ダンジョン中毒から抜け出したい【書籍化&コミカライズ決定】 作:1パチより4パチ派
まさか一桁になるとは思いませんでした。
読んでくれている方、ありがとうございます。
「腹減ったなぁ、適当な飯屋にでも行かねぇか?」
「なぁ、俺昨日どうなったんだ? 薬飲んでから記憶がぶっ飛んで何にも覚えてないんだけど。それと何で俺はお前とホテルから朝帰りしてんの?」
「ダンジョンに居た時にお前が言い出したことだぞ」
「俺は何を言ったんだよ!」
気分だけは謎に爽快な状態で、まだ早朝の街を歩いて行く。
今日は清掃の方は休みなので急がなくてもいいのは良かった。
「ああ、そう言えばほら。精霊族のやつがお前に礼だとよ」
「え? あぁ、良かった。記憶はぶっ飛んだがやる事はやってたんだな、俺」
「まぁ確かにヤる事やったが……」
「うるさい黙れどつき回すぞ」
「いやお前後半普通に目覚めてただろ? 起きたと思ったらアタシの──」
「じゃあ俺味噌ラーメン食おうかな」
「塩がいいな、アタシは」
「じゃあ私は間を取って豚骨ラーメンを」
「お前何で居るの? 詐欺岡」
「鶴岡です」
「詐欺岡、久しぶりだなお前」
「どうもセラフィナさん、あと鶴岡です」
歩いていた俺達の隣にいつの間にか居た緑髪の神父。
俺の仲間の1人、鶴岡。
カソックを着て真面目な神父に見えるが、顔の糸目がバカみたいに胡散臭い。
「お久しぶりです加藤さん、お元気でしたか?」
「全然、最近マジで酷い目に遭いまくってる。主に過去が俺を『逃がさん……お前だけは』って言ってるような気がする」
「それ気のせいじゃ無いですよ、私もスクロールにサインしましたからね。私達は貴方を逃しませんよ?」
「何でどいつもこいつも俺を引き摺り込もうとするんだよ! 人の足引っ張るの好き過ぎだろ!」
「一緒に落ちてやるから安心しろよ、な?」
「嫌じゃ嫌じゃ! 中毒者になどなりとう無い!」
「それでは聞いてください、【中毒者になどなりtonight】」
「再生数1桁のクソ曲を生み出すな!」
「つーかもうとっくの昔に中毒ではあるだろ」
「現実を見たくnight」
「お! これは良さげな曲名ですね! 現代の若者に刺さってオリコン1位取れますよ」
「こんなんで1位取れる世界ならドスケベ音頭は国歌だろ」
中身が全くない会話を繰り広げていると、おもむろに鶴岡が懐から紙を取り出した。
「そうそう、話は変わりますが最近サブスク始めたんですよ」
「は? サブスク? お前そもそもカルト宗教のトップだろ。なんで宗教にサブスク導入してんだよ」
「失礼な! 我が宗教はカルトではありません! あくまでこの停滞した社会をひっくり返す為に共に力を合わせているだけですとも!」
「何でこいつ逮捕されないんだ?」
「警察にも我が同志が潜り込んでいますからね」
「警察の腐敗ヤバ過ぎだろ」
「仮にそうで無くても、悪い事などしていませんから。今は炊き出しをした帰りだったのです。そこで丁度お2人にお会いしたのでこうしてサブスクに勧誘を」
「仲間から金巻き上げようとすんな」
「と言うかオマエ金ならあるだろ、何で金稼ぎしてんだよ」
「いやいずれ使うであろう武器を買ってたら金欠になってしまって」
「テロ等準備罪を当然のようにやらかすな」
「使う予定はありませんから! 今はまだ」
「早めに潰すべきなんじゃないか? コイツの宗教」
宗教潰すよりこいつを滅ぼした方が良いかもしれない。
「まぁまぁ、お2人にぴったりのサブスクですよ。内容を見るだけでも」
「どうせ前みたいに適当な石を神の石とか言って売ってるんだろ」
「ああ、それは辞めました。流石に突拍子も無いですからね、今は神の宝石として人工ダイヤ売ってます」
「変わらねぇよ」
セラフィナと2人で渡された紙を読んでみる。
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「どうですか? 良いサブスクだと思いません? 特に今の加藤さん的には『あぁ……ダンジョン潜りてぇ……』って時にこれがあれば罪悪感無く潜れますよ! なんたって神が赦していますから!」
「免罪符をサブスクでばら撒いてんじゃねぇよ!!!」
チラシを地面に叩きつける。
何だこれ、こんなもん売って金儲けしてんのかよ。
「あ、安心してください。紙はいいの使ってますよ。あの賞状とかと同じやつ」
「お前のゴミみたいな金儲けに上質紙使うんじゃねぇ! 鼻噛んだティッシュにでも書いてろ!」
「キリの悪い値段にして安く見せようとしてるのクソ姑息だな」
「本来は5万な所を赤字覚悟でお安くしてるんですよ、出血大サービスですね」
