ダンジョン中毒から抜け出したい【書籍化&コミカライズ決定】   作:1パチより4パチ派

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ドパガキ矯正ダンジョン

 しょうもない寄り道をしつつも、ゲルダリアに今日向かうダンジョンの案内をさせて1時間経った。

 

「なぁ、まだ着かないのか? やたらと遠くないか? 首都からほぼ出てるだろこれ。道合ってんだろうな?」

 

「えーっとこっちがこうだから……合ってるはずよ! 遠いのはこの国のダンジョンが1番初期に設置されたからよ」

 

「初期?」

 

 初期と言うと、それこそ人族と魔族の争いが終わって魔王がダンジョンを作り始めた頃だろうか。

 

「今でこそダンジョンは当たり前だし、安全性も保証されてる。モンスターはダンジョン内でしか体を保てないから絶対出てこないしね」

 

「まぁ一度も出てきたことないからな」

 

「そ。だから街中……と言っても周囲に民家がある場合は設置してないんだけど、簡単に向かえる距離にあるわ。でも昔はまだ理解が進んで無かったからねぇ。抵抗もあったのよ、いくらアイテム出るって言ったって」

 

「ふーん。じゃあ設置するけどせめて人気が全然無い所って事か。……だとしてもアクセスもうちょい整備しろよ。この国、車も無いからマジで徒歩移動しか無いんだけど。馬は居たけど俺乗れないし」

 

「そもそもこの国がダンジョンあんま使う人居ないんだって。探索者が殆ど居ないから騎士団がやってるのよ。ほぼデスマーチで」

 

「しかも汚染水源を【浄化】する仕事もあるのか。地獄だな」

 

 そう思うとライラも気の毒に思えてきた。話し合いをした時割と高圧的なのは寝てないからなのかもしれない。竜人族ってタフだし耐えれてしまうのが余計良く無いんだろうな。

 

「まぁそれは良いや。そんで? 後どのくらいだ? お前地図あるとか言ってたよな? 記憶に不安があるなら見ろよ。スマホで検索しても地図出てこないからお前頼りなのに」

 

「分かったわよ、えーっと確か私のえっちな谷間の中に……」

 

「いや見えてるから。ゲル塗れになってる地図が。何がえっちな谷間だよ。単なるゲルの塊だろ」

 

「ソンナ事言ッチャッテ、アンマ好キ勝手言ウナラ、セラニチクルワヨ」

 

「塊繋がりでパワハラ王様にならなくて良いんだよ! やめろ! 頭の横伸ばすな!」

 

 ゲルダリアが体内から取り出した地図を広げる。そこには詳細な地図が……地図が……。

 

「えっとこの辺があの辺でそこら辺だから……ん? 何これ?(ゴロリ)」

 

「おい何だよこのクッソ適当な地図! 丸複数書いて紙のあちこちにミミズ置いたようにしか見えねぇんだけど!?」

 

「おかしいわね。ちゃんと騎士団の死にそうな顔した人から書いてもらったのに」

 

「完全にデスマーチさせられた悪影響出てんじゃねぇか! どうすんだ! こんな伊能忠敬の進化前みたいな地図じゃどうにもならねぇぞ!」

 

「参ったわ。ダンジョンまでの正確な道なんて全然覚えて無いわよ」

 

「何で1年以上もダンジョンアタックさせられてたのに覚えてないんだよ」

 

「私の記憶容量は限られてるもの。脳内フォルダはショタ関連の物で一杯だから入れるスペースがね……」

 

「脳味噌すら無い軟体生物が何言ってんだ」

 

 最悪だ。このままだと完全に遅刻どころか辿り着くことさえ儘ならない。コイツに頼った俺が愚か過ぎた。頭悪いも何も頭が無い奴に道案内させたらダメだろ。

 

「ヤバイわよ! このままだと交代時間に間に合わないわ! 加藤、どうする!?」

 

「お前がバカやらかさなかったらもう少し猶予あったんだけどな」

 

「過去を引きずる男ってダサく無い?」

 

「過去を顧みないゲルってバカじゃ無い?」

 

「「(無言のメンチ切り合い)」」

 

 ダメだ、こんな事してる場合じゃ無い。何とかしてダンジョンに行かないと。辺りに誰か居れば道を聞けるんだが……。

 

