ダンジョン中毒から抜け出したい【書籍化&コミカライズ決定】 作:1パチより4パチ派
「無事全員生存で踏破出来ましたね。良かった良かった」
「そうですね。じゃあそろそろ矢抜いても良いですよね?」
「……揺り戻し怖いんでもう暫くキープしていいです?」
「抜きます」
そう言われて加奈子さんに矢を抜かれた。床に血を垂らす訳にもいかないのでさっさと【
「……結局不合格ランプは点灯しませんでしたね」
「加奈子さんが矢を刺してくれたお陰ですね」
「あんな醜態晒して不合格じゃないって何を見てるんですか!? 何も見てませんよこれ! 寝てますってこれ!」
「……まぁ確かに。冷静に考えればモンスターをスルーしまくって進んでる時点で私達の探索はマトモでは無かっただろ」
「それは……ほら、実力考えてチーム組ませない方が悪いで通せないか?」
「どうだかな。……まぁ随分とザル試験だったのは事実らしいが」
「ザル?」
「あっちを見ろ」
カネゴンが示めす方には明らか柄の悪い探索者が余裕そうな顔で待機している。試験に落ちた表情で無いのは確かだ。
「あの類いが落ちない有様だ。てっきり真っ当な探索者だけを合格させたくてこんな面倒な更新試験を行ったと思っていたが……どうも違ったらしい」
「あれ? でも高木の奴は国側がマトモな奴だけ残したいみたいだって言ってたぞ?」
「勘違いだったのだろう。そうで無ければ説明がつかん。全く、何の為の試験だったのか……まぁ何にせよ税金控除が受けられるなら私は構わんがな」
「うーん……」
アイツが勘違いなんかであんな慌てるか? よく分からない。一体どうなっているのか……。
「加藤くーん」
「あ、皆さん来ましたよ?」
オピスの声がした方向に振り向くと、それぞれ試験が終わったであろう皆が近づいてきた。表情からして不合格のランプは付いてないようだ。
「大丈夫っぽいな。どうだった試験」
「大変だったわよ? えっとね……」
◇ ◇ ◇
〜セラフィナの場合〜
「オラオラオラ! 遅ぇんだよノロマが! 走れ!」
「む、無茶言わないで……」
「アァン!? テメェ探索者だろ! こんなんで根ェ上げてどうすんだ! ナマ言ってねぇで立てや!」
「無理ぃ! てか何でそんなに速いんだよ! これだから高レベル探索者は! レベル下げろ!」
「ゲームじゃねぇんだからレベルなんざ無ぇんだよ! バカな事言ってるとブッ飛ばすぞ!」
「お、落ち着いてくださいませ、セラフィナさん! この方達はまだ駆け出し! このダンジョンは明らかに場違いですわ! もう少し、この方達に合わせた方が……」
「「や、優しい……! 助かった……!」」
「何言ってんだアナンタ! そんな事言ってる暇は無ぇんだよ!」
「何をそんなに焦っていますの? 別に試験に制限時間は……」
「……アイツが……」
「アイツ? 加藤さんの事でしょうか?」
「加藤の奴が……例え知ってる奴でも……他の女と居るのは……あんま……その……嫌だ。だから……早く側に行かねぇと……」
「……」フラッ
「だ、大丈夫ですか!?」
「頼む! 倒れるな! マトモそうなアンタが倒れたら俺らは──「推しカプ純愛デレFEVER!!!」──マトモじゃ無かった……」
「お2人共! 聞きました今の意地らしいデレ! 本人が居ない所でのデレ! これは攻撃力がブルーアイズ超えてますわ!」
「いや知らないけど! どうでも良いし!」
「どうでも……良い……? この純愛を見て……どうでも良い!? まさかあなた方! 純愛アンチ勢!? 敵!? 敵ですの!?」
「違うが!? よく知らん奴らの関係性見せられてどうしろってんだ!」
「例えばNTR、BSS、ハーレム、脳破壊。この世にはなくなった方が幸せになれるものがたくさんありますわ。それらをチェンソーマンの力で全て消し去ります」
「純愛過激派マキマさん!? チェンソーマンも腹壊すだろそんなのばっかだと!」
「NTR の悪魔なんて居る訳無いでしょ!」
「いいえ存在します! 過去に表紙で純愛物にしか見えないイラストで私を釣って、その実訳分からんチャラ男にヒロインがNTRされる同人誌! あれは悪魔が描いてます! タグも純愛って書いてました! 完全にステルス地雷ですわ!!!」
「そ、それは怒っても良いかもしれないけどさぁ……」
「今ここで! この純愛を推さないで何を推すと言うのですか!? 確かにたった1つの愛かもしれません。ですがここから純愛の素晴らしさを広める事が出来れば邪悪を裏の世界に封印する事が出来ます! 乗るしかありませんわ! こんなビッグウェーブ!」
「自分の趣味に合わない性癖を裏世界に閉じ込めようとしてるぞコイツ! 傲慢過ぎるだろ!」
「表に出てくるのがいけないのです! どうかネットの世界から出てこないでくださいまし!」
「何をこの人をここまでにさせるの……あ! モ、モンスター来たぁ!」
「フンッ!!!」ドブシュッ!
