ダンジョン中毒から抜け出したい【書籍化&コミカライズ決定】   作:1パチより4パチ派

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よくよく見たら前の話が50話でした。記念すべき50話があれかぁ……


竜の過去

「…………」

 

「あ、その……あー……えーっと……」

 

 ブチッ

 

「さっきから何なんだよお前! 言いたい事あんならハッキリ言えや!」

 

「ひょえええ! 申し訳ありませんわぁぁぁ!」

 

 アナンタと組まされたアタシは2人で汚染が続いている水源の方に向かっていた。何かしらの手掛かりを探している騎士達の手伝いをしてくれとか何とか。……まともに役に立てる気がしねぇ。学無ぇんだってアタシ。いやそれよりもコイツだ。

 

「何でビクビクしてんだよ。何か言いたいんだろ?」

 

「え、えーっと……す、好きな食べ物は何ですか!?」

 

「プロテイン」

 

「……そ、そうですか。こ、個性的な好みです……わね……」

 

 また黙りやがった。何だコイツ。前に居酒屋で会った時やさっきまではまだマシだっただろ。

 

「何でいきなりコミュ障なってんだよ。さっきまで普通だったろ?」

 

「そ、それは他の方も居たからで……ふ、2人きりになると気まずくて……」

 

「別に好きに話せば良いだろ。返事したかったらするし、したくなかったら無視するからよ」

 

「ほ、ほげぇ……。うぅ、上手くいきませんわ……」

 

 今度は俯きながら落ち込み始めた。め、面倒くせぇ……。全く、ウジウジするような奴なんて相手してられ──。

 

「(……いや、人の事言えねぇわ)」

 

 少し前、加藤の事で悩んでた時にハッキリ言えなかったのは誰だよ。加藤に引っ張り出してもらったから言えただけで、何もねぇとか嘘吐いてたのは誰だよ。──アタシじゃねぇか。なのに人にはあーだこーだ言うのか? クソじゃねぇか。

 

「……悪ぃ。言い過ぎた」

 

「え? 何がですの?」

 

「アタシもお前みたいにハッキリ物言えない時があった。それを棚上げしてた。だから悪ぃ」

 

「……い、いえ。そんな。セラフィナさんが謝るのは違いますわ。事実ですし……」

 

「じゃあアタシが間違ってたのも事実だろ。許す許さないはお前の自由だ。好きにしろよ」

 

「えぇ!? じゃ、じゃあ許しますわ! だから私も許してくださいな! これでおあいこでこの話は終わりですわ!」

 

「おう、分かった。ありがとよ」

 

「! ……え、えへへ。こちらこそありがとうございますわ!」

 

 何が嬉しいんだか一転して笑顔になるアナンタ。テンションコロコロ変わり過ぎだろ、加藤か?

 

「アタシの周り、基本的に言いたい事は言いまくるからよ。それに慣れすぎなのかもな」

 

「それは良い事ですわ! 言葉にしないと伝わりませんものね! (わたくし)も見習いますわ!」

 

「まぁ好き勝手言うから相手怒らせてそのまま殴り合いの喧嘩になるけどな」

 

 前に加藤と高木が互いにマジギレした時は最高に面倒だった。高木が回復しまくるから余計に加藤がキレて収拾つくのに6時間もかかった。確か喧嘩の内容が『蕎麦に柚子入れる入れない』だった筈。飲み会の締めに加藤の蕎麦に高木が勝手に柚子をぶち込んだのが原因だ。加藤の事は好きだが普通にバカだと思う。てかバカだったわ、チーム全員。

 

「お前も探索者だろ? 他の連中と組んだりしなかったのか?」

 

「い、一応声を掛けようと考えたのですが……まともな人なんてそれこそ『勇者の集い』の方々しか居らず……あの方達は有名過ぎて気が引けて……他国にすら名が轟いてる方達ですから」

 

「そうなのか。アタシらは?」

 

「やば過ぎる狂った探索者チームがあると言うのは、日本に向かう前から聞いてはいましたわね」

 

「へー、噂って意外と正確なんだな」

 

