ダンジョン中毒から抜け出したい【書籍化&コミカライズ決定】   作:1パチより4パチ派

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しんこうリンチ

「はぁ……はぁ……クソがッ! 終わったらマジでしばき倒してやる……」

 

「漸く落ち着いたね、もうビジュ審査全員終わったよ」

 

「他はマトモで良かったな。これで趙雲やら関羽まで来たらどうにもならんかったわ」

 

「そんなん来たら俺が真の三國無双になるぞ」

 

「君なら本当になれるから困るんだよ。嫌だよゴレ娘vsの大会が君の殺戮ワンマンショーになるの」

 

 キレ散らかしてたらビジュアル審査が終わって、乱戦形式の予選に移るらしい。

呂布に関しては俺以外にも参加者から文句が出ていたので、俺がおかしいと言うことはない。

 

「マジで何でアレが通るんだよ。冗談抜きで審査員達全員、何かしらの精神魔法受けてない?」

 

「……精神魔法は受けてないが、シラフであっちに付いてるみたいだな」

 

「あっち?」

 

 高木が顎で指し示した方向を見る。そこには呂布と赤兎馬の近くに、マスターである人間が居る訳だが……。

 

「あ? アイツ『金工房』のリーダーじゃね? あの腹立つ顔は絶対そうだろ」

 

「付いてるって事は……運営を買収してるって事かな?」

 

「だろうな。オピス、呂布と赤兎馬よーく見てみろ。魔眼でな。俺には他のゴレ娘と比べて桁違いの魔力持ってるように見えるぞ」

 

 そう言われたオピスは目隠しを外す。赤と青のオッドアイは、夜行性の蛇のような縦長の瞳孔をしている。

 

「……あー、成程。あれ完全にやってるね」

 

「分かるように教えてくれよ」

 

「あの呂布と赤兎馬、ゴーレムコアで作られたゴーレムなんだけど……高ランクの素材アイテムが土に練り込まれてるね。Sランクかな? 多分だけど」

 

「練り込むぅ? そんなん出来るのか?」

 

「物によっては。ランクSの【魔光石】辺りだと思うけどなぁ。そりゃ性能も爆上げするよね」

 

「【魔光石】って、飴みたいにしゃぶってれば魔力無限に回復できるやつだよな? 昔1回だけ出た時無かったっけ」

 

「あんな1個で空中戦艦動かせる様な劇物舐めて魔力回復に充てるのお前だけだぞ」

 

「あの時は加藤くんが本当に怖かったよ。人体に耐えられるような魔力量じゃないのに。流石は僕達のリーダーだね」

 

「危ないよな! 【魔光石】マジ危ない! そんな危ない物を使ってるなんて奴等は何を考えているんだ!」

 

「何が危ないだよ。お前宝箱からドロップした時に『見ろよ! 黒飴みたい! う〜ん、しょっぺぇ〜ヘッヘッヘッヘッヘ!』とか言ってたじゃねぇか。いくら三徹してたとは言え限界過ぎだろ。最高だからずっとそのままのお前で居てくれ」

 

「ロール、悪いんだけどセラフィナに加藤は遠い旅に出たって伝えといてくれ。もう戻る事は無い」

 

「1度だけ拝見しましたが、あの様子だと逃げた所で何処までも追いかけてくると思いますが……」

 

「黒歴史まで追いかけてきてるんだよね。誰か助けてくれ」

 

 やばい、思い出してきてしまった。アホやらかした後、売りに行くかとなった時に公園の水道水で洗ったのも思い出した。買った人ごめん。タワシが無かったからその辺に生えてた猫じゃらしをブラシ代わりにして洗ってごめん。

 

「話を強制的に戻すけど、魔力量多い方がゴーレムって強いん?」

 

「そりゃ出力が上がるからね。でもそもそもとしてゴーレムにあれだけの魔力を込める事が無理なんだよ。従来のボディ……まぁゴーレム用の魔力土だね。それで作れば絶対崩壊する」

 

「じゃあ何であの呂布と赤兎馬は問題ないんだよ」

 

「憶測だけど、今までとは全く違うゴーレムの作り方で作られたんだと思う。強さとしては、多分単体でそこら辺の探索者なら蹴散らせるレベルだね」

 

「ゴーレムとして考えたらバカ強いな。じゃあ何? アイツらはそんなクソ強ゴーレム作って格下ボコって俺ツエーしたいだけ? ショボ過ぎだろやる事が」

 

 やってる事が子供の遊びに割り込むシャバい大人だ。情けないにも程があるだろ。大人しく隅でシコシコ大人同士で遊んでれば良いのに。

 

