ダンジョン中毒から抜け出したい【書籍化&コミカライズ決定】   作:1パチより4パチ派

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お砂糖 スパイス 太陽なものをいっぱい

 

「……遅いね」

 

「クソマスターからの連絡は無いのですか?」

 

「いやそれが『遅れる助けてまだ終わらない』ってメッセージは来たんだけどそれっきりだね。ちなみに来たのは3時間前」

 

「今日はもう来ないのでは? スリープしても良いですか? 死ぬほど疲れてるので起こさないでください」

 

「ゴレ娘は疲れる筈無いんだけどなぁ」

 

 待てど暮らせど加藤くんが来ない。彼はちゃんと時間を守る人間なので、こう言うのは珍しい。

 

ガンガン

 

「あ、来たみたい」

 

「チッ、また私が自爆する特訓が始まるのですか。もういい加減にして欲しいです。良いじゃ無いですか、もう優勝賞品なんて。そもそも本物かどうかも怪しいですよ。絶対偽物でしたーってオチで終わりですって」

 

 ブツブツ話続けるロールを放置してドアを開ける。

 

「はーい、加藤くん。遅かった……あれ?」

 

「よぉオピス。久しぶりだな」

 

「セラちゃん? どうして加藤くんを担いでるの?」

 

「今日会う約束してたんだろ? 加藤が動けなかったから連れて来た。どうせ家の通り道だったしな」

 

 ズカズカ室内に入ってきて置いてあった椅子に加藤くんを座らせるセラちゃん。

……あれ? てか秘密じゃなかったっけ。

 

「ん? ……あぁ、そいつがゴーレムか。よく分からねぇけど大会出るんだろ?」

 

「あれ? 知ってるの? 加藤くん絶対秘密だって言ってたのに」

 

「安心しろよ、何もしねぇから。何だったらギアススクロール手に入ったらサインもしてやるよ」

 

「……意外だな。セナちゃん、あんなに加藤くんに戻って欲しがってたのに」

 

「んー……もう良いんだわ。アタシは今の加藤を好きになってみせるって決めたからな。な? 加藤?」

 

「……ぁ」

 

「じゃあ夜までには帰って来いよ? 飯作って待ってるからな」

 

 そう言ったセナちゃんは満面の笑みを浮かべながら加藤くんの顔を掴んでそのままキスをした。

 

ジュルルルルッ! ジャブバッ! スボボボボボ! キュゴゴゴゴゴゴゴ!

 

 これキスじゃ無いね、捕食だね。

音が完全に脳みそ啜ってるエイリアンしか出せない音だもの。

加藤くんめっちゃ痙攣してるし。

まぁ音はエグいけど見た目は普通のキスだしギリセーフか。

 

「ねぇ大丈夫? そろそろ離れないと死ぬんじゃない?」

 

「プハッ……大丈夫だ。加減くらい分かってる。それに努力するって約束したからな」

 

「これが努力に分類されるならドラクエのリップスは努力値カンストしてるね」

 

「んじゃ帰るわ。じゃあなオピス。帰ってきたらまたしような、加藤」

 

 目を細めて慈しみの表情のまま、プレハブ小屋を後にしたセラちゃん。

痙攣する加藤くんからの返事は無い。

 

「」

 

「動きませんね」

 

「多分立てないんじゃないかな。二重の意味で」

 

「帰ったらまたと言ってましたが、このままだとマスターの命が危ういのでは? 流石にまた主人無き子になりたく無いのですが」

 

「ああ大丈夫大丈夫。加藤くんって適応能力凄いからさー。数日続けば適応出来るよ。どれだけ過酷な環境でもね」

 

「クマムシみたいな生態ですね」

 

「乾眠してるだろそれ! ざけんな!」

 

「あ、再起動した」

 

 そこら辺に転がってた棒を杖代わりにしてフラフラと立ち上がる加藤くん。

酷くやつれている、何があったかは明白だね。

 

「無理しない方いいんじゃない? 足がマナーモードの西野カナくらい震えてるけど」

 

「それは只の黙ってるだけの西野カナでは?」

 

「今だけは会いたくねぇ……マジ会いたくねぇよ……」

 

