ダンジョン中毒から抜け出したい【書籍化&コミカライズ決定】 作:1パチより4パチ派
『えー最近のダンジョン探索者の素行の悪さは把握しております。度重なる問題行動の被害を受けている国民の皆様には多大なご迷惑をお掛けし誠に申し訳ございません』
『どうすんだー!』
『責任取れー!』
『国動かすってレベルじゃねぇぞぉ!』
『付きましては順次、探索者として相応しい人に活躍していただく施策を──』
これ以上聞いていてもイライラするだけなのでテレビを切る。目の前の書類に苛立ちをぶつけたいがそうもいかない。何故なら仕事が増えるから。
「「死ねクソ政府……」」
俺とドラツは今とんでもない量の書類に囲まれていた。どれだけ周りを見渡しても紙紙紙紙紙髪髪……あ、俺の髪は無いからちょっとお得か。ガハハ。
「笑えるかぁぁぁぁぁ!!!」
「アホな事やってないで早くやって下さい……じゃないと今日帰れませんよ……」
「もう既に3日帰ってねぇんだよ! そろそろ今週のダンジョンアタックがあるってのによぉ!」
ひたすらにハンコを押してサインを書いてを繰り返す。こんなクソ面倒な単純作業、部下に任せたいが俺が書かないとダメとなっている。だからこうして缶詰になっているのだ。
「会長ー! 追加の書類です! お願いします!」
「ほげぇぇぇぇぇ! もう燃やせ! 全部燃やしてこい! 見たくねぇよ! ずーっと同じ書類! コピペ書類いつまで捌けば良いんだよクソが!」
「ドラツェルバさんお疲れ様です! 書類のおかわりです!」
「すいませんシュレッダー100台買ってきて下さい。全部裁断するんで」
再び訪れる未処理の書類。3日間ずっとこんな感じだ。難関ダンジョン挑んでる時よりしんどい。
「アーハッハッハ! ざまぁないわね高木ぃ! 私を失脚させるからこうなるのよ! どれだけ私が国の連中黙らせていたと思ってるの!? ちょーっと失敗した程度で下ろすからこうなるのよ! 分かったらさっさと会長の席をアッチッチィィィ!!!」
「やかましいですセレスさん。良いからマルボロ買ってきて下さい」
「さっきカートンで買ってきたでしょぉぉぉ!? ってもう無い!? どんな吸い方してんのよ!」
「常に吸い続けてないと仕事手に付かないんですよ。あー……今私めっちゃ臭いんだろうな……」
そろそろドラツも限界近い。俺は精神疲労だけで済んでるが探索者じゃ無いドラツは竜人族なだけで一般人だ。無理も無い。
「おいドラツ。お前もう休め。倒れられたら困る」
「誰ですか貴方。会長は、あの腐れ坊主はそんな事言いません。信じませんよそんな優しい言葉」
「嘘って言いたくなってきたんだがどうする?」
「嫌ぁぁぁ!!!」
「この味は! ………ウソをついていない『味』です……高木会長!」
「お前怪しいからって顔舐めるな! 汚ねぇ! つーかウソの味ってなんだよ!」
「メロンソーダって全然メロンの味じゃないですよね。あれがウソの味です。その味がしませんでした」
「人間の体からそんなフレーバーする訳ねぇだろ! 良いから早く行け! お前相当キてるだろ!」
「じゃあ先に休ませてもらいます。と言うかもう寝よう」
奇行を始める辺りガチでヤバかったらしい。普段ならあり得ない事をするドラツを休憩させて、俺とセレスの2人になる。
「……にしてもほんっとうにクソな事押し付けられたわね」
「それなぁ。ホント面倒だわ【探索者試験】……ヤニ臭っ!」
◇ ◇ ◇
「おい加藤。手紙だ」
「手紙? またリファルさんの謎に俺を褒め称える系のやつか?」
「いんや。ダンジョン運営からだな」
「は? 何で?」
ソファで寛ぎながらセラフィナが持ってきた封筒を受け取り中身を出す。何かあったなら高木が直接言えば良いのに何でこんな面倒な事を……。
「えーっと? どれどれ……」
「何だよ、なんて書いてんだ?」ボスンッ
「読みづらいから寄りかかってくんのやめろ」
「うるせぇ我慢しろ。良いから早く読めや」
「今やってんだろ。……何だこりゃ、【探索者資格更新のお知らせ】ぇ?」
「はぁ? 更新だぁ? 何だよそれ」
「マスター、もしやご存じ無いのですか?」
「え。ロール、お前もしかして知ってんの?」
「私はいつもネットの海を漂ってますしテレビも見まくってマスターの為に情報収集をしています。この程度の事分からなくては存在価値がありません」
「Netflix見てTwitterやってYouTubeで曲再生してるだけだろテメェは。何が情報収集だ」
