ダンジョン中毒から抜け出したい【書籍化&コミカライズ決定】   作:1パチより4パチ派

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中毒者にプライバシーなんて無かった

 火事場の馬鹿力で拘束をぶち破って、追いかけてくる高木とその部下達と追いかけっこを繰り広げてた翌日。

這々の体で何とか自宅に着いた俺は、泥のように眠った。

ダンジョンアタックである程度疲弊してたのもあって寝付きは凄く良かった。

探索者を辞めて過去1の睡眠だったのに苛立ちを覚えたけど。

 

「……朝か……いや昼だったわ」

 

 時計を見ると既に11時、帰ってきたのが午前2時くらいだったのでこの時間になるのも仕方ないのかもしれない。

どの道仕事は無いのだ、今日はゆっくり休もう。

 

 ダラダラと起き上がって寝室からリビングの方に行くと、何やらとても良い匂いがしてくる。

リビングの扉を開くと料理をしているのだろうか、何かを焼く音がする。

 

「おー、遅いぞ加藤。もう11時だぞ」

 

「うるせぇな、正午回って無いからセーフだセーフ」

 

「午後になってなきゃセーフ理論、前から思ってたけど意味わかんねぇよ」

 

 テーブルを見ると料理が既に並べてある。

ご飯と味噌汁と作り置きしてた白菜のおひたしだ。

 

「ほらよ、ベーコンエッグ」

 

「おう」

 

 目の前に置かれたベーコンエッグは、良い感じに火が通った目玉焼きとカリカリのベーコンが食欲をそそる匂いを鼻に届かせてくる。

高木がテーブルの対面に自分の分を置いて座った。

 

「「頂きまーす」」

 

 手を合わせて頂きますした後、即座に箸を高木に投擲する。

吸い込まれるように眼球に向かった箸に高木は反応出来ずに突き刺さった。

 

「ギャァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!」

 

「どっから入ったクソボケがぁぁぁ!」

 

 箸が突き刺さったまま絶叫する高木に追撃でアッパーをぶちかます。

もんどり打ってぶっ倒れた高木は、痛みに苦しみながらも笑い始める。

 

「ふ、ふふふ。俺がお前の住所を調べないと思ったか? こちとらダンジョン運営の経営者だぞ? 金と権力で何とでもなる……ちなみに合鍵作って入った」

 

「お巡りさーん! 法律が働いていませーん!」

 

「警察にも既に根回ししているから無駄だ……お前は俺から逃げられないんだよ!」

 

「ハゲにストーカーされるとか俺は前世でどんな悪さしたんだよ!」

 

 これもう世界滅亡させたとかそのレベルだろ。

両目から血を流す高木の胸ぐらを掴んで持ち上げる。

 

「おら! さっさと出ていきやがれ!」

 

「両目負傷した人間を追い出すとか鬼畜の所業かよ!」

 

「お前どうせ回復魔法で体半分になっても治るだろうが!」

 

 高木は魔法のスペシャリストだ。

少なくとも俺はこの男より凄い魔法使いを見た事がない。

そのくらいコイツの魔法は規格外だ。

大体の魔法が常人の5倍くらいの出力出るとか意味分からん。

 

「まぁ待て待て! 俺の話を聞きなさいな」

 

「言っておくがギアススクロールに血判は死んでも押さないからな」

 

「それに関しては隙を見つけて騙し討ちするとして……」

 

「おい」

 

「俺が今日来たのは別の理由よ。実際問題、お前これからどうする?」

 

「どうするって……ダンジョン清掃の仕事を探すよ」

 

「結構探したんだろ? それでも見つからないなら無理じゃね? また禁断症状に苦しむ事になるぞ」

 

「……例えそうでも潜らないからな」

 

「頑固だなぁ、諦めたら楽なのに」

 

 例えたった1人でも応援してくれた人が居るのなら、本当にダメになるまでは頑張りたい。

あの応援すら忘れたら、俺は本当におしまいだろう。

 

「そんでもって俺としても親友が苦しんでるのに何もしないのは心が痛む訳よ」

 

「誰だお前、いつの間に綺麗な高木と入れ替わったんだよ」

 

