ダンジョン中毒から抜け出したい【書籍化&コミカライズ決定】 作:1パチより4パチ派
返信自体はしておりませんが、すべて読ませていただいています。
よく感想を送ってくださる方も居て、感謝しかありません。
いつも読んでくださり、ありがとうございます。
「高木ー、来たぞー」
「おー加藤、時間通り来たな」
「お前と違って遅刻はしないんだよ」
「まるで俺が遅刻常習犯みたいな言い草だな」
「事実だろ、この前も遅刻したし」
「あの距離を10分で行ける訳ないだろ。竹槍で戦闘機落とすよりムズイわ」
ビルの内部に入ると受付の辺りで高木とドラツさんが待っていた。
周りを見ると他の職員が慌ただしく動いている。
「さーて、そろそろ始まるから会場行けよな。4階な」
「どのくらいのチーム居るんだ? 俺が居ない時にも高レベル探索者増えたろ」
「いんや? あんま増えてねぇな。今回呼び出したのは全部で10チームくらいかな。まぁウチ以外はメンバー総出で来てるから人数だけは多く見えるけど」
「こっちも鶴岡達連れて来た方良かったんじゃねぇの? 何で態々黙ってたし」
「変に詐欺師と暴力装置連れて来たらあーだこーだ言われそうだったから」
「何一つ反論の余地が無い」
セラフィナは今は落ち着いてるように見えるが、初期の頃は酷かった。
多少の悪口でも相手をミンチ一歩手前にするもんだから証拠隠滅するのに苦労した。
鶴岡は金持ってそうな奴見つけたらすぐにそれっぽい事言って金巻き上げようとするし。
そう考えると、俺らも丸くなったもんだ。
今くらいがちょうど良いんじゃ無いか? 知らんけど。
オピス? アイツは昔からクソアイテム作ってばら撒くだけのウチの良心だから……。
「っと、【勇者の集い】も来てくれて感謝っすわ」
「運営の方ですね、加藤様のチームメンバーなのですか?」
「そうですねぇ、高木です。加藤とは親友ですよ」
「貴方親友なのに呪いかけられてるけど大丈夫? 組んだの私だけど……」
「いつもの事なんで。ははは」
「貴方達よく仲違いしないわね」
「先生、仲違いはしまくってますよ。よく分かんないけどすぐ元に戻るだけです」
「……最早腐れ縁通り越して愛」
こんなハゲに愛を感じるくらいなら中毒になったままダンジョンで一生を過ごした方マシだ。
エレベーターに乗って4階まで上り、案内に従って会場に向かう。
「……人多いなぁ」
広い会議場には椅子や机が置いてあるのだが、既に結構な人が座っている。
「加藤様! あちらが空いています! 私達全員座れますね!」
「あ、もう一緒に座るの確定なんすね」
「まぁ良いだろ! 隣に座ってやってくれや!」
「……狂気移ったりしないか」
「その小学校特有の〇〇菌移る〜ってのやめなよ、マジ良く無いそう言うの」
「まるで経験があるかのような説得力ね」
「黙秘します」
リファルさんに従って空いている席に着く。
すると周りの探索者からいきなり二度見された。
「ゲェ!? お前まさか【
「うわぁ気狂いだ! えんがちょえんがちょ!」
「俺はカラスの羽ですか?」
まぁ予想通りの扱いだ。俺達の評判なんてこんなもんである。
多分こいつらも数年前に俺らに迷惑かけられたんだろうな、可哀想。
「た、頼むから変な事するなよ……? 頼むから! 後話しかけるな!」
「リーダーに言われて参加したけど来なきゃ良かった……」
「加藤様にそのような言葉を吐くのはおやめください! 失礼ではありませんか!」
「リファルの言ってる事間違っては無いんだけど、あの連中が言ってるのも別に間違ってないのよね」
過去の俺達は完全に悪い探索者の見本みたいな状態だった。態度は悪いしダンジョン占有するし酒癖は悪いし。
良いところなんてそれこそドロップ品を格安で流して相場を抑えてたくらいだろ。
リファルさんは人の悪い所を見た方がいいと思う。
「あ、あの……」
「? あーはい。えっと名前は……」
「セーリスです。加藤さん……でしたよね。私最近探索者になったばかりで貴方方の事を知らないんですけど、どうしてこんなに評判が悪いんですか?」
「……前にも言ったけど、散々好き勝手暴れてたから」
