ダンジョン中毒から抜け出したい【書籍化&コミカライズ決定】 作:1パチより4パチ派
あれから数日後、俺達【自我中心】は高木に集められていた。高木が仕事している事務所の会議室で待ち続け、既に30分は経過していた。
「遅ぇ……。遅ぇ! もう時間過ぎてんだぞ! 何やってんだあのハゲは!」
「まぁまぁ落ち着いてセラちゃん。高木くん最近クソ忙しいみたいだからさ」
「しかしそろそろ来てもいい時間なんですがね。余程バタついてるのでしょうか」
「高木のくせに忙しいとかおかしいわよ。アイツのアイデンティティは部下に仕事を押し付ける事なのに。ついに負のイメージにテコ入れかしら」
「高木のイメージ? 例えば何じゃ?」
「えークズでしょ? カスでしょ? ゴミでしょ? 外道邪悪卑劣悪質悪辣陰険陰湿軽薄下衆下品下劣狡猾姑息俗悪怠惰低俗卑俗不ジュゥゥゥゥゥゥゥ!!!」
「ハンバーグ師匠のイメージは無いがのぉ」
「焼かれてんのは肉じゃなくてそこのゲルな?」
入り口付近から飛んできた【火球】に焼かれて水分が減るゲルダリア。どうやら本人が来たらしい。
「悪い悪い。待たせちまったな」
「待たせた云々より私に言うことあるでしょ!」
「上手に焼けました〜♪」
「誰がシステムウインドウ出せって言ったのよ!」
「人をボロクソ言ってたバツだ。そんで本題だが……ここにいる全員! テストを受けてもらう!」
高木はそう言うと、持っていた紙を全員に飛ばしてくる。受け取るとそこには小テストと書かれている。
「これは何だい?」
「お前ら全員に手紙来てるよな? 政府のバカが探索者証を更新させろって言って来た訳だが誰でも更新出来る訳じゃ無い。これは政府側が探索者を辞めさせたい奴らを落とす為の試験! その問題だ。と言ってもあくまで例題だけどな」
「はぁ!? 試験あんの!?」
「そりゃそうだろ。国はお行儀の良い探索者だけ欲しいんだよ。何かある度に乱闘やら起こす奴らは要らないんだとよ」
「そんなの拒否すれば良いじゃない! めんどいんだけど!?」
「それがなぁ……この前の妖精暴走事件あったろ? あれで元会長を失脚させて俺がトップになれたんだが……実はその際に元会長と一緒に国に対しての影響力も落ちてな。ちと突っ返せない状況なんだわ」
「テメェのせいじゃねぇか! ざけんな!」
「元はと言えば元会長がフェアリルとか言う妖精を闇堕ちさせたのが悪いんですぅ〜! と言う事でお前らを落とさせる訳にはいかないからな。今日は勉強会って訳だ」
「成程。と言う事は筆記試験があるのですね」
「それプラス実技試験もな。ダンジョン潜ってそれを観察するって感じで。国側の奴が来て見るから誤魔化せねぇんだよ」
「本当に試験と言った形じゃなぁ」
「そんじゃ早速解いてくれ。別に頭を使う問題は無い。運転免許と同じ感じだと思えば良い」
「うちのチームはお前以外運転免許持ってねぇんだよ」
分からない事で例えられてもさっぱりだ。だが必要なら仕方ない。高木に文句を言いながら問題を解く。それから大体10分程で全員解き終わり、高木が答案用紙を回収していく。
「よし。んじゃ採点するから少し待ってくれ」
「簡単だったな」
「何だ、大した事ねぇな」
「こんなんだったら本番も余裕ね! 心配して損したわ!」
「何だろう、凄くフラグをビンビンに感じるなぁ」
○✖️問題だったので割とすぐ終わった。特に詰まる事もなくスラスラと解けたので正直拍子抜けに感じる。まぁ所詮免許更新だ、あまりに難しい物なんて出て来ないのだろう。
「採点終わったぞー。じゃあ点数発表ー。70点が合格点な」
