ダンジョン中毒から抜け出したい【書籍化&コミカライズ決定】   作:1パチより4パチ派

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ゴーレムコア ランクC
魔力を帯びた土で作られたボディに埋め込む事で、ゴーレムとして動き出す。生まれたゴーレムは主人に忠実で、勝手に自壊などは出来ないし、しない。命令や会話に反応する程度の自意識を持っているのが普通だが、ごく稀にほぼ人間のような人格を持ったコアが発見される。その場合、希少性の観点からランクはSSとなる。


呪いの言葉は『役立たず』

「あのですね! いくら相手が反則かましてるからって暴徒使ってあそこまでやりますか!? 見てくださいよ! フィールドボロボロじゃないですか! 他の人巻き込まなかったから良かったものの!」

 

「い、いやちゃんと他のゴレ娘マスターに攻撃行くようなら俺らが弾く予定で……高木の障壁とかオピスの狙撃とかもあったし……」

 

「もうゴレ娘vsでも何でもないでしょ!? せめてロールさんを超強化とかそう言う方向で済ませて下さいよ! 観客殆ど居なくなりましたよ! 連行されたから!」

 

「ロ、ロールのコアがワンチャン壊されるかもと思ったらついカッとなって……潰すかぁってなったらもうメアリスーを使って信者扇動からのリンチしか思い付かなくて……」

 

「前から思ってましたけど加藤さんって身内とか仲の良い知り合いに何かあるって思うと必ず暴走しますよね! それ自体は加藤さんの良いところでもありますけど、加減して下さい!!!」

 

「はい……申し訳ありませんでした……」

 

「お母さんに怒られてるみたいだな」

 

「加奈子さんくらいじゃないですかね、加藤さんをあそこまでしょげさせるの」

 

「正論だから返しようないんだろうね」

 

「なぁに関係無いみたいな顔してるんですかぁ! 貴方達も同罪ですよおバカ! しまいにゃ引っ叩きますよ!?」

 

「「「すいませんでした」」」

 

「力関係が目に見えますね……」

 

「操作者は何故怒られているのでしょうか?」

 

 観戦に来ていた加奈子さんにバチクソ叱られて30分。ぐうの音も出ない説教を受け続ける。加奈子さんに怒られるのは苦手だ。だって他の連中相手みたいにとぼけられ無いから。

 

「全く……皆さん私より年上なんだからもう少し考えて動いて下さいよ! もう!」

 

「考えて動けたら僕達気狂いなんて呼ばれないよね」

 

「ライブ感が命みたいなところありますからね、私達」

 

「ロクデナシがよぉぉぉ!」

 

「加奈子さん落ち着いて! すんませんすんません!」

 

「そもそも! こんなめちゃくちゃにしたら大会なんて中止ですよ! どうするんですか、ギアススクロール手に入りませんよ!?」

 

「えぇ!? そんなぁ!」

 

「当たり前でしょ! こんな状況で続行なんて不可能ですよ!」

 

「ああ……一時のテンションに身を任せた結果がこれか……終わった……」

 

「まぁ待てよ。そうでも無いみたいだぞ」

 

「え?」

 

 高木が指差した方は運営陣が待機していたテント。そこには他の参加者が集まっていた。聞こえてくる声的に抗議をしてるようだ。

 

『ふざけんな! 何が呂布だよ! 俺のゴレ娘破壊され尽くしたぞ!』

 

『まさかグルか!? 金貰ってんだろ! どうなんだこの野郎!』

 

『い、いやそんな事は……』

 

『じゃあ証明できんのか!? あの呂布は明らかにレギュ違反だろ! コアも壊してきやがってよぉぉぉ!!!』

 

 凄まじい剣幕だ。先程の呂布が暴れた結果、殆どのゴレ娘は完全に破壊されてしまった。まぁ明らかにコア狙いの攻撃だったしな。あれでは再生は不可能だ、可哀想に。

運営側もあそこまでとは思ってなかったのか、泡を食っている。詰められて焦った運営が取った行動は──。

 

『ひ、ひとまず続行! 大会続行します! 皆さんの件はその後で! まだ参加者も残ってますのでぇ!』

 

