ダンジョン中毒から抜け出したい【書籍化&コミカライズ決定】 作:1パチより4パチ派
翌日、普通に俺がシフト入ってたので終わり次第集まってゴレ娘を作る事になった。
材料が色々と必要らしいが、オピスが買っといてくれるらしい。感謝。
「……セラフィナまだ寝てんのか。珍しい」
家に転がり込んできてからいつも俺より早起きだったから意外だ。
まぁそう言うこともあるだろう、昨日暴れたしな。
冷蔵庫を開けて、昨日作っといた常備菜を適当に弁当箱に突っ込んで家を出る。
「……ここ後で直さないとなぁ……」
昨日魔王とやり合った場所は当然の如くボロボロになっている。
普通の道路だったので、通る人はクソ面倒だろう。
高木に言えば何とかならないかな。
最悪コンクリ持って来て適当に穴を埋めよう。
「おはようございまーす」
「あ、加藤さん。おはようございます」
今日は加奈子さんと同じシフトの日だ。
加奈子さんの方が、通勤に時間がかかる筈なのに既に居る。
「早いっすね、大したもんだ」
「一度早起きしたらそれに慣れちゃって」
「あーあるある。早朝シフトの時とかの後ってそんな感じですよね」
「引き摺っちゃいますよね〜」
軽い雑談をしながら仕事を始める。
加奈子さんもかなり慣れて来たみたいで、何か問題がある訳でも無く順調に進んでいく。
「今日はそんなに汚れてませんね!」
「マナーがなってて何よりっすねー」
休憩時間になって2人で一旦ダンジョンを抜け出す。
弁当食べてゆっくり休もう。
「やぁ加藤くん、精が出るね!」
「やばい休憩時間消し飛んだ」
何で仕事の休憩中にこのハゲのニヤケ面見ないといけないんだろう。
帰ってくれないかな。
「何しに来たんだよ、お前自分の仕事は?」
「ドラツに押し付けた」
「ドラツさん……なんて可哀想に……」
「まぁいつもの事だし。それより大事な話がある訳よ」
「大事な話?」
「明日の15時に、探索者会合あるから出てくだちゃい❤️」
「早退します!」
「光束」
「ぐべぇ!」
足を縛られて盛大にずっこける。
ダメだ足の拘束が剥がれない。コイツまた腕上げやがったな!? 魔力の圧縮率上がってんだけど!
「探索者会合? 何ですかそれは?」
「高レベル探索者達が情報を碌に出さないから、運営側で無理やり吐かせようって事で出来た強制報告会みたいなもんです。出ないと探索者の資格剥奪されますね」
「願ったり叶ったりだ! 今すぐ剥奪しろ! 俺が新たな追放物の先駆者になる! もう遅いさせろ!」
「剥奪しようとギアススクロールあるからお前はダンジョン行かなきゃいけないぞ。安心しろ、俺はお前を抱きしめて離さない」
「行きたくねぇよ! やりたくねぇよ! 高木お前やれや! 前までそうだったろ!」
「そのつもりだったんだがなぁ。今年からチームの場合、そのリーダーが出ないといけないってルールが出来たんだわ。規模大きいとこだと下っ端に向かわせて済ませるってのがあったからな。それ封じの為よ」
「お前の権限ならそんなルール無かった事出来るだろ! 裸エプロン先輩のように!」
「大嘘憑きじゃねぇし。それに裸エプロンそんな好きじゃない」
「は? 敵敵敵敵お前敵」
「そりゃお前は日常的にセラフィナの裸エプロン見てるから好きにもなるだろうけどよぉ」
「えぇ……やらせてるんですか……?」
「違います! セラフィナが寝起きで服着るのダルいとか言ってそのまま料理するんですよ! だからそんな目で見ないで! 死にたくなる!」
「見てるのを否定してくださいよ」
「鬼畜王加藤のお家事情はほっといて、明日よろしく頼むな。安心しろって、俺も運営側で出るから」
「勘弁してくれ! 俺は暫く予定が──」
「ん? 何の予定だ?」
「……いや何も無かったわ。すまん。気のせいだった」
「? そうか。まぁ何にせよちゃんと来いよ? 場所は中央の運営本部な。じゃーなー」
言うだけ言って高木は帰って行った。
危ねー、ゴレ娘大会の事言うところだった。
これをもし高木や他の連中にバレたら絶対邪魔される。
内密に進めなきゃいけないのだ。
「加藤さん、大丈夫ですか?」
「問題ないです。早く飯食べちゃいましょう。あの海坊主がリポップする前に」
◇ ◇ ◇
仕事が終わってオピスとの待ち合わせ場所に急ぐ。
「すまん! 遅れた!」
「良いよ良いよ。こっちも少し準備に手間取ったからね」
オピスが自宅兼工房にする為に借りたプレハブ小屋。
中ではオピスが既に色々床に広げてやっていた。
「じゃあ早速始めよっか。まずはゴレ娘vsのルールから教えるね」
「一応昨日貰った本読んだけど、所謂天下一武道会だろ? 場外出たら負け、倒れて10秒立てなかったら負け」
「そうそう、それでコアその物に対しての破壊行為禁止だね。後今回の大会のレギュレーションはDだね」
「レギュあるのか……レギュDだと何が変わるんだ?」
「基本的にレギュレーションが変わると使えるパーツが増えるね。Dは1部位4種類で、その中で組み合わせていくよ」
「完全にレギュレーションと同じにしないといけないのか? 仕込み武器とか、変形してビーム出すとか」
