ダンジョン中毒から抜け出したい【書籍化&コミカライズ決定】 作:1パチより4パチ派
「すまなかった。今回の件は全て儂が悪い。迷惑をかけた」
「……まぁそっちの言い分のがマトモだしな。こっちが本来ダメなのは分かってる。結局なし崩し的に要求通しただけだしな」
「魔王様、クォーツの件ですが……」
「うむ。ひとまずその【道具喰い】の子供の事は禁句なのは変わらない。それと吸収させるアイテムは強い力を持った物……ランクS以上は禁止。この条件は必ず守ってくれ。ここは譲れん」
「最低条件だしな。鶴岡、後で俺のコネである程度優先してアイテム回すから当面はそれとダンジョン探索で賄う形で頼むわ」
「分かりました。寛大な処置、ありがとうございます」
あれから本来の予定だった視察が終わって、魔王とルロが帰る時間になった。
たった2日だったのに、とんでもなく濃い時間だった気がする。
「ちゃんと娘の事、見てやれよ」
「ああ……そうしよう」
「ルロ様聞きました? もし魔王さんが酷い事したらすぐ連絡下さいね?」
「うん……お父さんがまたクソ親父になったら連絡する」
「あれ? 儂知らないうちに罵倒集の勉強とかさせたっけ?」
「反抗期だよ親父殿ぉ! 俺が教えました」
「ハゲード貴様ぁ!!!」
「混ぜるな」
アホ2人を置いてルロに別れの挨拶をする。
「じゃあなルロ、元気でな」
「……敬語じゃない」
「……すいません調子乗りました。お許しくださいルロ様」
「……ふふ、冗談。加藤達なら良いよ。助けてくれたから」
笑顔でイタズラっぽく笑うルロ。
勢いで敬語外してしまったが、許してくれたようだ。
元々敬語は苦手なのだが、相手が子供相手だとどうしても違和感がある。
俺の教養が足りないのだろう。まぁ大学もほぼFランだったしな……。
「また……来てもいい?」
「ああ、いつでもな」
「待ってますからね!」
「うん。ありがとう」
交わす言葉は少ない。それでも充分だった。
不安げな顔をし続けていた子供は、もう居ないのだから。
「む。すまんケルロスに時間遵守と言われててな……。これにて失礼する。ルロ、もう良いか」
「うん。大丈夫」
魔王が何も無い場所に手を翳すと空間を捻じ曲げてゲートが生まれる。
……さっきあのまま殺し合いしてたら、多分普通に負けてたよなぁ。
明らか本気出してなかったし、この魔王。
そもそもやろうとしたらこのゲート使って俺らを飛ばせば良かったんだし。
止めてくれた加奈子さんに感謝しかない。
「ではな。……今度会う時はもう少しマトモな親になっておこう」
「バイバイ、みんな」
そう言って2人はゲートに入って消えていく──直前でルロがこちらを振り返って、会ってから1番の笑顔で。
「またね、おさわりマン!」
「最後の言葉それ!?」
ゲートは2人が入った後、跡形もなく消えた。
おもっくそバレてたのかよ。こちらの嘘に付き合ってくれてたのか、途中で気付いたのか。
どちらにせよ、なんて不名誉な名前なのだろう。
変態仮面とタイマン張れるレベルだろ、このヒーロー。
「ん? おさわりマンって加奈子さんが前言ってた加藤のあだ名だろ? なんでルロ様が知ってんの?」
「ああ、色々あってLINEグループに送るの忘れてました。今送ります」
「おい待てやめろ! マジやめろ!」
「…………ギャハハハハハハハ! おーこれは良いねぇ! なんて頼りになりそうなヒーローなんだ! セラフィナの尻だけじゃ飽き足らず冷たい心にも触り始めたって訳か! カッケェェェ!!!」
「最悪だ……この先10年は擦られる……終わりだ……」
「ご、ごめんなさい加藤さん! 私が訳わかんない事言ったせいで……」
「いや、加奈子さんは1ミリも悪くないんで大丈夫です。全部俺が……いや高木も7割くらい悪いな」
「その場に居なかったのに罪擦り付けられるのおかしくね? しかも7割て。もう俺がおさわりマンなってるんだけど」
「人類おさわりマン計画ですね」
「そんなNERVじゃ使徒1体も倒せねぇよ!」
「さーて、俺、国の方に終わったーって連絡しないとならねぇから帰るわ。手伝ってくれてサンキューな。後で礼送っとくわ」
「私も信者の皆さんと定期集会がありますので失礼しますね」
「おい待て! せめてグループのクソ動画消せ! 既読が増える前に!」
俺の声をガン無視した2人はあっという間に居なくなっていた。
どうしよう、このクソ動画どうやったら消せるんだろうか。運営会社脅した方いいかな。
「……あ、すいません加藤さん。私もちょっとお母さんに頼まれてて銀行の方に行かないとならないので失礼しますね」
「そうですか、お気を付けて」
「はい! それじゃ!」
「……あー、その加奈子さん」
「? 何ですか?」
去ろうとした加奈子さんを呼び止める。
あかん、何で呼び止めた俺。何も考えずに呼び止めたぞ。アホか?
