ダンジョン中毒から抜け出したい【書籍化&コミカライズ決定】 作:1パチより4パチ派
「おい加藤、起きろって。今日大会なんだろ? 早めに出るって言ってただろ」
「うーん……あと5分……」
「………………………オラァ!」
「天丼んんんんん!」
寝てた所セラフィナに一瞬で全裸にされる。またかよ。
「勘弁しろって! 昨日もしただろ! 少しは我慢しろや! サキュバスと言ってもハーフだろ!? 別に吸精しなくても問題ないだろ!?」
「だから努力だって。今のお前の方を好きになるにはまだまだ足りねぇんだわ」
「両目の中をハートにしてる色ボケの癖に足りないって何だよ! もう良いって! お前の努力はよく分かったから! 起きる起きる!」
「そうか、仕方ねぇな。飯出来てるから早く降りてこいよ」
「……あれ?」
セラフィナは素直に部屋を出て下に降りて行った。前だったらもっとしつこかったのに。
疑問に思いながらも助かった事に変わりは無いので着替えて下に降りる。
「あ、卵サンド」
「好きだろ?」
「バカクソ好きだわ」
学生の頃、狂ったように食い続けていた俺の好物の1つ。
綺麗に切られて皿に乗せられたサンドイッチは、軽くトーストされてるのもあって香ばしい香りが漂ってくる。
「これでも結構ギリまで寝させてたんだぞ。あんま時間無いからさっさと食っちまえよ」
「そう、だな。すまん、ありがとう」
「おう、気にすんな」
はにかむセラフィナを見ながらサンドイッチを腹に入れて、身支度をして家を出る準備を始める。
「大会はいつ終わるんだ?」
「あー、確か17時が終了目安だったかな」
「そうか、頑張れよ」
「……おう」
玄関で靴を履き替えて家を出る。ドアを閉める前に振り向くと、セラフィナがエプロンを付けたまま見送りをしていた。
「……行ってきます」
「ああ、行ってらっしゃい」
手を振るセラフィナに、こちらも何と無く振り返す。
こちらの姿がドアで見えなくなる直前まで、彼女はそこを離れなかった。
「なんか、良いな……」
同棲なんてセラフィナが初めてだし、実家を出てからはずっと1人暮らしだった訳だが、見送ってくれる人が居ると言うのは悪くない。
それにあの見た目にエプロンはなんか幼妻みたいで──。
「フンッッッ!」
グシャァ! ブシュ!
そこら辺に落ちてた石を思いっきり頭に打ち付けた。痛みと共に血が流れだし、使った石は砕け散った。
「違う俺はロリコンじゃない、あくまで顔と性格が好みからセラフィナが好きなのであって別に小学生みたいな見た目が好きな訳じゃない。断じてロリコンじゃない。アイツの顔が良いだけ良いだけ」
何が幼妻だよ、バカじゃねぇの。
後で1回ダンジョンで死んだ方いいかもしれない。
地面に血の足跡を残しながら、俺は会場に向かった。
◇ ◇ ◇
ゴレ娘vsの大会の会場は、俺らの住んでる街でもかなりの大きさだ。
所謂野球やサッカーなどを行う広い公共グラウンド。
会場に近づいて行けば行くほど、人通りが増えていく。
「(結構ゴレ娘連れてる奴ら居るな、参加者か)」
パッと見人間にしか見えないゴレ娘だが、心音が聴こえないのですぐ分かる。
どれもこれも巨乳で衣装面積が少なくてたぬき顔の美女や美少女だ。
何でスレンダーが居ねぇんだよ、頭おかしいのか? 何故良さがわからない。あの体の薄さが最高だろ。
「そうは思いませんか占い師さん」
「突然通りかかってそんな事言われましても困りますね」
信号待ちをしてる際に、近くで露店のような形で座っている占い師に声を掛ける。
ここの信号はやたら長い事で有名なのだ。建物の屋上をジャンプで飛んでけば無視出来るが、普通に住居侵入罪なので辞めておく。
ルロの時のは別だ。夜だったし。
「こんな所で占いなんて珍しいですね」
「私も今日は何と無くここでやってますので。所で私の占いは凄く当たるで有名なんですよ。どうです? 折角お声がけしてくれましたし、今日の運勢でも」
「あー今日大会なんですよね、運勢知っちゃうと萎えるかもだし……」
「占いはあくまで占い。やろうと思えば幾らでも変えれます。やろうと思った上で、それを行えるかは別の話ですけど」