「重症では? 何があったのですかマスター。まぁナニなのは分かりますけど」

 

「……実は昨日──」

 

 加藤くんから昨日の顛末を聞かされる。

ああ、成程ね。ブレーキ壊れちゃったかぁ……。

 

「うん! 加藤くんの自業自得だね!」

 

「何でだぁぁぁ! どう考えてもセラフィナが暴走しただけだろ!」

 

「それマジで言ってる? だとしたら流石にヤバいね。そもそもセナちゃんは加藤くんが恋人いる時から好きだったんだよ? それが実ったらそりゃ嬉しくてサキュバスの血が騒ぐよね。良かったねー、これがサキュバスそのまんまだったら加藤くん既に枯れてるよ。マジで」

 

「そんなに!? まさか前まで襲ってきてた時のは手加減してたん!?」

 

「両想いって知らなかったからでしょ。だって昔から君がセラちゃん褒める時って戦闘面と容姿だけだったし。抑えてたのがぶっ壊れたらああもなるねー」

 

「……よし、先送りにしよう。そうだ、俺はまずはギアススクロールを手に入れないといけないんだ。セラフィナの件は後で考えよう」

 

「どうせ家帰ったら会うのに? 帰ったらまたしようって言ってたよ」

 

「いやぁぁぁぁぁ!!! 嫌だ! 本当にやだ! 昨夜から頭の中でアイツの顔と肌しか浮かんでこねぇんだよぉ!!! 何なんだよマジで! いっちゃん腹立つのが脳裏に過ぎるアイツに不快さを1ミリも感じない自分自身なんだよぉぉぉ!」

 

「忘れられない夜になったんだね、良かったじゃない。帰った時それ教えてあげなよ。喜んでもっと激しく鼻フック!!!」

 

「オォォォォォピスくぅぅぅぅぅんんんん!!! 俺は今ひっじょぉぉぉぉぉうに機嫌が悪いんだわぁ! 言葉を選ばないと、君の鼻の穴は超次元ホールになってサイキッククリーチャーを召喚する事になるよぉぉぉ!?」

 

「いだだだだだだ! やめてぇ! せめてドラグハートにして! それならそこまで痛く無いかもぉ!」

 

「右からガイハート、左からギガハート出させてやらぁぁぁ! 龍解ぃぃぃ!」

 

「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

「……特訓はどうなったのでしょうか」

 

◇ ◇ ◇

 

「はぁ……はぁ……よし。少し落ち着いた。練習するぞ練習するぞ練習するぞ」

 

「ねぇ僕の鼻完全に拡張されたんだけど。これ治るかな」

 

「洗濯バサミで摘んどけや。そのうち治るだろ」

 

「酷いなぁ。僕にはおちょくる権利すらないのかい?」

 

「生きる権利剥奪されないだけ有難いと思え」

 

「キレ過ぎでしょ。スマホの充電コード?」

 

 今の俺は相当余裕が無い。多少の煽りでもマジギレする自信がある。

畜生、今日外泊しようかな。帰りたくねぇよ。

 

「ロール! 今日はお前を絶対転けさせない! 約束するぞ!」

 

「針千本の用意しときますね」

 

「破る事前提やめろや。泣くぞ」

 

「鳴いていたのは昨夜のマスターなのでは?」

 

「俺お前の事嫌いかも」

 

「私もマスターの事、嫌いかもしれません」

 

「何だ、気が合うな」

 

「そうですね」

 

「「ハッハッハ!」」

 

「これがマスターとゴレ娘の関係だとは思えないなぁ」

 

 仲が悪かろうと戦えればそれで良いのだ。

早速操作用の腕輪を装着する。

 

「……よし、歩行は大丈夫だな」

 

「あーそうそう。ロールなんだけど、少し改造しようと思ってね」

 

「改造? レギュのせいでパーツ固定だろ? 武器も見えるようにしないといけないし」

 

「うん、でも別にパーツを魔改造してはいけないと言うルールは無いからねぇ。僕も自分のゴレ娘は改造しまくってるよ」

 

「改造……やればシンプル強くなるのか?」

 