「……ん?」

 

 軽く辺りを探ると非常に薄いが気配がある。ダンジョンだったらモンスターだが、ここは外。つまり──人。

 

「(やたら存在感消えてっけど……あの辺かな)」

 

 掴んだ気配の位置に走って近づく。相手もこちらに気付いたのか、すぐに構えを取ろうと動き始める。

 

「あ! 待って! 待ってください! 道教えて欲しいだけで──あれ?」

 

「!? か、加藤様!?」

 

「リファルさん?」

 

 そこには黒いローブを見に纏っているリファルさんが、驚いた顔で俺の名を呼んだ。

 

◇ ◇ ◇

 

「いやーマジありがとうございます。ホント道分からなくて」

 

「この辺りは森林地帯ですからね。もう少し整備しても良いとは思うんですが……。あまり余裕が無いようで」

 

 軽く話した後にダメ元で道案内を頼んだら快諾してくれて、目的のダンジョンまで後少しの場所まで来た。ちなみにさっきまで歩いてた道は普通に間違っていた。なんやねん。

 

「リファルさんの着てるやつって、【隠匿(いんとく)のローブ】ですよね。どうしてそんなものを……」

 

「有名になり過ぎたからお忍びで観光に来たのかしら? 人気者だものね〜」

 

「……」

 

 俺らの問いに答えないリファルさん。あまり話したく無いのだろうか。これ以上迷惑かけられんなと自重しようと思っていたら、メモ用紙を手渡された。読めということだろう。

 

──────────────────

  加藤様と仲良くなる為に試す事

 

・贈り物をしてみる

・一緒にダンジョン潜らないかと誘う

・高木様と仲が良いらしいので髪を剃ってみる

・セラフィナ様のような女性が好みらしいので体を小さく薄くしてみる。(うすほそと言うらしい)

・エネロマを先生と慕っていらっしゃるので精霊族になれる方法を探す、もしくは呪いを覚える

・取り敢えず後をつけてみる(住所、好み、職場は把握済み。他の情報を探る)

 

※毎日のおさわりマン衣装への参拝を忘れない事!

──────────────────

 

「リファルさん、これ違うっす」

 

「? ……あぁ! 申し訳ございません! 間違えてしまいました!」

 

「間違えてるね、全て」

 

「これストーカー超えてるわよ。バケモンよバケモン」

 

 個人的に最後の文章が1番怖い。何? ゴミ箱にぶち込んだ筈の黒歴史が崇め奉られてるんだけど。……見なかった事にしよう。現実を直視したら正気では居られなくなる。1つ言うとするなら、その綺麗な髪は剃らない方良いと思う。変態のハゲは1人でキャパオーバーだ。

 

「こちらでした! どうぞ!」

 

「えーっと……だ「声に出さずに!」……」

 

 口を閉じて文章だけ読み進める。内容としては各国の至る所で霊酒が無くなっている事。そして霊酒を買い上げていた連中がこぞって犯罪組織で、その買い上げた筈の霊酒は更に複数の取引を経て行方が分からなくなっている事が書いていた。

 

「現在私達のような動ける者が国連や警察に協力しています。その際にガサ入れした場所で、ここに運び込まれたと言う情報を得ました」

 

 下の方を読んでみると、【大暴走(スタンピート)】なる聞き慣れないワードがあった。普通なら、動物が群れで逃げると言う意味だが……。

 

「(ねぇ加藤。これもしかしてダンジョンに霊酒撒きまくってダンジョンめちゃくちゃにするって事じゃ無いの?)」

 

「(かもな。そんな大量に霊酒使うなんてそのくらいしか無いだろ)」

 

 問題は何でそんな事をするんだと言う謎だが……ダンジョンを無理矢理潰す為か? 国に打撃を与えたいとか言う理由なら、まぁ納得は出来るが……。

 

「正直な所、目的が見えてない状態です。ましてや現在この国は水源の魔力汚染が発生している……。仲間にも隠れて調べてもらってますが、中々原因が……」

 

「隠れてるのは何でです?」

 

「……無駄に有名ですからね。何度も犯罪者の捕縛に協力しているので、警戒されているかもしれないと思いまして。こうして隠れながら調査しています。ウォルタリアの国側にも言っていません」