確かに。事前にある程度知っておけば出来る事もあるだろう。占いなんて信じてないが、種族によっては当たり前のように未来予知出来るのも居るし……。この人はローブを着てて顔見えないけど。
「じゃあお願いしますわ。今日の俺の運勢でも」
「分かりました。それでは手を出してください」
「手? 手相なんですね」
言われた通り掌を上にして、占い師に突き出す。
占い師は俺の手を触って手相を見始め──。
「…………」サワサワサワサワサワサワ
「……あの、触りすぎじゃないですか?」
「占いに必要ですから」
「さいですか……」
執拗に俺の右手を触りまくっていた占い師だったが、突然ローブのフードを脱いで顔を露わにした。
「(うお、結構な美人だな)」
綺麗系って感じの顔立ちに紫のウェーブロング。顔出しすれば、もっと客が来る事間違い無いだろう。
そんな占い師は、徐に触り続けてる俺の右手に顔を近づけて──。
ベロベロベロベロベロベロベロベロベロベロベロベロベロベロベロベロベロベロベロベロベロベロベロベロベロベロベロベロベロベロベロベロベロベロベロベロベロベロベロベロベロベロベロベロベロベロベロベロベロベロ
「ギャァァァァァァァァァァァァ!!! 汚ねぇぇぇぇぇ!!!」
凄まじい速度で俺の右手を舐め始めた。1秒間に5往復は舐めている。咄嗟に左手でバカ女の顔面をぶん殴った。だが──。
「ゴブッ!? ……ベロベロベロベロベロベロベロベロベロベロベロベロベロベロ!」
「バカな!? 鼻血流しながら舐め続けるだと!?」
割と力を入れて殴ったのに怯む様子すら無い。右手を引っ張っても全然離れない。
「テメェいい加減にしろ! オラオラァ!」
「ブゴッ! ゲブッ! ガハッ!」
離れないのを利用して、無理やり立たせた後何発も腹パンを入れる。
それでも離れないコイツに段々怒りが恐怖に飲み込まれてきた。
「はぁ……はぁ……はぁ……な、何なんだよマジで……」
「ごちそうさまでした……美味しかったです!」
「くたばれ」
シンプル暴言が出てしまうほどに意味不明だし腹ただしいし怖い。
やたら目がイキイキしてる辺り、悪い事したとすら思ってねぇだろこれ。
「すいません、私ヴァンパイア⤴︎ なんですけど、右手に血が付いてたので美味しそうだったから」
「ヴァンパイアなら吸血にしろや! 何で舐めるんだよ! 10倍花京院くらい舐めてたぞ!」
「いやほら、噛みつくのは流石にライン越えじゃないですか。痛いだろうし。でも舐めれば傷つける事無いから良いかなーって」
「俺の精神が傷付いてんだよ!」
「まぁ沢山傷付いた後に治れば強靭な精神になりますし」
「精神に筋肉の超回復理論は通用しねぇよバカ! うわ右手唾液クッサ!」
「それで占いの結果が出ました」
「今のどこに占い要素があったぁぁぁ!? 他人の右手をアミラーゼ漬けにする占いなんてある訳ねぇだろ!」
「無いですね、普通に貴方を見るだけで結果分かるんで」
「蝙蝠って燃えるゴミに出せるかな」
ちゃんと細かく刻めばバレないだろ。今のうちに黒いゴミ袋買っておかないと。
「それで結果ですが……貴方の今日の運勢はかなり悪いです!」
「お前まさか自分で不幸を錬成して占い当てようとしてない? マッチポンプ界のグリード並みに欲深いぞ」
「貴方の親しい人が地獄の苦しみを味わう事でしょう! 貴方の物が傷付けられる事でしょう! そんな貴方のラッキーマインドは『意地』! 不幸が来ても意地だけで乗り越えろ! 以上です」
「単なる根性論だろそれ! 役に立たねぇ占いだな!」
「占いなんてそんなものですよ。ほら、信号変わりましたよ? 今日も1日、頑張ってください!」
「最悪の応援ありがとう。次会った時覚えてろよ。最悪の時間を過ごさせてやる」
「そ、そんな突然告白されても……でも貴方の血美味しいのでOKですぅぅぅぅっと吸い込まれるような目潰しぃぃぃぃぃ!!!」
爆速で家に帰りたくなったのを堪えながら信号を渡る。
コンビニに寄って手を洗おう。蝙蝠ってばっちぃしな。
◇ ◇ ◇
「お、来たね加藤くん。おはよう」
「おはようございますマスター。何でまだ朝なのに疲れておられるのですか?」
「右手をチュッパチャプスにされたからかな」
会場前に先に待っていたオピスとロールに合流する。
既に多くの人やゴレ娘が待機している。やはり賞品が賞品なだけ、熱が入っているんだな。