「……そう言う事か。連中の狙いが分かったわ」

 

「子供の持ってるベーゴマ取るのか?」

 

「何の話をしてんだよ。【金工房】の狙いは簡単だ。あのゴーレムの宣伝だよ」

 

「宣伝???」

 

 ダメだ、さっぱり分からない。オピスが『あーはいはい』って感じで理解してんのが腹立つ。勘弁しろよ、俺頭良くないんだからさ。

 

「【金工房】の連中が金集めに必死になってるのは前の会合の件で分かるよな?」

 

 頷いて返事をする。

 

「理由としては自分達の事業拡大が主なんだが、まー節操が無い。どんな事業にも首を突っ込みまくってるレベルなんだが……その中に1つ、割りかしシャレにならんのがある。それが軍事関係だ」

 

「軍事……まさかアイツら、ゴーレムを兵士にしようとしてんのか?」

 

「別に難しく無い。要はめちゃくちゃ強いドローンだ。遠隔操作でそこら辺の兵士を殺し回れる様なのを売りたがってんだろ。法外な値段でな。だからこそ、この大会を買収して晴れ舞台って訳だ」

 

「今は大きな戦争は起こってないけど、何かと理由を付けて争いたい国なんて山程あるからね。人族側も魔族側も」

 

「戦争ってのは、どいつもこいつも基本的に損しかしない物なんだが……そんな中で1つだけ儲ける奴らが居る」

 

「武器商人って訳ね。漸く分かったわ。詰まる所、俺達他の参加者はデモンストレーションのやられ役って事か」

 

「ネットでのライブ配信もやってるからね。流石に表立って『兵隊ゴーレム作りますよ』なんて言えない世の中だから、ゴレ娘vsの試合って言うワンクッション置いてる訳だね。分かる所は分かるし」

 

「て事はギアススクロールなんて言うSSSランクのアイテムが景品なのは……」

 

「【金工房】が自分で出して、自分で回収するから普通だとあり得ないレベルの激レア品を景品に出来た訳だ。鶴岡から話聞いた時おかしいとは思ったんだよな。まぁ加藤が出るなら関係無しに出たけど。邪魔する為に」

 

「【金工房】に金払ったら作ってくれないかな。お前を消す方法」

 

 つまり俺は【金工房】の釣り餌にまんまと引っかかった哀れな生贄と言う訳だ。レギュレーションで格下を蹂躙して本当に売り込みになるのかと言う疑問は残るが……ゴーレムの事を大して知らない国だってあるだろう。多分その辺が狙い目なんだろうな。

 

「……アイツらさ、コアへの攻撃しないと思う?」

 

「絶対やるだろ。全部ぶっ壊してくるに賭けるわ。デモンストレーションなんだから派手にやるに決まってる。コアに直接攻撃した訳じゃなくて、ボディが弱すぎたんですぅ〜とか言い訳なんていくらでもあんだろ」

 

「……そう、ですか」

 

 暫く黙っていたロールの声は、いつもよりずっと暗く感じた。表情に変化は無い。無表情だ。だが俺達に目線を合わせようとはしない。

 

「……おい高木」

 

「何だ?」

 

「同盟は組む、確定事項な。そんであの【金工房】なんだけどさぁ……アイツら、頭高く無い???

 

 そう言った瞬間、高木の顔が邪悪に歪む。横で聞いてたオピスも口角が上がっている。

 

「どうする加藤、処す? 処す?」

 

「処すわ、徹底的に。そもそもあっちがルール違反してるんだし良いよな? なぁ?」

 

「良いんじゃないかな? 人が丹精込めたゴレ娘をぶっ壊そうとしてるんだし」

 

「あ、あのマスター……?」

 

「安心しろロール。お前はちゃんと勝てる。勝たせてみせる。俺達の──絆の力でな!」

 

「歯茎丸見えレベルの笑顔で言われても恐怖しか無いのですが……」

 

 全員で力を合わせて呂布を討ち取るぞ!!! ワンフォーオール、オールフォーワンだ!

