ダンジョン中毒から抜け出したい【書籍化&コミカライズ決定】   作:1パチより4パチ派

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魔王妃様でおやすみ

『それで……進捗はどうですか?』

 

「え、えっと……進捗ダメですわ……」

 

『フゥー……ごめんなさい。貴女だけにやらせるのは、やはり無理難題だったみたいですね』

 

「うぅ……面目ありません……。やはり秘密裏に探してる以上、限界があって……。ダンジョン潜ってもドロップしませんし、市場にもありませんし……」

 

『こちらも部下に潜らせているけど……やはりランクSSS、そう簡単に手に入るものでは無いですか……』

 

「……そちらの状態は、どうでしょうか」

 

『悪化しています。汚染が止まりません……。明らかに何者かの手が入っているのに、その手口すら分からない。このままでは、多くの民が死ぬでしょう』

 

「こ、こうなったら大々的に公表して、他国に助けを求めましょう! 民を死なすよりはずっとマシですわ!」

 

『……下手人すら分からない国の民を何処が受け入れてくれるのですか? 自国に潜り込ませるリスクを背負ってくれる国が、何処にありますか?』

 

「おぼふ……」

 

『貴女を責めるつもりは無いのです。ですが今回の件は事が事。我が国の民達が謂れのない差別を受けるのを防ぐ為にも、今回の件は内密に処理するしか無いのです』

 

「そ、そうですわよね……」

 

『出来る限り、こちらも手を尽くします。アナンタ、貴女に重荷を背負わせているのは理解してますが……引き続きよろしくお願いします。いずれ応援を送れればとも思ってますので』

 

「わ、私にお任せですわ! 必ず! 必ず【清浄なる水樹】を手に入れてみせます! 王妃様!」

 

『……お願いね、アナンタ』

 

 その言葉で定期連絡の通話は終了した。借りてるアパートの一室に情けない溜息だけが存在を示す。

 

「早く……手に入れなければ」

 

 今日もダンジョンの予約は取ってある。連日で疲労が溜まっているが……弱音は言ってられない。出来る事をしなければ。自分の頬を叩いて気合いを入れる。

 

「今日も頑張りますわ!」

 

 装備と消耗品を持って、私は部屋を飛び出した。私を祝福しているのか、嘲笑っているのか。空は今日も快晴だった。

 

 

◇ ◇ ◇

 

「さっさと……ぶっ潰れろぉぉぉ!!!」

 

『グガァァァァァァァァァ!!!』

 

 巨大な複数の首を持った蛇の頭を叩き潰して、断末魔を辺りに響かせる。すぐに次のモンスターに向かおうと周りを見渡したが、どうやらコイツが最後だったようだ。

 

「この階はこれで終わりか。少し殴り足りねぇな」

 

「お疲れ様です。疲れ知らずですね、我がチームの特攻隊長は」

 

「今日は加藤の方が特攻してるけどな」

 

「彼は核弾頭なので例外ですよ例外」

 

「あああ! 無い! 無い無い無い! LR無いよぉぉぁ!」

 

「核弾頭が自分で爆発しそうなんだけどそれはどう思うのかな?」

 

「誰かしめりけラグラージ連れてきてくれませんか?」

 

「湿った攻略本は持ち合わせて無いなぁ」

 

「んな事より誰かマジックポーション持ってねぇか? もうガス欠しそう」

 

「怒りに任せて流星撃ちまくるからだろバカ。持ってねぇから腹なりタマなりから捻り出せや」

 

「タマ捻ったらダメだろ! 手術一択やん!」

 

「落ち着いて下さい、再生怪人タマヒネリ」

 

「黙れ怒涛の詐欺師、ド詐欺岡!」

 

「無ぁぁぁぁぁぁぁぁいぃぃぃぃぃ!!!」

 

「カオスだねぇ」

 

 全ての宝箱を開け終えて頭を抱える加藤。まぁSSSも出てねぇしその上のLRなんて出る訳無いか。

 

「今確か29階層目だよな?」

 

「て事は次は30体出てくるのかー。まぁここまで来ればほぼ誤差だよね」

 

「部屋がギッチギチになると思ったら進む程部屋がデカくなって行くからそこは良かったわ。これで最初のまんまだったら押し寿司になるとこだったぞ」

 

「でも慣れれば何とかなりますね。加藤さんのエンジンがフルスロットルなのもありますが。……ちょっと飛ばし過ぎな気もしますが」

 