「百均で買える紙をほぼそのまま出してるくせにどのツラ下げて言ってんだよ!」
「いやでもコピー代とかありますから」
「そこはせめて手書きであれよ!」
「そんな! 前までの加藤さんだったら『カートカトカト! 良いアイデアカトねぇ……1枚噛ませるカト!』と言う筈……もしや貴方偽物ですか!?」
「俺のエアプが過ぎるだろ! 何だよその3秒で考えたクソみたいな笑い声と語尾!」
「なんかイラついてきたから殴って良いか?」
「ハハハ、やめて下さい。セラフィナさんに殴られたら死にかけます。高木さんじゃないので回復魔法そんなに得意じゃないんですよ」
「やり甲斐あるな」
「ほなサブスクはまた……」
「はよ引っ込めろこのクソチラシ」
クシャクシャにしたチラシを鶴岡の頭に投げ当てる。
わざとらしく悲しそうな表情をした鶴岡。
腹立つぅ……。
「所でお2人はどうしてこんな所に? 朝帰りですか?」
「そうだぞ」
「認めたくないものだな……現実と言うものは」
「年齢的に何も問題ないんですけど、ぱっと見ガチ犯罪でウケますね」
「さっき職質受けたばっかだから何一つウケねぇよ……」
「女の警官はやっぱダメだな、アタシの事ハーフサキュバスって分からねぇからガキだと思いやがる。ムカつくわあの厚化粧」
「そりゃサキュバスからしたら、すっぴんでその顔保てるんだから普通のメイクも厚化粧だろうよ」
「いつもの事のようにセラフィナさんが警官にキレてたから余計怪しまれたんじゃないですか?」
「こっちが良い気分で歩いてんのに邪魔してくる奴なんて腹立つに決まってんだろ」
「そのせいで1時間は捕まっただろ! キレるなとは言わんから少しスルースキルを身に付けろよ!」
実際子供扱いされたら腹が立つのは当然だ。
まぁセラフィナは教育なんざ受けてないし、ストリートチルドレンだったから仕方ないけど、もう少しだけ煽りに強くなって欲しい。
「まぁまぁ、気が強いのは加藤さんの性癖だから良いじゃないですか」
「じゃあ俺らは帰るから。じゃあな」
「相変わらず話逸らすのヘッタクソですね、良いんですかセラフィナさん。一言言ってやったら良いと思いますよ」
「そのうち逸らしきれなくなるまで追い詰めるから問題無ぇ、ほっとけ」
「やべぇ追い込み漁かけられてる、包囲のどこかに穴無いかな」
「そう言えば、穴は無いですがお2人にお願い事がありますよ」
「「お願い?」」
セラフィナと顔を見合わせて首を傾げる。
鶴岡が俺らにお願い?
……碌なもんじゃ無いだろうなぁ。
◇ ◇ ◇
「どうぞどうぞ、清掃はしていますよ」
『おお、神よ、神よぉぉぉぉぉ!!!』
「掃除以外にもしなきゃいけない事あるんじゃないか?」
「トイレはあそこの角を曲がった所です」
「トイレの案内じゃねぇよ! あの叫んでる連中何とかしろや!」
「さっきから神神うるせぇんだけど、なんだよアレ」
「神への祈りですよ、敬虔な信者の祈りは神に届きますからね。多分」
「神なんか居る訳無いだろ」
「おや、無神論者ですか加藤さん。理由を聞いても?」
「お前に神罰が落ちない時点で神が居るわけないだろ」
「1番神に糞塗りたくってるのコイツだしな」
「酷いですね……私はただ人々を導いてるだけなのに」
「お前が導いてるのは地獄だけどな」
鶴岡の後ろをついていく。
カルト宗教の教会ではあるが、無駄に綺麗な為マトモに見えてしまう。
実際は鶴岡が出鱈目で作った金稼ぎの宗教だと言うのに。
「そういやどういう神が居る設定なんだ?」
「いずれこの世の人族と魔族を救済してくれる神ですよ。神の名前はメアリスーです」
「文字通り完璧そうな神だな」
「存在しないってところ含めてバッチリな名前じゃねぇか、その内コイツ殺されるだろ」
「そうなったら魔族の国にでも逃げますよ」
「何て傍迷惑な渡り鳥なんだろうか」
「まぁ鶴ですから、鶴岡ですし」
「お前は鷺だろ詐欺岡」
セラフィナと2人で鶴岡に毒を吐いてると、ふと奴の足が止まる。
前には一つのドア、一見して何の変哲もない。
「ここです、今開けますね」
鶴岡がドアを開くと中は広く、綺麗に整頓されている。
だがそれよりも気を引いたのは──。
「帰らない! 帰らないぞ! 俺は絶対に帰らない!」
「教祖様が帰ってくれと言っています! お帰りください!」
「嫌だ! どうして俺と彼女の中を引き裂くんだ! やめてくれ! 俺は彼女を──メアリスーを嫁にするんだ!!!」
「御神体に皮脂だらけの手で触れないで下さい! ちょ、誰か男の人呼んでー!」
「分かりました。男の人、よろしくお願いします!」
「よろしく出来るかぁ!!!」
中年が必死にカルト宗教の御神体に縋り付く光景だった。
