ダンジョン中毒から抜け出したい【書籍化&コミカライズ決定】   作:1パチより4パチ派

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お心に触りますよ……

「「ギャハハハハハハハ!!!」」

 

「はぁ……」

 

 加藤さん達と別れて魔王の接待を担当する事になった私と支部長だったが、まさか初手でパチンコ屋に来る羽目になるなんて予想出来なかった。

 

「高木だったな! お前さんパチスロ詳しいなぁ! なんだ、現役パチプロか!」

 

「いやいや、昔親友と遊びまくっただけっすわ! 最近その親友は付き合い悪過ぎて全くやらなくなってましたけど、新台のチェックは欠かさずやってますんで!」

 

「お! 良いねぇ! 気合いの入り方が違うわ! 流石はこの神の遊び道具作っただけあるわ人間!」

 

「魔王様もダンジョンなんてそれこそすんばらしい物をお作りになられてじゃあ無いですかぁ! あれなきゃ今の世界無いっすよ!」

 

「いやさぁ、アイテム不足何とかしてぇなぁと思ってダンジョン作ったんだけどあんまりにも作業だったから『これやる奴おるんか?』って思ってたんだよ。でもそこでこのパチスロよ! スロの当たり演出みたいなの入れればウケるんじゃね!? おもろいんじゃね!? そう思ってやったら大当たりも大当たり! 人族も魔族もダンジョン潜りまくりよ! 運営やってんならボロ儲けだろ?」

 

「激甘汁吸わせてもらってますよ! ダンジョンも自分の親友がどハマりしてもう中毒症状起こしまして! 宝箱見たら発狂して暴れ回るんすよ! その姿がもうおもろいのなんの! 最近なんか抜け出そうとしてるけど仲間達全員で無理やり連れ戻そうとしてますわ!」

 

「マジで!? 中毒になるほど!? うわそいつめっちゃ会いたいな。んで宝箱に狂ってるの見た過ぎる」

 

「しかも開けた後の中身に対して興味ないとか言う筋金入りなんすよ! ほんと演出と開ける時のワクワクが欲しいだけで!」

 

「ギャンカスの鑑ZOY! 儂、そいつと親友なれるかもしれんわ!」

 

「今度機会があれば是非お見せしますよ! バカみたいな強さでバカみたいに暴れ回るの最高っすよ!」

 

「お、言ったな!? 儂本気にするぞ! 今度何とか予定空けとくわ!」

 

「「ギャハハハハハハハ!」」

 

「……頭痛いですね」

 

 魔王がここまでパチカスだとは思わなかった。

視察に割り込んだ理由がまさか新台入れ替えの為とか正直耳を疑った。

それで良いのか魔族のトップ。

無駄に支部長と気が合って共鳴してるのも非常に腹が立つ。

 

「あちらは大丈夫でしょうか……」

 

 姫様の方は大人しい感じだったので、少なくとも此方よりはマトモな接待が出来てるだろう。

護衛の人選に問題が無いと言い切れないが……流石にあの人達でも、今回ばかりは変な事しない筈だ。

 

「よし! 次はダンバイン打つぞ! やっぱ2だろダンバインは!」

 

「ほな自分はシンフォギアで! どっちも別の店なんで移動しますか!」

 

「よーし、パパフリーズ引くまで終わんないぞー!」

 

「いったれ魔王様!」

 

「「ギャハハハハハハハ!」」

 

「これ終わったら仕事やめよ」

 

 心に誓って今を耐え忍ぶ。

耳を塞ぎたくなる様な下品な笑い声を聞きながら、私はそう思った。

 

◇ ◇ ◇

 

『お、おさわりマン!? 何言ってんだお前!?』

 

『なんかとんでもねぇ奴来たんだけど! どうすんだこれ!』

 

『キャラ!!!』

 

『キーーー!』

 

 安心して欲しい、自分でも何言ってんだか分かってない。

だが急遽代理の人なんか探して見つかる訳も無い以上、自分がやるしかない。

あの時コーヒーを買わなければそもそもこんな事になって無いので、2度と缶コーヒーを自販機で買わないと誓いながらヤケクソになる。

 

