ダンジョン中毒から抜け出したい【書籍化&コミカライズ決定】   作:1パチより4パチ派

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デートの約束はヤニ臭い

 

「ただいまー」

 

 何とかロールを歩かせる事が出来たので、今日の所は解散。また後日という事になった。

明日は探索者会合とか言うだる過ぎ案件があるのと、オピスが丁度用事があるとの事で練習は一旦無しだ。

夜空いてるから練習したいけど……俺1人だとひたすらロールを自爆しまくるマルマインにしてしまうので、大人しくしておこう。

 

「ああ、おかえり」

 

 リビングに入るとセラフィナがソファに座ってテレビを見ていた。

最近碌に付けてなかったから、音量に慣れない。

 

「めっずらし、テレビなんか見て」

 

「今飯出すわ」

 

「メモ書き読んだ? やらなくて良いって」

 

「お前の夕飯作らなくて良いなんて書いてないだろ」

 

「融通効かな過ぎだろ、国語の車検ちゃんと出した方良いぞ」

 

「生憎義務教育受けて無くてな、違法改造車で悪かったな」

 

「お前はシャコタンか何か?」

 

 そう言ってキッチンに向かうセラフィナの背中は覇気が無い。

昨日よりはマシになっているとは言え、まだ何かメンタルに来てるらしい。

 

「(コイツがこんなにしょぼくれてんの初じゃね?)」

 

 似合わな過ぎて最早面白いまである。

だがこれから常にこれだと非常に面倒くさいし何より俺が嫌だ。

セラフィナはいい感じにキレる方が似合うし。

そんな事を思いながら作ってくれた夕飯を食べていると、ふらっとセラフィナが2階に上がって行った。

絶対タバコ吸いに行っただろあれ。

 

「仕方ねぇなぁ、本当全く」

 

 食べ終わった食器を一先ず流しに置いて水に浸けた後、2階に上がる。

ベランダを覗くと案の定毒煙を吸い込んでる小さな背中があった。

特に返事も待たず、ベランダへの窓を開けて乗り込む。

 

「お前それ今日何箱目?」

 

「……10」

 

「吸い過ぎだ馬鹿。体ぶっ壊すぞ」

 

「こんなんで壊れる様な軟い体してねぇよ。散々触ってんだろお前」

 

「やばいクロスカウンターぶち込まれる想定はしてなかった」

 

 あと普通に体は柔らかいだろ。

死んでも言わんけど、何されるか分からんから。

さて……やるか。

 

「あ、おい!」

 

 セラフィナが吸ってたタバコを掠め取る。

そのまま口に運んで思いっきり吸った。

 

「フゥーーー……カーーーッ! セラフィナの唾付いたタバコうまごびゃぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

「キッメェェェェ!!!」

 

 全力のアッパーを喰らって俺の顎骨は砕け散った。

そのままベランダの床にぶっ倒れる。

 

「あ……わ、悪りぃ。流石にキモ過ぎてな……」

 

「ぼばっば、びょーびぼばべばばびぼょぶばば(良かった、病気とかでは無いようだな)」

 

 回復魔法をかけて骨を治しながら起き上がる。

やべ、口から噴き出た血でベランダ汚れた。

後で掃除しよ。

 

「なんでアホな事すんだよお前」

 

「明らか元気のないお前の体調チェックだよ。チームのリーダーとして、仲間としての気遣いだ。有難いだろ」

 

「人の唾ウメェとか言うのが気遣いになるのか?」

 

「ジョークだよジョーク。それくらい分かるだろ?」

 

「じゃあタバコ返せよ」

 

「これは没収だヤニカス。そんなバカバカ吸ってたら俺の家までヤニ臭くなるわ。いくら外で吸おうがな」

 

 セラフィナの隣で奪ったタバコを吸い続ける。

クソマジィし煙いし何だこれ。拷問だろ最早。

 

「よくこんな不味いもん吸えるわな。何が良いのかさっぱりだ」

 

「久々に吸ったら思ってた数倍不味かった」

 

「じゃあ吸うなよ。何? 不味い! もう1本! みたいな感じなの? 青汁的サムシング?」

 

「甘ったるい飴舐める気が無かっただけだ」

 

「ふーん、で? 何でそんな落ち込んでんの? マジで似合わないぞ」

 

「……何だよ。アタシは落ち込んでたらいけねぇってのか?」

 

「当たり前だろ、アホかお前。何でそんな良いツラがしょぼくれた顔してる訳? ふざけんなよ俺の為に笑ってろボケ」

 

「ハ、ハァ!? 何言ってんだお前!?」

 

「イライラするわぁ〜。そうやって隠すの。早く言えって。何とかしてやるから」

 

「……お前じゃ無理だ。アタシ自身の問題だからな」

 