汗だくで体を擦り付けてるせいで、高そうな御神体は遠目から見ても汚れている。
「と言うか何で御神体がアニメの美少女みたいな見た目なんだよ!」
「いやどうせだったら見ていて苦じゃない見た目の方がいいじゃないですか。変に無機物だと何かキモくないです?」
「メアリスーゥゥゥ!」
「アタシ的には今の状態のが気持ち悪りぃぞ」
「ハハハ! 確かに!」
「納得すんな! 何であのおっさんは必死こいてあの1/1スケールと思われるフィギュアを嫁にするって息巻いてんだよ!」
「彼は信者の1人である女性の息子さんでして。その繋がりでウチの宗教をお知りになられたんですが、その際にどうも家で信者の方にお渡ししているパンフレットを読んだらしいのです」
「て事はそれにアレの姿が載ってたのか?」
「まぁ紹介する為にそりゃ載せますよ。そしたらある日ここに来てからは毎日毎日こうして御神体に求愛している訳ですね。めっちゃ面白くないですか?」
「哀れ過ぎて言葉が出ねぇよ」
どんだけ好みだったんだよ。
御神体……メアリスーだったか。
見た目としては青髪ポニテのミニスカワンピースだ。
やたらと胸を強調したポーズをしているのは鶴岡の趣味だろ。
「どうですか? 加藤さん的には我らが神は」
「1ミリも魅力を感じない。アレのどこが良いんだ?」
「デカパイ垂れ目のゆるふわ美少女は世間一般に見てもかなり需要があるんですけどねぇ」
「お前俺の女の趣味知ってて言ってるだろ」
「お、お前!」
鶴岡のしょうもない性癖話を流していると、中年が俺に話しかけてきた。
「あー何すか?」
「今メアリスーの悪口言ったな!?」
「いや言ってないっすよ、個人の感想だって」
「ぐっ……輩みたいな見た目で、俺の嫁に近づくんじゃない!」
「まぁ加藤さんってチンピラみたいな見た目ですよね、もしくは田舎のドンキに居るヤンキー」
「Tシャツジーパンでチンピラorヤンキー扱いは不当過ぎるだろ!」
「そんな事ない! ネックレス付けてるようなチャラチャラしたやつが、俺の嫁に近づくな!」
「価値観昭和!」
拗らせすぎだろこの人。
何をやったらこんな人間になるんだろう、何もしなかったらこうなるのかな。
世話サボった結果スカモンになったみたいな感じだろうか。
「帰って欲しいならぶっ飛ばせば良いだろ、何でやらねぇんだ?」
「いやーセラフィナさん、私仮にも教祖ですよ? 流石に信者の家族殴るのは……お布施減るかもだし……」
「結局お前のお願いって自分の手を汚さずに邪魔者の排除ってだけじゃねぇか!!!」
「お礼にサブスク免罪符無料にしますよ?」
「要らんわ!」
「メアリスーは俺が守る! 高値で買ったこの武器で!」
そう言っておっさんが取り出した武器は──。
「……いやトンファーってアンタ……」
「構えど素人だな、やる気あんのか?」
「うるさい! これ高かったんだぞ!」
「いやトンファーで守るって言って許されるの雲の守護者だけだから。それ以外が言ったら許されないぞ。分かったら今すぐ家に帰れ自宅の守護者」
「自宅の守護者ってそれただの
「さっきからうるせぇな、いい加減目を覚ませよ。お前が縋ってるのはただのデケェフィギュアだぞ」
「な──! このメスガキがぁぁぁ!」
その一言がおっさんの怒りを爆発させた。
雄叫びを上げながらトンファーを振り回す。
その行先は──セラフィナ。
「ヤバイ!」
手を伸ばすが届かない。
不味い、このままだと、このままだと──!
「おっさんダメだ! 逃げろぉぉぉ!」
「え? 俺?」
俺の声はおっさんに届いたが、全てが遅かった。
「誰が……ガキだテメェェェ!」
セラフィナの拳がおっさんの顔面に叩き込まれる。
そのままドリルの様に回転して吹っ飛んだおっさんは──。
バッキャァァァァァァァン!!!
「あああああ! 御神体がぁぁぁ!!!」
メアリスーのフィギュアにぶち当たって派手に壊れた。
首も手足も全てバラバラ、おっさんの顔の骨もバラバラだ。
辺りに先程おっさんを引き剥がそうとしていた信者の悲鳴が木霊する。
「おっさん! おっさん! しっかりしろ! 死ぬな!」
「」
おっさんに駆け寄り回復魔法をかける。
幸い息はある、回復を続ければ何とかなりそうだ。
「あーすまんすまん。朝から警官にもガキ扱いされて限界だったわ。一応峰打ちだから安心しろよ」
「拳のどこに峰があるんだよ!」
「いやー派手にやりましたね。こりゃ大変だ、修繕費請求して良いですか?」
「ああ、後で送っといてくれ」
「おっさんの見舞金も入れてやれよ!」
結局鶴岡の頼みは暴力によって叶えられた。
余談だが、おっさんは殴られたショックなのか、真面目に働く様になったらしい。
叩いて治るとかブラウン管テレビかよ。