「物によるけどね。少なくともやらないで挑むよりは、勝率上がると思うよ」

 

「良いね。ロール、改造するけど良いか?」

 

「拒否権ありせんので。どうぞ、見た目美少女の体を好き勝手お触り下さいドスケベ大将軍」

 

「夜の繁華街に尻のパーツだけ持ってって、1回500円で引っ叩く商売されたくなかったら大人しくしとけよ」

 

「それマジックおしりでは? それで改造だけど、どんなのが良い? 操作する人がやり易くないと意味無いからね」

 

「そらお前、見ただけで相手即死させるとか戦わずして完全勝利! 出来る改造が良いに決まってんだろ」

 

「ゴレ娘に何を求めてるの? それ許されるのチート物だけだから」

 

「そろそろ俺も順風満帆な流れが来る頃だろ、何やっても上手く行く、勝ちまくりモテまくりの時期がさぁ」

 

「モテてはいるでしょ」

 

「変なのからしかモテないんだけど。同じ極だと反発し合う筈なのに」

 

「磁力じゃなくて万有引力だからね。僕達変なのから逃げられると思わない事だよ」

 

「帰ったらニュートンのアンチスレ建てよ。もう改造の方はよく分からんから、取り敢えず良い感じにしてくれ」

 

「雑だなぁ……。まぁやってみるよ」

 

 そう言ってオピスにロールを改造して貰う。

何やら見慣れないアイテムが沢山取り出されては、ロールに埋め込んでいく。

 

「これとこれとこれを入れて……よし! 出来たよ! さぁロール、新たな君を加藤くんに見せるんだ!」

 

「私は太陽の子!!!」

 

「その腹のキングストーンを今すぐ取り上げろぉぉぉ!!!」

 

 一瞬の隙にとんでもない物を埋め込みやがった。どっから持ってきたそのライダースーツ。

 

「え? でもこれなら何があっても『その時不思議な事が起こった』でどんな劣勢もひっくり返せるよ? 優勝なんて簡単だよ」

 

「乱れるんだよね、世界観も法則も」

 

「困った時に4人に増えるよ?」

 

「それやっていいの劇場版だけだから。良いから早く返してこい!」

 

「仕方ないなぁ、じゃあこのアークリアクターを……」

 

「アイアンマンから剥ぎ取るな! えぇい、最初っからだ最初から! おいロール! 外すぞ!」

 

「私がこんなアホな改造をされたのも! マスターがカスなのも! 全てゴルゴムの仕業だ! おのれゴルゴム、ゆ゛る゛さ゛ん゛!!」

 

「あ、やべぇ! キングストーン埋め込んだせいで人格がてつをに支配されている!」

 

「ぶっぽるぎゃるぴるぎゃっぽっぱぁーっ!」

 

「ぎゃぁぁぁ! ロールが限界迎えて高橋邦子インストーォォォル!」

 

「まずい! お祓いしないと! 川越に帰りたまえ! 帰りたまえ!」

 

 結局、俺の操作をアシストする小さなコアを体の各所に埋め込んで動きを良くする程度に終わった。

最初っからやれや、生物系YouTubeに売り払うぞ。

 

◇ ◇ ◇

 

「ふむ、ゴレ娘ですか……。賞品はギアススクロール……」

 

「?」

 

「ええ、加藤さんが間違いなく食い付く話ですよ。……しかし参りました。これでギアススクロールを手に入れられてしまうと、私達がした契約を無効化されてしまいますね……。加奈子さんが居る以上、前の加藤さんには戻りづらいでしょうし……それに拍車をかけてしまいます」

 

「♪」

 

「そうですね、何より楽しそうですし……出てみますか。丁度良さげなモデルもありますからね」

 

 スマホを操作して電話をかける。

相手は勿論、彼だ。

 

『どした鶴岡、なんか用?』

 

「実は面白い話があるんですが、1枚噛みません?」

 

『噛む噛む噛む噛む、トップガムくらい噛む。で? どんな話?』

 

「巷で流行りのゴレ娘と言う物がありまして……」

 

 さて加藤さん、貴方はどう出てきますか?

私はこの偽神で行かせてもらいますよ。

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