ダンジョン中毒から抜け出したい【書籍化&コミカライズ決定】 作:1パチより4パチ派
「えーっと……会場って確かこっちだよね」
今日は加藤さん達がゴレ娘vsの大会に出る日。丁度仕事も休みだし、見に行こうと会場に向かう。
結構苦労してたけど……加藤さん、勝てると良いな。
「……それにしても、やたらと叫んでる人多いなぁ」
さっきから神神叫んでる人が沢山私と同じ方向に歩いている。何かのイベントだろうか。あまり関わりたく無いから、少し離れて歩かないと……。
「観客の方はこちらになりまーす」
丁度会場に着いた時に、スタッフの人の誘導が聞こえてきた。無料で見られるのは嬉しいなぁ。
「前の方は埋まってる……後ろに座るしか無いかぁ」
1番後ろの席に座って始まるのを待とう、そう思ってたら──。
「おや? 加奈子さんではありませんか」
「え? 鶴岡さん?」
聞き覚えのある声に振り向くと、いつものカソックを着た鶴岡さんが居た。
相変わらず笑顔が怪しいなぁ……。
「鶴岡さんもゴレ娘vsの観戦ですか?」
「そうですね。私は操作しませんのでこちらでも良いかと」
「え? 操作?」
「私がデザインしたゴレ娘を高木さんが操作するんです。操作に関しては、私はど素人も良いところなので参加者側に居ても仕方ないかと思いまして」
「え!? 高木さん出るんですか!? 何で!?」
「勿論、加藤さんがギアススクロールを手に入れるのを阻止する為ですよ」
「ああ……加藤さん……頑張って……」
冷静に考えて、仲間にここまで足引っ張られたら縁を切っても良いレベルだけど……。
いや、多分加藤さん的にはじゃれ合いの範疇なんだろうな。本気で怒る時って、魔王の時みたいな感じだろうし……。
「加奈子さんは加藤さんの応援ですか?」
「えっと、地味にゴレ娘vsを間近で観たいってのもありますけど……概ね間違って無いですね」
「そうですか。いやはや、加奈子さんが応援してくれてると思えば加藤さんも頑張るでしょう。貴方は彼にとって特別ですからね」
「……特別?」
「おや? 気づいてませんでしたか。加藤さんが仲間以外で他人を信用すると言うのは貴方が初めてなんですよ」
「私が!? 何で!?」
「無自覚系でしたか。ならこれ以上私が言うのは野暮ですね。黙っておきます」
「は、はぁ……」
これに関しての話は終わりと言わんばかりに打ち切る鶴岡さん。
どう言うことかイマイチ分からないけど……取り敢えず後で考えよう。
「所で1つ気になる事があるんですけど……」
「はい、何でしょう」
『メアリスー様ぁぁぁぁぁぁ!!!』
「この狂気混じりの声援を出してる人達は何なんでしょうか」
「ウチの宗教を信じる同士ですよ。私が作った御神体をモチーフにしたゴレ娘を応援してくれているのです」
『神よぉぉぉぉぉぉぉ!!!』
「暴徒一歩手前に見えるんですけど大丈夫なんですか!?」
「大丈夫ですよ、多分。さぁ加奈子さん、そんな後ろでは無く前の方で観戦しましょう。空けてもらってますので」
「良いのかなぁ……」
鶴岡さんに着いて行って前の方に座ったけど、周囲の状況的に加藤さん応援するの私だけかも。鶴岡さん居るから……大丈夫だよね???
