ダンジョン中毒から抜け出したい【書籍化&コミカライズ決定】 作:1パチより4パチ派
『今日は人族の間で人気の店! 【プラソワール】と言うカフェに来ていまーす! 見て下さいこの人だかり! 何が彼らをここまで駆り立てるのか……それはここの名物のパンケーキになります!】
「パンケーキ……」
『今回は撮影の為に事前に予約させて頂いたのをお見せします! こちら! どうですかー? すっごく美味しそうでしょう? と、言う訳でリポーターとして食レポさせて頂きます! ……んーぅ! ふわふわしゅわしゅわ! 幸せです!』
「……ふわふわ……しゅわしゅわ……」
「ルロ様、失礼します。昼食の用意が……ルロ様?」
「! うん、分かった。今行く」
ケルロスが部屋に入ってきたからテレビを消す。そのまま後ろを着いていってお父さんのところまで来た。
「どうぞ」
「ありがとう」
ケルロスに扉を開けてもらって入ると、お父さんが仕事の書類を読みながら待ってる。やっぱり忙しそう……。
「お、来たか。何してた?」
「勉強終わってテレビ見てた」
「テレビか! 今の時間帯、何か面白い物でもやってたか?」
「【デスナンデス】面白いよ」
「ああ、昼のバラエティか! 最近テレビ見ないからなぁ、たまには見るのも良いか。今度見てみよう」
忙しくても私と一緒にご飯食べてくれる。嬉しい。……少し、聞いてみようかな。
「お父さん」
「何だ?」
「ふわふわしゅわしゅわパンケーキって……知ってる?」
「……ケルロス」
「ハッ!」
お父さんがケルロスを呼んでヒソヒソ話し始めた。何かあったのかな。
「(おい、何だふわふわしゅわしゅわパンケーキって。知らんぞそんなの。知っとるか?)」
「(申し訳ありません。その様な物は存じ上げては……ですがパンケーキと言っている以上、あのパンケーキなのでしょう)」
「(いやいやいや、パンケーキってあれだろ? ホットケーキと何が違うのか正直よく分からんやつだろ? それは分かる。だがふわふわしゅわしゅわって何だ!? どう考えても相反する概念ではないのか!?)」
「(恐らく人族側の料理かと……最近、魔族の間でも人族の料理が流行っているようですので……物珍しいとかで)」
「(じゃああれか。テレビか何かでそれを見たのか……不味いぞ、何と答えれば良い)」
「(その、普通に分からないと答えるのはダメなのでしょうか?)」
「(お前正気か!? こんな事も知らないとかルロに思われたら嫌だろ! 魔王としても親としても知らないとは言いたくない!)」
「(で、では取り敢えず話を繋げて下さい。私がその間に調べて参ります!)」
「(よし! 頼んだぞ我が従者よ! お前だけが頼りだ!)」
待ってるとケルロスがお父さんから離れて部屋から出る。何か仕事かな、ケルロスもいつも忙しいし……。
「すまんなルロ。それで……えっと……パンケーキ! パンケーキな! そりゃあ知っとるぞ。儂魔王だし」
「ホント? ふわふわしゅわしゅわなんだけど……魔族領にあるかなぁ」
「あーーーまぁーーーそーーーだなーーー。人族側で生まれた料理と言うか菓子だからなぁ。難しいのではないか? うん」
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一方その頃…
「誰か! 誰か居るか!?」
「どうなされましたケルロス様!」
「我ら親衛隊! 如何なることでも対応しましょうぞ!」
「さぁ命令を! 王の為に!」
「そうか! この中に【ふわふわしゅわしゅわパンケーキ】なる物を知っている者は居るか!?」