『今すぐそこの女性を離してもらおう』

 

『………………フン! 誰が離すものか! お前達、やってしまえ!』

 

『キ!? ……キーーー!』

 

 何とかプロ根性で継続する事にしたようだ。

マジすんません。悪いのあそこにモップやらスーパーボールやら置きやがった奴なんで許して下さい。

怪人の手下と思わしき魔族の人達が迫ってきたので、適当に捌いて地面に転がす。

 

『キー!?』

 

「え、嘘。動きのキレやば!?」

 

「はー、中の人すげーなあれ」

 

「名前訳分からない癖に動きだけプロ超えてないか?」

 

 まさか探索者やってた経験がこんな所で活きるとは思わなかった。活きなくて良いのに。

幸いステージはかなり広い為、大袈裟に動いても問題ない。

 

「(台本なんて読んでる暇無かった! 変に台詞を言いまくるとボロが出る! アクションを出来るだけ派手にやって誤魔化すしかねぇ!)」

 

 頼む、こっちの意図に気付いてくれ。

何だったら魔法とかバンバン撃ってきて良いから! つーか撃ってくれ! このままだと動き単調になる!

 

『(全員聞いて! なんかコイツやたら動き良いから加減しながら魔法やら能力使って!)』

 

『(えぇ!? い、良いんすか!?)』

 

『(良いわよ! 本来の人来てないの事実だし、こうなったらコイツに役割全うして貰うしかないわ! 死にはしないわよ! 多分!)』

 

『(う、うす! 分かりました!)』

 

「(よっしゃぁぁぁ!)」

 

 内線と思われる通話を盗聴して歓喜する。

聴覚強化の魔法使えて本当によかった。

まぁ1つ問題があるとするなら──。

 

「加藤マジで何やってんだ?」

 

「あぁ、あれですよセラフィナさん。極稀に発生する超テンパった時の加藤さんですよあれ」

 

「あー、あれか。戦闘中になる事はねぇけどよく分からねぇ理由で訳分からん事するやつな。久しぶりだな」

 

「前は何でしたっけ。確か当時の彼女さんに黙って、セラフィナさんのキャバクラに通い詰めてたのがほんの拍子にバレた時ではなかったですか?」

 

「あーあったな。懐かしい」

 

「シンプルクズなんですけど。そりゃあんな訳分かんない事しますよね」

 

「加奈子さんの加藤さんの評価が紐無しバンジーしてますね」

 

「下が水なら多少は浮くから大丈夫だろ」

 

 バチクソセラフィナ達の声も聞こえる所だろうか。

つーか浮くってそれ水死体だろ。

散々な言われ様だし、終わった後加奈子さんにクソ怒られそうだが最早手遅れ。

やっちまったもんは仕方ない、最後までやり切る以外の選択肢は無いのだ。

 

『キーーー!(火球(ファイアーボール)!)』

 

『キキーー!(氷槍(ブリザードランス)!)』

 

 所謂雑魚敵の役をやってる人達から攻撃魔法が飛んでくる。

軌道的に避けるのに苦はないが、あくまでこれはショー。

派手にアクションしないといけないので、わざと寄っていく。

 

『ハァァ!』

 

 向かってくる魔法を蹴り飛ばして霧散させる。

魔法がかき消されたのを見た観客から、まぁまぁの感嘆の声が出る。

良い感じに誤魔化せてる……と良いなぁ。

 

『(は!? 何アイツ!? 魔法蹴ったぞ!)』

 

『(絶対一般人じゃないだろ! 軍人言われてもギリ納得出来ないぞ!)』

 

『(もう探索者だろ! しかもかなり強い奴! 最悪だ! 碌な奴じゃねぇの確定だ!)』

 

 嫌われすぎだろ探索者!!!

どんだけ好き勝手やって……たなぁ……。

やりたい放題……してたなぁ……。

じゃあ……仕方ないか……。

 

「なんか急に動き鈍ったな」

 

「意識少し離れてますね」

 

「あ、雷に当たったぞ」

 

「やるならもっとちゃんとやって欲しいですよね」

 

「おさわりマン……がんばれ……」

 

 聞こえてんだよ! 野次飛ばしてんじゃねぇぞ!

