ダンジョン中毒から抜け出したい【書籍化&コミカライズ決定】 作:1パチより4パチ派
数日後、魔王に指定された隣町の広い空き地に訪れていた。チームメンバー全員に集まるよう言ったのだが……。
「結局この5人か」
「中々全員集まりませんねえ」
「アイツら何してんだ? 高木は前に直で会ったんだろ?」
「ゲルベリアは野暮用とか言ってたな。どうせそこら辺の探索者勘違いさせて遊んでんだろ。
「あの死にたがりの方が絶対病気だよな? 俺よりずっとヤバいよな?」
「賢者タイムの時は常識人だから、総合力では加藤さんなのでは?」
「死ぬまで戦い続けて力を出し尽くした後に結局死ぬのが3度の飯より好きなバカと一緒にしないでほしい」
「ダンジョンが存在しなかったらどうするんだろうね、あの娘」
側に回復役大量に引き連れて戦場で暴れてたかもしれん。そう考えるとアレが今の状態で収まってるのは奇跡なのかもしれない。そんな話をしていると、何も無い空間に魔力の渦が生まれて、そこが開く。転移魔法だ。ゲートを通り抜けて魔王と恐らく側近の1人であろう魔族が出てくる。
「おお、もう待っておったか。すまんすまん」
「来たな魔王! さぁ! 早くダンジョン出してくれ! もう待ちきれないよ!」
「ターボかかってきましたね、加藤さん」
「昨日結局寝れなかったんだよ! は、早く!」
「落ち着け落ち着け。えーっとケルロス、場所はここで良いんだな?」
「はい、ダンジョン予定地になっている場所です」
「よーし、やるか。フンッ!」
魔王はそう言うと、掌を上に向けて凄まじい魔力の玉を生み出す。そしてそのままそれを地面にメンコのように叩きつけた。すると──。
ズゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!
削岩機の何十倍もの轟音が鳴り響く。数分間続いたそれが収まると、地下へ続く階段……ダンジョンの入り口が生まれた。
「成程、このようにしてダンジョンは出来るのですね……」
「運営やってるけど見るのは初めてだわ。とんでもねぇな」
「儂が日本でダンジョン作ったのはもう何十年も前だからなぁ。お主ら生まれてすら無いだろう」
「まぁ例え生まれてたとしてもアタシはゴミ漁ってた訳だが……おいオピス、お前何してんだ?」
「頭下げてるんだよ、見れば分かるでしょ?」
「どうして下げてるんですか?」
「一般魔族は魔王様にそんな堂々としてられないんだよね、普通」
「そうなん?」
「まぁ基本的にはな、お主らくらいだぞ。敬語使わないの」
「でもよ加藤、殺し合いした後で敬語もおかしくね?」
「それもそうだな!」
「一応話は聞いたけど魔王様とやり合うなんてイカれてるよ」
そもそも使う程、魔王に好感度高く無いので別に良いや。今更マサラタウン。
「それでこれはもう潜れるのですか?」
「行けるぞ! ただ気を付けろよ? お主らが潜った事のあるダンジョンより遥かにモンスターが強くなっておるはずだ。外から見ても、放っている魔力の量が違うだろ?」
「確かに。俺の流星100回打ってもお釣りが来るレベルだわ」
入り口自体は他のダンジョンと同じだが、確かに威圧感がある気がする。ガチで潜らないと速攻死ぬかもしれない。
「全30階層のダンジョンだ。1回最下層まで行ったらそこでテストは終わりで頼む」
「アタシら30階層程度なら半日かからねぇぞ」
「何、行けば分かる。それで充分だとな」
「まぁそう言う事なら早く入るか。行くぞお前らぁぁぁ!!!」
「やっぱりお前探索者が天職だって。意固地なんなよ〜」
高木の声をガン無視しつつ、俺達はダンジョンに入って行く。待ってろLR!!!
◇ ◇ ◇
アタシらのチームは前衛後衛をハッキリと分けている。役割分担しておいた方が、いざという時に動き易いからだ。フルメンバーの場合は前衛4、後衛3の配分になるんだが……。
「前衛2枚で大丈夫か? アタシも加藤もタンクじゃねぇぞ」
「そういや地味にこのメンバーで高レベルダンジョンは潜った記憶無いな。オピス入った後はすぐに他の2人入ったし。なぁ加藤、お前なんか覚えてる?」
「モンスター何処だよ! 早くぶっ殺そうぜ! 日が暮れちまうよ!」
「ダメですね。
「アハハ、まぁどうせ宝箱ドロップしてたらこうなってたし」
不在のメンバーが両方前衛……1人に至ってはタンク役なのもあって、昔に比べて明らかに前が薄い。タイマンで戦えるなら問題ないが、群れを成して来られるとこの数だと不安だ。
「最悪モンスターに寄られたら、お前ら自分で何とかしろよ」
「ハハハ! 困りました、死にますね」
「俺は平気だけどな! う〜ん、回避魔法は神魔法だぜぇ」
「あれ1発しか避けれないから連撃仕掛けられたら普通に死ななかったっけ」
「事前に回復魔法を遅延でかけ続けてるからヘーキヘーキ」
「さらっと意味不明な技術披露してますね」
「性格ヴォルデモートじゃなければ有能なのになぁ」
「俺はいつでも有能だろ!?」
「ヴォルデモートを否定しなよ」
うるせぇ後衛組をほっときながらも辺りを見渡してもモンスターの影も形も見当たらない。何だこれ、本当にダンジョンか?