「「「…………お役に立てず申し訳ありません!」」」
「クソッ! いや待て! ネットだ! インターネットで調べろ! 全員スマホを出せ! パンケーキの事をありったけ調べろぉ!」
「「「りょ、了解!」」」
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「そっか……食べれないのかな」
「何だ食べたいのか。ならそうだな……また加藤の奴に頼むか! そうすれば食べれるだろう!」
「! そ、それはダメ!」
「うん? 何故だ?」
「え、えっと……な、内緒!」
「そうか……」
「だから、その、教えて欲しいの。ふわふわしゅわしゅわパンケーキの作り方。た、食べたいから! 自分で!」
「じ、自分で作ると言うのか!?」
「うん! 料理したい! だから作り方教えて!」
「つ、つくりかた……え、えーっと、その……」
何でだろう。お父さんが沢山汗をかき始めた。暑いのかな……私は全然暑くないけど。
「……そうだった。お父さん料理しないから……変な事聞いてごめんなさい。知ってるって言ったから、作り方も知ってると思ったの……」
「ま、待て! そう急くな! し、知ってる。知ってるぞ!」
「ホント? じゃあ教えてくれる?」
「おう教える教える。だが今日はちと忙しい! 時間を作るからその時で良いか!?」
「うん! ……でも大丈夫? お父さん忙しいから……」
「儂を信じろ! 約束を違える様な事、魔王の名にかけて断じてせん!」
「……うん。じゃあ約束!」
ダメかなと思ったけど、良かった。やっぱりお父さんは凄い。何でも知ってる。
「ごちそうさま……じゃあお父さん、お仕事頑張って」
「ああ、頑張るさ。ハッハッハ!」
ケルロスが帰ってこないから1人で部屋に戻る。パンケーキ……早く作りたいな。
◇ ◇ ◇
ルロが出て行った後、儂は頭を抱える。ついやっちまった。どうしよう。
「王よ! 遅れて申し訳ありません! パンケーキの件ですが、どうやらベーコンパンケーキなるものがあるようです! 珍妙な犬らしき生物が作っている動画を見つけました! 恐らくこれでは……魔王様?」
「ケルロス……」
「はい」
「お前、ふわふわしゅわしゅわパンケーキ作れる?」
「何見栄張ってるんですかぁぁぁ!!!」
見透かされた。流石は長い付き合い。儂のことよー分かっとる。
「仕方ないだろう! だってあそこで作れないとか言えないだろ!」
「話繋げって言ったのにどんな流れでしょーもない見栄張ることになるんだよ!」
「威厳の為〜言ってる時点で見栄はビンビンに張ってただろ! 良いから教えろ! 覚えるから! サブクラスでパティシエ習得するから!」
「作り方なんて知る訳無いだろ! どんなものかって言うのを調べろって話だったでしょうが!」
「待て待て待て! 分かったこうしよう! ふわふわしゅわしゅわパンケーキを作れる者を影武者に立てよう! そしてそいつにルロに作り方を教えさせよう!」
「アンタの影武者なんてどうやって立てろって言うんだよ! 無理だろ! 強すぎんだから! 気配ですぐバレるわ!」
「じゃあどうしろと言うのだぁぁぁ!!!」
「知るかぁぁぁぁぁ!!!」
ケルロスと取っ組み合いになりながらも脳をフル回転させて策を考える。恥ずかしい話、生まれてこの方料理なんぞした事がない。つまり1から、いいやゼロから始める訳だっちゃ。一体どうしたら……加藤に頼るか? いや、ルロが加藤には知られたくないと言っていた。なら儂が急にパンケーキ云々言い始めたらダメだろう。……ならば!