『ふざけんなぁぁぁ!!!』

 

 事態の先送りだった。【金工房】のリーダーが苦虫を噛み潰したような顔をしているが、何もしない。まぁここで止めるような事すれば、自分達の不正が表沙汰になるからな。

 

「……つまり、まだチャンスがある!?」

 

「大会続行なら本戦がある。つまり俺と加藤の最終決戦が始まるのか!」

 

「いや後2人残ってるからまだ確定じゃないね」

 

「なんだよぉ〜、呂布が討ち漏らすとか情けねぇなぁ。そんなんだから貂蝉に腑抜けて死ぬんだよ全く」

 

「いやあれ呂布本人じゃ無いですからね? ただ見た目が呂布なだけですからね!?」

 

 しかしあの混乱の中で2人も残ってたのか、一体どんな奴だろう。軽く辺りを見渡してみると、離れた所に抗議を眺めている人が居た。

 

『どうやら続行するみたいだし、準備しないと!』

 

『全く、お茶を楽しむ時間も無いわね……』

 

「なぁ、あれローゼンのメイデンじゃないか? 第5ドールなんじゃないか?」

 

「な訳ないだろ、気のせい気のせい。紅茶飲んでるけど気のせい」

 

「ほぼ答え合わせだろそれ」

 

 戦う事になったら犬のぬいぐるみ渡せば負けてくれないかな。ローザミスティカがかかってる訳じゃないし、ワンチャン無いかな。

もう1人は普通に美少女ゴレ娘だ。良かった、第1ドール来たら修羅場になってた。

 

「あれ? あの人……」

 

「おや? オピスさんお知り合いですか?」

 

「うん。加藤くん、あの人だよ」

 

「何が? 主語を言えよ」

 

「ああごめんごめん。あの人がロールのコアくれた探索者だよ。元だけどね」

 

◇ ◇ ◇

 

「終わりだぁ! このままだとあの気狂い共の良い様にされてしまうぅぅぅ!」

 

「いやぁまさか呂布が暴徒にリンチされて倒されるなんて想定はしてませんって。無理無理」

 

「お前がやたら目立つ見た目にしたからと言う説は無いか?」

 

「その説は科学的に否定されました。そんな事は起きません」

 

「起きとるやろがい!!! やられ役集めの為に貴重なギアススクロール商品にするんじゃ無かったぁぁぁ!」

 

「まぁ落ち着いてくださいよリーダー。保険がありますから、一応」

 

「保険? 何だそれ、聞いてないぞ」

 

「ほら、あそこにゴレ娘連れて待機してる人居るじゃないですか。あれウチで雇ったテスターですよ」

 

「え? ……あー、そう言えば雇ってたな。10数年ゴーレム使ってたと言うもんだから雇ってみたが、碌な操作できなくて話にならなかった奴。契約期間終わるまで切るに切れないんだよなぁアイツ」

 

「まぁ操作の腕がオワオワリなお陰で、簡単な命令だけで後は勝手に戦ってくれる物を作った方が良いって気付けましたから。雇った事は無意味では無いっすよ、あの人は無価値ですけど」

 

「そうは言っても奴の連れてるゴレ娘は普通のやつだろ? たまたま呂布の攻撃から免れただけで、普通に負けるだろアイツじゃ。だってど素人の私と模擬戦して五分だったんだぞ。【自我中心】の連中が練習してないとは思えんのだが」

 

「そこはご安心を! 呂布と赤兎馬作る際に余った材料で通常のゴレ娘の3倍は出力出るようにしたので! 流石にシャア専用状態なら勝てますよ! 操作は呂布と同じ半自動! 攻めろやら守れやらで動きます! 試合ならタイマンですし勝てますよ! その後これはウチが作りました的な事言えば、最初の宣伝の目的も達成できるし賞品回収出来るしで一石二鳥ですよ!」

 

「いやシャア専用は機体じゃなくて乗ってる本人が強過ぎて3倍になってるだけであって……と言うか普通にゴレ娘で強く出来るならそっち全ツッパで良かっただろうがぁぁぁ!!!」

 

