ダンジョン中毒から抜け出したい【書籍化&コミカライズ決定】 作:1パチより4パチ派
ゴレットに土下座して仕事を受けてもらった翌日、ウォルタリアの騎士団長との話し合いの為に俺達は待ち合わせ場所の個室喫茶店に来ていた。
「そろそろ時間だな。セラフィナ、その追加注文しようとしてるゲル止めろ」
「え? ブボッ!? や、やめて! かき混ぜないで! 食べたのまだ入ってるから! 消化してないから! 味わってるから!」
「さっきから食い過ぎなんだよだろお前。朝からカツサンド5皿食うとかポリバケツか? アタシだったら吐いてるぞ」
「食える時に食っとかないとねって武蔵も言ってたじゃ無い!」
「それ武蔵じゃねぇから。武蔵っぽい人だから」
そもそも満腹という概念無いだろ。胃が無いんだから。ゲルダリアの体にはカツサンドがそのままの形で入っている。咀嚼された見た目じゃ無いだけマシかもしれない。
カランカラーン
「ん。おいアイツじゃねぇか? あのクソデカい剣持って全身鎧着てる奴」
「喫茶店にバスターソード持ってくんなよ……。場所取るだろ」
「傘立てに置いたわね」
「アイツ1人で占領してるじゃん。もう入る余地無いぞ傘立て」
バギャア!
「待たせたな。貴様が【自我中心】のリーダー、加藤か」
「取り敢えずカッコつける前に店員に頭下げて弁償してこいよ」
初対面だが既にダメそうな感じがする騎士団長は、店員に叱られた後に俺達の方に向かってくる。
ガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチ
「さて、早速だがそこのショタコンスライムから話はどの程度聞いている?」ガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャ
「うるせぇなぁ! その鎧全部脱いでこいや! 全然話入ってこねぇよ!」
「そもそも話し合いだって言ってんのに金属鎧着てくるとか馬鹿なのか?」
「何を言うか! ここは他国の真っ只中。いついかなる時にでも戦闘に入れるようにしなければならない! 貴様らの様な平和ボケした連中と同じにしないでもらおうか!」
「お客様。先程傘立てを破壊したバスターソードですが、デカすぎて他のお客様のご迷惑になりますので外に置いていただけますか? 近くに武器用のコインロッカーが御座いますので……」
「……少し待ってろ。すぐ戻る」
「ロッカーに武器置いた状態でも臨戦体制に移れるとは流石の騎士団様で御座いますです」
「覚えていろよスライム女……」
「生やそうと思えば生やせるけど……今やる?」
やった瞬間自分が消し飛ばされるのが確定するのだが分かってるのだろうか。外のコインロッカーに装備を置いた騎士団長と一緒に個室の方に向かう。
「……竜人族だったのか」
「あれ? 言ってなかったかしら。あと地味に王族なんだって。行く当ても無く這いずり回ってた私と比べると酷い格差よね。鶴岡呼ばない?」
「面倒くさいから呼ぶなよな。──そんで? アタシらに具体的に何を求めるんだよ」
「貴様は仲間の1人か。ある程度は聞いてるかもしれないが、お前達には国で起きてる問題への解決に働いてもらう。具体的にはダンジョンで目的のアイテムを探すだな。期間は──」
「待て待て。そもそもの話、既にゲルダリアは1年付き合ったんだろ? なら良い加減解放してくれないか? アンタの弟に手を出したコイツが悪いのは理解するんだが……流石に罪が重過ぎるだろ」
「私の弟以外にも国の至る所で少年に引っ付き、耳障りの良い言葉ばかり吐いて思春期の多感な時期をめちゃくちゃにした挙句ある程遊んだらポイ捨てして次に行くコイツには相応しい罪だと思わないか?」
「悪いゲルダリア。何も反論出来ないからまた来年な」
