ダンジョン中毒から抜け出したい【書籍化&コミカライズ決定】   作:1パチより4パチ派

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U.Nゴーレムは娘なのか!?

「ただいまー」

 

「おっじゃましまーす」

 

 結局夜勝手に侵入されるくらいなら、今入れた方がマシと判断してオピスを連れてきた。

バイトは良いのかと思ったが、ちょうど交代の人員が来たとかでコイツのバイトは終わった。

何で無駄にタイミング良いんだよ。

 

「セラフィナー? 居るかー?」

 

「セラちゃーん、お久ー!」

 

 靴はあるから先に帰ってる筈。家に入って声をかけるが返ってこない。

 

「2階か? ちょっと物置いて見てくるか」

 

「僕が行こうか?」

 

「ウロチョロしたら捌いて蒲焼にするからな」

 

「ちょっと! 僕がまるで何かやらかすみたいじゃないか!」

 

「まるでじゃなくてやらかすだろ! お前昔俺が借りてたアパートをクソアイテム作るって言ってミスって爆破しやがっただろ!」

 

「それ何年前の話? その時酔っ払ってたし、今の僕がそんなミスする訳無いじゃん」

 

「さっきのクソアイテム3品見せられたせいでお前に対しての信頼度は地に落ちている」

 

「よく言うだろ? 『少年よ、大志を抱け』ってね。これは僕のあるべき姿を追求する為に必要な事なんだよ」

 

「大志を抱く前に自分の頭に疑問を抱け馬鹿野郎」

 

「冷たいなぁ。2年会わない間に冷たい人になった? 悲しいよ僕は」

 

「この家結構気に入ってんだよ。だから絶対辞めろよ。頼むって。フリじゃなくてマジな?」

 

「ほーん……分かったよ。君に嫌われたく無いし。リビングで大人しくしとくね」

 

 そう言ってリビングに入っていくオピス。

良かった。オピスは他の連中より話が比較的通じるから助かる。

これが他の連中なら絶対なんかやらかす。

高木なんざ目を離した瞬間、何するか分からないレベルだ。

それに比べたらオピスはまだマシだ。クソアイテム以外は。

 

「さて、寝てんのか? アイツの部屋から見てみるか……」

 

 セラフィナに貸してる部屋に軽くノックする。反応は無い。

家主権限で勝手にドアを開ける。女性の部屋に勝手に入るなんてと言われるかもしれないが知った事か。

俺の方が勝手に入られとるわ。

 

「……居ないな」

 

 綺麗に整頓された部屋には誰も居ない。

セラフィナの奴、綺麗好きなんだよなぁ。

昔ストリートチルドレンだった反動で汚いのが嫌なのかもしれない。

 

「じゃあ何処だ? うーん……ん?」

 

 部屋から出ると嗅ぎ慣れない臭いがする。

思わず眉を顰めるその臭いはタバコのそれ。

 

「……あっちの部屋のベランダか」

 

 俺の家には家の裏側にベランダがある。

と言っても2階に付いてる大して大きく無いやつだ。

洗濯物を干す為だけに使っている場所から、この臭いは漂ってきてた。

ベランダの方に行くと、こちら側に背を向けながらタバコを吸ってるセラフィナが居た。

そりゃ外に入れば1階の声なんざ聞こえんか。

 

「(辞めたと思ってたんだが……)」

 

 近づく俺に気付く様子も無い。

閉められている窓を開けてようやくこちらに気付いて振り向いてきた。

 

「……なんだよ」

 

「こっちの台詞だろそれ。タバコ辞めたんじゃ無かったのか?」

 

「うっせ……吸わせろや……」

 

「室内で吸わないんなら別に良いけど」

 

「……」

 

 黙り込んでしまった。何? 俺なんかした? マジで心当たりが無さ過ぎる。

自分で言うのも何だが朝の魔王とやり合った時と同一人物とは思えん。

 

「今オピス来てるから。後、適当にケーキ買ったから後で冷蔵庫から出して好きに食べろよ」

 

「あいつか……分かった。あんがとよ」

 

「じゃあ俺リビング行くからな。タバコの火ちゃんと消せよ」

 

「ああ……」

 

「……お前マジで大丈夫か? 何かあった? タバコ吸ってる時点で体調は平気だろうけど」

 

「何もねぇよ、早く行け」

 

「何だかなぁ……」

 