 加藤は開かれた宝箱を前にして項垂れている。LRへの期待感が強過ぎて、Sランク程度の演出では満足出来なくなっていた。ちと重症だな、後で病院に連れて行こう。

 

「まぁ次で終わりだし、パパッとやろうや」

 

「終わり!? 次で!?」

 

「目の前に瞬間移動してくんなよ。終わりだぞ、魔王も1回探索すれば良いって言ってたろ?」

 

「やだやだやだやだ! 次で出なかったらもう見れないじゃん! 出なかったら別日に魔王に頼んでもっかいやるぞ!」

 

「加奈子さんと約束したとか言ってなかったか? 今回だけって」

 

「………………泣いても笑っても次で終わりかぁ……」

 

「そんな状態でもあの人との約束は守るんだなお前」

 

「嫌われたく無いし……」

 

 ……加奈子も油断ならねぇなこれ。本人は恩人だとか言ってたけど、明らか優先順位高過ぎだろ。あんなに限界だったのに、一気に持ち直した。敵多過ぎだろ、何だって最近になってこんなに……。いや、今は取り敢えずいい。

 

「さーて、さっさと最後の群れ殺しますかー」

 

「さっきのから1体増えた所で変わりませんしね」

 

「弾切れそうなんだよねぇ〜。ちょっと甘く見過ぎてたかも」

 

「終わり……終わりぃ……次でオワオワリ……」

 

 全員で次の階層に繋がる階段を降りて行くと、先程までの階層と違って静まり返っている。あれだけ呻き声や遠吠えが聞こえていたんだが……。

 

「……オピス、魔眼」

 

「うん。……数は1体だね」

 

 加藤の指示でオピスが魔眼で索敵する。数は1? ここに来て?

 

「あんなどんどん増えてたくせに急に売り切れか? 竜頭蛇尾過ぎるだろ」

 

「……じゃあその分強いんじゃねぇのか?」

 

「可能性は高そうですよね。最後ですし、出し惜しみなく──「うぉぉぉぉぉ!!! 甘寧1番乗りぃぃぃ!!!」……冷静さの限界のようですね」

 

 叫びながら突撃して行く加藤を追いかける。どうやら焦らされ過ぎてもうダメらしい。まぁアタシも焦ったいのは嫌いだし気持ちは分かる。殺るならさっさと殺るべきだ。

 

「……あ?」

 

 通路を抜けて大部屋に出る。だだっ広い部屋の中心には、1人の子供くらいの背丈の人影。

 

「……姫さん???」

 

 その姿は、前に会った魔族の姫に酷似している。高木も鶴岡も目を見開いて驚いている。

 

「加藤! 明らかに本人じゃねぇぞ! 気を付けろ!」

 

「……分かってる」

 

 先程のイカれ具合は何処へやら。高木の声に返答しながら、冷静に剣を構える加藤の隣に並んで臨戦態勢を取る。──こんな所に姫さんが居る訳が無いのだ。つまりあれはモンスターが化けている、そうに違いない。そう思っていたのだが──。

 

【あら……まさかこんなに早く会えるなんて。運が良いわね、わたし】

 

「!? ……おい、喋るモンスターなんか居たか?」

 

「私の記憶にはありませんね。しかも理性がちゃんとあるように見えます」

 

「一応お姫様の姿は見た事あるけど……なんかちょっと違うよね? どういう事だろう……」

 

「おいお前。何でルロにそっくりなんだ? 俺らの記憶抜いて真似たとかそういう事か?」

 

 加藤が剣を向けながら問いかける。姫さんのパチモンは口に手を当てて上品に笑った。……やけに板に付いている。何だコイツ。

 

【ごめんなさい。わたしは元々こういう姿なの。貴方達に会えて嬉しいわ】

 

『…………は???』

 

【わたしの名前はカキラ。ルロの母親です。初めまして、加藤さん】

 

「何で俺の名前を……」

 

 姫さんの母を名乗る奴はゆっくりとこちらに歩み寄ってくる。警戒は怠らない、いつでもぶん殴れるようにしておく。相手側も警戒されているのを分かっているだろうに、まるで意に介していない。

 

【ふふふ、驚くのも無理ないわね。ダンジョンのテストしてたのに、わたしみたいなのが最下層に居るんだから。夫の手伝いしてくれてありがとう】

 

「正直唐突過ぎて意味分からないんだが……」

 

「魔族の王妃は亡くなったとの話を聞いていましたが……」

 