「ゴレ娘vsはスパロボじゃないんだよ? 武器は目に見えるようにしないと反則だね。変形もダメだった筈」
「うーん……基本的にはその決められたパーツから抜け出せないのか」
「そうだね。割と相性ゲーな所はあるよ。操作次第でいくらでも捲れるけどね」
「ゴーレム操作か……」
ゴーレム操作ズブの素人の俺では、上手い相手にはまず勝てないだろう。
そんな事は、俺もオピスも分かりきっている。
──故に、秘策を用意した。
「パーツは指定されている。だがコアはそうでは無い……そうだろ?」
「Yes。ゴーレムコア……本来であれば単なるゴーレムの核だけど、それはダンジョンから手に入った新品の話。ゴーレムには自意識がある、つまり新たに作るゴレ娘に既に戦闘経験のあるゴーレムコアを使えば……」
「俺の操作をある程度サポートしてくれるゴレ娘が出来上がるって事だな!」
大元の操作自体は俺がやらなくてはいけないが、多少の向きや移動を自動でやってくれるのなら大助かりだ。
他の参加者は既に何回も戦っているゴレ娘だろうし、そこの差を埋めれるのはでかい。
「と言う訳で何とか手に入れました歴戦のゴーレムコアです!」
「サスガダァ…オピスニカナウショウニンナドイルワケガ…」
「これは中堅ゴーレム使い(45歳)が探索者引退するからって言う事で譲ってくれた物だよ! 25年探索者やってたんだって! 凄いよね!」
「25年やって中堅か……世知辛いな……」
「10年経たずにトップクラスになってる僕達がおかしいだけだと思う」
オピスの持っているゴーレムコアは、鈍い光を放っている。
……大丈夫か? 新品ってもっとビカビカ光ってるよな?
「ちょっと光が弱いけど……どしたん? 話聞こか?」
「コアの状態だと話せないよ。早くボディ作ってあげないと」
「それもそうか。それで? 指定パーツの種類は?」
「まずは頭! まぁ実際は髪だね髪。ゴレ娘は髪を武器にするのが一般的なんだ。触手みたいに使えるよ」
「許可されてる髪は何だ?」
オピスがホワイトボードに勢いよくイラストを書いていく。
相変わらず上手いな。
「まずは王道! ツインテール! 手数が増えて相手に反撃の隙を与えづらい! 咄嗟の防御もしやすいのがGOOD! 初心者ならこれ使え!」
「成程、これが安牌か……?」
「次の候補がポニーテール! 背後からの奇襲に対応しやすいのと、一纏めにした髪の一撃は破壊 力 ばつ 牛 ン! 一発逆転も夢じゃない!」
「押されてる時にひっくり返すならこっちか」
「3つ目がロング! 高い汎用性を誇るけどその分操作が激ムズ! 多すぎる髪の毛を操作しきれないと自爆しかねないけど、使いこなした時はぶっちぎりで強い! そして──!」
「そして──!?」
「ショートカットは軽量化が得意」
「澤はドリブルが上手いのノリで落とすなぁぁぁ!」
紹介するところなさすぎるだろ!
何だ、ショートカットに恨みでもあんの!?
「そう言われてもねぇ……本当に強みがそれしか無いんだよ。だって武器1つ捨ててるのと同じなんだもん。使う意味無いよこれ。まだ魚肉ソーセージ開ける時に引っ張るシールのが使い道あるよ」
「どんだけだよ! 良いだろショート! 顔のいい女はショートが映えるんだよ!」
「加藤くん元カノもショートだし今カノもショートだもんね」
「現実改変するのやめてくれます!?」
そんなやり取りをし続けて大体2時間。
漸く使うパーツの選択が終わった。
「ツインテール、ソードアーム、スレンダー、ラビットレッグ……うーん、初心者の高機動型って感じ」
「結局テンプレみたいになった……」
「いやまぁ良いんじゃない? 加藤くん剣の扱いなら得意でしょ。ゴーレム操作って自分自身の感覚って大事だからさ、自分の戦闘スタイルに似せるのはアリだね」
「操作にも慣れないといけないしな。楽な方良いか……」
「じゃあ次は大事な顔だよ顔! どんな感じにする?」
「え? 顔なんて何でも良いだろ。戦いに関係ないだろ?」
「何言ってんの? 大会開始前にビジュアル審査あるんだからのっぺらぼうなんて即失格だよ」
「ビジュ審査あんの!? 何で!?」
「そりゃゴレ娘だからだよ。美少女じゃなきゃ許されないね」
美少女……美少女かぁ。
突然言われても困る、どうしたら良いんだろう。
「自分のリビドーのまま作れば良いよ。はい、粘土ベラ」
「リビドーか……」
「自分の好きなキャラの顔とかさ! 多少似ててもへーきへーき、大丈夫だって安心しなよ」
「まぁやってみるか。意外と良いのが出来るかもだし」
えーっとまずは吊り目だろ? 本人にその気が無くても睨んでるって思われるくらいのが良いな。
んで鼻高めで輪郭シュッとしててそんで……そんで……。
「………………」
「……………加藤くん、僕この顔見覚えあるんだけど」
俺が無意識に作り出した理想の顔は、セラフィナにクリソツだった。
姉妹と言われたら納得するレベルだ。
「アイツの顔が良いのがいけないんだよね」
「君ホント気の強そうな顔好きだね」
流石に仲間の顔丸パクリは不味いので良い感じにずらしといた。
吊り目だけはオピスにどんだけ言われても譲らなかった。