ダンジョン中毒から抜け出したい【書籍化&コミカライズ決定】   作:1パチより4パチ派

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お嬢様はパパラッチ

 会合は俺へのブーイングが大盛況の中終わりを迎えた。

突っかかってくる奴らに全力の煽り顔をしながら『えぇ!? もしかして税金免除すら受けてるレベルの探索者のくせに、多少の損も我慢ならない!? えー!? 高レベル探索者のくせに!? うーわまじかー! 酷いわー! 一般の人達可愛そー! もうちょっと思いやりとか考えた方いいですよ! こころのノート、母親の体に忘れちゃいました? 貸しましょうか???』とか言ってたら憤死しかねない勢いで襲いかかってきたので腹パンしておいた。

めっちゃ痛がってた、腹筋が弱いのかな。

 

「じゃあ俺は失礼しますね。予定あるし」

 

「は、はい……加藤様、また会えますか……?」

 

「え? そりゃ……会うでしょ多分」

 

 同じ探索者だし。アイテムを取引所に持ってく際に会う事もあるだろう。

てか何でこの人顔赤いの? 風邪? 移されるのやだな、マスク持ってくりゃ良かった。

 

「じゃあリファルさん、先生! 他の方々もこれで!」

 

「ああ、うん。そうね。またいつかね。……どうしよう」

 

「……まず落ち着ける場所に行って説得から」

 

「問題が1つ良くなりそうと思ったら1つ増える辺りままならんな!」

 

「リ、リファル様ぁ……」

 

 悲壮感溢れる先生達に疑問を持ちながらも、会場を後にする。

途中、高木が近づいてきたのでハイタッチしておいた。流石は親友兼同類。大学で初対面なのに意気投合しただけある。

まぁ最近の行動は腹立つけど。

 

「てか何も考えずにあんな事言ったけどやばかったりする?」

 

「いや? 事実高過ぎるし丁度いいだろ。それに【金工房】の連中もだけど調子乗ってたから気分いいぜ。早くダンジョン行ってアイツらの資産どれだけ削れるかゲームしようぜ」

 

「今週はもう行ったから……」

 

「お前あんだけノリノリだったくせに嘘だろ? これからダンジョン潜りまくるぜって言う決意表明じゃ無い訳?」

 

「それはそれ、これはこれ」

 

「……まぁ時間の問題か! どうせその内前のお前に戻るだろ! で? この後予定あんの? 無いなら飯でも食いに行かね?」

 

「すまん、この後そのまま用事なんだわ」

 

「用事? なんの?」

 

「お前にだけは言わん。じゃあな」

 

「あ、おい! ……まぁ良いか。今度勝手に飯時に家入り込めば」

 

「……支部長」

 

「ん? おードラツ、どうかしたのカカロットォォォォォ!!!」

 

「何ですか先程のは。ふざけてるんですか、加藤さんもそうですがどうして態々煽るんですか。今日は容赦しません。絶対に第3の目開眼させてやります」

 

「根性焼きしたところで悟れる訳ねぇだろぉぉぉ!!!」

 

◇ ◇ ◇

 

 駅前だからか、時間が帰宅時間なのも相待って人通りがやたら多い。

 

「……これ大丈夫だよな?」

 

 今日の午前中、服屋に行ってマネキン買いした服を着て加藤を待つ。

サテンカーゴスカートだか何だか言うピンクのロングスカートと白のシャツにネイビーのダブルジャケット……自分でも何言ってるかさっぱりだ。

レシートにはそう書いてたから、名前は合ってるはずだが。

 

「……前髪変じゃねぇよな?」

 

 家から持ってきた手鏡で確認する。

特に変わらないいつもの髪型。そもそもショートだからここからどうこうしようが無い。

 

「な、何で緊張してるんだアタシ……」

 

 デートなんざした事が無い。何だ、何をすればいいんだ?

キャバ嬢時代の他の嬢は確か……。

 

「おーい、こっちこっち」

 

「お、おう! 来たな! 遅ぇぞ!」

 

「いや時間通りだけど……まぁ待たせたなら悪かったな。じゃあ行くか」

 

「よし! 今から予約して部屋取るから少し待て!」

 

「お前の頭はマチアプに生息してる恋愛経験値0のおっさんか? 部屋の予約とか要らないから」

 

「そ、外ぉ!? 嘘だろぉ!?」

 

「やっぱ帰ろうかな、俺」

 

「わ、悪かった、待て。頼む帰らないでくれ」

 

「ズボン引っ張んなや! 伸びるわ! とにかく落ち着け!」

 

 頭をスパァンと叩かれて漸く我に帰った。

何やってんだアタシ、アホなのか?

 

「全く……まぁ服装はちゃんとしてるから取り敢えずは良しか」

 

「マネキン買いしたんだが、変じゃねぇか? やっぱ脱いだ方良いだろ?」

 

「お前どんだけ脱ぎたいんだよ、脱皮寸前のザリガニじゃねぇんだぞ。着てくれって言ってんじゃん」

 

「いや落ち着かなくてよ……布面積多いと」

 

「肌呼吸の使い手ですか? 変じゃねぇって。はよ行くぞ」

 

 そう言ってアタシの手を取って歩き出す加藤。

やべぇ恥ずい、逆に何でコイツはこんなに余裕なんだ?