「残念でしたねセラフィナ様。最近はSwitch2でぽこあポケモンもやってます」
「加藤! テメェまたコイツに買い与えたな!?」
「だってやらせる事なくて悪いなー思って! これは謝罪! 詫びの気持ちだからセーフ!」
「そんなんだから夜だろうと朝だろうとニートみたいな生活してんだろうがコイツはぁ!」
「操作しないとちゃんと動けないんだから仕方ないだろ! ちょっとくらい大目に見てやれよ!」
「穀潰しの何を見てやれってんだ! テメェがやらせてるソシャゲのデイリー消化かぁ!?」
「げぇバレてる! ロール! お前セラフィナには秘密って言ったろ!」
「申し訳ありません。ですが後ろから覗かれたら私にはどうする事も出来ませんので」
「いい加減コイツにゲームやら何やらやらせるの辞めろや! 鬱陶しいんだよ1日中ピコピコピコピコ!」
「令和になってゲームをピコピコ呼びは古過ぎますよ。まぁ暴力系ツンデレヒロインな時点で古いですが。27でツンデレて(笑)」
「うがぁぁぁぁぁ!!! 殺す!!!」
「やめろセラフィナ! 落ち着けぇ!」
セラフィナを諌めてロールの頭を引っ叩いて約15分。凄まじい時間の無駄遣いだ、ディアルガが聞いたらひんしになると思う。
「それで? 探索者資格の話教えてくれよ」
「と言っても簡単な話です。今まで登録すればずっと使えた探索証が更新制に変更されたと言うものです」
「何で急に。高木はそんな事言ってなかったぞ?」
「探索者の問題行動で突き上げを食らった政府が【探索者として正しい人の活躍を重視する為】と言う名目で無理矢理作った法案のようです。既に可決されて通ってしまいました」
「もしかしなくても俺のせいか? これ」
「1割くらいはマスター達のせいかもしれませんが、全国的に探索者の治安は悪いので遅かれ早かれではあったかもしれませんね。あーでもやっぱ2割行くかも?」
「よし、1割にオマケしといてくれ」
「Yes、マイマスター。評価変更。過失1割にオマケです」
「コイツの評価弄った所で何も変わらねぇだろ」
「目に見える範囲くらいはマシにしときたいんだよ!」
「臭ぇモンに蓋してんのと同じだろそれ」
しかし面倒な話だ。今までずっと使えた物を更新しないといけないなんて。
「じゃあ俺らも更新しないとダメなのか」
「そうですね。失効すれば当然、ダンジョンには潜れなくなります」
「そりゃ大変……じゃないぞ!?」
「? 何故ですか?」
「だってこのまま失効すれば! 探索者辞められるって事じゃないか!」
探索者を辞める方法は今までだと1つ。自分で探索証を返納するしか無かった。長期間潜らなくてもダンジョンに入場を規制されるような事は無かったし、実際2年やらなくても復帰出来た。だがこれなら! 新しい法案なら! 探索者を辞められる!
「高木が運営トップやってる以上返納なんて突っ返されて終わりだ! だが更新しないで失効しちまえば妨害は入らない! 流石にこんなもん送ってきてる時点で誤魔化しが出来ないって事の筈! これはチャンス! チャンスターイム!」
別に【
「最近は当たり前のように毎週潜ってたが、遂に治療チャンスが! 天は俺を見離さなかった!」
「前に医者に程々に潜る形で治療しましょうとか言われたんじゃねぇのかよ。耐えられねぇだろ普通に考えて」
「それも問題ない! 何せ俺にはルロから貰ったミニ宝箱がある! たまに潜る前に宝箱欲が抑えられない時があるが一度開けるとあら不思議! そこそこそれなりcool⤴︎down⤵︎! これがあれば例え本物の宝箱開けなくても何とかなるのさぁ!」
ありがとうルロ。やはりお前は次期魔王に相応しいよ。ルロ様は本当にお優しいお方。間違いない。ワイトもきっとそう思う筈。
「ハーッハッハッハッハ! 希望の光が今目の前にィィィ!」
「マスター、もしかしたらお忘れかもしれませんが……」
「お前どの道ギアススクロールで強制的に潜る羽目になるだろうが」
「……あ」
「仮に更新せずに失効し、ギアススクロールで強制的に潜ればダンジョン法に基づいてマスターは罪に問われますが……」
「登録しないで潜れば実刑判決だぞ。分かって言ってんのか?」
「……知ってっし。知ってたし」
「いじけ始めましたね」
「更新もお前も面倒になってどうすんだよ」
2人の指摘に上手く返せず、俺はソファの上で体育座りをする。セラフィナが見かねたのか肩をポンポンと叩いて励ましてくるが、今の俺には効果いまひとつだった。