「このナルホドくん役に立たねぇぇぇ! 【待った!】出来るとこまで喰らいつく気概を見せてよ! セラ! お願い! もう貴方しか居ないわ!」
「蟹工船よかマシなんじゃねぇの? 頑張ってダンジョン潜ってアイテム缶詰に詰めてこいよ」
「鶴岡ぁぁぁ! はやくきて〜はやくきて〜! 資本家との戦いよこれは〜!」
『とんずら使ってカカッっときょうきょ参戦しましょうか?』
「もう勝負(判決)ついてるから。後いきなり電話かけてくんな」
言うだけ言ってもう切れてるし。何なんだよアイツ。対資本主義へのアンテナがビン立ち5Gじゃねぇか。
「何にせよSSSランク。しかも一点狙いの為に永遠と拘束は勘弁してくれ。はっきり言って無期懲役と変わらない。どうにかならないか」
「今ウォルタリアは危機に直面している。我が国は探索者がこの国ほど活発じゃない。ダンジョンも2年前から軍の方から何人か探索者の資格を取って潜ってる状態だ。手放す理由が無い」
「でも結果としてゲルダにおんぶに抱っこさせても状況は良くなってねぇんだろ? このままチンタラやっても【清浄なる神樹】がドロップするとは思えねぇけどな」
「……ハーフサキュバス。それは我々が無能と言いたいのか?」
「そう聞こえたのか? ハッ! なら頭の方はその通りみたいだな──イデッ」
「煽んな馬鹿」
セラフィナの頭を軽く引っ叩いて止める。初対面の相手に対して攻撃的になるのはコイツの悪い癖だ。加奈子さんの時ですら悪かったから筋金入りにも程がある。騎士団長に関しては高圧的なのもあって倍率ドンだ。
「仲間が悪かった。だが探索者の端くれとして言わせてもらうがな、SSSってのは手に入っただけで大騒ぎなレベルのアイテムだ。今世界で発見されているSSSランクのアイテムは10種類だが……どれも片手で数えられる程度しか見つかっていない。勿論複数出る可能性だってあるにはある。だが魔王がダンジョンを生み出して既に500年経っている。その間に出てないんだぞ。……出ると思うか?」
「ぐっ……だが!」
「はっきり言わせて貰うがな。先の見えない事にいつまでも俺の仲間を巻き込まないで欲しい。勿論ゲルダリアがやらかした分の贖罪に関しては渋々嫌々怠怠やるつもりだが……」
「嫌がりすぎでしょ! 積極性持ちなさいよ! でもありがとう! お礼に私の愛をあげる!」ベチャ
「取り込んだカツサンド出して渡すなぁぁぁ! お前のゲルでベチャベチャじゃねぇか! ゼリー寄せかよ!」
「イギリス人なら喜ぶと思うわよ」
「ヘイトスピーチだろそれ」
「兎にも角にも、金でも何でも他の方法で落とし前つける形で──」
そう言おうとした時、1つの考えが頭をよぎった。ウォルタリアは今国難の時。もしこの状況を解決すれば、感謝されまくるだろう。と言う事はつまり──。
「(俺の悪評を掻き消すことが出来る!?)」
今の俺の状況としては、ギアススクロールに署名してくれる人を探している状態だ。理由としては当然、高木のクソ契約に反する契約をして、ダンジョンノルマから解放される為。だがしかし、それをやった所で高木達と再会する前の状態に戻るだけだ。
「(俺の目的は、ダンジョン中毒から抜け出して普通の会社員になってまともになる事! だがやらかしまくったせいで企業には大体俺の事がバレている!)」
悪い意味で無駄に有名な俺達は、めちゃくちゃ警戒されてたりする。もしダンジョン中毒が治ったところで、俺を雇ってくれるマトモな企業なんて存在しないだろう。どうも裏で要注意人物として回覧回ってるみたいだし……。このままだと結局ダンジョン清掃員しか仕事が無くて、高木の妨害から逃げられない。だがここでもし、ウォルタリアの国難を解決したとする。そうすれば一躍俺はウォルタリアで株を急上昇出来る。それはつまり!