「そ、それは聞きました! でも本当にそれだけですか? 他の探索者も迷惑行為をしてる者は居るじゃないですか。加藤さんのチームだけやけに言われているような……」
「確かにな。お前さんらが好き勝手してたのは事実だが、他の連中もやらかしてるしなぁ」
「さぁ……? 俺的には妥当な反応だなとしか思えないんで……」
でもいざ言われてみると、反応が少々過剰過ぎるなとは思わなくもない。
少なくとも捕まるような犯罪はやってないし。
変に尾ひれが付いて話が大きくなったのだろうか。
「……どうやら貴方、敵が多いみたいね……」
「そうですね、どいつもこいつも俺をダンジョンに引き摺り込もうとしやがる。許せねぇ……」
「いや貴方の仲間の話じゃなくてね? ほら、あっちあっち」
今の俺の敵なんて仲間共だけの筈だが。
先生が指差す方に視線を向けると、腕組みしながらこちらを睨んでる探索者達が居た。
「なんかめっちゃ睨まれてる。誰あれ?」
「誰って……ああ、貴方確か私達のことも全然知らなかったわね。なら仕方ないか……あれは探索者チームの中でもずば抜けて金に汚い【金工房】の連中よ」
「名前にまで金入れるとかどんだけ金好きなの? 思考回路が子供に光宙って名前付ける馬鹿親と同じなんだけど」
「どこのチーム名も似たようなものじゃない。貴方達の【自我中心】だって酷いっちゃ酷いわよ」
「あの時はいいと思ったんです! 全員酒飲んで高木以外酔っ払ってた結果出来たキラキラネームなんです! 正直変えたい!」
「俺は好きだぞ! もっと自信を持てって! ガッハッハ!」
【金工房】の連中は俺だけと言うより、リファルさん達も纏めて敵視しているように見える。
俺やリファルさん達との共通点は……。
「もしかしてアイツらが高レアアイテム溜め込んで相場バカ上げしてる連中?」
「そ。何でも今色んな企業買収したりして好き勝手やってるみたいよ? その為に少しでも金が欲しいんですって」
「金欲しいなら売れば良いんじゃないの? 何で溜め込むん? 今でも充分なくらいアホな金額動くのに」
「それがよぉ。連中どうも、高レアアイテム……ランクS以上のアイテム自体を世の中に出回らせたく無いらしくてなぁ」
「なんで???」
「加藤様、私達も同じ疑問に至ったので調べたのですが……彼らはどうも、高レアアイテムのレンタル業をやっているようなのです」
「レンタルゥ?」
リファルさんから聞き慣れない言葉が聞こえた。レアアイテムレンタルって何やねん。DVDじゃねぇんだぞ。
それなりの年数探索者やってたが聞いた事ないぞ。
「消耗品や素材アイテム以外で、あるだけで凄まじい効果を発揮するアイテムとかあるじゃない。【変貌の壺】とか【永電宝玉】とか」
「あのリサイクルボックスと発電機を売らないで貸し出しで金稼いでるって事です?」
「今の2つ以外にも、現状見つかっているレアアイテムはほぼ網羅しているらしいわ。流石にSSSは格が違うからアレだけどね」
つまり連中はTSUTAYAのぼったくり版と言う訳だ。ダンジョンとは無縁、だがレアアイテムの力は欲しいと言う人間や企業相手に荒稼ぎしているのか。
「物が出回れば『借りるくらいなら買うか』ってなるしな。稼ぐ為にも高レアアイテムは少ない方がいいってか」
「……レンタル代もぶっ飛んでる。前までだったら本体買ってもお釣りが来る程の額で貸してる。めちゃめちゃ評判悪いけど、貸し借り業はあそこが独占してるから選択肢が無い」
「そんなにぼったくってんの!? 鶴岡が聞いたらアイツらの血でアカい旗作りかねんな。黙っとこ」
思ったよりカスだった。流石高レベル探索者、他人なんざ知ったこっちゃねぇ精神が極まっている。
ちょっと親近感が湧くのが最悪だ。
「そんな連中からしたら、そりゃリファルさん達は目障りになるか。自分らの金減らしてるようなもんだし」
「他のチームも似たようなものよ。消耗品……エリクサーとかのアイテムだって態と絞られてる。製薬会社と組んで、自社のポーション買わせようとしてるのよ。とんでもない額のをね」
「私達も努力している方なのですが中々……。たまに市民の方から嘆願の手紙を受け取るのです。高過ぎて手が出ない、出せる分を出すから取ってきて欲しいと……」