 ひとまず怒っている訳では無いので放っておく事にする。

無理に聞き出してキレられたら面倒だし……。

煙が室内に入らないようしっかり閉めてから下に降りる。

 

「あ。おぶ!」

 

 リビングに入るとオピスがテーブルの上にめちゃくちゃ物を広げていやがったので、右手で両頬を掴む。

 

「オピスくん! 大人しくするって自分で言ったの忘れちゃったのなぁぁぁ!?」

 

「違う違う! 誤解だよ!」

 

「何処がだよ! これお前がアイテム作る際に使う道具だろ! 覚えてんぞ!」

 

「クソアイテム作りたいのは事実だけど、これは別のだよ!」

 

「別? ……いや別だとしても広げるなよ。一瞬『じゃあいいか……』ってなりかけたわ」

 

「え、と言うか加藤くんこれ見て分からないの?」

 

「あん?」

 

 広げられてる物を見ると、土の塊のような球体が置いてあった。

ダンジョンでそこそこ見かけるコレは──。

 

「ゴーレムコアじゃん。ゴーレム作ってんの?」

 

「そうだよ。クソアイテムじゃ無いでしょ?」

 

「いやクソでは無いけど……ゴーレム作ってどうすんのお前。強く無いだろあれ」

 

「一応、中堅冒険者辺りにはそこそこ使われてるけどね」

 

 ゴーレム。一部のダンジョンの宝箱から出てくる心臓部分に当たるゴーレムコアを使用して作る土人形だ。

ある程度の自意識を持ちながらも、作成者の操作が無ければ戦闘は行えない存在。

しかしコアさえ生きていれば基本不死身な為、前衛が足りて無い探索者チームがタンク役として使う事が多い。

まぁ高レベルダンジョンだと性能が完全に追っ付かなくて基本ワンパンなんだけど。

 

「ギアススクロールの縛りでダンジョン潜る時にでも使ったか? 俺が書いてからまだ2週間くらいだけど最低1度は強制されるし」

 

「いんや? これはダンジョン用じゃないよ」

 

「? ゴーレムなんかダンジョンで使う以外使い道あんの? 掃除すら操作しないといけないのに」

 

「あるんだよねーこれが。これを見てみなよ!」

 

 オピスが差し出してきた一冊のクソ分厚い本。

表紙には、やたらと胸がデカい制服美少女のデカい写真と──。

 

「何これ、【ゴレ娘⭐︎パーフェクトマニュアル】……?」

 

「テーマ曲もあるよ」

 

「は?」

 

オピスはスマホをこちらに向けて画面をタップした。

 

『戦略! 戦略! 戦略! 戦略! 戦略! 戦略! ゴレ娘! ヒュウ!』

 

「丸パクリじゃねぇかぁぁぁ!!!」

 

「パクリじゃないよ。 オマージュ。リスペクトだよ」

 

「そこに愛はあるんか!?」

 

「僕に言われても困るよ。曲作ったの僕じゃないし。まぁこの動画は僕が作ったんだけど」

 

「じゃあ同罪だよ! 見ろよコメント欄! 『パクリで草』『JASRAC仕事しろ』『無駄に動くPVがイラつく』! これが世間の声だ!」

 

「アンチや低評価ばかり気にするな! 応援してくれる人の事だけ考えろ!」

 

「こんな所でクリエイター根性出さなくて良いんだよ! そもそもゴレ娘って何!?」

 

「それはその本を読んで貰わないと」

 

 手元にあるデカい本を嫌々ながら読んでみる。

ページを捲る。美少女の写真。ページを捲る。美少女の写真。ページを捲る。美少女の写真。ページを捲る。際どい水着を着た美少女の写真──。

 

「ただのグラビア集じゃねぇか! 解説しろよ! 捲っても捲っても美少女しか出て来ねぇ! どいつもこいつも顔のパーツ似てるせいでエロいマトリョーシカになってる!」

 

「やっぱり整った顔ってある程度似てくるからねぇ。その点加藤くんは個性的な顔だよね。田舎のコンビニで屯ってそうなさ」

 

「鶴岡もだけど、何でお前ら俺の顔を田舎のヤンキーって評価下すの? 田舎のヤンキーだって色んな顔あるだろ」

 

「大丈夫、ヤンキーはヤンキーでも地元最強くらいはありそうだから」

 

「どの道はみ出し者じゃんそれ。……今もか……」

 

「自爆してる」

 

 遠い目になりながらも必死にページを捲る。てか目次がある癖に写真をフルで見せたいからか、ページ数が書いてないのクソ過ぎるだろ。

 