「参加者これ何人居るんだ?」
「100人だったかな。ひとまず乱戦形式で争って、残った8人でタイマンする感じになるよ」
「マジかぁ。ロール、頑張るぞ」
「即効負けそうですけどね。別に良いじゃないですか、優勝した人闇討ちして奪えば。マスターなら出来るでしょ」
「マトモからかけ離れてるから絶対やらない」
「今更では?」
「黙りな! 兎に角大会はどうにかして勝つぞ! 戦術は決めてた通り、逃げ回って芋ってハイエナだ! 俺達が勝つにはそれしかない!」
「操作するのはマスターですけどね」
100人中8人しか上がれないとなると、かなり厳しい戦いになりそうだ。
一応特訓のお陰でロールをマトモに動かせるようにはなった。
ただ他の連中は俺より玄人。どこまで抗えるか……。
「それでも諦める訳にはいかないと」
「そうそう。それくらいで諦めるくらいならやってないって話」
「そうですよね、流石は我らがリーダー。であるなら私達も全力で阻止させていただきます」
「は? ……鶴岡、お前なんで居るの?」
振り向くとそこにはいつものように胡散臭さがオーバーランしている鶴岡が笑顔のまま立っていた。
「勿論、私達も出場するんですよ。ゴレ娘vsの大会に」
「はぁ!? バカな! 気取られないように連絡マトモにしなかったのに!」
「普通にネットで見かけて貴方なら参加するだろうなと言うそれだけで参加しました」
「まぁ検索すれば誰でも分かるしね。SNSで宣伝もしてたし……」
「お前ゴレ娘で遊んでないで、大人しく金持ち連中から金巻き上げとけや! 何遊んでんだバカ!」
「ギアススクロールを手に入れられては、私達の契約がパーですからね。話は聞きましたよ、今後ダンジョンで手に入れたアイテムは全て無償で市場に流すと。流石は加藤さんです。貴方の素晴らしい強さで手に入れた物を救われない人々にも届けようと……。私、目頭が熱くなってしまいました。その為にも探索者から逃しませんと言う訳です」
「逃がしてくれよぉ! 慈愛の心で見逃してくれよぉ! 探索者辞めた後はお釣り貰ったら募金箱に入れるようにするからさぁ!」
「と言うか今『私達』っていいませんでしたか?」
「はい、言いましたよ」
ああ、複数形なんだ。じゃあもう誰か分かるじゃん。出てくる奴分かるじゃん。
「かっと〜うく〜ん〜。酷いなぁ俺に何にも教えてくれないなんてよぉ。親友泣いちゃうぜ?」
「ああ……最悪の日の出だ。眩い輝きを放つ頭部がこれ程までに俺の心に影を落とすなんて」
「光が強くなるほど影は濃くなるからな。俺とお前は表裏一体って訳だ」
「何が表裏一体だよ。小判鮫のように俺の裏側に張り付いてるだけだろうが。何の益にもならねぇよ」
案の定、高木の登場だ。1番バレたくない相手に見つかってしまうなんて。どうすっかな、トイレ連れ込んで流してやろうかな。
「お! それが加藤のゴレ娘か? 俺は高木。加藤の親友だぜ!」
「親友に会ったにしてはマスターが絶望してますが」
「照れ隠しだ。加藤はシャイだからな!」
「鶴岡、お前んとこの宗教って山とか保有してない?」
「一応ありますよ。ほぼ畑ですけど」
「照れどころか死体隠そうとしてるね」
「終わったら走って逃げるか。まぁ今日は俺達も参加するからな! 加藤の勝利を絶対に阻んで見せる!」
「お前今度ダンジョン行った時に盾にするからな。覚えとけよ」
高木に死刑宣告をした辺りで、ふとコイツらのゴレ娘が気になった。
辺りを見てもそれらしいのは見当たらない。
「あれ? お前らのゴレ娘は? まさか忘れた?」
「んなバカな事するかよ。あっちに居るぞ。ちと捕まっちまってな」
「捕まる?」
「あちらですよ加藤さん。あの人集りです」
鶴岡の指差す方向には、やけに一箇所に集まった人達が見える。
ぱっと見参加者では無さそうだ、ゴレ娘連れてないし。
近づいて行って後ろから覗いてみる。
「いずれ必ず人族と魔族を救って見せます! その為に皆様の力を貸して下さい!」
『おおおおおお! メアリスー様ぁぁぁぁぁ!』
「インチキ宗教の御神体出してくんじゃねぇぇぇ!!!」
そこには青髪ポニテミニスカワンピ、デカパイ垂れ目ゆるふわ美少女のゴレ娘が信者に崇められていた。