 

 

 

「所で何で呂布なん?」

 

「それは知らん。三国志好きなんじゃね?」

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「……おい」

 

「はい? どうしましたリーダー」

 

「何で呂布なんだ」

 

「だってリーダーが強そうな見た目にしろって言うから……強いと言ったら呂布だから……」

 

「貴様は三國無双の足軽か! ゴレ娘と言う建前があるのだからせめて娘にせんかぁ!」

 

「いやでも造形完璧じゃないですか。何処からどう見ても呂布ですよ! めちゃくちゃ頑張ったんですよ!」

 

「指示してないと言ってるだろうが! いや確かに強そうではあるが!」

 

「それに赤兎馬はちゃんと雌だから娘要素は確保してますよ!」

 

「予算足りないって言うから倍にしてやったが、まさか赤兎馬作る為に使ったのか!?」

 

「走ると赤い汗を流す様にしました」

 

「伝承を守る為に我々の金を使うなぁ!」

 

「あと戦闘時にちゃんと呂布のテーマ流れるようにしたら著作権料発生しちゃったので、そこにも払ってますね」

 

「無駄過ぎるだろぉぉぉ! 折角のデモンストレーション用のゴーレムなのに余計な物トッピングし過ぎだ! CoCo壱のカレーじゃ無いんだぞ!」

 

「美味しいっちゃ美味しいですけど、やっぱカレー1杯に千円越えがザラなのって高いですよね。色々付けると2千円超えますし。まぁ呂布と赤兎馬に関しては2千万なんですけどね。アハハ!」

 

「こんなバカに作らせるんじゃ無かった……」

 

「ご安心を! 強さは保証致します! 何せ使用者がリーダーみたいなズブの素人でも問題なく動く半自立型! 攻撃しろとか防御しろなどの簡単な命令だけで全部やってくれますよ!」

 

「まぁ高性能なのは良いが……これ売れるかなぁ」

 

「所詮戦争の道具なんですから見た目なんて些細な問題ですよ。だから趣味に走っても問題無いですって。自意識も完全に取り除いてますし」

 

「じゃあ何であの呂布はベラベラ台詞喋っとるんだ」

 

「三國無双の呂布の台詞丸コピしたのを再生するようにしてるだけっすね。ここの著作権料が1番高いんですわ」

 

「お前今日終わったらクビな」

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「よし、早速作戦を……「マスター」ん? どした?」

 

「……私は、お役に立ててますか……?」

 

「は? 何言ってんだ。お前居ないとこの大会に出る事すら出来てないんだぞ。合法的にギアススクロール手に入れるにはお前に頼るしか俺に選択肢は無いんだよ。役に立ちまくりだろどう考えても」

 

「ですが……」

 

「なぁに怖いだろうが大丈夫だ。お前のコアを壊させやしねぇよ。必ずあの呂布と赤兎馬は討ち取ってやる。俺を信じろ」

 

「……分かりました。マスター」

 

 さて……【金工房】の連中に教えてやろう。戦いは数だと言う事を。

 

 

◇ ◇ ◇

 

「あの、これ本当にゴレ娘の大会ですよね? 呂布出てくるの普通に意味分からないんですけど……」

 

「どうも大会運営とグルの者が居るみたいですね。嘆かわしい事です」

 

「な、なんかやたら強そうじゃ無いですか? 大丈夫かな……?」

 

「他のゴレ娘とは明らかに魔力量が違いますので、このままだと蹂躙ですね」

 

「ええ!? そんなの反則じゃ無いですか! ……あ、でも運営もグルなら言ってもダメですよね。き、棄権した方が……」

 

「まぁまぁ、加藤さん達を見てください。あの目が棄権をするような目に見えますか?」

 

 言われた通り、加藤さん達を見てみる。最高に邪悪な顔をしている。ああ、ダメだ。もう碌な事が起きない。

 

「たまに思うんですよね。加藤さん本当にマトモになる気あるのかなって。いや、本心だってのは分かるんですけどね? 信じてるんですけどね? あれ見ると不安になるんですよね」

 

「矛先が基本的に同じロクデナシ相手にしか向いていないのでマシだと思いますよ」

 

「無関係の人狙ったら、ウィリアム・テルのリンゴ無しの刑ですよ」

 

「頭貫いてますよね、それ」

 

 そうこうしてるうちに予選が始まろうとしている。他の参加者から呂布に関しての文句が飛び交っているのに運営は素知らぬ顔だ。

グルってのは間違いないみたい。

 

「さて、加藤さん達はどう出るんですかね」

 

「穏便な手だと良いんですけど……無理だろうなぁ……」

 

 広いバトルフィールドに各々のゴレ娘が配置に付く。加藤さん達は一ヶ所に固まっている、協力するのかな?