「……これか」

 

 漸く文章が出てきた。それなりに多いので軽く流し読みしたが、要は美少女版ゴーレムと言うだけである。

自分で理想の美少女を作って従わせよう! らしい。

自分に従順なだけの女とか何が良いのだろう。自我が無さ過ぎるだろ。一緒に居てもつまらん事必至だ。

 

「じゃあお前は側に美少女侍らせたいから、ゴーレム作成やってる訳?」

 

「んー、僕はどちらかと言うとその先かな。もう少し先読んでみなよ」

 

「先?」

 

 確かにまだ続きがある。

言われた通り続きを読んでみるが……。

 

「ゴレ娘vs(バーサス)……?」

 

「そう! 自分で作ったゴレ娘を戦わせて競い合う! それがゴレ娘vs(バーサス)だよ!」

 

「ゴレ娘は大きく4つの部位に分かれる。頭、胴体、腕、脚。これらをレギュレーションに基づいたパーツから選択して1体のゴレ娘を作り、それを操作する……」

 

「僕が今作ってたのは、レギュレーションに沿ったパーツだよ。魔力のこもった土を練って固める事で、柔軟性と耐久性に優れたパーツが出来るんだよね」

 

「だからこんなに土まみれなのか。外でやれよ」

 

「床に落としてないから許して?」

 

「落としてたら既に追い出してる」

 

「まぁそう言う事でどうせ待つなら作るかーで作ってた訳。僕は出ないけど大会もやるくらい今ブームなんだよ? そのせいでゴーレムコアの値上がり凄いんだから」

 

「本当にブーム来てんの? 俺も俺の周りもそんなの知らねぇぞ?」

 

「常に女侍らせてるような人からしたら、こんな趣味は眼中に無いかもね」

 

「人聞きの悪い言葉好きすぎんか?」

 

 よく分からんのが流行るもんだ。でもロボットに置き換えるとちょっとロマンあるかもしれない。

 

「大会って賞金とか出るのか?」

 

「賞金の時もあるし高ランクアイテムの時もあるらしいよ? 再来週に大きい大会あるけど、その報酬は豪華って聞いたね。ちょっと見てみるかー」

 

 そう言ったオピスは自分のスマホを操作して──止まった。

 

「? おい。オピス? どうした?」

 

「……いや、何でも無いよ。大した物じゃ無かったから」

 

「どんなのだ? 見せてくれよ」

 

「いやいや、大した事ないから。ホントに」

 

「……そうか、分かったよ」

 

 普通に自分のスマホで調べようとしたら、オピスがしがみついて来た。

 

「待って待って待って。ストップしようか一旦」

 

「良いって良いって良いって。自分で調べれるのに人に頼むのは間違いだもんな」

 

「加藤くん。加藤くんってイケメンだし強いし女好きだよね」

 

「褒めるんなら全部褒めろや」

 

 オピスは俺の仲間の中でも貧弱筋力なので全く俺を抑えられない。

普通にスマホで検索してホームページにアクセスする。

大会の情報を見てみると──。

 

「……賞品はギアススクロール……」

 

 オピスが俺から離れて逃げ出したので即座に捕まえる。

逃げられないようにしっかりと肩を組んでやる。

 

「オピスくん、君に頼みたいことがあるんDA!」

 

「拒否権を行使するね」

 

「俺と共にゴレ娘マスターの頂点に立たないかい?」

 

「言わなきゃ良かった! 言わなきゃ良かったぁ! 嫌だよ! これで手伝ったらギアススクロールにサインした意味無くなるじゃん! 僕は君に探索者であって欲しいんだよ!」

 

「と言うと?」

 

 聞き返すと落ち着いた口調でゆっくりと話し始めるオピス。

空気を読んで肩組みをやめる。

 

「僕はね、クソアイテムを作るのが生き甲斐なんだ。それも高レア素材アイテムを湯水の様に作ったのが。それは分かるよね?」

 

「そうだな、お前が居る理由それだったからな。俺らが殆どアイテムに興味ねぇから、素材アイテムはお前の全取り」

 

「あの頃はね、本当に良かった。行く所がなくて路頭に迷ってた時に君に拾われた時は、嬉しくて涙が出たよ。覚えているかい?」

 

「お前が所属してた前のチームが、必死こいて漸く手に入れた高レア素材アイテム横領した挙句、クソアイテムにしたから追放されて家の家賃も払えなくなって路上で体育座りしてた時の事だろ? 覚えてる覚えてる」