 

「ど、どこに行くんだ?」

 

「ん? 流石にまだ夕飯には早いからな。映画でも見ようと思ってんだけど」

 

「何の映画だ?」

 

「なーんも考えてねぇわ、お前なんか見たいのあんの?」

 

「映画なんか見ねぇからな……分からねぇ」

 

「じゃあ適当なやつ見るか」

 

 いつも通りのような会話。加藤があまりにも自然体だから、こっちも少し落ち着いてきた。

駅前の近くの映画館に向かっている最中、アタシの手を引き続ける加藤に尋ねる。

 

「なぁ、何で急にデートなんざ言ったんだ?」

 

「え? お前が俺に惚れてるとか言ってたからデートしたら元気出るんじゃね? って言う浅はかな考え」

 

「普通通りに戻るって言ったろ?」

 

「いや無理だろ。お前があの時の自分を鏡で見たら多分イライラしてぶん殴るぞ。そんくらい酷かった」

 

 そんなにか。そんなに酷かったのか。

……無駄に心配させちまったな。

 

「……あんま気にすんなって。ほら、行くぞ。良かったなぁ! 好きな男とデート出来て! 幸せだろう! さっさと元気出せや!」

 

「お前自分で言ってて恥ずかしく無いのか?」

 

「恥ずいわ! でもそれよりも同じ家に居る奴のテンションが低空飛行通り越して不時着してるのが嫌だし気に入らないんだよ!」

 

「……ククッ、何だよそれ」

 

「うるせぇ! とっとと行くぞ!」

 

「わーったよ。ちゃんとエスコートしろよ?」

 

「舐めんなよ? こちとらお前なんざより恋愛経験値稼いでるんだよ。余裕だわこんなん」

 

「でも振られただろ? アタシ的には有り難かったけどな、排除する手間省けて」

 

「怖い事言うな! あとわざわざ傷口ほじくるな!」

 

 加藤の表情は、アタシを引っ張る形で前を歩いているから分からない。

ただ、耳や首が赤いのは夕日のせいでは無いのだけは分かった。

 

 

◇ ◇ ◇

 

「はー……全く。肝が冷えましたわ。こちらにまで飛び火しなくて本当に良かった……」

 

 探索者会合が終わってフラフラと歩く。

【自我中心】のリーダーが現在の相場をぶっ壊す宣言をしたせいで会場は大荒れ。

沈黙を貫いていた(わたくし)まで【金工房】のメンバーにあーだこーだ言われてしまった。

でもなぁなぁで済ませれたので、ひとまずは良いだろう。

 

「もう! 相変わらず高レベル探索者は碌なのがいませんわ! マトモなのは【勇者の集い】と私だけじゃありませんの!」

 

 ……まぁ私も【金工房】やそれに同調する探索者達に文句が無いわけではない。

現在の高レアアイテムの値段は気が狂ってるレベルだ。

私もかなり足が出てる、必要だから仕方ない事とは言え……。

 

「フリーの探索者にも、早く優しい世の中になって欲しいものですわね……」

 

 目的の為とは言え、1人は厳しいものがある。

本当は仲間が欲しい、我が国を救うにはどう考えても人手が足りない。

目的の品と頼りになる戦力……それを求めてこの国に来たのだが……。

 

「どの国も探索者は自分勝手なのですね……参りましたわ、このままだと本当にフリーのぼっち探索者としてこの国に骨を埋めることに……!」

 

 もう3年目なのに自分が強くなった以外は何の成果も無い。

どうしよう、こうなったら誰かの弱みでも握って無理やりにでも協力を──。

 

「あら? あそこに居るのは……【自我中心】の加藤……?」

 

 見覚えのある背中は駅の方に向かって歩いている。

あまり彼の事は知らないが、どうも私がこの国に来る前までに暴れていた悪名高い探索者。

だが実力は凄まじく、高難易度ダンジョンを易々と周回出来るレベル。

 

「彼の弱みの1つでも手に入れられたら、協力させる事も出来るのに……」

 

 そんな夢物語を夢想しながらもボーッと彼の姿を眺めていたのだが……。

 

「……え? 小学生?」

 

 赤いショートカットの女の子に近づいていく加藤。

気になって聴覚強化の魔法を使い、彼らの会話を盗み聞きしてみる。

 

『よし! 今から予約して部屋取るから少し待て!』

 

「へ、部屋ぁ!?」

 

 聞き間違いだろうか、女の子の方からとんでもない発言が聞こえてきた。

いや落ち着け、もしかしたら親子かもしれない。彼も成人男性だ。子供が居たとしても不思議では──。

 

『マネキン買いしたんだが、変じゃねぇか? やっぱ脱いだ方良いだろ?』

 

「脱ぐぅ!?」

 

 いや、まだだ。まだ落ち着け。加藤の方が制止してるし、単に似合ってないから着替えると言う意味なだけかもしれない。

勘違いしてはいけない、いくら彼が気狂いと言われていようとそこまでの筈が──。

 

『あんま気にすんなって。ほら、行くぞ。良かったなぁ! 好きな男とデート出来て! 幸せだろう! さっさと元気出せや!』

 

「ロリコンだぁぁぁぁぁ!!!」

 

 間違いない! 彼は小学生をグルーミングして恋人にしているとんでもない犯罪者だ。

何と言う事だ、まさかこんな形で弱みを握ってしまうとは。

 

「……この様な事、本来褒められた事ではありません。ですが! 祖国の為ならば私は悪魔に魂も捧げましょう!」

 

 その為にも決定的証拠が必要だ。

それこそホテルに連れ込むレベルの物が!

流石にそんな弱みを出されたら、彼とて私に協力せざるを得ない!

 

「スニーキング……開始ですわ!」

 

 撮ってみせる、スーパースキャンダルを!

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