 自分達が異常なんて当の昔に理解している。探索者になってから最初の頃はそこら辺の奴らによく絡まれたが、ある時からパタリと無くなった。最近出来た生意気なチームから関わりたくないヤバいチームに更新されたんだろうな。

 

「あ! ですが今はそう思ってはいません! お話ししたのは加藤さんとセラフィナさん、ゲルダリアさんだけですが、皆さんそんなに……酷く……無いですわ!」

 

「それ本心か?」

 

「ほ、本心ですわ! 酷くないだけでヤバいとは思ってますので!」

 

「同じだろそれ」

 

 鼻で笑いながら、懐から新しい飴を取り出す。タバコへの欲求はもう無いが、逆に飴舐めてないと落ち着かなくなってしまった。大して飯食ってないから太る事なんて無いが。

 

「……ほら」

 

「え、良いんですの?」

 

「おう。好きなの取れよ」

 

「えーっと……オススメとかは……」

 

「コーラ」

 

「なら、それで。ありがとうございます」

 

 アナンタに棒付きキャンディを1本渡す。そこら辺に売ってるやっすい飴だ。高級な飴も、今なら普通に買える。それでも、この安っぽい味が好きだった。

 

「……! 美味しいですわ! 飴なんて久しぶりに食べたので……」

 

「ハハッ。安物も悪く無いだろ。最も良いとこのお前には似合わねぇだろうがな」

 

「そんな事ありませんわ! だって──(わたくし)、スラム育ちですので」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「は?」

 

「え? ど、どうなさいましたの? セラフィナさん」

 

 一瞬思考が停止した。コイツが、アナンタがスラム育ち? んなバカな。ウォルタリアは世界全体でも治安がトップクラスで良いんだぞ。スラムなんて無い。

 

「……ああ! そうでしたわ! 私の事ちゃんとお伝えしていませんでしたわね!」

 

「そ、そりゃ……そうだろ。お前とまともに話したの今日が初だぞ。居酒屋の時はお前暴走してたし」

 

「あ、あれは純愛メーターが振り切れて車検落ちしただけでして……」

 

「意味分かんねぇって」

 

 なんて事の無いように振る舞うアナンタに疑問しか湧いてこない。アタシだって親から捨てられてゴミ食って生きてきた身だ。碌な半生送ってない。加藤達と会ってなかったら、道の隅でくたばってても可笑しくない。だがコイツは王妃に目をかけて貰えて、騎士団にも入ってる。スラムとはかけ離れてる。

 

「……私、生まれはこの国では無いんですわ。子供の頃過ぎて国の名前すら忘れてしまいました。治安が悪く、当たり前のように人が殴られてる無法地帯。そんな所で、私達は生まれました」

 

 懐かしむような、昨日の事のような。曖昧な表情を浮かべつつ、歩き続けるアナンタの隣を歩く。

 

「母は犯罪組織のトップの愛人だったようでして……。最も、私達が生まれた時には既に本妻が子供を産んだので用済み。捨てられました。当然母は私達を養える訳もなく、5歳を迎える前に私達はスラムで生きる事になりました」

 

「達って事は……兄弟がいたのか?」

 

「兄が。とても優しくて、強くて、自慢の兄です。……あの頃は、本当に生きるのに必死でした。頼れる相手なんて存在しませんので。革靴を食べた事もありましたわね」

 

 それに関してはアタシもある。クソ不味かったが。思い出しただけで反吐が出そうだ。

 

「それでも、何とか生きてました。兄がとっても強かったのもあるのですが……2人で頑張って。でも段々と限界が近づいてきてしまって……その時、兄がこう言ったんです」

 

『この国はダメだ。他所の国に行こう』

 

『どうやって……? 無理だよぉ……お金なんて……』

 

『……一部の金持ちが使うポータル屋がある。そこの行き先は、どれも治安のいい国だ。観光目的で使われるポータル屋だからな。だから金持ちが移動する時に開かれるポータルに、無理やり入る』

 

『け、警備の人達が……』

 

『安心しろ。俺が何とかする……俺を信じてくれ、アナンタ』

 