「つーことで、加藤。お前俺の管轄ダンジョンの清掃やんない?」

 

「えー……」

 

 いずれ来るかもと思っていたが、こんなに早く誘いが来るとは。

確かに高木のとこなら、多少発作が出てやらかしても許してくれそうだ。

だがそれは諸刃の剣、どうにかして俺にダンジョンアタックさせようとしてくるコイツの懐に潜り込む……絶対罠だろ。

 

「命令でダンジョン潜らせるような事はしないって言うなら……」

 

「良いよ良いよ! 約束するわ、絶対命令でやらせるような事はしないわ」

 

「でも良いのか? 専属の清掃員居るだろ? 俺がいきなり入ったら迷惑じゃないか?」

 

「いや、実はそこのダンジョン専属の人がギックリ腰やらかしてさぁ。暫く動けないって言うんで代役探してたんだよ。だから割とマジで困ってる。やってくれるんなら助かるんだわ」

 

「ほーん、空いてるなら……良いか」

 

 ギックリ腰か……回復魔法でもギックリ腰は何故か治らないんだよな。

魔女の一撃なんて呼び方もあるくらいだから、何かしらの作用が働いて魔力が届かないんかな。

 

「決まりだな、じゃあ早速明日から頼むわ! はい、これ場所な」

 

「はいはい……ん、結構近いな」

 

「中位のダンジョンだから、ちと忙しいかもしれんわ。でも加藤なら何とかなるだろ」

 

「嫌な事にこの前のダンジョンアタックで体の鈍りが無くなったからな……」

 

「マジかよ、やっぱお前の天職だわ探索者」

 

「天職なのとやりたい職は別の話だろ」

 

 いつの間にか目の怪我を完全回復した高木と飯を食べる。

食べ物に罪は無いので残さず食べたが、食い終わった後に気づいたが、がっつり俺の冷蔵庫から食材使ってやがったので足の小指を踏み抜いておいた。

 

 

◇ ◇ ◇

 

 高木が来た翌朝、セットしたアラームより早く目が覚めた。

今までの人生、アラームをセットした時に限って鳴るより先に起きている。

一種の特技なのだろうか。

 

「さて、初日だし流石に高木の顔に泥塗るのもな……早めに出るか」

 

 いくらあのハゲが俺のプライバシーをガン無視してきたとしても、世間から見ればアイツはかなりの地位を持ったお偉いさんだ。

アイツの下には何人もの部下が居る、その人達に迷惑をかけるのは不味いだろう。

 

「……ん?」

 

 起き上がろうとした時、手に何かが触れた。

スベスベしてとても触り心地が良い、まるで綺麗な人肌のよう──。

 

「…………」

 

 掛け布団を捲ってみた。

そこには赤い綺麗なショートヘアをした見た目小学生の女が全裸で寝ていた。

 

 

 

 

 

 

「キャァァァァァァァ!!!!!」

 

「ウルセェェェェェ!!!」

 

「ゴバハァ!」

 

 全力で悲鳴をあげたら女が即起きて俺の顔面に右ストレートをかましてきた。

顔がひしゃげる感覚がする。

 

「前が見えねぇ」

 

「……お前まだ8時じゃねぇか! こんな時間に叫ぶとか頭大丈夫か?」

 

「勝手に人の家入って同衾してる奴に言われたくねぇよ!」

 

 凹んだ顔を回復魔法で戻しているとペタペタと裸足で床を歩く音がする。

顔が戻った瞬間に視界が開けるが、何故か女は俺の目の前で仁王立ちしていた。

 

「服着ろやぁぁぁぁぁ!!!」

 

「アタシは家では全裸派なんだよ」

 

「ここお前の家じゃねぇから!」

 

「良いだろ別に、どうせこれから住むんだし」

 

「何勝手に住み着こうとしてんだ! 座敷童かてめぇは!」

 

 手元に服が無かったので俺が着ていた上着を脱いで投げ渡す。

Tシャツ1枚だが無いよりマシだ。

 

「スンスン……まぁまぁだな」

 

「何が!?」

 

「うわデッカ、これサイズなんぼだよ」

 

「3Lだよ、デカい方が楽だし」

 

 ひとまず服を着せる事に成功したので一息付く。

 

