ダンジョン中毒から抜け出したい【書籍化&コミカライズ決定】   作:1パチより4パチ派

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あけましておめでとうございます


ピカピカ見つけたゴブッ!?

「うーん、久々に死んだなぁ」

 

「うん? 何だ、しくじったのか。お主らならこの程度なら全員生存もあり得たと思ったのだが」

 

「気が抜けていたのでしょう。全く、同じ魔族として情けない……」

 

「あはは〜、いや〜すいません。不意打ち喰らっちゃって」

 

「不意打ちか。加藤辺りが気付きそうな物だが」

 

「いや、なんか王妃様の残留思念が出てきて話してたら殺されました。驚いたなぁ」

 

「「…………………………え?」」

 

「他の皆は居ないって事は、戦ってるのかな。だいぶ強そうだったけど、フルメンバーじゃないしちょっと心配だなぁ」

 

「……あの、魔王様。どうしますか、あの方なら確かに残留思念くらい残してそうではありますが……魔王様?」

 

 御付きの人が声をかけても全く反応しない魔王様。微かに震えている。だがそれも最初だけ。ドンドン震えが大きくなって、歯を鳴らし始める。

 

「ケ、ケケ、ケケケーケ・ケーケケルロス……」

 

「は、はい、何でしょうか」

 

「あの、魔王様震えてますけど大丈夫ですか? トリコのシバリング?」

 

「黙れバジリスク! どうされたのですか! しっかりしてください!」

 

 魔王様は完全に怯え切った表情で、こう言った。

 

「ルロの戴冠式……頼んだぞ……!」

 

「崩御の予約を取らないでください!」

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 ルロの母親が襲いかかってきて約3時間。すっかりボロボロになったダンジョンの中で息を上げながらも俺らは全員(バジリスク除く)生き残っていた。

 

【もう魔力切れね……。やっぱり仮の肉体じゃ限界も早いわ】

 

「ハァ……ハァ……い、生きてるかお前ら……」

 

「生きてるぞ、ガントレットぶっ壊れたがな……」

 

「あー……マジで死ぬかと思った。いや死んでも生き返るけどな? 呪い付きで」

 

「世界を変える為に寿命を伸ばすのも悪くありませんが、やはり普通の人間でやるからこそ価値があるような気がしますね」

 

「あーもう今そう言うのにツッコむ気力無いわ」

 

 王妃のバカみたいな魔法の弾幕と硬過ぎる障壁のせいで、碌にダメージを与えられなかった俺達は即座に魔力切れを起こさせる方向にシフトした。ひたすらに避けて逃げて打ち消して、障壁ぶっ壊して貼り直させたり鶴岡の禁呪とやらで魔力奪ったり。その作戦は成功し、無事王妃は攻撃手段を失った。

 

【トドメ刺して良いわよ? もう障壁使えないし、限界近いからほっといてもこの体は消えるわ。だったら鬱憤晴らしで倒し得じゃない?】

 

「いや……なんかもう良いわ……。疲れた……」

 

【そう? どちらにせよ、今回やってダメなら貴方達の寿命を伸ばすのは無理そうね……。諦める事にするわ】

 

「うん……そうしてくれ……」

 

 正直ルロに似てるからあんま攻撃する気になれん。にしてもLRに目が眩んでダンジョン潜って、結局出るどころか裏ボス出てきて戦わされるってどう言う事なんだよ。訳分からん。

 

「父親がネグレクトで母親が過保護ってどうなってんだよ。ルロが可哀想過ぎるわ。アイツ何も悪い事してないのに」

 

【でもいずれあの子も魔王になるわ。その時に貴方達は側にいない。それを思うと……】

 

「……そんなに弱くねぇよ、アンタの娘は。泣きながらでも魔王に立ち塞がれるくらいなんだ。俺らが居なくても立ってられるよ。側で見てたんだろ? なら分かるだろ自分でも」

 

【……そうかしら】

 

