ダンジョン中毒から抜け出したい【書籍化&コミカライズ決定】 作:1パチより4パチ派
気を付けてるつもりなのですが、抜けてましたね……。
出来る限り早めに修正いたしますので、お気軽にご報告ください。
「なぁ俺悪くねぇんだって全部あのモップとスーパーボールが悪いんだってマジだって他責とかじゃなくてさぁピタゴラスがさぁ!」
「うるせぇな、分かったって言ってんだろ? ほら、アタシだったら好きに触れって」
「触りたくて言い訳してる訳じゃねーよ!」
「加藤さん! こんな時こそ免罪符ですよ! どうですか? 特別に1枚単位でお譲りしますよ?」
「お前の免罪符で何が許されるって言うんだ! 精々資源ゴミに出す事しか許されてねぇよ!」
「加藤さん、うるさいです」
「……はい」
「1番効いてるな」
「今までの差ですかね」
「? 加藤、元気出して」
「あ、すんません……出します元気……」
凄まじい疲労感を引き摺りながらイオンを去る俺達。
他にもイベント自体はあったのだが、ルロ様が拒否ったのだ。
「ルロ様、何かやりたい事とかありますか?」
「ある」
「そうですかー……ってあるんです!?」
「うん、出来た」
幾分か、会った時より明るくなった表情を浮かべながら──。
「私、ダンジョン行きたい」
行きたい場所を答えた。
◇ ◇ ◇
「……あ、もしもし。高木、今良いか?」
『おーどうした加藤! 今俺めっちゃ大変でさ! いやー接待ってあんま経験無いから大変だわ! マジで!』
『これがわたしたちの、絶唱だあああぁぁっ!!!』
「お前絶対シンフォギア打ってんだろ! 何サボってんだ! 馬鹿か!?」
『高木ぃ! 儂も来た! 儂も来たぞ!』
『マジすか! 流石は魔王様っすわー! マジパねーわ!』
「いや魔王もパチスロしてんのかよぉぉぉ!」
『魔王様すげーぞ、さっきからバンバン当たってる。これは魔族の王名乗れますわ』
「魔族達だってパチプロの王なんざ願い下げだろ!」
『てかどうした? なんか用なんだろ?』
「あぁ……ルロ様がダンジョン入ってみたいって言ってな。流石に親の許可を取らないと──」
『魔王様、ルロ様がダンジョン行きたいらしいっすよ。『いいよー』……良いってよ、いってら』
「いや軽すぎだろ! 瞬足じゃねーんだぞ! ……うわ切れたし!」
娘がダンジョン行くのに爆速で許可降りたんだが。
せめて少しは悩めよ。即断即決て。
「どうでした?」
「許可は出たけど……大丈夫か?」
「ん、私も戦える。ちゃんとケルロスと練習してるよ」
「なら初心者用に──「ううん、もっと難しいの。良いアイテム手に入れたい」──いやそれはちょっとまずいんじゃないですか……?」
加奈子さんが俺を見てくる。
実際問題、ルロ様がどんだけ強いかは知らないけど魔力量を見た限り弱い事は無いだろう。
俺達3人も居るし、多分平気だ。
「まぁ本人がそう言うなら……護衛の俺らが頑張れば良いだろ」
「この辺で難しいって言ったら何処だ?」
「丁度前に高木と潜ったところなら……良いかなぁ」
あそこならまぁまぁ良いアイテムが出る。
ご所望の良いアイテムも手に入るかもしれない。
しれないが……。
「あの、ルロ様。どうして突然ダンジョンでアイテム欲しいなんて……」
そう、そこだ。先程までずっと大人しくしていたのに突然ダンジョンに行きたい。
不自然ではある、勿論子供だから気が変わりやすいと言うのはあるかもだが……。
「私、やりたい事出来たの」
「そのやりたい事とは?」
鶴岡が聞き返すと、俯き気味だった顔を上げてこちらに視線を向けてくる。
その目は少し、泣きそうな顔に見えた。
「お父さんにプレゼント渡すの。私、お父さんに褒められた事無くて……でもさっき、おさわりマンが『やりたい事やる』って言ってた」
「「「…………」」」
「やめろ、見るな、頼むから」
3人同時に俺に視線送ってくるんじゃねぇよ。
俺が障子だったら蓮コラみたいになってんぞ。
「私……お父さんに褒められたい……だから良いアイテムあげたら褒めて、撫でてくれるかなって……」
「ルロ様……」
「おい加藤、これ……」
「ふむ……あまりよろしくありませんね」
他人の家の事情に首を突っ込んでるような気もするが、好ましくは無い。
8歳の子供が1度も褒められた事が無いなんてかなりのレアケースだろう。
「(てか、ちゃんと勉強も特訓もしてるんなら褒めろや……)」