「……命に関わる物を取り上げられてたら、藁にも縋って手紙も出す」
加奈子さんも探したけど無かったと言っていた。
だから俺と高木がダンジョン潜った訳だし。
そうか……アイツらが今好き勝手してんだなぁ。
『時間になりましたので、探索者会合を始めたいと思います』
部屋にドラツさんの声が響く。軽い説明をした後、早速それぞれのチームの現状やダンジョンに何か異常は無いかなどの話が始まった。
俺は特に無いのでよく分かりませんbotと化して適当に時間を過ごしていたが、話題が現在の市場状況に移った瞬間、空気が変わった。
『現在、今まででは考えられない程のインフレが発生しています。特に高レアアイテムはそれが顕著。運営と国が定めた定価の5倍ならまだ安いと言う状態になっています。運営側としましては、高レベル探索者の皆様にはもう少し市場に流して頂きたいのですが……』
ダンジョンでドロップしたアイテムは必ずダンジョン運営に報告する必要がある。
これは出たアイテムを把握しておかないと、偽造品が出回る可能性があるからだ。
過去にアホみたいにエリクサーのパチモンが出回ったらしい。チョイスが最悪過ぎる。
「少々良いだろうか」
『【金工房】様、発言をどうぞ」
「そもそもの話だが……今までが安過ぎたのだ。考えても見てくれ、高レアアイテムを手に入れる労力は尋常では無い。我々とて己の力で何とか手に入れた物だ。今の価格が最低ライン。探索者のことを考えるのであれば、もっと価格は上げていくべきだ」
「……よく言う。自分では既に潜らないで、過去に一山当てた金でフリーの探索者をコキ使ってるだけのくせに」
「これは我々……高レベル探索者チームの総意だと思って欲しい。……一部を除いてだが」
デュラハン女の呟きを聞いたのかは分からないが、【金工房】の男は偉そうにベラベラ話した後にこちらを睨んでくる。
「……発言権を」
『【勇者の集い】リーダー、リファル様。どうぞ』
「金銭を稼ぐ。それ自体は否定致しません。生きて行く以上必要な事です。ですが、それも過ぎれば悪です! 今皆様がやっている事は一般の方達に過剰な負担を強いて私腹を肥やしているのと同じ! 何も損をしろと言っている訳ではございません! あくまで定価、もしくはそこに近づける為に市場へ──」
「負担を強いているとは言うが、それが嫌なら買わなければいい。簡単な話では無いか」
「生活や命に関わる物を嫌なら買うなは通りません! それは生きるなと言っているのと同じです!」
「この国は資本主義だ。それが当然。はっきりして貴女には非常に迷惑している。そちらが市場に高レアアイテムを流し続けるせいでインフレが止まっている。即刻やめて欲しい」
「これ以上価格をあげれば最早一般人も企業も絶対に払えません!」
「故に我々が居る。手頃な価格でアイテムを貸し出す。そうやって経済は回るのだよ。まぁ所詮戦う事と人助けしかした事の無い貴女では、理解出来ない話かもしれないがね?」
「ッ──!」
リファルさんが言葉に詰まってしまったのをチャンスと取ったのか、【金工房】のメンバーやそれに同調するチームからの野次が飛んでくる。
「探索者なんだったら一般人なんて考えてるんじゃ無い。全くバカな女だ」
「勇者ごっこは他所でやっていろ。田舎で獣でも狩っていたらどうだ?」
「今の状態が私達探索者の為なのも分からないなんてねぇ。頭悪いのかしら」
次々と飛んでくる罵倒の言葉。
【勇者の集い】のメンバー達が立ち上がろうとしたが、リファルさんが手で制す。
ここで他のメンバーが立って言い返せば、発言権も無い者が騒ぎ立てる事になる。
間違いなく非常識と揶揄されるだろう。
リファルさんは仲間がそんな事を言われるのを避けたのだ。
「………………ッッッ」
言葉に詰まってしまったリファルさんの手と口は、悔しそうに震えている。
綺麗な顔は平常を保とうとしているが、歯を食いしばっているのが分かる。
それを見て勝ったと思ったのか、ヘラヘラヘラヘラ笑い続ける他の探索者達。
どうしてこの人がこんな目に遭わなきゃならないんだ?