「あ、いえそのなんだ……な、なんか困った事あったら言ってください。俺でよければ……力になるんで……はい……」
「……ぷっ! あはは! どうしたんですか急に。しどろもどろになって」
「え、いやー……ははは」
「変な加藤さん。まぁいつもの事ですけど」
「えぇ!? いや仕事の時くらいはマトモじゃないですか!?」
「んー……普段の1割マシでマトモかもしれませんね」
「もしかして普段が低過ぎるせいで1割増えた所で焼け石ですか?」
「さぁ? どうですかねー」
「はぐらかすって事はもう正解じゃないですか!」
まぁ初対面の時から狂ってる姿見られてるのに、この評価で収まってるのは奇跡だろう。
知り合いの中で一番人間が出来ている。コピーベントで真似れないかな。
「それじゃ、また職場で!」
そう言って加奈子さんは去っていった。
……良い人だなぁホント。
「さて……家の食材消し飛んだから買い物行かないとな」
昨日の悪口大会で家の食材は殆ど使ってしまった。
缶詰まで開けたから家に食べる物が皆無なのだ。まぁ缶詰開けやがったのは高木なんだけど。あの酒飲みがよ。
「セラフィナ、ちょっと買い物手伝って──あれ?」
辺りを見渡してもセラフィナの姿が無い。
加奈子さんとの会話に夢中になってたせいで、いつ居なくなったのかも分からない。
「……あ、メッセージ来てる」
『先帰る』とだけ送られてきたメッセージ。
そういやさっきも何にも喋らなかったなアイツ。
どうしたんだ? 体調でも悪いのだろうか。
「帰りになんか買ってってやるか……」
セラフィナは結構甘いものが好きだから、適当にスイーツでも買えば嫌がりはしないだろう。
「どうせスーパーに行くし、そこでケーキでも買おうかな」
そんな事を考えながら1人でダラダラスーパーに向かう。
地味に1人で歩くのは出勤以外だと久しぶりだった。
◇ ◇ ◇
俺がよく行くスーパーはかなり広い。
半分ホームセンターが入ってるような場所で、困ったらここに来れば大抵の物は置いてある。
その代わり値段は他より割増だけど……面倒の方が勝ってしまって此処ばかり利用している。
企業戦略におもっくそ引っかかってる俺はカートを押して食料をカゴに突っ込んでいく。
「あー……保存効くやつ多めに買った方いいかな……。2人だけどセラフィナあんま食わねぇし」
ただ保存効くやつって味濃いか、下処理しないと意味無いやつの2択なんだよなぁ……。
面倒なんだよな、最近碌に……いや、最近は殆どセラフィナがやってたわ。
頼んで無いのに、有難いけどそもそも勝手に住み着いたのはまだ許してないからそれでトントンだろ。
カスい言い訳をしつつ、カードのカゴが満杯になったのでレジに向かう。
「うわ、有人レジしか空いて無いじゃん。沢山あるから迷惑だろうなぁ……」
有人レジで大量の商品を通すのってなんかすごく申し訳ない気持ちになる。
昔は1ミリも気にしなかったのに、清掃の仕事始めてからは自分も迷惑かけられまくった事があるので最近はなるべく避けていた。
と言っても空いてるのに買わないのはアホが過ぎるので諦めて有人レジに入る。
「すいません。多いんですけどお願いします」
「はーい。袋はご必要でしょうか?」
「あ、エコバッグあるんで大丈夫です」
「そうですか。ではお客様、クソアイテムは如何ですか? 良い感じのクソが揃ってますよ?」
「オピス、お前何してんだ」
「馬鹿な……完全に自然な流れで行けてたのに!」
「流れに逆らい過ぎて滝登り切っとるわ」
綺麗な金髪を三つ編みのポニーテール。
やたらとハスキーな声。両目の魔眼を隠す目隠し。
間違いなく俺の仲間の1人、バジリスクのオピスだった。
「で? マジ何してんの?」
「バイトだよ、レジ打ちバイト」
「そんなん見れば分かるわ。なんでお前がレジ打ちなんてしてるんだって意味だよ。お前商人名乗ってただろ」
「僕は他の皆と違って交友関係があるからね〜、ちょっと知り合いに人足りないからって今日だけ頼まれてたんだよ。それでこの街に来たって訳」
「前にグループで言ってた実家の云々は終わったのか?」
「うん、もう終わったよ。だから今日バイト終わったらそのまま加藤くんの家に侵入するつもりだよ」