「それを言えって言ってるんですけど? もっかい一緒に国語の勉強するか?」

 

「いらねぇよ……分かった。明日からは普通にすっから、それで良いだろ?」

 

 ダメだコイツ、何にも分かってねぇ。

……しゃーない。あの手だな。

 

「セラフィナ、お前明日なんか用事あんの?」

 

「明日? 何もねぇけど」

 

「俺明日、探索者会合に出る事になってさ。嫌々ながら行かないといけないわけよ」

 

「ああ、高木が毎回行かされてたやつか」

 

「そうそう。それで時間的に夕方には終わるから、予定空けとけよ」

 

「空けとくも何も、家で待ってるぞ」

 

「ああ、言い方悪かったな。お前明日の夕方から俺とデートな」

 

「………………………………はぁぁぁ!?!?」

 

 あっという間に烈火の如く赤くなるセラフィナの顔。

俺をホテルにドナドナする時や夜襲って来る時は平然としてるくせして何でデートって言った瞬間取り乱すんだよ。

思考回路がヴォイニッチ手稿過ぎる。

 

「家じゃ無くて駅前で待ち合わせな? 服装だけど、今着てる様な布面積がバチカン市国の着てきたら許さんからな」

 

「ちょ、ちょっとまって──」

 

「後このヤニは没収な」

 

「え、おい! 返せって!」

 

 セラフィナのタバコの箱とライターをぶん取る。

止めようとするセラフィナの額を人差し指で押し返すと驚くくらい大人しくなった。

 

「お前さぁ……デートするって決まったのにそんなヤニ臭がブレイキングダンスしてる口で来る気か? あり得ねー」

 

「なっ! い、いやそれはその……てか行くなんて──」

 

「家主権限で拒否は認めん。ちゃんと口臭ケアと服装何とかしてから来いよ。じゃあ俺は風呂入って寝るわ」

 

 言う事言ってさっさと家に戻る。

明日の探索者会合の場所は、家から無駄に遠いので電車に乗らないといけないのだ。

遅刻したらもっと面倒になるので早めに出ないと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、明日『楽しみにしてる』から。おやすみ」

 

「〜〜〜〜〜〜〜!!!」

 

 あの様子なら逃げる事は無いだろう。

久しぶりに精神的勝利を決めたので良い気分になりながらその日は眠った。

 

◇ ◇ ◇

 

 翌日、部屋から出てこないセラフィナをほっぽいて電車に乗る。

会合場所は俺の住んでる街の中心なのだが、俺の家がそもそも郊外も郊外なので距離がある。

そりゃ走れば電車より早く着くけど、会合自体乗り気じゃ無いので態々走る気力も無い。

遅刻しない程度にちんたら電車で行くのがマストだ。

 

「相変わらず無駄にデケェな」

 

 いつも高木が仕事してるらしいクソデカいビルに辿り着く。

まぁ仕事言うても全部ドラツさんに押し付けてるんだろうな、あのハゲ。

周りを見るとチラホラ見かけた顔がある。数年前に会話した様な記憶があるので、多分探索者だろ。

早いけどもう入ってしまうか、そう思った時に後ろから声をかけられた。

 

「あーそうよね。貴方リーダーだからそりゃいるか」

 

 この少し低めの女性の声は──!

 

「先生! ご無沙汰しています!」

 

「いや先生じゃないんだけど!?」

 

 高木にぶちかました呪いを作ってくれた先生、精霊族のエネロマさんじゃないか!

 

「先生のお陰で邪休(じゃっきゅう)さんを無事呪う事が出来ました! 効果は抜群です! 毎日魔女の一撃に怯える日々を送ってやがりますよ! ざまぁみろ!」

 

「一応もう一度聞くけどお仲間さんなのよね? 仲間呪いたいから呪詛組んでくれなんて初めてだったんだけど」

 

「仲間で親友です! 本当にありがとうございます!」

 

「私、貴方達が本当に分からないわ……」

 

 大恩ある彼女に礼を言った辺りで気づく。

エネロマさんは【勇者の集い】のメンバーだ。

でもリーダーでは無い。何でここにいるんだろう。そう思って聞いてみると……。

 

「え? 確かにリーダーは強制参加だけど、別にメンバーが他に居ても良いのよ? 電話とメールで説明書いてなかった?」

 

「高木ぃぃぃ! 黙ってやがったなぁぁぁ! クソ! 連れてきて良かったなら鶴岡とオピス道連れにしたのにぃぃぃ!」

 

「どうして仲間内でライアーゲーム繰り広げてるのかしら……」

 

 アイツ俺が面倒事に他人を巻き込む習性を持っているのを覚えてやがった。

ふざけんなよ、これでなんかあったら俺が全部責任負うじゃん。やだなぁ。

 

「お! 流石に資格剥奪は嫌で来たか【凶戦士】!」

 