リファルさんは何も間違った事は言っていない。金を稼ぐのは良いが自重しろと言っただけだ。
なのにコイツらは自分達の都合で無視するどころか、お前がおかしいと誹謗している。
確かに俺はリファルさんが苦手だ。初対面の時なんか殆ど話聞いてくれなかったし、今でもずっと俺を勇者だなんて勘違いし続けている。ただのダンジョン中毒者なのに。
でも、嫌いでは無い。だって普通に良い人ではあるからだ。
この人より人格者の探索者を、俺は知らない。
周囲の事を考えて、己の損得を考えず、誰かの為にとダンジョンに潜り、手に入れたアイテムを公平に行き渡るようにする。
勇者とはこの人にこそ相応しい名称だ。
リファルさんと知り合った後に軽く彼女の事を調べたが、無限と言って良いほど彼女の善行が溢れてきた。
俺なんかと比べたら天とマリアナ海溝くらいの差がある。
そんな彼女は勘違いとは言え、俺に好印象を持ってくれている。
俺に普通に接してくれるだけでも珍しいのに、尊敬の念なんて受けた事のは初めてだ。
そう思うと、凄まじく苛立ちが湧いてきた。
何だコイツら、すげぇ腹立つ。
「(あれ? と言うか……そもそもコイツらのせいで、加奈子さんは迷惑したのでは?)」
だってコイツらが黙ってアイテム流してれば、俺が渡した宝玉を売った金でエリクサー買えただろ。
早く買えてたら加奈子さんのお母さんは長く苦しむ必要なかったし、何より──。
俺の恩人が泣く必要も、無かったのだから。
『! ……【
発言権を確保したので立ち上がる。
この会合はチームのリーダー以外の発言は禁止されているが、俺は普通にリーダーなので問題ない。
「さっきまでの話黙って聞いてましたが……私は【勇者の集い】の考えを支持します」
一気に向けられる視線。敵意と殺意が篭っているが大した事無いので無視する。
「そして思った事があります……。今我々探索者がこうして活動しているのは、決して我々だけの力では無い。運営や国もそうですが、日常生活を送れているのは一般の人や企業が居るから。探索者だけで国なんぞ成り立ちません」
高木にアイコンタクトを送る。
会合が始まってからずっと黙っていた高木はそれに気付いた。
そしてお互いに──口角を大きく上げた。
「(い い よ な ?)」
「(オーキードーキー)」
「え、何? めちゃめちゃバケモンみたいな顔してるんだけど」
息を吸い込んで大声で宣言する。
「ですので! 私が率いる【自我中心】は! 今後ダンジョン探索で手に入れた高レアアイテムはぜーーーーんぶタダで市場にぶん投げまぁぁぁぁぁす!!!」
『はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!?!?』
会場中が理解不能の声を上げ出す。
さっきまでヘラヘラしてた連中の顔が一瞬で困惑に変わっててクソおもろい。
「今我々のチームは1週間に1度はダンジョン探索をする事なっていますのでぇ……超高難易度ダンジョンにのみ潜ってそこのアイテムは全て取引所の方に産地直送! 一般の方達にもレアアイテムが手に入って欲しい! その想いだけで我々身を切る覚悟であります!」
「ふ、ふざけるなぁ! 貴様がやっている事は単なる市場の破壊だろう! そもそもそんな事をすれば貴様らが一銭も儲からんでは無いか!」
「元々金には困っておりません! 共にこの国を生きる仲間の為に、誠心誠意頑張らせて頂きます!」
「お、おい! 運営! これはおかしいだろ! こんな事をすれば定価すら割れるぞ! それはお前らや国にとっても良くないだろ!?」
【金工房】のリーダーは運営側の人間にそう叫んだ。
だが残念、そいつはこちら側だ。
「いやぁ〜我々運営側としましても現状の相場価格は不味いと思っていましてぇ〜。所謂カンフル剤として期間を決めて行うのであれば問題ないと判断する次第ですぅ〜」
「そんなカンフル剤ある訳無かろうがぁ!」
「ですが皆様が出し渋ると言うのであればぁ? これも仕方ないかとぉ?」
「ぐっ……わ、分かった! ある程度は流すようにする! だからアレを止めろ!」
「いやいやそんな! 善意100%の行いに水を差すなんてそんな大それた事出来ませんですはい〜〜〜」
「害意100%の間違いだろうが! 明らかに我々に対しての嫌がらせでは無いかぁ!」
「人々の為に無償で頑張る! 【自我中心】の加藤です! よろしくお願いします! 清き一票を!」
「黙れ気狂い党! こんなの認められるかぁぁぁ!」
「「ギャハハハハハハハハハハハハ!!!」」
叫ぶカス共を相手に高木と高笑いして受け流す。
文句あんならかかってこいや、ぶちのめすぞ。
同じカス同士なら遠慮なんかしない、例え俺らが損しまくっても──お前らに大損こかせてやるよぉ!!!
「か、加藤様……」ポッ
「ダメよリファル。ほんとにダメ。それだけはダメ。お願いだからやめて、頬を染めないで」
「……あれはただ嫌がらせがしたいと言う感情しか無い。騙されないで」
「え!? わ、私はなんて立派なんだって思ったんですけど……」
「セーリス、お前さんも人を見る目を鍛えた方がいいな! ガッハッハ!」
訳 「お前らの持ち株暴落させちゃうもんねぇーーー!」
主人公の姿か……? これが……?