「途中までは上手く行きました。後少しで【転門(ゲート)】に届く。でも、運悪く他国からポータル屋で来た者達と鉢合わせになってしまい……。私が居た国にわざわざ来ると言う事は、その者達も犯罪者でして」

 

『何だ貴様! カチコミか!』

 

『ぐおっ!? このトカゲ強いぞ!』

 

『舐めるなよぉ! 【氷槍】!』

 

『ガァァァァァ!!!』

 

『お、お兄ちゃぁぁぁん!』

 

「囲まれて一方的にタコ殴り。私も捕まってしまい、もうここまで。そう思った時──」

 

『い、もうとに……俺の妹に触れるなぁぁぁ!!!』

 

「激怒した兄が暴れて包囲網を抜け出して、閉じられる直前の【転門】に私だけを投げ飛ばしたんです。そしてその行き先がたまたま……」

 

「ここだった。そう言う訳か」

 

「はい。ウォルタリアのポータル屋に着いた私は、力尽きてその場に倒れました。その時丁度、視察で首都を回っていた王妃様に出会って、助けて頂いたのですわ」

 

 目的地にもう少しで到着する。それでもアナンタの話は終わらない。アタシも、止める気が無い。

 

「王妃様には本当に良くしてもらって……私を不憫に思ったのか、わざわざ家まで用意してもらい、成長した後は騎士団への入隊も許可してくださりましたの」

 

「じゃあお前の口調は何なんだよ。スラム育ちでその話し方はおかしいだろ」

 

「こ、これは……その……王妃様に拾って貰ったのに、いつまでも前の話し方ではダメだと思いまして。絵本などで上品な話し方を覚えようとしたら取ってつけたような中途半端なものになってしまって……。アハハ……」

 

 漫画に出てくるお嬢様キャラだとは思ったが……そりゃそうなるか。絵本から覚えてんだから。ガキ向けに分かりやすいキャラ付けするよな。

 

「……恨んだりしないのか」

 

「? 何をです?」

 

「お前を捨てた親とか、スラムに居た時に踏みつけて来た奴らとか。それこそ世界を恨んだっておかしくねぇ。アタシも碌でもねぇ出自だが……正直まだ恨んでる。腹立ってる。思い出したくねぇ。……お前はどうなんだ?」

 

 首を傾げて悩むアナンタ。1番疑問を思ったのはそこだ。コイツにはスラム育ち特有の闇が無い。纏う雰囲気と言っても良い。いくら救われてから長いと言っても、恨み辛みが消える訳ない。アタシも、アタシが居たスラムの連中も。でも──。

 

「うーん……。確かに辛くて苦しくて悲しかったですわ。でもスラムの時は兄が居ました。倒れた時に王妃様に救われました。今こうして、5体満足でセラフィナさんとお話し出来ている……。そう思うと、私はとても恵まれていますわ!」

 

 満面の笑みでそう言い切った。心の底から幸せだと。昔なんか知らない、今が良いと。コイツはそう言ったのだ。

 

「……お前、すげぇな」

 

「え? 私何か褒められるような事を?」

 

「あぁ。すげぇよお前。もう一本やる」

 

「あ、ありがとうございます……?」

 

 アナンタに飴をもう一つくれてやる。丁度目的地に着いた。水源の方には騎士が【浄化】で悪い魔力に汚染されている水を綺麗にしている。昨日までは問題無かったのに、再び汚染が始まった場所らしい。アタシらがやるのは、周辺の調査。原因を探す事。

 

「よし、ちゃちゃっとやるか! アナンタ! 気合い入れろ!」

 

「は、はい! ……セラフィナさん、急にやる気になったみたいですが……?」

 

「お前見てたら元気出たわ! さっさと犯人見つけてしばき回そうぜ!」

 

 別に元から嫌いな奴では無かった。ウゼェけど。なんつーか、真っ直ぐな奴だな。嫌いじゃない。何だったら──好ましいくらい。加藤の為と思ってたが……コイツを救った国の為に真面目に働くのも、悪くないな。




この世界の竜人族は、男はリザードマンみたいな見た目。女は人間に角と羽と尻尾が生えた感じです。スペックは変わらない。
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