あ、姫様応援ありがとう。

ダメだ、ちゃんと集中してやらないと。

幸い役者の人達が良い感じに俺を囲んでくれてる。

これを切り抜ければそこそこ見れる絵に──。

 

 

 

「どうか頑張って下さい! 応援しております!」

 

 

 

 聞き覚えがある声がする。

とても透明感のある、聞く者の心を安らげる効果がありそうな綺麗な声だ。

そして、俺がめちゃくちゃ聞きたくない声でもある。

 

 

「挫けてはなりません! 勇者様は仰いました……全ての人々は勇者になれると! さぁ! 今こそ立ち上がって勇者に!」

 

「(なぁぁんで居るんですかぁぁぁぁぉ!?)」

 

 最前列で応援してくるリファルさんが居た。

意味が分からない、何でこんなヒーローショーに──あれ?

 

「(そう言えば高木が──)」

 

【本当は【勇者の集い】に声掛けたかったんだけど、予定があるって言われて断られたんだ!】

 

「(いや予定ってこれぇぇぇぇぇ!?)」

 

 魔王の護衛蹴ってヒーローショー来てんの!?

いや、高木が依頼内容伝えてなかった説はあるけど……だとしても最前列来るほど好きなの!?

おかしいだろ! アンタ何歳だ! 20だろ確か!

見るにしても最前列は子供に譲れや!

 

「先ほどから黙々と攻撃を捌いてはいますが……捌くだけでは勝てません。どうなさるのです?」

 

 あの、話しかけないで貰えます?

距離近いからってやりたい放題過ぎるだろ。

後方腕組みファンみたいなのやめてね。

いや、聴覚強化してるからどこ居ても聞こうと思えば聞こえるけど!

 

「(なぁ、アイツさっきから何も言わないぞ。流石に無言で乗り切るのは無理だろ!)」

 

「(登場時にそれっぽい事言ってたんだから、もっと言えや!)」

 

 役者の人から喋れやと言われてしまった。

確かに無言を貫くのは無理だ、何かしら喋らないと話が進まない。

 

『……貴様! 私達を馬鹿にしているのかい!? さっきからマトモに攻撃して来ないじゃないか!』

 

 怪人役の女性が話を振ってきてくれた。

マジ感謝。乗るしかない、このビッグウェーブに!

 

『何か勘違いをしているようだが……私はあくまでその女性を助けたいだけだ。君達を傷付けるつもりは無い』

 

『は、はぁ!? 何を言ってるんだ!?』

 

『もう一度名乗ろう。私の名はおさわりマン、助けを求める手に触れて掴む者……私の手は、決して悪さをする者を叩きのめす為にあるのでは無い!』

 

「いや、お前が掴んで触れてたのはアタシの尻だろ」

 

『何を馬鹿な事を……私達を倒さない限り、この女は助けれないよ!』

 

『1つ聞きたい事がある、何故このような悪さをするのかだ』

 

『は? ……ふん! そんなのやりたいからやる! それだけさ! 悪さがしたいから私達は悪事をしてるのさ! なぁお前達!』

 

『キーーー!』

 

『悪事をして楽しむ心……君達の心はどうやらコキュートスの様に氷で覆われているようだな。ならば! その氷、私の手で溶かして見せよう!』

 

「なんかそれっぽい事言ってますけど」

 

「加藤さんはそれっぽい事を言う天才ですからね。数年前はよく言ってましたよ」

 

 うるせぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!

黙って見てろやクソ観客共!!!

 

『自分のやりたい事をやる! 大いに結構! ならば私も! やりたい事をさせてもらう! 君達を傷付けずに、戦いを終える。それが私のやりたい事だ!!!』

 

「……やりたい、こと……」

 

 ここでなんか良い感じに必殺技的なのを出すしか無い!

その場その場で合わせてたせいで傷付くような見た目の技ではダメだ!

なんか、その、それっぽい……!