まさか厳しくすればその分伸びやすいとか考えてるのだろうか。
王族の考えがあるのかもしれないが、褒めるくらいならタダなんだから褒めりゃ良いのに。
「ケルロスはよく褒めてくれるけど……お父さんは『そうか』って……」
あかん、なんか聞いてるだけで痛々しい。
魔王だから褒められるまでのハードルが高いのかもしれない。
でもまぁ、高ランクのアイテムを娘に持ってこられたら流石に褒めるだろ。
パチカスだとしても、流石に。
「……ルロ様は宝箱って開けた事あります?」
「? 無い、ダンジョン入った事ないから」
「宝箱って……開ける時めっっっっっちゃワクワクしてドキドキするんすよ。んで開いてもし当たりのアイテムだとビカビカ光って音鳴って演出やばくて、演出凄くて音出てピカピカドキドキワクワクさん──」
「あのいきなりトリップ入るの辞めてもらっていいですか? 中毒治す気あります?」
「ち、違う! これは宝箱の良さを知って欲しくて!」
「同じような事繰り返してましたけど、放置してたら一生シャトルランしてましたよ多分」
いかん、よく分からんがタガが外れやすくなっているようだ。
湧き出てくる欲望を振り切って正気を取り戻す。
「ま、まぁその何だ。宝箱は凄いって事なんすよ」
「うん」
「つまりその宝箱……ダンジョンを作った魔王様も凄い訳ですよ」
「うん、知ってる。お父さん凄い」
「そんでその娘のルロ様も当然凄いんすよ」
「? ……そうなの?」
「そう、なのに褒められない。それは何故か、答えは簡単! 評価しないパチカス魔王が1番悪い! 世間が悪い!」
「子供に他責思考植え付けないで下さいよ!」
「そして俺がダンジョン中毒治らないのも高木が悪い!!!」
「それに関しては加藤さんが単にラリってるだけでしょ!」
「アタシら的には治らなくても良いんだけどな」
「ありのままで居て欲しいですよね」
「と言う訳であまり気にしない方良いっすよ、適当なレアアイテム見つけて渡せば『んほぉ〜このアイテムたまんねぇ〜』とか言って褒めてくれますよ」
「そうだよね……褒めて、くれるよね?」
「褒める褒める。俺だったらムツゴロウがライオン撫でる並に撫でて褒めるね」
「それ指が大自然に還っちゃってますけど本当に大丈夫ですか?」
「今すぐ輪廻すれば復活するから……」
「コンテニューしか選択肢無いだけじゃないですか」
俺の励ましが効果あったのか、明るい表情になったルロ様は俺の手を引っ張ってくる。
「……うん。ダンジョン行くの手伝って欲しい。宝箱、開けてみたいし……」
「……………………………よし、行きますか」
「長い逡巡だったな」
「あの、加藤さん。今回ばかりは何とか耐えて下さいね?」
「大丈夫だ、問題ない。俺だっていい大人なんです。欲望くらい抑えてやりますよ」
「ハハハ、その程度で耐えられる狂気だったらここまで苦労していないと思いますよ」
「黙れ詐欺神父。偶像と共に幻想郷送りにすんぞ」
◇ ◇ ◇
今回潜るダンジョンは、この辺りでもかなり大規模なダンジョンだ。
加藤さんと高木さんが、エリクサーを取ってきてくれた場所。
エリクサーのような高レアアイテムが出ると言う事は、当然難易度は高い。
「なのに何で私まで潜るんですか!?」
「マトモ枠が……」
「いやもうそれ良いですってば! こんな高レベルのダンジョン、私なんか居たところで爆速死亡で受付Uターンですよ! 無理無理!」
「別に何かあっても死ぬだけだろ?」
「探索者全員が皆さんみたいに死に慣れてる訳じゃ無いでしょ!」
「大丈夫ですよ加奈子さん。確かに私も最初死んだ時は生き返ってもやられた場所の幻覚痛が酷かったんですがすぐ気にならなくなりました。どうせそのうちまた死にますからね」
「もうお家帰る!」
逃げ出そうとしたけどセラフィナさんに腕を掴まれてしまった。
おかしい、全力で抜け出そうとしてもピクリともしない。
「加奈子、ダンジョン嫌?」
「嫌なんじゃなくて、目の前の死神に会釈するのが嫌なだけでして……」
「つまり死にたく無いって事だろそれ」
「普通ですよね!? ねぇ!? ねぇぇぇ!?」
「ちょ! 締まってる締まってる! ギブギブ!」
「よく手届きますね」
「気合いです!!!」
片腕で加藤さんの首元を引っ張って自分が正しい事を喧伝する。
負けちゃダメだ、ここで引いたら全部流される……!