◇ ◇ ◇
「ハッハッハ! どうよこの歓声! 全部メアリスーに向けての声援! 他の連中は完全アウェイ! さぁこれだけの場違い感の中でいつも通りの操作が出来るかなぁ!?」
「盤外戦術仕掛けてきてんじゃねぇ! カルトの本領出してきやがってよぉ!」
「おいおいルールには何にも抵触してないぜぇ? お互いフェアに行こうや! な!」
「どこがフェアだ! 自分でアウェイ言ってんだろ!」
「いやいや、本当のゴレ娘マスターならこの程度の困難屁でも無いだろ。まぁウチのメアリスー様に傷付けたら死ぬほどブーイング飛んでくるけどな!」
「ブーイング以外にも物理的に飛んできそうだね。爆弾やナイフくらいは覚悟した方いいかも」
「マスター、他の参加者達は殆どビビってますね。凄まじい効果です」
「そりゃカルト宗教のど真ん中に入れば四面楚歌状態だろ。ヌケニンしか手持ち居ないのに常に砂嵐状態みたいなもんだぞ」
「それ四面楚歌じゃなくて単なる詰みだよね」
何が問題って観客共の妨害をどうにもできんと言う事だ。壁で隔ててる訳でも無いし、結界魔法で区切ってる訳でも無い。俺も結界魔法は使えないし、使える奴は今は敵だ。
「まぁまぁ安心しろって。こんなに楽しいイベントを予選で終わらせるような事しねぇから。俺とお前の戦いは決勝が相応しいだろ?」
「何ホビーアニメのライバルキャラみたいな事ほざいてんだよ。お前なんていいとこ初回1時間スペシャルでやられる敵組織の下っ端だろうが。分かったら今すぐに敗北用のダイナマイト買ってこい」
「何でホビーアニメなのに敗北演出は特撮風にしなきゃならねぇんだよ。せめてプリティーでキュアキュアな演出にさせろ」
「似合わな過ぎじゃない? 想像したらリバースカードオープンして激流葬しかけたんだけど。訴訟してもいいかな?」
「スラップ訴訟乙。まぁそう言う訳で共闘しようや! 予選は100人中8人しか抜けられないんだしさ。ここは同盟を組むべきだろ!」
「えぇー……背中撃たれそうだからやだなぁ」
「安心しろ! メアリスー様の装備はそっちと同じ剣だぜ! まぁ双剣だけどな。実質キリトだぞキリト」
「銃じゃ無きゃ良いって訳じゃねぇし、こんな胸バルンバルンなキリトが居てたまるかよ」
「まぁ見とけって。メアリスー様! アレやりますよアレ!」
「アレですか。分かりました。† †(d´◔‿ゝ◔‘)b† † つるぎのまいチュインチュインWWWWW……どうですか? 操作者の言う通り出来たでしょうか?」
「ナイスゥー! 完璧っすわ! こんだけ出来れば攻撃2段階アップですよ!」
『メアリスー様に何やらせてんだー!』
『死ねクソ禿げ野郎!』
「クソみたいな芸仕込んだせいで会場大荒れなんだが」
「テンション上がってきて最高だな」
「頭にナイフ刺さっててそれ言えるなら、お前は大したもんだよ」
次々と投げられるナイフが全て高木に向かってるのを眺めていると、全体アナウンスで開始を宣言される。
確か最初はビジュアル審査だ。ステージに立って審査員に見てもらう簡単なものだけど。
「加藤くん、そろそろ準備しないと。ロールを操作してステージの方に」
「おう、分かった。ロール、安心しろ。お前は最高に腹ただしい時があるが、ちゃんと美少女だ。面食いの俺が保証するぞ」
「性癖トガリネズミのマスターに保証されても全然安心出来ません。そもそも周り見て下さいよ。胸小さいの私だけですよ」
「あんな駄肉ぶら下げてる連中なんぞほっとけや。肋骨出るくらいの薄さがこの世の真理なんだよ」
「キモ過ぎて蕁麻疹出ました。帰って良いですか?」
「何でゴーレムの癖に蕁麻疹出るんだよ。最早人間だろ」
ブツクサ文句を言うロールをステージの方に向かわせる。
審査員のおっさん達にジロジロ見られるのが不快なのか、眉が歪んでいる。気持ちは分かる。
『まぁ……顔は良いね』
『ちょっと古くない? ツンデレキャラじゃんこれ。今どき流行らんて』
『胸もっと盛ってくれないかなぁ』
『スレンダーって母性が足りないよね』
「よし、今からアイツら殺してくる」
「落ち着いて、殺したらギアススクロール手に入らないよ」
「後始末俺がやる羽目になるんだからやめろよぉ。良いだろ事実なんだし」
「お前も殺す」
「あ、やば。さっきと違って目がガチだ。ごめんて。オピス、お前も手伝え。コイツガチでやるぞ」
「どうどう。加藤くん落ち着いて、スレンダー良いよね。分かる分かる」
殺意のまま奴らに向かおうとするのを2人に抑えられていると、審査が終わったようだ。
取り敢えず合格との事。取り敢えずアイツらの頭はおかしいので切除する事を強く推奨する。ロールを操作してこちらに戻って来させた後、思いっきり抱き締めてやる。
「気にするな! アイツらが脳に欠陥あるだけでお前は素晴らしい美少女だ! だって俺が作ったし! 舐めんなよこちとら美術の成績5だぞ!」
「は、はぁ……そうですか。別に抱き締める必要は無いと思いますが」
「お前に来る誹謗中傷は全部嫉妬か目が腐ってるかの2択だ! 自信持て! お前は俺のゴレ娘だぞ! いざという時は最終手段として俺が出張って敵を皆殺しにしてやるよ!」
「結局皆殺しに行き着いちゃったよ」
「まぁ興奮してるだけだろ。時間経てば落ち着くって」
ロールの冷たい体のお陰か、少し落ち着いたので解放する。──が、離れない。
「あれ、どうしたロール。離れるくらいなら出来るだろ?」
「え、あ、いや。……すいません」
ぎこちない動きでゆっくりと離れていくロール。クソが、やはりアイツらの暴言のせいか。後で裏に連れ込んでボコろう。
「ん? 次のゴレ娘なんかデカくね?」
「え? デカい? どうせ胸だろ」
「いやタッパだよ。デカいって。ほら」
高木が指を指すので見てみると、確かにデカい。あれ? レギュレーションで身長だいたい決まってなかったっけ?