 

『【ハンド・オブ・ザ・サン!】』

 

「あの人急に太陽の手使い始めたんですけど」

 

「パンでも作るんですかね、こんな所で」

 

 移動速度を上げて敵役の人達に右手で触れていく。

視覚的に見えやすいように大袈裟に動きながら全員に触れて回る。

全員に触れ終わった後、無駄に構えをして──。

 

『(今だ! 閃光(フラッシュ)!)』

 

 その時、不思議な事が起こった的な雰囲気を出す為に目潰し用の魔法を威力を下げて発動する。

眩しい光が辺りを照らした後、徐々に光が和らいでいく。

 

『……ば、馬鹿な!? あんなに悪事をしたかったのに……全然したくない!? 寧ろ困ってる人達を助けたくなっただと!?』

 

『キー……』

 

 本当にありがとうございます、役者の方々。

俺のクソみたいな台詞に合わせてそれっぽく戦意喪失の演技をしている。

今年の助演男優賞は彼等のものだ、女性混じってるけど。

 

『お、覚えときな!』

 

『キーーー!』

 

 捨て台詞も完璧にこなしてステージから消えていった。

解放された司会の人は、俺が何なのか訳分からないと言った顔をしながらもプロ根性で無理やり締める。

 

『あ、ありがとうおさわりマン! みんなー! 怪人達を改心させちゃったおさわりマンに大きな拍手をお願いします!』

 

 アクションが派手だったおかげか、下手な台詞は良い感じに流してくれたようだ。

観客達から拍手が送られてくる。

 

「…………まさか、貴方は」

 

 リファルさんが何か言ってるが無視無視!

気にしたら負けだこんなん! さっさと逃げる!

 

『……あ、あの、貴方ちょっと裏に──って居ない!?』

 

 爆速で走ってステージを離れる。

人が居ない場所まで逃げた後、衣装を抜いでそこら辺にあったゴミ箱に全て突っ込んだ。

よし、これで証拠隠滅完了。

おさわりマンはこの世を去ったのだ、南無三。

引き返して4人が居る場所まで向かう。

 

「……ただいま」

 

「! 加藤、どこ行ってたの?」

 

「え、あートイレ……っすねー……」

 

「今おさわりマンって言うヒーローが居たよ、カッコよかった!」

 

「あ、そっすか。そりゃよかったなぁ」

 

「またいつかやるかな? 今度は一緒に見ようね」

 

「あーそうですねぇ、見ましょうねぇへへへ」

 

 白目を剥きながらルロ様の相手をしていると背後から背中を軽く叩かれる。

顔を引き攣らせながら振り返ると、滅多にしない人を小馬鹿にした笑顔をしたセラフィナと、スマホをこちらに見せつけてくる鶴岡。

そしてバカを見る目でコチラを見てくる加奈子さんが居た。

 

「よぉおさわりマン、戦って気が昂っただろ? アタシの尻でも触るか?」

 

「後で全員居るLINEグループに送っておきますね。加藤さんの勇姿、皆さん見たいでしょうし」

 

「加藤さん……何でこんな……バカなんですか……?」

 

「違う! 俺は悪くねぇ! 俺は悪くねぇ!!!」

 

 親善大使ばりに否定をするが、全くの無意味。

誰も俺の無罪を信じてくれなかった。

だが当初の目的だったルロ様の御機嫌取りには成功したようだ。

まぁ俺の尊厳との等価交換だったが。

 

◇ ◇ ◇

 

「……やはり、そう言う事でしたか」

 

 突然走り出したので、後を追ったのですが……。

 

「おさわりマンの正体は、勇者様。貴方だったのですね」

 

 ゴミ箱に入れられたおさわりマンの衣装を取り出す。

彼が衣装をここに入れた理由はただ1つ。

万が一にでも人々に正体を知られてはいけないからだ。

 

「貴方はアイテムを市場に流すだけでなく、人々の心まで救おうとしているのですね……」

 

 何と言う気高い心だろうか。

今のままでも十分過ぎるほど人々を救っていると言うのに。

ならば、私にできる事は1つ。

 

「このおさわりマンスーツ……私が厳重に保存しておきます。再び貴方が、人々の心を救うその時まで!」

 

 まずはこの穴が空いてしまった部分を直さなければ!

私はスーツを抱きしめながら帰路に着いた。

勇者様の決意の証を守る事を誓いながら。




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