「加奈子、一緒に行こ?」
「い、いやその私弱いので……」
「私加奈子の事守るよ? ほら」
ルロ様がセラフィナさんが掴んでいた方の腕を握ってくる。
セラフィナさんの手が離れて自由になったのに、私は結局動けなかった。
「ね?」
「……行きましょうか」
そのまま手を引かれながら、私には場違いにも程があるダンジョンに潜るハメになった。
高レベルのダンジョンは自動で生成されるトラップが多く張り巡らされている。
踏めば即死の物もあるって聞いた事があるんだけど……。
「加奈子さん、前出ないで下さいねー」
加藤さんが剣を振り抜く。
凄まじい勢いで振られた剣は、ソニックブームのような衝撃を放って辺り周辺にあったトラップを纏めてぶっ飛ばしていく。
「……跡形も無いんですけど」
「良かった、爆破系は無かった。今日当たりじゃん」
「爆破罠が大量にある時って連鎖爆発起こすからマジだりぃんだよな」
「いちいち個別に解除なんてやってられませんから仕方ないですけどね」
「変に残すと清掃の人大変だろうし消し飛ばすのが1番だなー」
「ゴリ押し過ぎません? やっぱり加藤さんゴリラ・転生・ゴリラですか?」
「いやそれただのゴリラの輪廻転生では?」
幸い加藤さんは清掃の仕事中は常に冷静だ。
宝箱が出るまでは安心して良いはず。
……まぁ今回の目的が宝箱な時点で、砂上の楼閣な訳だけど。
「……あ、モンスター」
「ブルァァァァァァァ!!!」
「ぎゃぁぁぁぁぁぁ!!!」
「落ち着けよ、叫ぶなら死んでからにしろって」
「死後強まる念でも使えって言うんですか!?」
「生き返ってからって意味だよ」
私達の前には巨大な牛のようなモンスター。
一応私も、初心者用ダンジョンで戦った事はあるけれどそこのモンスター達とは文字通り格が違う。
「うわっ、前からキングブルが!!」
「
「要らん、やってくる」
「何で1回驚いたんですか!?」
「交通事故の啓蒙として……」
加藤さんが1人で前に出る。
猛スピードでこちらに突進してくるキングブルとか言うモンスターは──。
「ピギッ」
たった一言。悲鳴にもならないような断末魔をあげて、そのまま4分割になった。
ズズンと音を立てて床に落ちた死体はぴくりとも動かない。
「(や、やっぱり出鱈目な強さだなぁ……)」
普段あんなにふざけてるのに戦いになるとこれだ。
これで発作さえ無ければ良かったのに。
「……? 加藤さん、何してるんですか?」
「なぁドロップした!? してない!? どっち!? 倒す瞬間に目瞑ったからまだ正気だけどもし落ちたなら早く寄せろ!」
「落ちてないぞ、安心しろ」
「ふぅ……そうか。良かった、いや良くないけど良かった……」
「必死過ぎません? いっそ楽になりましょうよ」
「俺は足掻く事をやめない、それが人間の輝きだからな」
「それっぽい事言ってますけど実際にはギャンブル狂いがお金無くて悶えてるのと変わらないですよね?」
「正論って人を傷つける事しか出来ないクソみたいな言葉だよね。─だがしかし!」
そう言った加藤さんは目を開けて突然ドヤ顔をしてくる。私に。
「今ので分かった……俺は確実に成長、いや治療に向かっている!」
「と言うと?」
「加奈子さん、実は俺少し前から病院で薬を貰ってるんです。その薬が新薬で効き目が良くてですね。まぁちょっとした行き違いの結果、前に狂いまくってしまったんですけど……」
「いやあれに関しては、この前アタシが家の掃除してる時にあの薬の説明書出てきたぞ。埃被ってたって事は完全に見ないでほっぽいてたんだろ」
「行き違い! 行き違いなんすよ! あれは! そんで! その薬は俺自身に欲求への耐性を付ける物なんです! 先程俺は戦ってる最中、全く動じなかった! いやちょっとドロップが怖くて目を閉じはしましたが! 以前なら戦ってるだけでも発作に近い暴走をしてました! これは間違いなく良くなってる証拠!」
「えぇ……嘘くさー……」
「そんなに疑うのならもし俺が宝箱を見つけて狂った時は木の下に埋めてもらって構いませんよ! ルロ様が見ているという緊張感もあって、今日の俺に狂気は無い!」
「今日と狂かけてます?」
「今だけは鶴岡のクソクソおもんなゲロゲロジョークを許そう。運が良かったな」
「語彙力リーマンショック起きてますけど大丈夫ですか?」
「お前以外と話す時だけ為替介入するから心配すんな」
「??? 何の話してるの?」
「姫さん聞かなくていいぞ、無意味な会話だからな──来るな」