「「……」」
「ダメですわね。ここでは純愛布教をマトモに出来ませんわ。セラフィナさんの為にも、教えを説く為にも早く踏破致しましょう! さぁ走りますわよ皆さん! よろしいですわねセラフィナさん!」
「……へ? あ、あぁ……良いんじゃね?」
「では突撃! 休む暇なんて与えませんわぁぁぁ!!!」
「「悪化したぁぁぁ! モンスターワンパンだし何だコイツゥゥゥ!」」
◇ ◇ ◇
〜鶴岡の場合〜
「〜♪」ニコニコ
「ひ、ひぃ……」
「は、はふぅ……」
「あっあっあっ」
「おや? 皆さんどうしましたか?」
「へ!? い、いや何も御座いませぬ!」
「口調変わっていますね。緊張している様ですが……今だけとは言え、私達は探索者チームです。共に試験頑張りましょう」
「(出来る訳無ぇぇぇ! 誰がカルト宗教のトップと頑張れるんだよ! 無理だろ!)」
「(この人の信者達って目が怖いのよ! 【平等って素敵!】とか言いながらボランティアしてるの見ると狂気を感じて怖いのよ! たまに暴走してるしさぁ!)」
「今回、後衛が私だけなっていますが回復は得意ではありません。申し訳ない。【
「(支援!? 私怨の間違いじゃなくて!? 主に資本家に対しての! 悪い噂しか聞かないが!?)」
「(そもそも絶対支援だけじゃ無いでしょ! さっき見えたもの! チラッと悍ましい呪詛が刻まれた腕が見えたもの! マトモなもんじゃ無いわよアレ!)」
「と言う事で前衛は宜しくお願い致します。手始めにどれほどバフ掛ければ良いですか? 遠慮なく仰ってください。大体の支援魔法は使えますので」
「あっあっあっあっあっあっあっ」
「あの……それよりその人どうしたんでごぜぇますか?」
「さっきから白目だしずっと涎垂らしてるし痙攣しておられますザマスが?」
「ああ、彼は信者の情報を見た限り過去に何度も駆け出しや一般の方に恫喝する方でしてね。やり返されない相手のみ狙うと言うのは全く頂けません。ですので少しお話をしただけです。ご覧の通り分かってくださいました。そうですよね?」
「あっあっあっあっあー」カクカクカク
「いや分かってない分かってない! 脳味噌弄られてるってコレ!」
「弄ってませんよ? 脳は」
「脳はって事は他弄ったって事!? なんかヤバそうな邪気がその人に纏わりついてるからそれ!?」
「さぁ? ちょっと良く分かりませんね。……もしかしたら悪さをするから神が彼に罰を与えたのかもしれません! おお神よー我らを見てくださってるのですねー」
「(クッソ棒読みなんだけど! 1ミリも信じてる感無いんだけど! 神父なのに!)」
「(見える! 笑顔の奥でグズグズに煮えた怒りが見える! 何があったらこんな人間が出来上がるの!?)」
「……大丈夫ですか? 体調が悪いのであれば言って頂ければ。こう見えてある程度の医療知識は理解していますので」
「「モンダイナイデス。ハヤクススミマショウ」」
「そうですか。では頑張りましょう」
「あっあっあー……アッ!」
◇ ◇ ◇
〜オピスの場合〜
「つまりこの【カーズリング】は魔力を流すと凄まじい身体能力へのバフと再生能力が掛かる代わりに……」
「鉱物と生物の中間の生命体になって一切の行動が出来なくなるよ! 考えるのをやめる事は出来るけど」
「凄い! こんなのダンジョンで使ったらそのまま帰ってこれないっす! 何の役にも立たない、素晴らしいクソアイテムっす!」
「そうでしょー? 愛らしいよねー?」
「別に愛らしいとは思いませんけど!」
