ダンジョン中毒から抜け出したい【書籍化&コミカライズ決定】   作:1パチより4パチ派

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怒りはまるでレーザービーム

 

「じゃあそっちはそっちで頼んだぞ」

 

「まぁお前の風評が良くなるってんなら構わねぇよ。やってやらぁ」

 

「マジありがとう。後で何でもするわ。契約以外」

 

「……ふーん……そうかよ……」

 

「アナンタ、あれフラグよ。言質取ったからって言ってめちゃくちゃされるわよ加藤の奴」

 

「幸せならOKですわ!」

 

「パワポケ7のしあわせENDになるかもね」

 

 なんか不穏な言葉が聞こえるが、俺が今やるべき事は王妃からの頼みをこなす事である。

 

「ねぇ加藤。何で私がアンタとペアなの? セラのが良くない?」

 

「お前が何かやらかしたら、しばく約束をライラとしたからな」

 

「セラ! 変わりましょう! 加藤と一緒のが嬉しいでしょ!?」

 

「お前をしばく仕事が怠いから嫌だ」

 

「そもそもしばかれる事をしなければ良いのではないでしょうか……?」

 

「死ねと!?」

 

「そんなに!?」

 

 ゲルダリアは高木に凄まじく近いノリなので、何かやらかしても全く反省しない。いや、謝罪はするけどすぐ忘れるし懲りない。そんな奴だ。女版高木と言っても良い。

 

「おら、さっさと行くぞバカイム。王妃から頼まれたんだからキリキリ働け。お前自身の贖罪、俺の名誉の為に」

 

「最後が理由じゃない! あーゴミゴミゴミ! せめてショタのつまみ食いしないとやってられないわよ! だから今からデュルートのとこ行っても良い?」

 

「良い訳無いんだよね。これ以上異常性癖のゲルを王妃の息子に近づけられるかバーカ」

 

「はぁぁぁぁ!? アンタが言えた事じゃ無いでしょうがぁ! 見た目ロリのセラフィナにガッツリ手ェ出してる癖に私だけどうこう言われるとか不公平過ぎるわよ!」

 

「手出したんじゃなくて出されたんだよボケェ! こちとら被害者だ!」

 

「受け身のマグロなだけでしょ! 普段偉そうに剣振るってもベッドじゃ腰振って貰ってて大層なご身分ですわねぇ! おひょひょ!」

 

「お前を殺す! 今ここで!」

 

「ごびゃぁぁぁぁぁ! 十七分割ゥゥゥ!!!」

 

「何でも良いからさっさと行けよ。アナンタ、行くぞ……何してんだお前」

 

「あ、申し訳ありませんわ。鼻血止まらなくて横になっていましたの」

 

「いいから鼻にティッシュ突っ込んで行くぞ」

 

 舐めた事言って来たゲルを手刀で斬刑に処している間に、セラフィナ達はさっさと行ってしまった。早く俺達も行かなければ。

 

◇ ◇ ◇

 

『水源の魔力汚染?……聞いた事無い言葉っすね……』

 

『現在このウォルタリア広域で、あらゆる水源に含まれている魔力が瘴気に……正確には、過去ミアズマボムで使用された物に近いと思われる物に変質していました』

 

『ミアズマボムは既に製造方法が闇に葬られているが……当時から生きている寿命の長い種族であれば、あの悪魔の兵器の実態は分かっている。あれは実際には魔力なのだ。勿論マトモな物では無い。生物がこの魔力を取り入れれば良くて昏倒、大体が死に至る。これがミアズマボムの正体だ』

 

『そしてこの魔力の厄介な所として、他の魔力すら同じ物に変質させてしまうのです。そのせいでどんどん範囲が広がっていく。分かりやすく言うのなら、ガン細胞のような物です』

 

『ウォルタリアの水源に発生している……。今まで無かったのに突然って事は、人為的な物なんじゃねぇの? 急に魔力が変化するなんて聞いた事ねぇし』

 

『ええ、我々もそう考えています。ですがまずは民の命とも言える水を守る為に、人員を多く割いている状態でして……』

 

『……他国に頼ると言うのは』

 