『確かに過去は色々悪さをしていたが、国一つを救ったならお釣りが来る! ウチの企業に入社してくれ!』
『いや是非ウチで!』
『世間でも貴方はとても素晴らしい人だと言っています! 過去は水に流しますので、ウチの従業員になりませんか?』
劇的ビフォーアフター。手の平ドリル。裏返ったァッッ! 見事に俺の悪評は吹っ飛ばされて社会的信用リザレクション! 中毒治った暁には何処でも入社カモンピッピー! これだ、これしか無い!!! 映画版ジャイアン作戦だ!!! 素晴らしい近道だと思わんかね!
「……? おい、何だ。何故黙る。続きを──」
「って思ったんだけど! そう思ったんだけど! 俺としてはね!? ウォルタリア助けたいなーって思う訳! だからさぁ! もう少し詳しく教えてくんない!? 状況をさ!」
「おい貴様、先程と全然態度が──」
「何言ってんだよ! 確かに俺は過去はロクデナシだった! でも過去より今だろ!? 今の俺は困ってる人を見捨てはしない! そうだろお前ら!」
「おい加藤。お前自分に都合の良い妄想に囚われてるだろ。目を覚ませ」
「似合わなさすぎでしょ今のセリフ。他所の小説からコピペしたの? 盗作は犯罪よ犯罪」
「コイツらもこう言ってるから! やる気満々だから! はよ教えろ! そして解決させろぉ!」
「気狂いか貴様! ヤブ医者で歯治した時並に会話噛み合っていないぞ!」
「赤い紙みたいなの噛み噛み委員会しなくても問題ねぇ! 俺に任せろぉぉぉ!」
「おいショタコンスライム! めっちゃ馬鹿では無いか貴様のリーダー! どうなっている!」
「だって私らのチーム基本的に馬鹿しか居ないもの。何言っているの?」
「言ってて悲しくならんのか貴様はぁぁぁ!」
ここから俺の逆転劇が始まる。国の問題解決すればギアススクロールにサインしてくれる人も出てくるだろ! うわマジかよ全部解決するじゃん! 神かな? あ、ギアススクロールは紙ってか! ガハハハハ!!!
「これぜってぇ碌な事にならねぇな……。面倒くせぇ……」
『私は今日から辻説法週間ですので同行出来ません。頑張ってくださいセラフィナさん。私も頑張って皆さんが帰ってくるまでに勢力拡大しておきますね』
「アタシのスマホにアカい着信履歴残すのやめろや」
◇ ◇ ◇
『という事で一度帰って来なさい。良いですね? ライラには伝えていますので』
「で、でも私何も成果を……」
『貴方にはライラが連れてくる応援の探索者と合流して貰います。なんでも優秀な人材と聞いています。彼等にもダンジョンに潜って貰うつもりなのですが……それ以外の仕事もお願いするかもしれません。……デュルートも会いたがっていますよ』
「わ、分かりましたわ……。一度ウォルタリアに帰ります……」
『宜しい。それではウォルタリアで。気を付けて帰って来てください』
「は、はい……」
電話を切ってため息をつく。……またお役に立てなかった。悔しい。
「……準備しなくては」
これ以上迷惑をかけてはいけない。ただでさえ私は王妃様達に面倒をかけている。せめて指示だけはちゃんと聞かなければ。私を拾ってくださったのだから……。
「……兄様。何処にいるのですか……?」
あの時、私を置いて何処かに行ってしまった人。小さい私を守ってくれた、優しい人。もう少し遅かったら、一緒に王妃様に救われたかもしれないのに……。
「……ハッ! 感傷浸ってる場合じゃ無いですわ! 早く出立の準備をしなければ!」
まずは武器と探索者証明書と……パスポートにタブレット! それから……。
「あ! 純愛モノの新刊が出てる!? 読まなければ!」
爆速でカートに入れてカード支払いする。うっほ! やっば! R18ではありますが、っぱたまらねぇですわ! あぁ^~心がぴょんぴょんしますわぁ^~。あ! オススメに良さげな新刊が! 買うっきゃ無いですわぁぁぁ!