「……で? 何で俺の家に居るんだよ、セラフィナ」

 

「何でってお前がようやく戻ってくるって聞いたからな、どうせ一緒にダンジョンアタックするんだから近くに居たほうが良いだろ」

 

「近すぎるわ! ほぼゼロ距離だったじゃねぇか! つーかお前もお前でどうやって入った!」

 

「高木がギアススクロールのサインしてくれって言ってきた時に住所教えてもらった。合鍵は高木がくれた」

 

「高木ぃぃぃぃぃ!!!」

 

 爆速であのクソハゲに電話をかける。

あいも変わらずワンコールしないうちに出やがった。

 

『どうした朝から、俺のモーニングコールが欲しいのか?』

 

「お前もしかしてメンバー全員に俺の住所教えたのか!?」

 

『合鍵もちゃんと渡しておいたぞ、安心してくれ』

 

「何を安心しろと言うんだ! 防犯対策ガバガバになってんじゃねぇか!」

 

『おいおい、メンバーの皆がお前に犯罪なんてする訳無いだろ? 信じてやれよ、仲間を』

 

「現在進行形で住居侵入罪かましてんだよボケェ!!!」

 

 高木にキレ散らかしていると後ろでゴソゴソと何かを漁る音がする。

視線を向けるとセラフィナがゴミ箱を漁ってた。

 

「えーっと……おい加藤、お前こんな汚ねぇティッシュ量産するくらいならアタシに言えよ。相手してやるのに」

 

「テメェマジでブチ殺すぞ!!!」

 

「あん? 何キレてんだよ。お前の為を思って言ってやってるのに……」

 

「どこがだぁぁぁぁぁ!!!」

 

 怒りに任せて拳を振るうが軽くいなされて返しに腹に一撃貰った。

ダメだ、セラフィナ相手に武器無しで敵う訳が無い……。

 

「ゲホッゲホッ! クッソ……」

 

「あー悪い悪い、つい反射でやっちまった。お詫びにアタシの事好きにしていいから、な?」

 

「誰がするか!」

 

「安心しろよ、2年前のお前がめちゃくちゃ酔った時から更新されてないから」

 

「お前もう黙れ……黙ってくれ……」

 

『何だセラフィナ居るのか、早かったな』

 

「高木、お前がくれた合鍵ちゃんと合ってたぞ。サンキュー」

 

『良かった良かった、間違ってたら大変だからな』

 

「何も良くねぇ……」

 

 絶望しているそんな中、突然インターホンが鳴った。

こんな時間に? 誰だ?

 

「来客? 仕方ねぇな、出てくるわ」

 

「え、ああ…………待て待て待て! お前服! 下履いてないだろ!」

 

「Tシャツデカいから問題ねぇよ」

 

 俺のTシャツ1枚で玄関に行こうとするセラフィナを何とか抑えようとするが、寝起きと腹に一撃喰らったのが響いて抑えきれない。

 

「今出るぞー」

 

「出るなァァァ!」

 

 俺の奮闘虚しく玄関のドアは開かれる。

扉の先に居たのは──。

 

「あ、加藤さん! 実は私、高木さんに勧誘されてダンジョン清掃員のバイトやる事になったんです! 加藤さんも居るって聞いたので折角だから迎えに来ました! 一緒に出勤……」

 

 以前俺から住所を教えた加奈子さんだった。

そんな彼女の目の前には、Tシャツ1枚以外全裸の見た目小学生の女子(27歳)と、足やら腰を掴んでいるのに引きづられている上半身裸の成人男性(26歳)だった。

 

「「…………………………………」」

 

「あん? 誰だお前、おい加藤。誰だこの女」

 

 全く気にしていないセラフィナが半ギレで俺に問いかけてくるが、そんなものは全く気にならないレベルで俺は固まっていた。

たっぷり数10秒経ってから、加奈子さんは徐にスマホを耳に当てた。

 

 

 

「すいませんお巡りさん! 小学生おさわりマンが! 小学生おさわりマンがぁぁぁぁぁ!」

 

「頼むからこれ以上ややこしくしないでくれぇぇぇ!!!」

 

 午前8時、安い一軒家に俺の情けない懇願が響き渡った。

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