【ええ。ルロを産んでそのまま死んだわ。元々体が強くなかったの。エリクサーでも生まれつきの物には効かないしね。……でもあの子が心配だった念が強過ぎて、残留思念として残っちゃったのよね。それからずっとルロの近くに居たわ……夫を止めてくれて、ありがとうね】

 

「……そっすか」

 

 バツが悪そうに目を逸らす加藤。まぁ普通に魔王ぶっ殺そうとしてたからなアタシ達。

 

【ずっとルロの側に漂っていたのだけど、存在が希薄過ぎて誰にも認知されなかったの。でもこの前たまたま夫がダンジョン作って、貴方達にテストさせるって言ってたから、それに入り込む形でこうして体を持てたわ。まぁ魔力を固定化出来るダンジョン限定だけどね】

 

「んーじゃあ王妃様はわざわざ俺らに礼を言う為にダンジョンに入り込んで、こうして立ってるって訳すか?」

 

【それもあるけど。1番の理由はルロの為なの】

 

「ルロ様のですか? それは一体どう言う──」

 

「ぷぎゃあ!!!」

 

『……え?』

 

 後ろを振り向くとオピスが弾け飛んで死んだ。即座に蘇生からの転送で居なくなる。理解が追いつかない。

 

【実はね、最近ルロはずーーーーっと貴方達の話ばかりしてるのよ。特に加藤さん、貴方にとっても好意を持っててね? でも加藤さんって人間でしょ? 寿命が短いじゃない? 折角あの子を笑顔にしてくれた人達が、80年ぽっちで別れになってしまう……きっとルロは悲しむわ……そ•こ•で! 貴方達の寿命を伸ばしてあげようと思ったの!】

 

「じゅ、寿命を伸ばす……?」

 

【ダンジョンで死ねば即蘇生からの転送で、無事に入り口まで送り返されるでしょう? その蘇生の際に、わたしが魂をちょちょいと弄れば長生き出来るようになるのよ! こうすればルロと長く居られるでしょう?】

 

「……一応聞きてぇんだがよ、魔王の一族ってどんくらい生きるんだ?」

 

【そうねぇ、大体3000年くらいかしら。夫は今2500歳、私が1500年くらいだったはずよ】

 

「何処が体が弱いだぁ! バリクソ長生きしてんじゃねぇか! 金さん銀さんがフュージョンしても足りねぇ寿命だろそれ!」

 

「オピスさんを先に殺した理由は……」

 

【彼はバジリスクだから元々長寿でしょ? ルロの話から彼の話は出なかったし、先に退かしとこうかなって】

 

「なぁセラフィナ。パチンカスとコレから生まれたルロってもしかして突然変異種だったりするのか?」

 

「少なくとも両親の要素は見た目くらいなんじゃねぇかな」

 

 すっかり落ち着きを通り越してドン引きしている加藤に適当に言葉を返していると、王妃が更に近づいてくる。

 

【あの子と仲良くしてくれる人達には長生きして欲しいのよ。だから……死んでくれる?】

 

「畜生ぉぉぉ! LRなんてほっときゃ良かったぁぁぁぁぁ!!!」

 

【大丈夫! ちょっとだけだから! 先っちょだから! 先っちょだけで良いから!】

 

「世界で1番信用ならねぇ台詞吐くんじゃねぇぇぇ!!! そんな長い寿命お断りじゃぁぁぁ! 人間辞めたくねぇぇぇ!!!」

 

 加藤の絶叫と共に王妃の周囲に大量の魔法陣が浮かび上がる。圧としては魔王より少し低い程度。つまり、バカ強いと言う事だ。だからこそ加藤もクソ焦ってる。……それにしても、そうか。

 

「……姫さんも敵かよ……!」

 

「多いですねー、まぁ懐き具合からそんな気はしてましたが大人気商品ですね」

 

「俺のだぞ!!!」

 

「おもちゃ取り上げられた子供みたいな顔しないでください高木さん」

 

 姫さんには悪いが、寿命逃げ切りルートを選ばせてもらう。クソエルフにもクソゴーレムにもくれてやるものか!

 

【さぁ! わたしの腕の中で息絶えて頂戴!】

 

「ウォォォォォ! 俺達の戦いはこれからだァァァァァ!!!」

 

「ホントにな!」

 

 唐突に裏ボス戦が、始まった。

 




王妃は魔王の逆でフィジカル弱めの魔法特化です
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