 

「それは何でよ?」

 

「……これはあくまで推測なのですが」

 

 少し躊躇った後、リファルさんは──。

 

「恐らく、国側に内通者が居るかと」

 

 あまり聞きたくは無い言葉を放った。

 

◇ ◇ ◇

 

 その後、ダンジョンまでしっかりと案内してくれたリファルさんと別れて早速交代しにダンジョン受付の方に向かう。

 

「えーっと騎士団の人達は……うわぁ」

 

 ロビーに入った瞬間目に入って来たのは、死んだような顔をした竜人族達。床に突っ伏して寝てたり、立ったまま寝てる人すら居る。

 

 ピピピピピピ!

 

「う、うわぁぁぁぁ! 時間だぁぁぁ! もうやだぁぁぁ!」

 

「もう何日も帰ってない! 帰ってない! おうちにかえりたいぃぃぃ!」

 

「それでな、ダンジョン潜ってた時に出会ったのがこの娘な訳だよ。めっちゃ可愛いだろ?」

 

「ピーパラピーパラ♪ パッパパラガス♪」

 

 泣き叫ぶ者、悲鳴を上げる者、幻覚が見える者、親父ぃ……する者。多種多様だが共通事項としてぶっ壊れていると言う事だ。今し方ダンジョンを抜けて来たのか、疲労の限界に見える。

 

「(まぁランクSSSを狙うってこう言う事だからな……)」

 

 1年通して世界で1個出れば良い方と言われるのがランクSSSだ。そう考えると俺は相当運を使ってる気がする。LRも出たし。……周りの寄ってくる人運は地の底だけど。

 

「あーすいません。ライラ団長から代理で入ってくれ言われた者なんですけど……」

 

「「「「「神来たぁぁぁ!」」」」」

 

 倒れ伏していた人らも飛び起きるように蘇り、そのままロビーから出て帰宅して行った。この間約5秒である。

 

「き、君は確か国中でショタに手を出して奉仕活動させられているスライム……! こ、交代に来てくれたのか……! しかし君はまともにモンスターにダメージを与えられないから、攻撃役が必要では……?」

 

「この隣に居る気狂い剣士が1人で暴れるから問題無いわよ。ここのダンジョンって確か中堅用だし。何だったら私要らないと思うけど」

 

「お前は荷物持ちだよ、ドロップ品のな。せっせこ落ちたの拾えよ」

 

「うわ聞いた貴方? コイツ追放物で主人公いじめるような事言い出したわよ? どう思う?」

 

「やったァァァ!!! 帰って寝ます! ありがとうありがとう!」

 

「それどころじゃなかったわね」

 

 リーダー格の竜人族も、問題無いと分かると泣きながら爆速で出ていってしまった。どんだけ切羽詰まってたんだよ。切り替えて受付をさっさと済ませてダンジョン内に入る。中にはデカいモンスターの死体だけ自分達で片付けているのか、小さいモンスターの死体がいくつも残っていた。

 

「うーん、汚い。いや別に血で汚れてるとかじゃ無いんだが」

 

「まぁ毎回清掃入る余裕無いからね。1週間に1回だった筈よ。その時以外は自分で片付けろって感じ」

 

「それダンジョンの寿命ゴリゴリ削ってるぞ。国がヤバいんなら仕方ないんだろうけど」

 

 ちゃんとモンスターの死体をダンジョンに還元してやらないと、足りない分を自身を構成する魔力で補おうとするので本当に良く無い。ダンジョンを作れるのが今の魔王しか居ないので、新しいダンジョンを依頼したとて数年待ちなんてザラだ。

 

「まぁ俺らには関係無いか。頼まれた事やるだけだし。ボチボチ行くかー」

 

「じゃあ私後ろ着いてくわね。がんばえー」

 

 ゲルダリアの気の抜けた応援を背に受けながら進んでいくと、当たり前のようにモンスターが複数体現れた、ので全部真っ二つにする。断末魔を上げる事なく、床に転がるモンスターからは宝箱はドロップしない。

 

「一応今のモンスター達、騎士団が数人でやって3分かかる強さだった筈なんだけど」

 

「いやそれ完全に慣れてないだけだろ。騎士団って言っても言わば軍だろ? 対人経験しか無いだろうし、比べるのは間違ってるって」

 