「と、言う訳で儂にパンケーキの作り方を教えてくれ! 鶴岡よ!」
「まさか私の所に来るとは思いませんでしたよ、魔王様」
死ぬ気で捻出した隙間時間。日本にある鶴岡の教会に【転門】を使い飛ぶ。事前に電話はしておいたからか、鶴岡が出迎えてくれた。
「悪いな突然。だがお前さんくらいしか頼る相手が居なくてなぁ」
「加藤さんは無理と聞きましたので分かるのですが、他の方もですか?」
「セラフィナはそもそも加藤と同棲しとるだろ? じゃあそこから漏れるだろ。高木の奴は最近ダンジョン運営で忙しいと聞いておったからな、じゃあお前さんくらいしかおらんだろ。オピスは……まぁ、酷だろ。流石に」
「私も別に暇では無いのですが」
「だが断る事は無いだろ?」
「他者の弱みに付け込むのは悪漢のやる事ですよ」
「お前さんらの常套手段ではないか」
「それを言われると弱いですね」
勿論断ったからと言って何かする訳では無いのだが、一応【道具喰い】を見逃していると言う借りが常に発生している。加藤の奴が貸し借りに敏感そうな以上、その仲間達も多分同じだろうと期待しての依頼だったが上手くいったようだ。
「まぁ無駄に生きたジジイに一杯食わされたと思ってくれ」
「貴方が無駄に生きたと言うなら世の中の人族魔族の人生は無駄が過ぎますね。さて……パンケーキですか、それも普通の物では無いのですね?」
「ルロはふわふわしゅわしゅわと言っておったぞ」
「ふむ……と言う事は恐らくスフレパンケーキの事ですかね。軽い口当たりが特徴ですので」
「よー分からんが頼む! 早く覚えておかんとルロに教えられん!」
「ハッハッハ。随分と親バカなようで。ルロ様も喜ぶ事でしょう」
「いや鶴岡。お主も人の事言えんじゃろう」
「む」
突然透き通る様な声がしたと思ったら、鶴岡の側に銀髪の女が立っていた。気を抜いていたとは言え、儂にここまで気取られんとは……。
「お前さんは……会った事は、無いよなぁ」
「篠目さん。こちら魔王様です。挨拶を」
「おお! 確かクォーツの件で揉めたと聞いたぞ! わっちは篠目、加藤の仲間じゃ!」
見た限り相当強いな。純粋な強さだったら加藤より上だろう。……まぁ、少なくとも真っ当な強さでは無いみたいだが、儂が首を突っ込む事では無いか。
「それでそんなお偉いさんが何故此処におる?」
「かくかくしかじか」
「四角いムーブ。成程、パンケーキか。その娘とやらは何処でスフレパンケーキを知ったのじゃ?」
「恐らく……テレビだな。直前でテレビ番組の話をしていたからな」
「ふむ……ならあれか、【プラソワール】じゃな。テレビで紹介されるレベルのパンケーキの店と言えばそこしかあるまい。あそこのパンケーキは美味いぞ?」
「……!?」
「おい鶴岡、何じゃその顔。何に驚いとる」
「ダメですよ篠目さん。貴女は和服キャラなのですから洋菓子好きだとキャラがブレてしまいます」
「いや別に着物以外も着るが!? と言うか、わっちが着物着てるのキャラ付けだと思っとったんか!?」
「和風キャラなのに洋菓子食べると言う安易なギャップを狙うのは流石に露骨です。ありきたりなキャラ造形では昨今のエンタメには太刀打ち出来ませんよ」
「いや知らんし! エンタメ云々でわっちの好み決めるな! そもそもわっちは19! 19の女子がパンケーキ食べて何が悪い!」
「何ぃ!? 19歳か! 見た目加藤達と同じくらいに見えるぞ!」
「昔から大人びた顔をしていましたからね、篠目さんは。私達も出会った当初、14歳と言われて普通に嘘だと思いました」
「おい、わっちの事老け顔って言いたいんかお主ら。良いのか? 泣くぞ、悲しくて」
「泣くのが脅しになるのは相手に罪悪感がある時だけですよ」
「今すぐ罪悪感買ってこんかぁ! Amazonで注文しろ! 速達指定で!」
篠目とやらは怒り顔のまま口を尖らせる。見た目とはチグハグな、子供のような素振りを見せる辺り、精神年齢は幼いのかもしれん。
「全く! そもそも何度も誘っておったろ! なのにゲルダリア以外だーれもわっちと行ってくれんかったではないか!」
「そう言われましても直接言えば良いのにLINEグループで『暇な奴おらんか? チラッチラッ』と送って来てたので……。いいかなと思いまして……」
「くっ! 逆効果だったか! 無念!」
「お前さん達仲良いなぁ。何にせよ、ルロが言っていたパンケーキの店を知っとるんだな? 作り方は知っとるか?」
「流石に知らんのぉ。……なら今から食べに行って材料とか見てみるか! 鶴岡、早く外出準備せよ。魔王殿が自由な間にさっさと行くぞ!」
「貴女が行きたいだけでは?」
「教会の掃除は終わったから良いじゃろ!」
「貴女が血で汚したのを掃除しただけですよね」
「現地調査か……ふむ、確かに。作る物を知らんでマトモな物など作れる訳も無いか。よし! では案内してくれ、パンケーキ屋までな!」
ルロよ。すまぬ。儂はお前に嘘をついた。だからこそ、必ず作れるようになってお前に教えてみせるぞ!