 

『では──始めぇ!』

 

 運営から開始の合図が出た瞬間、赤兎馬に乗った呂布が一気に駆け出した。

 

「大人しく首を差し出せぇ!!!」

 

 一振り、それだけで大勢のゴレ娘の首が宙を舞う。血は出ないけど、美少女達の首が飛ぶのは非常にショッキングだ。酷過ぎる。

 

『うわぁぁぁぁぁ! 俺のゴレ娘がぁぁぁ』

 

『そんなぁ! コアへの攻撃は無しじゃなかったのか!?』

 

『やめてくれぇ! ワシの嫁がぁぁぁ!』

 

 阿鼻叫喚。自分で丹精込めたゴレ娘が蹂躙されていく。コアへの攻撃はルールで禁止なのに全く意に介していない。

 

「こ、このままだとロールさんが! あ、後高木さんのゴレ娘も!」

 

「ふむ、ここまで差があるのですね。凄まじい力です。流石呂布」

 

「落ち着き過ぎじゃないですか!?」

 

「どの道加藤さん達が勝ちますから。ほら、動きましたよ」

 

「動くったって……え? 拡声器じゃないですか? あれ」

 

 高木さんが何処からともなく取り出した拡声器を、自分のゴレ娘に投げ渡した。

そのまま、そのゴレ娘は拡声器を通してこう言った。

 

『メアリスー様! お願いします!』

 

『分かりました、操作者よ! 会場に居る私を信じてくださる方々! そこの猛将は、今回の競い合いのルールを逸脱している者です! 残念ながら今現界しているこの体では、この者に勝つ事は出来ません! ですのでどうか! 私を信じてくださる皆様の力を! お貸しください!!!

 

『うおおおおおおおおおお! メアリスー様の為にぃぃぃぃぃぃぃ!!!』

 

 会場に居た大勢の信者達に、集団リンチの要請を飛ばした。凄まじい勢いで呂布と赤兎馬に飛んでいく武器や魔法。四方八方から飛んで来るせいで、呂布は防戦一方だ。

 

「ちょっとぉぉぉぉぉ!!! 信者の人達が暴徒に究極進化したんですけどぉぉぉ!!!」

 

「成程、考えましたね。メアリスーを信仰する我が信徒達は、その狂信から神(唯のゴーレム)からの言葉であればどのような事もする。そこを利用した訳ですね!」

 

「何でトップが信徒利用されて喜んでるんですか!」

 

「まぁ唯の金蔓ですので……」

 

「最低だこのアカ神父!」

 

 ツッコミを入れてる間にも絶え間なく放たれ続ける弾幕の中には手榴弾らしき物もあり、爆発音まで聞こえ始めた。もうめちゃくちゃだ。

 

「このままじゃ収拾がつきませんよ! 鶴岡さん、何とかしてください!」

 

「そうですね、流石にこのままだと宜しくないですね。──信徒達よ! 止まりなさい!」

 

 そう言って立ち上がった鶴岡さんは、大きな声でフーリガンLv100達を制止してくれた。良かった、これで収まって──。

 

『お、収まったか!? 弾切れか!? よし、呂布よ! 攻撃に転じて──』

 

「隙ありぃ!!! GOGOGOooooo!!!」

 

『うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!』

 

『りょ、呂布ぅぅぅぅぅ!!!』

 

「誰が好機を狙えって言いましたぁぁぁぁぁ!?」

 

 防御が解かれた瞬間に鶴岡さんが煽るもんだから、呂布と赤兎馬がめった打ちになる。何だか可哀想になってきた。

 

『何をしている! 暴徒は鎮圧だぁ!』

 

『うわぁ! 警官が来たぞぉ!』

 

「いけません! 皆さん! 捕まる前に持ってる武器やら撃てる魔法を出し切るのです!!!」

 

「この期に及んで最後っ屁残そうとしないで下さいよ!」

 

 会場の外に居た警察官の人達にどんどん連行されていく信者の人達。

どれだけ時間が経っただろうか、最後の人が連れて行かれた時には、既に呂布はボロボロだった。

 

「……あ、ロールさんが近づいてる」

 

 加藤さんが操作しているであろうロールさんは、呂布の体を剣で切り裂いた後に中から丸いコアを取り出した。

 

『敵将、討ち取ったりぃぃぃぃぃぃぃ!!!』

 

『いぇぇぇぇぇぇぇぇい!!!』

 

 加藤さんの勝鬨に呼応する高木さんとオピスさんの声が聞こえてくる。そのテンションの昂りとは真逆に、ロールさんは微妙な顔をしていた。

 

「よし、鶴岡さん。下行きますよ」

 

「叱るんですね、頑張って下さい!」

 

「貴方も対象に決まってるでしょうがぁぁぁ!!!」

 

 サムズアップしている鶴岡さんの首根っこを掴み、引き摺りながら加藤さん達の方に向かった。




ORIGINSで赤兎馬取るのマジで苦労しました
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