「それはあるでしょうけど。鈍ってないみたいで良かったわ」

 

「まぁ……勘は完全に取り戻してるけど」

 

 別に『これくらい普通だろ?』と思っている訳じゃない。全体で見たら俺も仲間達も強い部類に入るだろう。だが結局どこまで行ってもダンジョンでの強さだ。対人でガチった事なんて殆ど無いし……。最近強過ぎるのと戦ったからそんな自信無い。魔王なんて本気出してたら俺ら全員死んでたしな。あんだけ啖呵切っといて情けない話だ。

 

「にしても直近でバカスカドロップするダンジョン潜ったから変な違和感があるなぁ。こっちが普通なんだけど」

 

「私居ない間に面白そうなことしてたのね。後で教えてよ」

 

「面白い……面白い? そうかな……そうかも……」

 

 俺個人の割合的には不愉快な事の方が多いんだけどな。でも高木基準だったらハピネス期間だったかもしれん。襲ってくるモンスターを斬り飛ばしながら進んで行くと、あっという間に次の階層への階段まで近づいて来た。

 

「あれ、今時間どんくらい経ったんだ?」

 

「10分」

 

「まぁ歩きながらだしこんなもんか……」

 

「騎士団の連中が聞いたら卒倒しそうね。私がタンクやってた時2時間とか掛かってたけど」

 

 中堅探索者用のダンジョンならこんなもんだ。何の達成感も無いまま、最後のモンスターを真っ二つにした時──。

 

 ゴトン!

 

「あ、落ち──「うぉぉぉぉぉぉぉ!!! 宝箱ぉぉぉ!!!」──ああ、懐かしい……」

 

 目の前で宝箱が落ちた。当然飛びつく。誰だってそうする、俺だってそうする。ダメだと頭で分かっているのに我慢出来ない。いや、これはウォルタリアを救う為に必要な事。だからセーフ! 許して! 許す! 許された!(自己完結)

 

「……ハズレか。なーんだ」

 

 演出が無い。つまりランクが低いという事だ。まぁ仕方ない、さっさとゲルダリアに押し付けて次の階層に──。

 

「あれ? エリクサー?」

 

 行こうと思ったが、中のアイテムはどう見てもエリクサーだった。エリクサーはランクS。演出があるランクのアイテム。

 

「え? え? え? え? え、え、え、え、え、え。 ハァ???

 

 宝箱を閉める。開ける。何も無い。閉める。開ける。音がしない。閉める。開ける。光らない。閉める。開ける。演出無い──演出が無い!?

 

「ゲルダリア! このダンジョン壊れてる! 不良品掴まされた!」

 

「え? どゆこと?」

 

「演出が無いんだよ! Sランクなんだからパンパカパーンでビガビガビカのテュンテュンテューンが無いんだよ!」

 

「効果音を口で言うのやめなさいよ。にしてもおかしいわね、Sランクなら……あ!」

 

「な、何だ! 何があった!」

 

 震えながらゲルダリアの言葉を待つ。嫌な予感がビンビンだ。

 

「いやほら、ウォルタリアのダンジョンってダンジョンが生み出された初期に設置されたって言ったでしょ?」

 

「うん」

 

「それって今からもう500年くらい前な訳よ」

 

「うん」

 

「だからもしかして、演出未実装なんじゃない? バージョンアップしてないから光りません! みたいな?」

 

「──え……?」

 

 つまり、このダンジョンで高レアアイテムがドロップしても演出は無い。何だったらウォルタリアの全てのダンジョンで、演出が無い。

 

「俺ら今日8時間代わりに潜ってくれって言われたよな」

 

「そうね」

 

「その間どれだけレアアイテム出てもピカピカしないの?」

 

「しないわね」

 

「ドーパミン出ないの?」

 

「出ないわね」

 

「こんな虚無虚無プリンダンジョンを時間来るまで周回しないといけないの?」

 

「そうなるわね」

 

「ア、アハ、アハハ、アハハハハ! アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ──ノストラダムスの大予言ってリメイクしても良いかな」

 

「終末予言をリバイバル上映しようとする奴初めて見たわよ」

 

 こうして俺のお湯かけお粥より味がしない刑務作業が始まってしまった。

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