「……気狂いマンこんにちわ。今日もいい感じに狂ってる?」

 

「こ、こんにちわ。ゆう……しゃさまなんでしょうか?」

 

「こんにちわ。取り敢えずそこの厚着死体女は後で泣かすとして、勇者では無いです。後凶戦士やめてください」

 

「……死体じゃなくてデュラハン」

 

 続々と【勇者の集い】のメンバーが集まって来る。成程、全員で来たのか。

つまり、あの人も居る訳で……。

 

「勇者様!!! お元気でしたか!?」

 

「きちゃった……」

 

 そう。今回の会合が嫌だった理由その1、リファルさんだ。

別にこの人が何か悪い事をした訳ではないし、個人的にも嫌いな訳ではない。

 

「今日は年に1度の探索者会合! 今回は去年と違い、チームのリーダーが出なければならない以上、勇者様が足を運ばざるを得ない……。復帰したばかりですし、分からない事もございますでしょう。私にいくらでもお聞きください!」

 

「あ、ありがとうございます……あと勇者じゃ無くて加藤です……。なので普通に加藤って呼んでくれれば……」

 

「そ、そんな! 勇者様をお名前で呼ぶなど……! し、しかし勇者様がそれを望むなら……全力で加藤様と呼ばせていただきます!」

 

「先生、助けて下さい。もうなんか俺への好感度が反転する呪いとか無いですか? 嫌われても良いですから」

 

「リファルは呪いを完全に弾くから無理ね……」

 

「もうこの人が勇者だろ」

 

 俺普通に呪い効くのに。まぁハイエルフとか言うエルフの完全上位互換だからなぁ。

確か王族しか居なかったと思うけど。

どっかの姫なんだろうか。

 

「あ、【勇者の集い】だ」

 

「あの近くにいる目つき悪い奴誰だ?」

 

「新メンバーかな、柄悪いしチェンジで」

 

 野次馬ってぶん殴っても罪に問われないかな。だって馬だろ? 野生の馬殴っても大丈夫だろ。ミンチ肉量産してやろうかな。

しかし我慢だ、ここで無駄に騒いでしまえば絶対騒ぎになる。

変に目立ちたく無いのだ、ここは俺が耐えて──。

 

「そこの貴方! 今何と言いましたか!」

 

「あぁん反応しちゃったぁぁぁん」

 

「何で喘ぐのよ!?」

 

「現実逃避したくて」

 

「……ちょっと気持ち分かる」

 

 マジかよ分かってくれるのかよ。泣かすと言ったのは撤回しとくわ。

リファルさんは俺の事を目つき悪いだのチェンジだの言った男達にツカツカと近づいて行く。

 

「今『目つきが悪い』や『柄が悪い』と言いましたね!」

 

「え、ええ!?」

 

「い、言いました……」

 

「それは間違いです! 加藤様が目が鋭いのは、幾多もの戦場を超えて人々を救い続けた故のもの! 戦いの中でなっていった謂わば人を救い続けた証なのです!」

 

「ってリファ嬢は言ってるけどどうなんだ?」

 

「生まれ付きです」

 

「加藤様の風貌が近づき難いのは、戦い続ける己に無辜の人々が近づいてしまえば傷付けてしまうかもしれない、と言う気遣いから行っている周囲への気遣い! それを侮辱してはいけません!」

 

「……ああ言ってるけどどうなの?」

 

「このファッションが好きなだけです」

 

「カットシャツとタイト系パンツは確かにガラ悪いかもしれませんね……」

 

「ダメかなぁ、気に入ってんだけどこれ。カーディガンのが良かったか? 今日会合終わったらデートだから着てきたんだけど」

 

「え!? 貴方デートするの!? ちょ、ちょっと聞かせなさいよ!」

 

「……何処の誰と? メンバー?」

 

「き、気になります! 教えて下さい!」

 

「うわぁ! いきなり食い付いてきたんだけど!?」

 

「浮ついた話が無さ過ぎて飢えてんのさ! 教えてやってくれや! ガッハッハ!」

 

「食い付きすぎだろ! 鯉の餌やりじゃねぇんだぞ!」

 

「まだ会合まで時間があります! それまでに貴方方に加藤様の素晴らしさを教えて差し上げます! さぁ行きますよ!」

 

「「いやぁぁぁぁぁぁぁぁ!」」

 

「教えんで良いわ! 何処に行こうとしてるんだよアンタは! せめてその人達解放してやれよ!」

 

 開始までの時間、俺は【勇者の集い】の女性陣からの質問責めを受けることになった。

リファルさんはずっと俺を誇張した『いかに俺が素晴らしいか』を演説し続けていた。

最早この人、俺のファンのフリしたアンチなのかもしれない。




リファルさんの台詞書くの楽し過ぎる問題
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