セラフィナさんが言う通り、今度は蝙蝠のようなモンスターが群れを成して向かってくる。
多すぎて気持ち悪いと言う感想しか出てこないが、それは私だけのようだ。
「げぇ! 最悪だ、アシッドバッドじゃん……。アイツら死ぬと毒ばら撒く
「進む事を考えると消し飛ばした方良さそうですね、バフ入ります?」
「ちと数多いし頼むわ。セラフィナ、手伝え」
「あいよ」
「待って」
すると突然、加藤さん達が迎え撃とうとする前にルロ様が1番先頭に出てくる。
「危ないっすよ! 下がって! アイツらの毒死ぬほど臭いからかかったらゲボりますよ!」
「消し飛ばせばいいんだよね?」
「はい、なので私達が──「【
「おい、消えたぞ蝙蝠」
「え?」
先程まで大量に居た蝙蝠たちが消え失せている。
よく見ると微かな煙が蝙蝠達が居た場所から立ち昇っている。
「出来た、良かった」
「ル、ルロ様……今のって……」
「魔王の一族だけ使える魔法……練習以外で使ったの初めてだけど、成功したよ」
「……効果って何すか?」
「名前のまま。この世界から存在を消す魔法。でも魔力で出来てる存在にしか効果が出ない。人や魔族に撃っても気絶で終わるよ」
「気絶ってか昏倒だろそれ。やべぇ魔法だな」
ほ、本当に強かった……と言うか冷静に考えたらダンジョンなんて魔王様が作った物。
つまり管理者側だ、自分でどうこう出来ないような物を作ったりしない筈。
本人では無いとは言え、同じ血を引いていればこれくらい出来るのは当然なのかもしれない。
「す、凄いですよルロ様!」
「ほ、本当? 凄い?」
「はい! 沢山練習したんですか?」
「うん……上手くならないとって」
ただの人間の私からしたら、ルロ様や加藤さんみたいな一瞬でモンスター倒せるような人達は本当に凄いと思う。
初めてダンジョンに入った時、私も一応戦ったが初心者用ダンジョンでヒーヒー言っていた。
勿論今までの積み重ねの結果ではあるだろうけど、それ程まで研鑽出来るのは才能だと思う。
「ふふ……褒められた」
目を細めて喜ぶ姿にほっこりしていると不意に音がした。
ゴトン
「あ」
「! 宝箱! ドロップした! 開けに行こ──」
「うっひょぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
「埋葬準備ィィィィィィィィィ!」
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
宝箱に飛びついた加藤さんに矢を放ったら命中した。頭に。
何故か空中に浮いていた加藤さんはそのまま地面に落ちた。
「我慢しろって言ったじゃないですかぁ!」
「か、体が勝手に動いて……」
「嘘だ! うっひょぉぉぉって言ってましたよ!? しかも台詞の行間すら開けてないし!」
「行間の間すら我慢出来なくて……」
「普通に欲望のまま動いてんじゃないですかぁぁぁ!」
「おー、よく当てたな。大したもんだ」
「弓の腕ありますね、探索者向いてますよ」
「嬉しくないんですよ!!!」
「加藤、大丈夫? 矢刺さってる」
「頭に矢刺さるくらいで死なないのでそれは大丈夫っす。うす」
「本当に人間なんですか?」
「一応は……あれ?」
矢が刺さったままこちらに戻ってくる加藤さんは途中で立ち止まる。
「……俺今正気じゃん。宝箱あるのに」
「……本当だな、何でだ?」
「前でしたら足もがれても宝箱に向かってましたよね」
「んー? ……あ! 分かった!」
「え?」
加藤さんがいきなり私の近くまで来て興奮した様子で話し始める。
「コレ! コレですよ! この矢!」
「え!? 矢!?」
「この頭にブッ刺さってる矢の痛みがあると正気で居られるんです!」
「は!?」
「今までにない痛みなんすよ! 激痛でも無く弱い痛みでもない! 今までにない痛みが新鮮で落ち着いてられるんです!」
「いや落ち着いてませんけど!?」
「凄い! これは大発見だ! とうとう俺は克服したんだ! 加奈子さんが俺の頭に矢を刺してくれれば宝箱に夢中にならなくて済む!!! やったぁぁぁぁぁ!!! これからダンジョン潜る際はお願いします!!!」
「これ別の方向で発狂しただけだぁぁぁ!!!」
変な所に刺さってしまったのだろう。
目がおかしくなってる加藤さんを元の状態に戻すのに30分もかかってしまった。
2度とツッコミの為とは言え矢を射るのはやめようと、心に誓った。