オピス…100点
鶴岡…90点
篠目…75点
ゲルダリア…60点
加藤…39点
セラフィナ…12点
「「「採点ミスすんな!!!」」」
「○✖️問題で採点ミスなんかしねーよ! 普通にお前ら間違ってんだよバカトリオ!」
「ミスだろどう考えても! 篠目が合格してるのが何よりの証拠だ!」
「わっちどんだけバカだと思われとるん!? と言うか頭の良さ云々の問題では無かったじゃろ!?」
「どっちかと言うと常識を問うてくる感じでしたね」
「加藤くん達じゃ……無理だよね」
「何だとオピス。まるでアタシらが常識無ぇみたいじゃねぇか!」
「だとしたら余計篠目が合格してるのが納得出来ないわ! 1番非常識極まってるでしょ!」
「わっちは自分が異常なのを自覚しとるからな。切腹もやったらダメなのを分かってやっとる。常識自体は知っておるぞ!」
「キンブリーみたいな事言うんじゃねぇよ! どれだ、どの問題間違えたんだ!?」
「じゃあ少し見ていくか。取り敢えず座れ」
猛抗議も待ったなしだがひとまず言われた通り座る。個人的には完璧に回答できたと思ったのに……。
「第一問から見ていくぞ。【探索者はダンジョン内でなら幾らでも死んで良い。○か✖️か】。どっちだ?」
「そんなん○だろ。だって生き返るし」
「はいバカ。答えは✖️だ」
「別に死んだ所でそれは仕方ない事だろ!? 名誉の死だろ! 多分!」
「落ち着いて聞けよ? 世間一般では死と言う物はメチャクチャ重い物なんだぜ? 例え生き返るって言ってもな。てか普通に考えて死なない方が良いのはそうだろ」
「ぐっ! ……ま、まぁここは認めてやるよ。ギリギリ理解出来るしな」
「認めようが認めまいが間違いは間違いじゃぞ」
「じゃあ次。【他探索者と揉めた際に、明らかに相手側に非がある場合は殴り飛ばしても良い】」
「これ○だろ! だって相手が悪いんだろ?」
「アタシも○にしたぞ。今までずっとやって来たしな」
「はいバカ2人。答えは✖️!」
「「何でだよ!」」
「普通に考えて運営のスタッフ呼ぶよね」
「常識ですね」
「んな事言ったって過去に似たような事あっても誰も呼んでなかっただろうが!」
「加藤の言う通りだ! 何で今までOKで急にダメなんだよ! ざけんな!」
「いや別に今までも良かった訳じゃないからね? 悪い事だったんだけど僕達が同業者並びに運営側にビビられてたから何も言われなかっただけだよ? 高木くんも居たしね」
「やっぱ人の弱みを握るのって現代に置いて最強だと思うんだよね」
「こんな陰湿ハゲに比べたらアタシらの正当な暴力は許されるべきだろうが! アタシらの暴力は良い暴力だ!」
「暴力に良いも悪いも無いですよ?」
「シンプル暴力だからね」
「じゃあ取り敢えず最後。【行き付けの店の店長が難癖を付けられている。その際難癖を付けているのが探索者ならしばき回しても良い】」
「「○! ○!! ○ゥゥゥ!!!」
「と言った感じで不合格組はこのままだと本番で即死の社不なので、合格組+俺で無理矢理合格ラインまで持って来ます。良いな?」
「
「「せめて間違ってるって言えやぁ!!!」」
「言わなくても間違いって気付けやぁぁぁ!!!」
ガンスルーしやがった高木にセラフィナと詰め寄ると、高木も我慢の限界なのかブチギレて来た。血管が頭全体に広がって栽培マンかと思った。
「こちとらずっと働き詰めでしんどいなかお前らの為に来てんだよ! アホやってねぇでさっさと覚えろバーカ!」
「知らねぇよそんなの! その程度でくたばる雑魚じゃねぇだろ! 頑張れ!」