『……ウォルタリアは海に囲まれていますが、過去に何度も侵略を受けた歴史があります。その全ては周辺国家、魔王が表立って戦争を終わらせた結果戦争がしにくい状況になって行き、ひとまずは攻め込まれるような事は無くなりました。……ですがここで弱みを見せるような事は……』

 

『(あのおっさん、何だかんだ王としてはほぼ満点だな……ダメ親だけど)』

 

『でも汚染止まらねぇんだろ? 外に頼りたくねぇってんなら首謀者取っ捕まえるしか無い訳だが……国がやってんのに捕まらねぇ。それこそ何年もやってんのに。だから同時進行でアイテム探しって事か?』

 

『……そう、なります』

 

『おい加藤。お前魔王の連絡先持ってるだろ。頼んだら何とかしてくれるんじゃねぇの?』

 

『そ、それは流石に……やめて頂けると……幸いです……』

 

『何でだ? 魔王が言えば従うんじゃねぇのか? 侵略すんじゃねぇって』

 

『ここの周辺国家は人族の国だ。魔族である魔王だって、首を突っ込みたく無いだろ。事実人族側だけで起きた戦争に、あのおっさんは介入していない。今回のこと言ったとて、人族で何とかしてくれで終わりだ』

 

『そう言うことになります。正直な話、皆様方に頼り切るつもりは毛頭ありません。ただ、今現在動き続けている騎士達は碌に休めていません。ですので少しだけでも……』

 

『詰まるところ私達に一時的にシフト入ってくれって事なの? じゃあ私ずっとシフト制に組み込まれてたの!?』

 

『まぁ自業自得かコイツに関しては』

 

『別に良いもんな。ゲルダがこき使われてても』

 

『仲間を見捨てる奴はクズよクズ!』

 

『だからちゃんと来てやってんだろ。黙って働け』

 

『そもそも罪に問いてない時点で此方としては有情のつもりだがな。貴様のせいで私の弟はスライムにしか興奮しなくなってしまったでは無いか!』

 

『息子を特殊性癖にされたのは普通に遺憾です。ただ、騎士達の代わりに動いてくれるなら不問としますが……どうしますか?』

 

『頑張ります。私お仕事大好き!』

 

『宜しい。それではお願いします。それと加藤さん、貴方が優れた……まぁ少しやんちゃをした探索者と言うのは知っています。今回の件の協力をしてくれるのであれば、国内だけになってしまいますが、我が国に協力してくれた者として表彰するのも考えています。それでどうでしょうか……?』

 

『やりまぁぁぁぁぁす!!!』

 

 こうして俺達は日々ダンジョンに潜り続けたり、汚染の原因究明及び犯人確保をしている騎士達の手伝いをする事になった。期間は1週間、たった1週間やるだけで国から『コイツええ奴でっせ』と言うお墨付きを貰えるのだ。俺の悪い風評なんて吹っ飛ぶ! もう街中で人とすれ違った時、俺を知ってる人から『うわぁ……』って顔して離れられる事も! 面接を受けようとした際に俺の悪事を知っている企業から爆速でお祈りメール喰らう事もない! そうなれば後はギアススクロールの契約と、中毒症状に集中できる! 何故なら直せば普通になれるんだから! と言うわけで俺とゲルダリアはダンジョン側の応援として目的のダンジョンに向かっていた。

 

「ふっふふ〜。テーマパークに来たみたいだぜぇ。テンション上がるなぁ!」

 

「私はクソほど下がってるんだけど。あーあ、最近ライラに追っかけられるし加藤にボコられるしショタ成分補充出来ないしで散々よ。そろそろ補給しないと死ぬわよ私」

 

「死ぬ訳無いだろ高木以上の回復力持ちの癖に。ダンジョン潜ってる時でもお前が死んだ時なんて数えるくらいしか無いだろ」

 

「死ぬのは数えるくらいだけど動けなくなったのは沢山あるわよ。水分足りなくなって」

 

 ゲルダリアと言うかスライムと言う種族は厳密には人族でも魔族でも無い。所謂魔生物に分類されるのだが、中でもスライムは基本的に不死身に近い。そもそもがゲル状の体なので打撃は無効、斬撃も微妙。オマケに魔法にもめっぽう耐性があるとか言う馬鹿みたいな性能をしている。別に即死する訳じゃない。まぁそれでも普通はバラバラになれば再生に時間が掛かるのだが……誠に遺憾ながら俺のチームに居る奴等は俺含めて普通じゃ無いので今更だ。唯一の弱点は乾燥だ。乾くと干物になって死ぬ。