「申し訳ありません! 泣いて馬謖を切るんで許してください!」

 

「なぁんでお前のやらかしの為に馬謖が切られねばならんのだ! とばっちり過ぎるわ! 泣きたいの馬謖だろそれ!」

 

◇ ◇ ◇

 

 最初の記憶は、宝箱が開いた際に入ってきた光だった。1人の人間が、己を持ち上げて喜ぶ声。ダンジョンから生まれた私の存在意義は、主人の役に立つ事。他のゴーレムは知らないが、少なくとも私は役に立ちたいと言う思いを漫然と持っていた。

 

「(頑張ろう、この人の為に)」

 

 私のマスターは男性だった。彼はどうも女性と親密になりたいらしく、その為に私を使い始めた。

 

『畜生! 遅かった! もう倒されてるじゃねぇか! お前の動きが遅いからだぞ! ノロマ!』

 

 例え早く動くのに適さない体でも。

 

『なんだよ! 多少強い程度のモンスターの攻撃すら耐えられないのか!? 肉盾にすらならないゴミじゃないか!』

 

 例え純正の魔力土では無い、脆い土で作られたボディであろうと。

 

『操作したって! 何でちゃんと動かないんだよこの──役立たずがぁ!!!

 

 この人の、役に……。

私を初めて手に入れてくれた、この人の……。

 

『え? 確かに僕はゴーレムコアを探しているけど……良いのかい?』

 

『良いんだ! もっと良い物が手に入る目処が立ったからな! もう探索者なんてやらなくても、テスターとして働いてればすげぇ金が入ってくる! こんなゴミで良ければやるよ! 処分する手間省けたわ!』

 

 ああ……漸く分かった。10数年、命令をこなし続けて、砕けて、結局捨てられて。人間なんてクソだ。そしてそんなクソにすらゴミ扱いされる私が1番の──役立たずなんだ。

 

「(また使われる、もう嫌だ。消えたい……)」

 

 自分の存在意義も分からなくて、居る必要も感じられなくて。だから反抗した、処分してもらう為に。馬鹿にするような事を言った。見放してほしくて。なのに──。

 

『諦めるな! 今までボコられて来たなら今度はお前が相手をボコボコのサンドバッグにしてやるんだよ! 今までの鬱憤を無関係の対戦相手にぶち撒けてやれ!』

 

『お前に来る誹謗中傷は全部嫉妬か目が腐ってるかの2択だ! 自信持て! お前は俺のゴレ娘だぞ! いざという時は最終手段として俺が出張って敵を皆殺しにしてやるよ!』

 

『なぁに怖いだろうが大丈夫だ。お前のコアを壊させやしねぇよ。必ずあの呂布と赤兎馬は討ち取ってやる。俺を信じろ』

 

 捨ててくれない、諦めてくれない。金には困ってないと言っていた。他人のゴーレムを買い取る事だって不可能では無かったはず。それでも、今のマスターは私を使い続けた。私を抱きしめてくれた。私を気遣ってくれた。どうして──変に期待させるのだろうか。

 

「──い。ロ──」

 

 私は……言われたことも出来ない、役立たずなのに。

 

「ロール!」

 

「──あ」

 

 マスターの声が聞こえて、漸く周りを認識出来る。目の前には眉を顰めたマスター。

 

「しっかりしろ! 大丈夫か! 声掛けても反応無いからビビったぞ!」

 

「も、申し訳ありません」

 

「オピス、メンテナンスしてくれよ。これから試合だってのに、なんかあったらヤバいって」

 

「おかしいなぁ。昨日ちゃんと隅々までやったんだよ? ……でも実際調子悪いみたいだね、ちょっと見てみるよ」

 

「あ、いえ。問題ありません。ボディやコアに異常はありませんので」

 

「本当か? 別に隠さなくて良いぞ?」

 

「高木くん達は試合に行ってるし、遠慮しなくて良いよ?」

 

「本当です、大丈夫……です」

 

「うーんダウト過ぎるな……まぁ言いたく無いなら良いけど」

 

「でも一応メンテはしておくね。体触るよ」

 

