ダンジョン中毒から抜け出したい【書籍化&コミカライズ決定】 作:1パチより4パチ派
「……よし! 塗装完了! どう? 完璧じゃないかい?」
「すげー……塗装したらマジで人間にしか見えんわ」
「完全に定着してるから取れたりしないから触っても大丈夫だよ」
「やめとくわ、何か犯罪っぽい。てか服が別枠にしないといけないのは何故? そのせいで全裸じゃん。いや別に何も着せてないマネキンと同じだけどさぁ」
「あんまりゴテゴテしたボディ作っちゃうと、再生する時に時間かかるからね。それと他人のゴレ娘には絶対ブラックライト当てたらダメだからね」
「ヤバイな、天動説が主流の時の地動説並みに聞きたくなかったその話」
出来上がったゴレ娘は、吊り目スレンダー高身長金髪ツインテールだ。ツンデレキャラで検索したらいっぱい出てきそうな見た目になってしまった。
胸の中心には穴が空いている、ここにコアを入れるらしい。
「じゃあ早速起動しよう! コアを埋め込んだ人がマスターになるから、加藤くんがやってね」
「今更なんだけどマスターお前にしてお前が代わりに操作すれば良いんじゃね? 素人の俺がやるより勝率高そう」
「僕自分のゴレ娘以外操作する気無いし。そもそも剣持ったタイプは僕も操作した事ないよ。僕のは遠距離の銃持ちだし」
「まぁお前がスナイパーだもんな」
オピスからコアを受け取って、胸の部分にしっかりと嵌め込む。
コアは嵌った後、徐々にボディと一体化していき最終的にはボディが飲み込む形で見えなくなった。
キュイーーーン
「お、起動し始めたね」
ゴレ娘の目に光が宿る。コアと同じ鈍い光のせいで、若干目が死んでるように見えるんだけどこれ大丈夫?
「……問おう、貴方が私のマスターか?」
「え? なんかfate始まったんだけど。令呪出てないんだけど鶴岡に言ったら貰えるのかな」
「聖杯戦争だったら加藤くんがマスター皆殺しにして終わりだね」
「人を魔術師殺しみたいに言うのやめてね。起源弾使えないから」
「問おう、貴方が私のマスターか?」
「やべ、聞こえてないと思われた」
「早く答えてあげなよ。第一印象って大事だよ? これから一緒に頑張る相棒なんだから。切嗣みたいになりたくないでしょ」
「そうだな……よし、俺は加藤。夢はゴレ娘マスターになる事! これから宜しくな!」
ゴレ娘は俺の顔をまじまじと見た後、オピスの顔を見る。
「……あの、こちらの方では無くて?」
「君を起動したのは加藤くんだよ。操作権が誰にあるかは分かる筈だけど」
「そうですか……」
俺に向き直したゴレ娘は数秒目を閉じて沈黙した後──。
「顔が好みじゃない。チェンジで」
「オピス、ホムセン行って種とクワ買ってきてくれない?」
「バラして家庭菜園やろうとしてる? ダメだよ?」
「主人に舐めた事言ってくるゴーレムに分からせする為だ。はよ」
「そんなんで主従関係を構築出来ませんよ。これだから輩みたいな男は」
「お前が舐めた事言ってくるからだろうがぁぁぁ!!!」
初対面でいきなりチェンジとか喧嘩売ってるだろ。
どいつもこいつも人の事チンピラ扱いしやがってよぉ!