「まぁなんだ。アタシ達も生きてる間だったら姫さんと会うのは嫌じゃねぇし……。その、あんま心配しなくても良いんじゃねぇのか? 手出してくる奴くらいなら殴り飛ばしてやるからさ」

 

「子供と言う存在は、親の思っている何倍も早く成長するものです。周りの大人がするべき事は、間違った道に向かう時に止めてあげる事だと思います。彼女でしたらきっと、我々がこの世を去る時には立派な魔族の姫として成熟する事でしょう。……それまででしたら、私達は良き隣人くらいにはなれるかと」

 

「俺らがそもそも間違ってるけどな! 道踏み外しまくってこのザマですよ王妃様!」

 

 ハゲが空気を1ミリも読まないのは放置するとして、実際ルロが弱いとは思わない。【消滅】とか言うインチキ魔法使える時点で強さ的には世界でも上澄みも良いところだ。精神面も、8歳にしては早過ぎる成長速度だ。あんま心配しなくても良いだろ。

 

【……ルロに良くしてくれて、ありがとう。貴方達のような人に会えたのは、あの子にとって幸運ね】

 

「大袈裟な……。ただのロクデナシ集団だよ、俺らは」

 

【頼りになるロクデナシね!】

 

「褒めるなら最後までやり遂げろや! 進研ゼミの如くすぐ投げ出しやがって!」

 

「数ヶ月やっては辞めてやっては辞めてを繰り返してた奴居たよな」

 

「赤ペン先生に『またまた始めてくれたんだね! 今度は3ヶ月目指して頑張ろう!』なんてコメント書かれてた人の事ですか?」

 

「作者の事だろそれ」

 

「付録に釣られて親困らせてたアホの話をするな。それで? アンタはこれからどうすんだ? ダンジョン内でしか実体持てない言ってたけど」

 

【流石にずっと居座る訳にもいかないわ。この魔力の体も限界だし、前のようにルロを近くで見守る事にするわ】

 

「会わないのか? ルロに」

 

【産んですぐに死んだから、わたしの顔なんて分からないわよ。変に心を乱したくないしね】

 

「……まぁそう言う事なら」

 

 個人の考えってものがあるし、これに関しては俺がどうこう言う立場に無い。見守りたいんならここにいる訳にもいかないし、仕方ないだろう。

 

「では帰りますか。オピスさんも待っているでしょうし」

 

「待ってるのに関してはアイツが悪いんじゃね?」

 

「不意打ちとは言え死んだのが悪りぃしな」

 

 それはそう。ダンジョン内は常に死と隣り合わせなのだ。まぁ別に死んでも生き返るから何の問題もない。初期の頃は毎日のように誰か死んでたし。チーム全員とっくに死ぬのに慣れてる。

 

【これからもルロと仲良くしてくれると嬉しいわ】

 

「こっちから関係切る予定は無いから、あっち次第だな」

 

【ふふふ……そう】

 

「じゃ、俺らは帰るから。あー今日は散々だ……」

 

【あ、待って頂戴。わたしもう限界だけど、消えた後ドロップが起きるはずよ。枠組みで言ったらモンスターと同じだもの。今のわたし】

 

「え?」

 

【それじゃ、またいつか会いましょう? さようなら!】

 

 そう言って王妃の体は霧散していく。数秒後、虚空から一気に大量の宝箱がドロップした。……まさかダンジョンから生まれるモンスター達を構成する魔力を奪って自分を形成してたのか? なんつートンチキ技を……。

 

「嵐のような人でしたね」

 

「死んで残留思念になってもあんだけ出来るとか生物としての格がちげーや」

 

「王妃は別に魔王の血引いてないんだろ? 訳分からねぇな」

 

「まぁ人族も魔族も一部の連中はバグってるからな……俺らみたいな一般コモンと比べたらダメだろ」

 

 生まれSSSランクとFランクなんて比べる事自体おこがましいとは思わんかね……(本間先生)

 

「よし、宝箱開けるか」

 

「切り替え早いですねぇ」

 

「開けて良いなら開ける! 俺はそう言う人間だ! もしかしたら出るかもしれないしな! LR!」

 

 ウキウキになりながら手前にあった宝箱に手をかける。そのまま少し開けたその時──。

 

 

 

 チュインチュインチュインチュインチュインチュイン!!!