「お前らが合格すればそれで済むんだよ! 常識を問う問題なんだよ! マトモな回答すれば受かるんだって!」
「これがアタシらの常識なんだよ! 舐められたらぶっ飛ばす! 身内に手を出されたらぶっ飛ばす! 当然だろ!」
「いい加減にしろよ暴力サキュバス! 思考回路がヤクザと大差ねぇんだよ! 加藤も引っ張られてんじゃねぇ! 別に考え方変えろって言ってねぇだろ! このテストの時だけ嘘でもいいから世間様の求める答え書けば良いんだって!」
「分かった。分かった! じゃあ1つだけ聞かせろ高木」
「何だよ」
「前にゴレットが知らん探索者に難癖付けられてた時あったじゃん?」
「完璧に仕上げたのに傷付いてるとか言ってタダにしようとしてた奴な」
「ゴレットが引かないでずっと拒否ってたら、そいつ逆上して殴ってたじゃん?」
「ゴブリンだからな、力は人間より低いから完全に下に見られてたんだろうな。ひでぇ話だ」
「それを俺が助け出したじゃん? これはセーフだろ?」
「そうだな。背後から飛びかかってマウント取った後、顔面変形する程ぶん殴って意識飛ばして装備とアイテム全部引っ剥がして川に蹴り飛ばして無かったらな」
「……そのラインがダメなんだな? 理解した」
「理解速度カタツムリやめろや」
確かあの時は軽鎧がぶっ壊れて直して貰いに行った時だった。宝箱で当たりが出ないでイライラしてた所にゴレットが殴られてるの見たから完全にキレてしまったのだ。ちなみに剥いだ装備とアイテムは全部換金してゴレットに慰謝料として渡した筈。だから強盗では無い。絶対に違う。そもそも何にも悪く無いゴレットを殴る方が悪だろ」
「言い訳漏れ出してますね」
「事実ではあるけど、それはそれとしてゴレットくんドン引きしてたよね」
「あの探索者今頃何しとるんじゃろうな」
「普通に引退して田舎に帰ったぞ。探索証返納されてたからな」
まぁあんな奴辞めた方が世間の為だからそれは良い。兎に角このテストには俺の当たり前が通用しないようだ。何とかしないと。
「クソ……どうしろってんだよ……」
隣に目をやるとセラフィナがいじけた様子で愚痴っている。俺より点数が低いと言う事は相当酷い筈だ。ここまで来たら思った事の逆に書けば良い気がするが、この際ちゃんとしたのを学ぶのは悪い事じゃないだろう。
「セラフィナ、どうやら残念な事に俺らはマイノリティな考えを持っているようだ」
「だからなんだよ」
「だからこそ! ここで挫ける訳にはいかない! 俺はマトモになりたいから学ぶぞ。お前はどうする! このまま常識ヅラしたカス共を良い気にさせたままで終わるのか!? 見ろよ! 俺らを見下しているこの目を!」
「!!! ……んな訳ねぇだろうがぁ!!!」
「なんか被害妄想始まったんだが」
「手伝うって言ってるんだけどね……」
「内心バカにしやがって! ちょっとテストの点が良かった程度で調子乗んなよ!」
「アタシら舐めんじゃねぇ! こんなテストすぐに1万点くらい取ってやるよ!」
「もうダメじゃ。完全に同じ境遇の者同士で結託してしまったぞ」
「どちらにせよやる気を出したのは良い事かと。是非私達を見返して下さい」
「「上等だテメェェェ!!!」」
俺達は負けない。ズレた常識をここで治す。そして必ずコイツらの『めっちゃバカじゃん』と言う顔を変えさせてやるのだ!
「ねぇ。私今の問題全部✖️書いたわよ? 何で赤点?」
「お前【探索者に出入りが許可されるのは幼稚園である】って問題にどっち書いた?」
「○だけど……」
「それが赤点の理由だよ馬鹿野郎」
「ダメなの!?」
「「「「「「ダメ」」」」」」
「ここだけ全員一致するのやめなさいよ!」