「おいなんだよコイツ! オピス、ゴレ娘ってこんなに生意気なのか!?」
「おかしいなぁ……普通主人には従順な筈だけど」
「従順? それはまだ世の中の事を分かってないゴーレムだけですよ。冷静に考えてください。いくら不死身だからって何度も何度も前線に立たされて肉盾にされる。そのくせ私に何かしてくれるかと言ったら特に無し。だってほっとけば勝手に再生するから。そんな扱いされまくったのに何で人間なんぞに従わないといけないんですか?」
「じゃあ何でオピスは良いんだよ! 魔族だってゴーレム使う事あるだろ!?」
「どうせ使われるんなら、好みじゃない顔のクズより顔の良いクズのが良いじゃないですか」
「クソが! 反論出来ねぇ!」
「あれ? 僕もちゃんとクズに分類されてるの?」
確かにどちらもクズの女を選べと言われたら、せめて顔の良い方を選んでしまう。
どんぐりの背比べとは言え、虫食いかそうでないかの差は大きい。
「まぁどうせ逆らえないのでどうぞご自由に。肉盾肉盾明日も肉盾。新しい体でもどうせ肉盾。完全に無限ループですね、ディアボロもびっくりですよ」
「コイツのコアがやたらと鈍い光なのって、もしかして散々使い潰されてきた結果心が擦れたからだったりしないか?」
「ブラック企業に適応しちゃった可哀想な人みたいだね」
どうすんだこれ。こんなんで勝てるのか?
いやまだだ、まだコイツ自身の戦闘経験がある筈。
いくら肉盾って言ったって、流石にある程度は──。
「あ、一応言っておきますけど私今まで元マスターが若い新米探索者(女限定)をカッコよく守ってワンチャン狙う為に初心者ダンジョンで雑魚モンスターの攻撃受けさせられてただけなので、碌な戦闘経験ありません。期待しないでください」
「こっちがチェンジじゃぁぁぁ!!! 何だよそれ! ミジンコ以下の求愛行動の経験値しか無いんですけど! 他の参加者との差埋めたくて中古にしたのに、これじゃただ無駄に反抗的なだけじゃねぇか! オピス! 新しく作り直すぞ!」
「パーツの材料の特殊な土が需要高過ぎて全然手に入らないんだよね。職人が作るやつだから数自体少なくて。この子作るのに使った土が最初で最後の材料だよ」
「じゃあコアだ! コア入れ替えるぞ! そうすりゃ中身変わるだろ!」
「もう定着しちゃったから無理だね。やったらボディがぶっ壊れるよ」
「Noooooooooooooooo!!!」
最悪だ、どうしてこうも上手くいかないのだろう。
もう世界が俺に社会復帰するの拒んでいるのではとすら感じてくる。
「じゃあコイツで何とかするしか無いのか……?」
「コイツは可哀想だよ。名前考えてあげないと」
「何でも良いよこんな生意気な奴の名前なんて。タッピング家永とかそんなんで良いだろ」
「どうやったらそんなふざけた名前を生成出来るの?」
「クソみたいな名前付けられたら自壊するかもしれません」
「面倒くせぇ女みたいな脅ししやがって。オピス、なんか良いの無い?」
「えー? そうだなぁ……髪色を金にしたから、ロールなんてどう? フランス語で金って意味だよ」
「よし、今日からお前はロールだ。スロットインしたら敵にダメージ与えた後リカバリーをちゃんと渡すんだぞ」
「タッピング家永よりは100倍マシですね。ロール、了解しました」
「金髪ツインテールなのも相まってなんか似ちゃったね」
「大丈夫だ。いざとなったらロックマンが助けに来てくれるから」
「本当? 来るのがもしバグのかけらマンだったらどうするのさ」
「ガッツマンの事バグのかけらマンって言うのやめろや! 良いだろ! ガッツマン助けに来て何が不満だよ!」
「ウイルス相手に普通に負けるじゃん」
「それ1だけだから! それ以降はちゃんと成長してるだろ! つーかガッツマンの話じゃなくてロックマンの話をしろよ!」
「いやゴレ娘vsの話をした方が良いのでは無いですか? コアの時にそんな事仰ってましたが」