 

「……え」

 

 幾つもの宝箱を開けまくってきた俺でも、聞いた事が無い効果音がした。

 

「……おい、何だ今の音。知らねぇぞ」

 

「まさか……来たのか? 出たのか?」

 

「光が……! 凄まじい光が!」

 

「あああ、あああああああ、あああああああああああああああああああああああ!!!!!」

 

 辺り一面を塗りつぶすような極光が宝箱から放たれる。

 

 テーレーテレーテーテレレーテレレレーテレレレーレレ!ピーロローピローロー!ドュドュドュドュドュドュ!!!

 

 

全開しろ!!!

 

「ガァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!」

 

 浮かび上がった文字の通り宝箱を開き切る! 虹色の光の点滅が俺の視界を破壊し、どうやって再生してるのか不明な爆音に鼓膜を震わせられながら! 叫びながらその光景に網膜に焼き付ける!

 

 

       

 

 

 

 興奮が、俺の脳を焼き尽くした。

 

 

「ほわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ──アッ!」

 

 

◇ ◇ ◇

 

「め、めちゃくちゃ光ってんな……」

 

「おい見たかよ鶴岡! 加藤のあのはしゃぎ様! 記録更新だろあれ!」

 

「いやぁ良いものを見ました。今日来て良かったです」

 

 アタシはやった事ないが、パチスロの演出の500倍くらい凄いんじゃないか? 前に加藤がパチスロの演出動画見てたし、少しだけ知っている。

 

「……ふぅ」

 

「何だよセラフィナ。テンション低くね?」

 

「そう言えばセラフィナさん、加藤さんのギアススクロールにサインしたと言っていましたね。今のセラフィナさん的には、発狂する加藤さんは少し複雑ですか?」

 

「え。何それ聞いてないんだけど」

 

「あ? ちゃんとLINEグループで言ったろ」

 

「前に加藤の発狂動画垂れ流してたらお前ら俺の事蹴っただろ」

 

「1度に100件も通知出してたので仕方ないと思いますけどね」

 

 そういやそうだった。すっかり忘れていた。あの後別に良いかと思って高木を招待するの忘れてた。

 

「そうかー。セラフィナは加藤側になったんだな。りょーかい」

 

「……ある意味裏切った訳だが何も思わねぇのか?」

 

「ん? 思わねぇな。裏切ったにも入らねぇだろこんなの」

 

「随分と軽いですね」

 

「そりゃ既に目的は達成してるからな」

 

「目的? 加藤を探索者に縛り付ける事だろ?」

 

「違うぞ」

 

「「違う???」」

 

「俺がわざわざギアススクロールで加藤を契約させたのは、アイツとお前らの関わりを切らせない為だからな」

 

 一瞬何を言ってるのか分からなかった。高木はアタシ達が黙ってるのを知ってか知らずか言葉を続ける。

 

「アイツが探索者辞めちまって、俺以外と連絡断っちまったろ? 俺ですら1週間に1回生存確認するくらいだった。お前らなんて全く取ってなかったろ」

 

「そりゃ……そうだけどよ」

 

「実を言うとアイツの住所なんてとっくの昔に知ってたんだわ。会いに行こうと思えば行けたし、お前らに教える事もいつでも出来た。でもそれでアイツの拒絶が強くなったら、マジで縁切れると思った。それだけは嫌だった。俺懐古主義だからさぁ〜、あの頃が楽しくて仕方なかったんだよ。だから戻れるなら……戻りたかった」

 

 頭を掻きながら笑う訳でも悲しむ訳でも無い。普通の事のように重い感情を吐き出す高木。……コイツこんな顔するんだな。常にニヤけてるから戸惑いを隠せねぇ。

 