「そっかそっかー。……さて、じゃあこの──」
【2人の固まった冒険者】
「人の話を聞かないで【カーズリング】を僕から引ったくった2人はどうしようか」
「取り敢えず引っ張って引き摺れば良いと思うっす!」
「じゃあそれで! モンスターは僕が倒すから宜しくね」
「りょーかい! あ! 後で自分の作った物も見てくださいよね!?」
「勿論! じゃあ行こうか!」
「所でこの2人は治るんすか?」
「うーん、多分1週間くらいすれば……」
◇ ◇ ◇
〜ゲルダリアの場合〜
「待ちなさぁぁぁい! こんのゲロスライムゥゥゥ!」
「Stop! Calm down! Get a grip! 私悪くないわよ! 目を覚ましてお願い!」
「何アレ?」
「アイツ教師なんだって。何だけどあのスライムが生徒にちょっかい掛けまくる不審者だから討伐する為に探索者になったらしいぞ」
「立派だな。でもあのスライムって【自我中心】のメンバーだろ? 勝てないだろ普通に考えて」
「塩の浸透圧で水分枯らして殺すって言ってたぞ」
「ナメクジ駆除かよ」
「ちょっとぉぉぉ! 言ってないで助けなさいよ! 窒息させて殺すわよアンタら!」
「逃げるなぁ! 悪霊退散! 博多の塩!」
「やめてやめてぇ! 塩分過多になるぅ! 高血圧になるぅ!」
「血も涙も無いスライムがほざくなぁぁぁ!」
「涙はあるわよ! どんだけ涙量産して強くなってきたと思ってるのよ!」
「TOMORROWかな?」
「アスファルトだってスライムを咲かすのはお断りだと思う」
◇ ◇ ◇
〜篠目の場合〜
『ゴガァァァァァ!』
「しまった! 囲まれた!」
「ひぃぃぃ! もう無理だぁぁぁ! だって、だって! 1番強かったあの銀髪女が──!」
「」←光悦した顔で切腹済み
「腹切って死にかけてんだもぉぉぉん! 何ぃ!? もう捨ててって良い!?」
「馬鹿野郎! コイツ【自我中心】のメンバーだぞ! あのチームのヤバさ知らないのか!? 連中がどんだけの探索者を再起不能にしたと思ってんだ! コイツ放置したら何されるか分からないんだぞ! 俺はまだ殺されたくない!」
「ま、まて……わっちらは殺人なんてせん……安心せい……ゴフッ!」
「他人じゃなくて自分殺してる奴が言っても説得力ねーよ!」
「自分を押し殺してて奥ゆかしい……じゃろ?」
「いや押してねぇだろ! 切ってんだもん! 腹掻っ捌いてるんだもん!」
「筆記試験で我慢し過ぎた……我慢しとったが限界だった……是非も無いネ」
「なーにノッブみたいな台詞吐いてんだよこの女! 訳分から無いんだけど!」
『ガァァァァ!!!』
「「いやぁぁぁ! 誰か助けてェェェ!!!」」
◇ ◇ ◇
「って感じだったわ。いやー
「全くじゃ。まさか実力差を考えないで組ませるとは……難しい試験じゃった」
「何が難しい試験だよ。お前ら2人に関しては勝手に難易度上げてるだけじゃねぇか!!! 謝れ組んだ奴らに!」
「アンタに言われる筋合いは無いわよ! どうせ加奈子に迷惑かけまくったんでしょー!? 残ってんのよ額の刺し傷がぁ!」
「しまった! 回復甘かった畜生!」
「隠蔽工作じゃ! 卑怯極まりない姑息な手じゃ! 詫びろ! 赦しを乞え! ここがお主の断頭台じゃ! 共に行くぞ!」
「1人で行ってろバーロー! ……にしても、これ試験になってんのか? こんなに好き勝手やって誰も不合格になってないのおかしくね?」