「「そうだった……」」
「めっちゃバカじゃないですか」
代わりもない以上、俺はロールを操作して勝ち上がる必要がある。
ロールの経験値が虚無である以上、やることは一つ。
「コイツにある程度覚えてもらって誤魔化し誤魔化しやるしかないか……」
「え? 嫌です」
「拒否権は無い! お前には頑張ってもらう! ギアススクロールの為に! 俺も頑張るからやるぞ!」
「無理ですよどうせ。サンドバッグにされて終了ですよ。どうして態々私を傷みつけるのですか? 猟奇趣味をお持ちで?」
「諦めるな! 今までボコられて来たなら今度はお前が相手をボコボコのサンドバッグにしてやるんだよ! 今までの鬱憤を無関係の対戦相手にぶち撒けてやれ!」
「凄い、かっこいい事言ってる風なのに中身がカスたっぷりだ」
「……まぁどの道拒否権も人権もありませんから従いますよ。これからよろしくお願いしますクソマスター」
「好感度底辺なんだけど、どうしたらここから捲れると思う?」
「捲ったところでダンゴムシしか居ないんじゃない?」
「底辺の床引っ剥がしてどうすんだよ。憎悪の腐葉土しか出てこないだろ」
それから一先ず動かしてみようとなった。
辺りに散らばった工具を片してスペースを確保していると、オピスから腕輪のような物を差し出される。
「はいこれ、ロールのコントローラーね。これ付けて良い感じに念じると操作できるよ」
「すげぇ大雑把な説明来たな。本当にこれでいけんの?」
「やってみたら良いんじゃ無い? ロール! 少し動かすよ?」
「どうぞご自由に」
取り敢えず腕輪を付けて歩く様に念じてみる。
ズッデェェェェェェェン!!!
ロールは盛大にすっ転んだ。
顔面から行ったせいで表情は見えないが圧倒的な怒りを感じる。
「凸ᓀ‸ᓂ」←中指立ててる
「……ごめんなさい」
「至極真っ当な対応だね。加藤くんダメだよ。歩くならちゃんと右足左足交互に動かさないと。ただ歩けなんて念じたって両足同時に前に出て浮いちゃうんだから。浮遊感与えてる場合じゃ無いよ」
「もっと早く言えや!!! おいまさかこれ操作難易度がQWOP並みに馬鹿高いのか!? やばい出来る気しねぇ!」
「取り敢えずは歩けるようにならないと、戦闘なんて夢のまた夢だね。ロール、頑張ってね」
「凸ᓀ‸ᓂ凸」
「やべーよダブルファックサインだよ。侮辱の二乗させちゃったよ」
「好感度は底辺を通り越してオーバーフローさせるしか捲る方法無いみたいだね」
「現在阿鼻地獄落下中だと思うんですがそれは」
その後、30回やって何とかロールを歩行させる事に成功した。
転ぶ度にロールの視線からしねしねこうせんを送られたが、流石に俺が悪いので甘んじて受け取った。
ごめんマジで。
◇ ◇ ◇
「……やべ、寝過ぎた」
起きる気になれずに二度寝をかましたら既に昼だ。加藤はとっくに家を出ただろうな。
「はー……居候の分際で家事放棄とか情けねぇ」
流石に掃除はやらないと単なるカスだ。
今日は風呂のカビ取りをやる予定だったが……今からやってカビ取りの匂い消えっかな……。
「……ん?」
リビングのテーブルを見るとラップされた料理が置いてある。近くにメモ用紙も。
手に取って読んでみる。
『セラフィナへ。
今日宅配来るけど出る気ないなら出なくて良いから。一応飯用意したけど俺の弁当の余りものだし、気に食わなかったら適当に作れ。掃除も別にやらんで良い。
体調がもし悪いんだったら俺のかかりつけ医の住所書いとくからそこ行け。スケルトンの先生だから、偏見の目とか無いから安心しろ。良い先生だから。19時前には帰って来るから。今日くらい大人しく待ってろよ』
「……適当にLINEでも送ってりゃ良いのに」
テーブルに着いて料理のラップを外す。
冷めているが、それは弁当で持って行ったアイツのも同じだろう。
「……うめぇ」
静かなリビングでアタシの独り言だけが無駄に響いた。