ガチャッ

「マスター、どちらに?」

「ダーマ神殿行ってくる」

「ハロワにフォズは居ませんよ。マスター」
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。