「どうするかマジで考えたよ。んで思いついたのが、ギアススクロール使って、俺が主犯になってアイツに契約させるくらいしか無いと思った。ギアススクロールって凄まじい値段するだろ? いくら俺でも権力使って簡単にゲット! なんて出来なくてなぁ。貯金と2年の間に運営業務で稼ぎまくった金で何とか買えた訳だ。アイツ居ないのにダンジョン潜る気起きねぇし」

 

「成程……ですがギアススクロールで無理やりに引き摺り戻すのであれば、あまり家凸と変わらないのでは?」

 

「ああ、途中でそれに気づいた。だからギアススクロール手に入れてた後もまごついてたんだわ。どうすっかなぁ、加藤とダンジョン潜れてもガチで嫌われたらダメだしなぁってよ。そんな時にアイツがダンジョンで暴れたって話が転がり込んできたんだ。もうチャンスはここしか無いって思ったよ。アイツの心はまだダンジョンにある、繋ぐんならここしかねぇってな」

 

「高木お前……アタシらの為に?」

 

「いやいや俺の為だよ。俺はメンバー全員でバカやってるのが良いんだよ。結果として今の所上手くいってるし……セラフィナ1人が協力しなくなったとて問題ねぇよ。加藤のギアススクロールにサインしてくれる奴を集める方が大変だろうしな! ギャハハ! 暫く安泰だぜ!」

 

 そう言う事だったのか。思ってたよりコイツはチームの事を考えてたらしい。ウゼェけど。

 

「てかこの話はもう終わりにして地上帰ろうぜ? 魔力カラカラで休みてぇよ」

 

「そうですね、加藤さんも満足したでしょうし」

 

 加藤の方に目をやると、ずっとその場で固まっている。近づいて軽く肩を叩いて声をかける。

 

「加藤。満足したか?」

 

「──────」

 

「加藤? おい加藤?」

 

「加藤さん?」

 

「無視すんなよマイフレンド。中身見せろよなぁ」

 

 どうしたのだろうか、そう思って体を揺らそうとした瞬間。加藤の姿が消え失せた。

 

『…………は?』

 

 今のは間違いなく転移魔法。そしてその前に発動していたのは──蘇生魔法。つまり、それは──。

 

 

 

 

 

 

「アイツ、興奮し過ぎて死んだ?」

 

 高木の疑問に、アタシも鶴岡も何も返せなかった。

 

 

◇ ◇ ◇

 

 勉強が終わった後、お父さんとケルロスが居なかったからおかしいと思ったけど……こっそり加藤達のところに行ってるなんて。ずるい。

 

「ずるいから今日は加藤の家に泊まろう」

 

 セラフィナや鶴岡、後高木も一緒にご飯食べたり遊んだりしたい。前泊まった時はゲームであまり勝てなかったから、今日は勝ってみせる。特に高木。凄く煽ってくるから。泊まりの準備をして、お父さんの魔力を辿って転移魔法を使う。ゲートを抜けた先には、お父さん達が居た。

 

「お父さん、ケルロス。2人だけで──」

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!! やばいやばいやばい! タマ取られる! 2重の意味で取られる!!! ルロに酷い事したからマジ取られるどうしよぉぉぉ!!!」

 

「魔王様落ち着いて下さい! 落ち着いて下さい!」

 

「嫌ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!! 何でだよ! 何でだよ! 何で覚えてないんだよぉぉぉ! 演出どんなのだったか全然思い出せねぇぇぇ!!!」

 

「どうやらあまりに刺激が強かったせいで、脳が負担を軽減する為に記憶を消しちゃったみたいだねぇ。状況からして、興奮し過ぎて頭と心臓の血管破裂したっぽいしそれもあるかも。まぁドンマイ!」

 

「何の成果も得られてねぇぇぇ! らめぇぇぇ! 後悔でちゃいまひゅぅぅぅ!!!」

 

 お父さんと加藤が頭を抱えて辺りを転がり回っていた。2人とも凄く泣いてる。

 

「……どうしよ」

 

 お泊まりできると思って来たけど……これ無理かなぁ。

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