「現場猫案件は嫌だしな、トリプルチェックしてくれ」

 

「僕1人でトリプルチェックしても意味無いでしょ。ダメな現場じゃんそれ」

 

 視界に以前のマスターが映ってしまったせいで、思考が上手く回らない。落ち着かないと、試合があるのに。

 

「やぁやぁ! バジリスクの君! 久しぶりだな!」

 

 そう思っていたら、前マスターが近付いて話しかけて来た。連れているゴーレムは、先程の呂布と同じ製法で作られているのか、明らかに私より格上だった。

 

「ああ、その節はどうも。何か御用? ちょっと今から軽くメンテナンスしなくちゃいけなくてさ」

 

「それは悪い! まぁポンコツゴーレムのコアだから、いくら製作者の腕が良くても限界があるさ! 気にしたらいけないよ!」

 

「別にポンコツだと思わないけど。肩触らないでくれる?」

 

「いやいや! 探索者時代に使ってたけど本当に無能でなぁ、操作通りに動かないし、操作しても無いのに勝手に動く事すらあった! 申し訳なかったよ、ゴミを押し付けるような形になってしまって」

 

 違う。だってあの時はモンスターのブレスの射線に入っていたから盾にならないとって──。

 

「でも見てくれ! 【金工房】のゴーレムテスターになれたお陰で、本来のゴレ娘よりずっと高性能な物を貰えたんだ! 少しの指示で完璧に動く! きっとこれからはこの新しいタイプのゴーレムが時代を作るんだ! 俺はその先駆けになれたんだ! 顔馴染みだし、君の分も頼んでみようか? そんな役立たず使うくらいなら──」

 

 前マスターが言い切る前に、私の前に出たマスターが彼に近付いく。

徐に息を吸って、前マスターの耳に顔を近づけて──。

 

「おはよー!!! カンカンカン!!! 起きて!!! 朝だよ!!!! すごい朝!!!! 外が明るい!! カンカンカンカンカン!!!!! おはよ!! カンカンカン!!! 見て見て!!!! 外明るいの!!! 外!!!! 見て!! カンカンカンカンカン!! 起きて!! 早く起きてぇぇぇぇぇ!!!」

 

「ギャァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!」

 

 凡そ人体から発生したとは思えないレベルの轟音が響き渡る。直後に前マスターの耳から血が吹き出した。

 

「痛ぁぁぁぁぁぁ!? な、何だお前ぇぇぇ!」

 

「あ、起きた? 耳から血出てるけどだいじょぶそ?」

 

「お前がやったんだろ!? 何言ってんだ!?」

 

「いやずっと寝言言ってるからてっきり【立って目を開けたまま寝言が話せる】って言う寝言のスキルレベルがカンストしてないと使えないスキル使ってると思って。起こしてあげようって言う優しさがね?」

 

「ふざけんな! あんな大声出せばどうなるかくらい分かるだろ!」

 

「ちょっと何言ってるか分からない、鳩子ちゃんくらいわっかんない」

 

「お、お前──!」

 

「分かる訳ねぇだろ、人様の物をゴミだの役立たずだの言うような奴の事なんざよぉ」

 

 一瞬で纏う雰囲気が変わったマスターに、前マスターはあっという間に飲まれた。

マスターの表情は分からない、私の前に居るから。でもその怒気は簡単に見て取れる。

 

「目障りだ、試合時間までどっか他所行けよ。それとも何か? ここでやるか? あ゙!?」

 

「ひ、ひいっ!? ……な、なら試合で分からせてやる! 俺のお下がり大事にしてるようなお前に! 新しくもらったゴレ娘の性能をよぉ!」

 

 そう言って前マスターは離れて行ってしまった。マスターは暫くその場を動かなかった。

 

「マスター……」

 

 返事は無い。でもその背中は──いつもより大きく見えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「加藤くん、怒るのは分かるけど僕まで喰らったんだけど。耳から血止まらないんだけど」

 

「コラテラルダメージって便利な言葉だよな」

 

「石にすんぞテメー」

 

「…………」

 

 やっぱり気のせいかもしれない。




この主人公、怒り方がチンピラ過ぎるな……
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