「本人目の前にして堂々と侵入予告するんじゃねぇよ。怪盗キッドのがまだ慎重だわ」
「でも合鍵あるし……」
「僕にプライバシーは無いんですか?」
「でもセラちゃんともう同棲してるんでしょ? じゃあ僕が多少入り込んでもいいじゃん」
「出てけ言っても聞かないから諦めただけだ」
「負けてて草なのだ。それで? クソアイテムいかがですか?」
「お前そのクソアイテム作っては人に押し付けるのやめろや!」
「ふむ……わしにしねというんじゃな!」
「生き甲斐が過ぎるだろ」
やめろと言っているのにレジの下の方から何かを取り出すオピス。
もう嫌な予感しかしない。
「さぁ! 今回も始まりました。『オピスと加藤のクソアイテム、いかがですか?』。今日は3点の素晴らしいクソを用意したよ! 加藤くんは気に入ってくれるかな?」
「おい何だその人気の無い深夜ラジオですらやらなそうなクソコーナー。何が今回もだよ。寝耳に水なんだけど」
「それではまず最初のクソアイテムはこちら! 『サモンサーモン』!」
「親父ギャグと同レベルの商品名」
「こちら見た目は普通の土鍋なのですが、なんと! 魔力を込めるだけで新鮮なサーモンのような物が召喚されるのです! これさえあれば食糧不足とはおさらば!」
「今『ような物』って言ったよな? それ食ってマジで大丈夫か? なんか冒涜的な何かじゃないのか?」
「ただ1つだけ注意点が御座います! こちら使用する度に1/8の確率でデスサーモンが召喚されてしまいます!」
「デスサーモン!? デスチワワと同じ系譜!? んなもん召喚すんなよ!」
「デスサーモンはとても危険です! 闇の力を使い、人の心を惑わしてきます! 更に攻撃力は2500、守備力は1200の闇属性──」
「それただの【デーモンの召喚】だろうがぁぁぁ! 鮭は何処行ったぁ!」
「ちなみに普通のサーモンにはアニサキスが死ぬ程入ってるのでお気をつけ下さい。何故か分からないけど焼いても切っても死なない不死身のアニサキスですので」
「お前は産業廃棄物を他人に押し付けるのが好きなのかな?」
「お気に召さない?」
「お前を天に召してぇよ」
「残念、では気を取り直して次のクソに移りましょう。次のアイテムはこちら! 『ギブミーグレネード』!」
「チョコを強請れよ」
「こちらの腕輪を付けていると、ダンジョン内で戦闘になった際に必ず最初に特殊なグレネードが手に生成されます! このグレネードはそれこそ高レベルダンジョンのモンスターですら大ダメージを与える素晴らしい威力を誇ります!」
「普通に攻撃した方が楽じゃね? 少なくとも俺達はだけど。でもまぁ他の人が使うなら……」
「ちなみに生成したグレネードは手と一体化するからモンスターに当てる場合には、『さよなら天さん』する必要があるよ」
「自決用と何ら変わらねぇだろそれ! しかも自動生成とか選択の余地すら無いじゃねぇか!」
「一応ヤムチャに飛びついた栽培マンでも可」
「意味同じだろそれ!」
「これもダメ?」
「ダメを通り越してダメダメの歌」
「残念……次が最後のアイテム。気にいると良いなぁ。はい! 『ミギーライト』! 右手で使わないと全く光らない懐中電灯だよ!」
「……シンプルゴミ来たな。何だよ右手限定って。なんか理由あるのか?」
「ほら、ライトって英語で右でしょ? それで右手のミギーで……」
「くっっっっっだらねぇぇぇぇぇ!!! 舐めてんのかお前! くだらな過ぎてミギーも新一乗っ取るわこんなん!」
ゴミライトをオピスの頭に投擲する。
どちらにも中身が入っていないのだろうか、スカーンといい音が鳴った。
「残念ながら今回のクソアイテムの中には、加藤くんのお眼鏡にかなう物は無かったみたい。次回こそ加藤くんが唸るようなクソアイテムを作ってみせるぞ! と、言うわけでまた来週〜。バイバ〜イ」
「打ち切りじゃこんな番組! もう良いからレジの仕事やってくれよ!」
「あ、ごめん。僕ちゃんとしたバイトじゃ無いからレジ使えないや。他の店員さん呼んでくるね」
「今のやり取りの時間返せぇぇぇ!」
レジ打ちバイト普通に嘘じゃねぇか!