「おい加藤、おかしくねぇか?」
「……モンスター居な過ぎて落ち着いてきた。全然出て来ないんだが? 何だこれ」
「初期不良か? 魔王様よぉ〜、肩透かしやめてくれよなぁ」
「ふむ、オピスさんの魔眼で探すのはどうですか?」
「採用。オピス、探せ」
「魔眼使うと疲れるんだけどなぁ。どれどれ」
オピスはアタシ達のチームの索敵担当だ。魔力の動きや位置が分かる目で、姿が見えなかったり、身を隠しているモンスターの居場所を見つけられる。他にも石化させたりビーム出したり割と何でもアリだ。
「……この階層には1体だけ居るね。もっと奥だ」
「1体? そんだけかよ。ドロップ率高いってもしかして抽選確率上げた代わりに敵の数圧縮しただけ?」
「……てかさっきから直進ばっかじゃねぇか?」
ずっと歩いてるが真っ直ぐな道ばかり。横道も角もあったもんじゃない。こんなダンジョンは初めてだ。そうこうしてると、通路が終わって大部屋に出た。
「……ああ、成程ね? そう言うことね?」
加藤が納得したような声を出す。アタシ達他のメンバーも漸くこのダンジョンを理解した。
『グボォォォォォォォォ!!!』
「「「「「ボスラッシュか……」」」」」
漫画に出てきそうな巨大なキメラがそこには居た。アタシ達を視認した瞬間、凄まじい勢いのブレスを吐いてくる。
「後衛下がれ! セラフィナ、前出るぞ! ブレス当たるなよ!」
「ッシャア! 任せろ!」
ガントレットを打ち鳴らして気合を入れる。ブレスは避けれない速度では無い。加藤と散開して避けた後、距離を詰めて前足の爪に拳を撃ち込む。
ガギャッ!
「ッ! ヒビしか入んねぇ! 硬いぞコイツ!」
「鶴岡! 補助よこせ! 2個!」
「【剛力】【速足】」
加藤の指示で鶴岡の補助魔法が前衛のアタシ達にかかる。振り下ろされる爪の攻撃を躱して、カウンター気味に蹴りをぶちかます。ひしゃげた前足ではまともに立てず、そのまま転倒した。
「死ねぇ!!!」
加藤は隙だらけのキメラの首に剣を突き立てて、そのまま勢いよく振り抜いた。胴体と泣き別れした頭部はそのまま地面に落ちていき、そのまま体と共に地に伏せた。
「おーナイスゥ。やること無かったわ」
「この程度なら僕達要らないよねー」
「遠距離組が変に手を出すと邪魔になりますからね。にしても初手迷宮のヌシと同レベルが出てきましたねぇ。階層全部こんな感じなのでしょうか?」
「だとしたら拍子抜けも良いとこだが……ん?」
鎧についた埃を払っていると、加藤が虚空を見続けている。どうしたんだ?
「……来る!」
ゴトトトトトト!
加藤がそう言った瞬間、突然複数の宝箱が現れた。数はざっと見ても20はある。
「おっぴょっぴょぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
「……おい、1体のモンスターから複数宝箱出たぞ」
「マジで!? 初めて見たわ!」
「あーもしかして魔王様が言ってた『1回で充分』って沢山ドロップするからって事かな?」
「確かに1体からこれだけ出るのは革命ですね。市場の正常化も夢じゃ無いかもしれません」
「宝箱の中身は魔王様でも弄れないからねぇ。アイテムは魔力をランダムに固定化された結果だから仕方ないんだけど」
アタシ達がそんな事を言ってる間にも、加藤はひたすら大量の宝箱を開け続ける。
「ハズレ! ハズレ! ハズレ! ウッヒョォォォ! ハズレハズレ! ピィィィィ! ハズレウヒョハズレウヒョウヒョヒョォォォォォ!!!」
「ギャハハハハ! もうアイツの頭が大当たりだろアレェ!」
「これこれ。親の顔より見た加藤くんの発狂。帰って来たって感じするよね」
「ハズレと言ってるものも世間一般的には当たりなんですけどね。BやCって普通にレアですよ」
開けて高ランクだった時の演出を見て喜んでは即興味を無くし、次のを開ける。前まではこの姿を見たくて仕方なかったが……今は少し複雑だ。全ての宝箱を開け切った後、近づいて声をかける。
「おい加藤、全部開けたぞ。落ち着け」
「……無い」
「LRか?」
「そうなんだよ! 確かにAランクSランクは出た! でもそれより上が無い! ドーパミンが沢山出るのはSSからなのに!」
「SSですら1ヶ月の間に世界で1個出るかどうかみたいなレベルだぞ」
「グググ……中途半端な刺激のせいで逆に苦しい……!」
「仕方ねぇな。おーい、終わったから次行くぞー」
「待てって。回収だけさせろや」
「素材無いなぁ……そろそろクソアイテム作らないと正気保てないのに」
「おお、エリクサーが出てますね。これは常に求めてる人が尽きないので何よりです」
保護魔法をかけたバックパックにアイテムをぶち込んでいく3人を尻目に震える加藤の背中を軽く叩いてやる。当たり前だが寒いから震えているんじゃ無い、昔からある発作だ。
「……セラフィナ」ハァハァ
「どうした?」
「俺本当に治るかな……?」
「その顔やめてくれ。悪いと思うけどめっちゃ興奮して襲いそうになる」
目がキマり息があがりながらも、泣き笑いで尋ねてくる加藤への情欲を抑えるのしんどいから、早くアイツら回収終わらなねぇかな……。
ゲルベリア……種族 スライム 性別無し
篠目……種族 人間 性別女