俺の疑問に誰も答えられる奴は居なかった。聞く限り俺もコイツらも相当酷い試験だったのに何のお咎めもない。他の連中もそうだが……流石に不可解だ。
「どうなんだろうねー……あ、高木くんだ」
「あぁん? アイツ何してんだ? キメェぞ」
セラフィナの言う通り、高木は意味不明な動きをしていた。頭を抱えながら笑ったり苦虫を噛んだ様な顔をしたり急に無表情になったり。率直に言って気持ち悪い。
「よぉ! お疲れぇ! 元気かぁ!?」
「高木、アンタどうしたのよ。見るからに空元気じゃない」
「何か問題が起きたのですか?」
「あー聞く!? 聞いちゃう!? 良いぜー! 教えちゃうぞ!」
高木以外の全員が【うわぁ……】と言う表情を浮かべる。多分俺も同じなんだろうな。
「前にも言ったが、今回の試験は国の方から派遣されてきたお偉いさんが主だってやってる訳よ」
「らしいな。それがどうかしたのか?」
「本来だったら俺やドラツも一緒にドローンの映像見る予定だったんだが、急に【変な擁護が入れば見る目が鈍る! 1人で見るぞ!】とか言い出してな」
「おう」
「1人で部屋篭って見てたんだが……待てど暮らせど不合格者が出ない。俺らも別室で確認してたんだが明らかに素人目でも落とす様な真似してる奴でもスルーだ」
「……おう」
「流石におかしいと思ってな。ノックしても返事無いからってんで鍵こじ開けて部屋に入ったんだわ。そしたら──泡吹いて倒れてんだわ」
「……は?」
「何があったんだと思って部屋につけてた監視カメラ見たらさぁ……」
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『ああああ! 肉片が! モンスターの体が! バラバラ! 血は無いけど! 無いけど!』
『ヒィィィ! 血ィ! 血ィ出てる! めっちゃ出てるぅ! グロい! グロ過ぎる! 痛い! 自分じゃ無いのに痛い!』
『……え? 死んだ? え? し、しししし──あふん』
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「ドローンの探索者達の映像見て叫び回った後、グロさに耐えられなくて気絶してた。グロ耐性がゼロどころかマイナスだった」
「」
「しかも録画時間的に最初のチーム見てた時に倒れててな。今もずっと起きないんだわ。要するに試験全然出来てないんだよな」
高木の半ば諦めが入った言葉に、その場の全員が声が出なかった。と言うか最早言葉が無かった。黙ってても進まないので何とか言葉を搾り出す。
「……じゃあ……どうすんだ……?」
「コンテニュー……どうすか!」
「するかぁぁぁぁぁ!!!」
その後、運営側……と言うより国側のミスと言うことで、筆記試験を合格した探索者は全員合格となった。
いつも閲覧ありがとうございます。1パチより4パチ派です。
OKが出ましたので宣伝させて頂きます。
12/20にオーバーラップ文庫様から、書籍版第1巻が発売します!
タイトル自体はそのままにサブタイトルが付き、【ダンジョン中毒から抜け出したい 〜宝箱中毒の最凶探索者は社会復帰したいのに、仲間が全力で邪魔してくる!〜】となります。
書影はまだですので、その時が来たらまた宣伝させて頂きます。
それに伴って書籍化作業で更新が遅くなって申し訳ありません。
最低でも週1更新だけは死守しますので、どうか見捨てないで下さい。
繰り返しになりますが、いつも読んでくださりありがとうございます! また更新したら読んでもらえると嬉しいです。