 

「ゲルダリア、お前ダンジョンの場所分かるだろ? 案内してくれよ」

 

「へーい。結構距離あるからダラダラ行きましょ」

 

「早めにお願いって言われただろ」

 

「私のログには何も無いわよ」

 

「都合悪いから全消去しただけだろ。記録も記憶も」

 

 ぶー垂れるゲルダリアに道案内させる。俺達が今日交代してくれと頼まれたダンジョンは、首都であるアクアスの南側だ。アクアスのダンジョンは人の居る場所からかなりの距離がある。大昔に設置されたとか言ってたし、まだダンジョンに対して抵抗感があったから城から距離を空けたのだろう。当時はまだ戦争が終わったばかりだったろうしな。

 

「あ! ちょっと加藤! 見てよあれ!」

 

「……何だあれ。やたらと女の人が並んでるけど」

 

「ウォルタリアの男性アイドルグループ『ドライナイ』のゲリライベントよ! ほら! メンバーに竜人族誰も居ないでしょ? 竜人族が殆どのこの国でそのギャップがヒットして今急上昇中なのよ! 私の推しはエルフのセネットくん! 顔が良くて見た目ショタ! アンタにとってのセラフィナと同じよ!」

 

「まずグループ名にツッコミ入れていいか? 世界が終わりそうだから。後安直だし。てか由緒正しいとか言ってたくせにキラキラしたアイドル居るの不自然過ぎる。何で中世ヨーロッパみたいな街並みにマイクスタンドやら照明があるんだよ」

 

「そんなんPayPayある時点で今更よ! ライブは終わったみたいだけど、ファンとの交流イベントで握手会あるらしいわ! ちょっと寄らせて!」

 

「お前王妃からの仕事ほっぽいてアイドルとの握手会行って言い訳無いだろ! 良いからはよ案内しろや!」

 

「やだぁぁぁ!!! ショタとおてて繋ぎたぁぁぁい!!!」

 

「最悪過ぎる駄々こねるな!」

 

 アイドルの方に這いずろうとするゲルダリアを引っ捕まえて抑える。そもそもシフト交代してくれって頼みなんだから遅刻したら迷惑だろ。何考えてんだこのバカは。

 

『お一人様1回! 会話も1分! ルールをしっかり守ってくださーい!』

 

「……1分か」

 

 短い時間のお陰で列はどんどん進んでいる。メンバーも複数居るため列はバラけている。ゲルダリアのお目当てのアイドルの列はそれなりに人が居るが1番人気では無い。幸い時間にはまだ余裕がある。早めに着いておきたいが、駄々を捏ねられ続けるよりはマシか……。

 

「分かったよ、さっさと行ってこい。待ってるから」

 

「やったぁ! 流石リーダー! じゃあ行ってきまーす!」

 

「あ、ルール守れよ! 1人1回だからな! 並び直すなよ!」

 

「分かってるわよ! ちゃんと守るわ!」

 

 そう言って列に並びに行くゲルダリア。冷静に考えて何でアイツ人族に欲情してんだろ。スライムって同種以外興味無い筈なのに。

 

「しっかし……ほんと竜人族だらけだなぁ、この国」

 

 道行く人大体が竜人族だ。他の種族も居る事は居るのだが、数は少ない。元々ウォルタリアは竜人族しか居ない国だった歴史がある。何度も他国に侵略されてもこうして無事なのは、竜人族がそもそも強過ぎるのだ。馬鹿みたいな魔力量でバカスカ魔法をぶっ放せるし、腕力も凄い。恵まれた種族と言って良い。事実探索者でも竜人族は上澄みになりやすい、まぁ殆どが肉体スペックに頼り切りなのでどっかで限界が来るが。

 

「そう考えるとアナンタってめっちゃ強いな」

 

 過去に何度か竜人族の探索者に絡まれた事があったのだが、どれもセラフィナが喧嘩を買い叩いてボコボコにしていた。そんな中で唯一セラフィナを抑えられるレベルのパワーを持つアナンタは凄い気がする。アイツソロ探索者としてやってたみたいだし。