 

「そこまでは覚えてなくて良いかな。忘れて? 話を戻すけど、君は僕の恩人なんだ。そしてあの頃のチームは僕にとっては天国。それを取り戻したい。その為には君にあの頃のように戻って欲しいんだよ。一緒にダンジョン潜りたいんだよ!」

 

「そうかそうか」

 

「分かってくれたかな? それじゃ──「所でさ、この前偶然手に入れた物があるんだけど」……え?」

 

 家の金庫を開けて中から1つのアイテムを取り出してオピスに見せびらかす。

 

「これなんだが……処理に困っててさぁ。売っても良いけど別に金に困ってないし? どうしようかなーって」

 

「こ、こ、こ、【光竜の宝玉】!? ランクSSS!?」

 

「これ素材アイテムじゃん? どうしよっかなー。売ろっかなー。……でももし、オピスが他のメンバーに言わずに俺の手伝いしてくれるなら……」

 

「ぼくをすきにしてください!!!」

 

「契約成立。コンゴトモヨロシク……!」

 

 残された時間は少ない。この時間で何としてでも最強のゴレ娘を作り上げて、優勝する。そして、ギアススクロールを手に入れる!

 

「ゴレ娘マスターに、俺はなる!」

 

 俺達の戦いは始まったばかりだ!

 

 

◇ ◇ ◇

 

 下から加藤とオピスの騒がしい声が聞こえる。

日も段々沈んできて、夕暮れがベランダを赤く染める。

 

「……クソ」

 

 2箱目に突入したタバコに火を付ける。

数年振りに吸ったが、別に気が晴れるわけでも無い。

それでも飴なんて舐めてる気分にはなれなかった。

 

 今日の朝、魔王から【消滅】入りの拳をかまされて昏倒してた時。

あの頃の加藤の声が聞こえた。

脳が痺れた、あの気狂った絶叫。魂を震えさせる声。

ああ、戻ったんだ。漸くあの頃の加藤に。

ダンジョンに狂いまくってた加藤に。

 

 怒りのまま魔王と戦っていた時も、内心喜びがあった。また、前の時の様に。

一緒に後先考えずに戦えるんだって。

あの時までは──。

 

【──だからどうか、落ち着いてください。でなければ、私は絶対にここを退きません。それが私の──エゴです】

 

【──すまんお前ら。さっきの無し】

 

 加奈子の言葉で、加藤の狂気の炎が消えた。

加奈子の、今の加藤が良いと言う言葉で……アイツは止まった。止まってしまった。

そして何よりも──。

 

【……ありがとう、ございます】

 

 あの時、加奈子に礼を言った時の加藤の顔は……見たことが無い程の、優しく穏やかな物だった。

その後の加奈子と話してる時だって、アイツの顔は穏やかだった。

アタシはその顔を、向けられた事はない。

 

 もしかしたら加藤の本当の姿は、アタシが知っているダンジョンに狂ってる姿では無くて……あの穏やかな顔をした方なんじゃ無いかって。

そう思ったら、自分が分からなくなった。

アタシは加藤が好きだ。あのダンジョン狂いのアイツが。

でもそれは、アイツの本当の姿では無い。

アタシが好きなのは……仮の姿。

それって……本当にアイツに惚れているのか?

アタシを貶したり殴ったりして来たような、外面だけ見て決めつけるような連中と、同じ──。

 

「……キッツ……」

 

 どうしたら良いんだろうな、こんな時。

惚れた相手なんて、アイツしか居ねぇから分からねぇよ。

アイツが苦手な紫煙を撒き散らしながら、途方に暮れるしか無かった。




今の加藤のランク別好感度
加奈子…SS(今の自分を肯定してくれた&暴走止めてくれた常識人。加藤の人生で出会った人の中でぶっちぎりで高い)
セラフィナ…A +(仲間&容姿が好み)
高木とセラフィナ以外の仲間…A (仲間と言うだけでかなり高い)
ルロ、クォーツ…B +(自分に懐いてきたから。この辺から命張って助けるライン)
ドラツェルバ、主治医…B(自分の過去を知っていながら普通に対応してくれる)
リファル…C +(苦手だが嫌いな訳では無い)
魔王…D(ルロの親だからギリ)
それ以下…興味なし


高木…論外と言うか別枠。お互い死ぬまで縁は切れない
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