「……てかなんかおかしくね? 足4本あるぞ」
「やたらと逆光強くて見えねぇな」
「待って……まさか、まさかあれは──!」
太陽に雲がかかって逆光が無くなる。そしてその巨大なゴレ娘の姿が、漸く俺達にも見えてきた。
身長は2m超え。翎子を付けて大きな矛を持って、巨大な赤い馬に跨った──。
「俺こそが真の三国無双だ!」
【りょ、りょ、りょ、呂布だ〜っ!】
「何でだぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
そこには赤兎馬に乗った呂布奉先が居た。
他の参加者が呂布に怯える中、俺は意味が分からなかった。
「おかしいだろ!!! アレのどこがゴレ娘だよ! ガッツリ男だろ! つーか呂布だろ!!!」
「うわぁ本物初めて見たわ。サイン貰お」
「偽物だろ! ふざけんな! ゴレ娘って美少女じゃなきゃいけないとかルールあっただろうがぁ!」
「待って加藤くん! あの赤兎馬を見て!」
「は? 赤兎馬?」
言われた通り赤兎馬を見る。デカい赤い馬。それ以外の感想が出てこない。と言うかそれ以外に頭が回らない。
「赤兎馬は雌だったって言う説があるんだ。そしてあの赤兎馬はゴレ娘の材料で作られているのは間違いない! つまりあの赤兎馬はゴーレムで出来た馬の娘でウマ娘だよ!!!」
「アレのどこがウマ娘だぁぁぁぁ!!! ただの雌の馬だろうがぁぁぁ!!! どっちにしろゴレ娘じゃ無いし! じゃあ上の呂布は何なんだよ!」
「見たところどうやら方天画戟のオマケみたいだね。つまり武器の飾り。まぁガッツリゴーレムのコア入ってるけど」
「あんな飾りがあってたまるかぁぁぁ!!! 俺こそ真の三國無双とか言ってんだぞ! 100人斬りする気満々じゃねぇか!」
「落ち着けよ加藤。あんなのビジュ審査で落ちるだろ」
「た、確かに! 俺の神デザインのロールをあんだけ言ったんだから、呂布なんて論外だろ! 良かった、単なる悪ふざけで──」
『うーん素晴らしい毛並み……文句無し!』
『何と言う力強さ! 悪路であろうと何のその!』
『あの目つき! 敵兵を轢き殺すと言う殺意そのもの!』
『文句無し! 合格!』
「ざけんなぁぁぁぁぁ!!! テメェら俺のロールあんだけ言って赤兎馬を満場一致合格とは良い度胸だなぁ!!! こんな大会ぶっ壊してやるよぉぉぉぉぉ!!!」
「わーっ! やばい! ホントに殺人現場になっちゃうよ!」
「止めろ止めろ! いざとなったらセラフィナ呼べ!」
「うおおおおおおお! このたわごとを食べる!!!」
「……一体どうなってしまうのでしょうか……」
作者「ゴレ娘編の敵キャラ考えないとなぁ→ゴレ娘かぁ→娘と言ったらウマ娘かぁ→ウマと言ったら赤兎馬かぁ→……じゃあ呂布かぁ……」
この作品は大体がこんな感じのクソ連想ゲームで出来ています。