 

「……ん?」

 

 そんな事を考えていたのだが、ふと我に帰る。列の様子がおかしい気がする。目の錯覚だろうか、目を擦った後もう一度確認してみた。

 

『応援ありがとうございます!』

 

『うへへへへ! そんなそんな!』

 

 丁度ゲルダリアがアイドル少年と握手している。それは良い。普通だ。

 

『お、応援ありがとうございます!』

 

『ぐへへへへ! おてて綺麗ね貴方!』

 

 次もゲルダリアがアイドル少年と握手した。それは良くない。異常だ。そして異常なのはそこだけじゃない。列をよーく見てみると──。

 

『イヒヒヒ!』

 

『ハァハァハァ!』

 

『ちょっと早くしてよ私!』

 

『ルール守りなさいよ! モラルよ!』

 

『うるさいわね! 静かに並びなさいよ!』

 

『いや私が1番うるさいのよ私!』

 

 先頭からゲルダリアゲルダリアゲルダリアゲルダリアゲルダリアゲルダリアゲルダリアゲルダリアゲルダゲルダゲルダゲルダゲルダゲルダゲルダゲルダゲルダゲルゲルゲルゲルゲルゲルゲルゲルゲルゲルゲルゲルゲルゲルゲルゲルゲルゲルゲルゲルゲルゲルゲルゲルゲルゲルゲルゲルゲルゲルゲルゲルゲルゲルゲルゲルゲルゲルゲルゲルゲルゲルゲルゲルゲルゲルゲルゲルゲルゲルゲルゲルゲルゲルゲルゲルゲルゲルゲルゲルゲルゲルゲルゲルゲルゲルゲルゲルゲルゲルゲルゲルゲルゲルゲルゲルゲルゲルゲルゲルゲル──。

 

「当然のように増殖してんじゃねぇぇぇ!!!」

 

『『『『『アパァァァァァ!!!』』』』』

 

 道の脇に落ちていたデカい石を全力で投擲して、増えまくったゲルダリアを全て貫く。本体以外のゲルは全て石床にぶちまけられて、本体だけ体の真ん中に風穴を開けて残った。この瞬間、俺の脳内バカ図鑑の討伐数にスライムが約50体追加され、一気に討伐数ランキング2位に躍り出た。当然1位はハゲ(高木)である。最大金冠と最小金冠コンプしてるかもしれない。

 

「何でぇ!? 1人1回ちゃんと守ってるでしょ!?」

 

「増殖したとてお前の権利が増える訳無ぇだろうがぁ!」

 

「嘘ぉ!? 増えないの!? それぞれかけがえのないオンリーワンな存在なのに!」

 

「何1つ変化の無いコピペ分身の何処がオンリーワンなんだよ!」

 

「コピペじゃないし! それぞれ1mlくらいズレがあるわよ! ちゃんと見なさいよ! 世界に1つだけの私を!」

 

「分かるかそんな違い! せめて見た目少しずつ変えろや! 世界に1つだけの花理論が通ると思うなよ! つーかアンタらも指摘しろよ! 分かるだろ流石に!」

 

「で、ですがルールは守ってる気がして……並んでくれているのなら握手するのが自分の仕事ですし……」

 

「プロ根性素晴らしいですね! でもその志はこのカスライムに搾取されてますよ! 今こそクソ客に立ち向かう時なんだよ!!!」

 

「アイドルの鏡過ぎるわ……。私のココ、空いてますよ」

 

「ほ、本当に空いてる……穴が」

 

「テメェの穴を埋めるのはそこのアイドルじゃなくて常識だよバーカ!」

 

 結局このアホ過ぎるやり取りで30分以上無駄にした。単に迷惑かけただけじゃねぇか!




加藤の脳内バカ図鑑〜討伐ランキング〜 仲間編

1位 高木×100から数える事をやめた
2位 ゲルダリア×60 (前から割とバカやるため)
3位 篠目×15 (加藤を巻き込んで死のうとする為)
4位 鶴岡×7(実はあんまりライン越えない。ギリギリで反復横跳びする)
5位 オピス×5(クソアイテム関連でライン越える)
6位 セラフィナ×0(容姿が好みなので殴らない。えこひいき)
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